約2年ぶりの信州あんこ旅。
今回ご紹介したいのは松本の「御菓子処 藤むら」の二品。
上品な「酒まんじゅう」と季節限定の「笹水ようかん」です。
「酒饅頭」と漢字で書かず「酒まんじゅう」と表記していて、このひらがな表記が藤むらの立ち位置をよく表していると思います。
ここのもう一つの名物が「れーずんくっきぃ」(レーズンサンド)で、雑誌ブルータス(マガジンハウス刊)が選んだ「日本一の手みやげ」(2017年)にも選ばれていて、和菓子と洋菓子の新しい共存を目指していることがよくわかります。
蔵造りの素敵な外観、大店ではなく比較的小さな店内。中の渋好みはどこかモダンなレトロ感にあふれ、坪庭やアンティークなオブジェ、木の菓子型などを見ているだけで私的には幸せになります。
つい脱線(汗)。
★ゲットしたキラ星
酒まんじゅう 5個入り600円
笹水ようかん 270円
小倉かのこ「山つつじ」280円
上用万十「つばめ」 280円
※すべて税込み価格です。
【センターは?】
笹水ようかん:きめ細やかさと絶妙な口どけ
酒まんじゅうとこの笹水ようかん、どちらをセンターにするか迷ったが、猛暑続きということもあって、こちらを選んだ。
みずみずしい笹と滴るような、凝縮と均衡をギリギリのところで踏ん張るように保っている小倉色の一品に目が釘付けになった。
サイズは約35ミリ×35ミリ。上部には横線がすっと入っている。
信州の名水でこしあんと寒天に魔法をかけた、そんな表現さえしたくなるような。
日持ちしないので、自宅に戻った夜遅く、冷蔵庫に1時間ほど冷やしてからいただく。
〈実食タイム〉菓子楊枝(かしようじ)を入れると、水ようかんの柔らかな充実が楊枝に少しまとわる・・・いい感じ。
甘すぎない、こしあん(自家製)のいい風味が来た。
松本の湧水を使用しているとか。
舌の上で溶けていく感覚が上質。
塩気は感じないが、どこか信州のミネラル分を感じる。
笹の香りがいい伴奏となっている、そんな気さえする。
【セカンドは:酒まんじゅう】
サイズは58ミリ×40ミリほど。重さは45グラム。小判型。
絹のような色で、表面のテカリがどこか危うい。
まるで箱入り娘のよう。
電子レンジで20秒ほど温めると、酒種の香りがふわふわと増してきて、蒸かし立ての、本来の味わいに近くなったと思う。
ほどよいふっくら感があり、東京・荻窪「高橋の酒まんじゅう」のようなもっちり感とは違う繊細な舌触り。
中のこしあん(自家製)はきれいな藤紫色で、ピュアな甘さが上品。
口の中で酒種生地と混じり合うと、「いい感じ」になってくる。
どちらかというと、私は素朴な酒饅頭に惹かれるが、この上品さには別の味わいがある。
あっという間に3個胃袋に消えた。
おまけ①:季節の上生菓子「山つつじ」
小倉かのこのバリエーション。
見事な大納言甘納豆に覆われていて、中はこしあん。
表面には金粉と紅の色どり。
文句なしに「うめえ~」が出た。
おまけ②:季節の上用万十「つばめ」
店主の腕がさらによくわかる。
表面の白玉生地のもっちり感と爽やかな青空に舞うつばめ(羊羹)がまずは目を楽しませてくれる。
中はピュアなこしあん。
ほどよい甘さで、冷たい麦茶でゆっくり味わう。
信州松本のさわやかな空気を感じながら、しばしの間、極楽気分。たまらんらん。
●あんストーリー
▼創業は昭和13年(1938年)。現在3代目。先代の2代目は洋菓子職人でもあったようで、もう一つの名物「れーずんくっきぃ」を誕生させている。▼少し脱線するが、約6年前のこと。東京・本郷にあった幻の羊羹専門店「藤むら」と同じ店名だったので、恐るおそる店主に「関係性」を尋ねたことがある。▼「うちはまだ3代目で、そんな古い歴史はありません」と否定されたが、店名の一致は単なる偶然ということに。▼当時は万万が一の思いだったが、とはいえ藤むらの幻の羊羹探しは私の中ではまだ消えていない。
「和菓子処 藤むら」
所在地 長野・松本市中央2-9-19