茨城・下妻市(しもつまし)。
深田恭子(ファンです)の出世作「下妻物語」(2004年公開)の舞台にもなった田舎町だが、室町から戦国時代は多賀谷城が威光を放った歴史のある町でもある。
今では往時の面影はほとんどない。
こういう町にはいい和菓子屋が隠れている。
目論見は当たった。
ここで出会った、メチャすごい最中(もなか)を取り上げたい。
私的な表現では「最中界の深田恭子」(ハズしたかな?)。
知る人ぞ知る「手づくり和菓子 翁屋」(おきなや)。
創業が驚くなかれ明和8年(1771年)。
私がこれまで食べた最中の中でもワンランク上を行く、「ワールドクラス」のおいしさ、だと思う。
★ゲットしたキラ星
翁屋最中「きぬの夕月」 230円
栗饅頭 240円
六花の精 240円
薄皮饅頭 160円
味噌饅頭 160円
※すべて税込み価格です
【センターは?】
吹き上がる丹波産大納言あずきに驚く
満月とススキをデザインした最中皮の渋い焼き色。
サイズは52ミリ×48ミリ。厚みが30ミリもある。重さは57グラムほど。
手に持つと重い。
まあ、普通に美味しい最中だろうな、という最初の軽い思いは味わった瞬間、見事に裏切られた。
中のつぶあんのレベルが半端ではない。
とくとご覧いただきたい(なんだかエラソーですが)。
つややかな、見事な大粒のつぶあん(京都丹波大納言)から放たれるオーラ。
その艶やかなボリューム感。色。
〈実食タイム〉
皮の上質な香ばしさと歯ざわりの後に、いい小豆の風味がビッグバン的に広がって来た。これはすごいね。
やさしい爆発、とでも表現したくなる極上のあんこ。
小豆の形はしっかりあるのに、実にふっくらと炊かれている。
一粒一粒に蜜がしっとりと沁み込んでいる。
歯がすっと入る、その柔らかな凝縮感がすごい。
やや甘めだが、甘すぎない。
すご腕の和菓子職人の存在を感じた。
これだけの秀逸なあんこにはそうそう出会うものではないと思う。
しかも人通りの少ないローカルで(失礼)。
店を訪ねたとき、たまたまいらっしゃったご高齢の7代目が「息子の8代目が作っているんですよ」。8代目?
砂糖は白ザラメを使っているようだ。
「おとりよせネット和菓子部門」で第1位(2007年)に輝いた、ということも後で知って、なるほどと納得させられた。
●あんヒストリー
7代目によると、はっきりした記録は焼失してしまったが、井戸などの敷地跡の記録から創業は江戸時代中期(明和7年)までさかのぼれるという。現在8代目だが、この8代目がつくば店(平成19年オープン)で高レベルの和菓子づくりに励んでいるようだ。小豆へのこだわり方が半端ではない。大粒の京都丹波大納言、北海道産有機栽培小豆など栽培地の畑にまで足を運んで仕入れているとか。スタッフとともに上生菓子から饅頭類まで、さらには創作和菓子にも取り組んでいる。東京や京都など有名エリアではない場所で、というのが脱帽したくなる。
【サイドは?】
栗饅頭:栗饅頭は7代目の作。茨城産の大栗を白あん(北海道産手亡豆)が包み、淡い焼き色もとてもいい。
意外にしっとりとした皮生地で、蜜煮した大栗と白あんがいい具合に調和している。上質の栗饅頭。
薄皮饅頭:手づくり感のある上質な饅頭で、破れそうな薄い皮を通して見え隠れするつぶあんが色っぽい。細部にまで手抜きが見えない(下の写真㊨、㊧は味噌饅頭)。
つぶあんは有機栽培の小豆を使用しているようだ。あんこのボリュームと艶やかな粒々感が心にまで沁みるよう。黒糖の余韻も。
味噌饅頭:皮生地に地場の味噌が練り込まれていて、中はこしあん。黒糖も入っているのか、味噌とのコラボが成功している。
薄皮饅頭もそうだが、あんこのたっぷり感がたまらない。職人の手を感じるこだわりの強さと舌に残るきれいな余韻が素晴らしい。
《小豆のつぶやき》
▼最大の驚きはやはり最中だが、饅頭の美味さにもしびれた▼この他にも「六花の精」(栗が丸ごと入った栗大福)も印象に残った▼店内には「天覧 松皮饅頭」のかなり古い木札がさり気なく置いてあった▼伝統的な小麦粉煎餅だが、天覧の文字がこの店の由緒を物語っている▼今回はあんこ旅でボーナスをもらった気分。
「手づくり和菓子 翁屋」
下妻店 茨城・下妻市下妻丁123
つくば竹園店 茨城・つくば市竹園2-14-1