新春あんこ旅でちょっと驚きの和菓子屋さんに出会った。
「日本一暑い街」埼玉・熊谷でのこと。
もっとも寒い時期に日本一暑いエリアの一つを訪れるのもオツかな、などと懐手気分で「和洋菓子 三河屋」の白地の暖簾をくぐった。
白いモダンな店構え。4年ほど前の夏に一度来たことがあり、その時はカフェスペースでかき氷を楽しんだが、レジで支払いの時、何気なくショーケースを見たら、地味系の「きんつば」が「おいで」をした気がした。ん?
期待半分ほどで自宅に帰って食べたら、これが予想以上にスグレモノだった。
それが頭に残ったまま令和5年を迎え、今回、思い立って再び足を運んだ。
で、特に目に入ったのが、この「蔵出し酒菓 権三(ごんぞう)」。
毛むくじゃらの駕籠かきでも出てきそうなネーミングだが、何よりもその造りに驚かされた。
こんなのあり?
表面が真っ白い「酒粕(さけかす)ソース」で覆われた大納言あずきのパウンドケーキで、一体どんな味わいか、好奇心がむくむく。
●ゲットしたキラ星
蔵出し酒菓 権三 1棹880円(税別)
どら焼き 1個150円(同)
焼ききんつば 1個140円(同)
最中(もなか)1個130円(同)
【センターは?】
老舗酒蔵と和洋の甘い三角関係に目と舌がうっとり
入り口の白地の暖簾には「御菓子司 三河屋」と書かれているが、洋菓子も作っている。
店先にいらした3代目女将さんによると、面白い歴史がわかった。
和菓子は3代目がつくり、洋菓子は父の2代目が担当しているとか。
創業は昭和23年(1948年)で、初代が和菓子屋さんだったようだ。
なので3代にわたる「和洋菓子さん」ということになるが、そんなジャンル分けはたいして意味がないかもしれない。
草餅やお赤飯もレジの横に並んでいて、モダンさと町の餅菓子屋さんが同居していて、そのファミリーとしての基本的なポリシーが素晴らしいと思う。
和菓子も洋菓子も一品一品にこだわりの強さがうかがえる、見るからに上物ぞろいで、価格も抑えている。目が右に左にウルウル。
さて、真っ先に試食したのが「蔵出し酒菓 権三」。
パッケージが凝っていて、筆文字で「権三」と印刷された紙包みを取ると、金色(裏は銀色)の包みが現れ、真空パックされたご本体が現れた。
サイズは170ミリ×70ミリ×52ミリ(厚さ)ほど。重さは約337グラム(本体は300グラムくらいかな)。
包丁で切ると、酒粕のいい香りが花束になって鼻腔に飛び込んで来た(そんな感じでした。お酒が苦手な人にはおすすめできないかも)
オリジナルの酒粕ソースは熊谷の老舗酒蔵「権田酒造」とのコラボで誕生したもの。
なので「権三」(権田×三河屋)と名付けたそう。ネーミングの謎が解けた。
●試食タイム
ベースのパウンドケーキはしっとりと作られていて、大納言あずき(甘納豆)が夜の梅のように咲いている。
アイデアも含めて、洋菓子職人(2代目)と和菓子職人(3代目)の融合とも言えると思う。
クリーム状の白い酒粕ソース(酒粕に生クリームなども加味している?)の舌触りとバニラにも似た風味もとてもいい。吟醸香も感じる。
見た目は濃いのにまったりとした、むしろ淡白でピュアな味わい。
口の中で瓦解し、混じり合い、溶けていく感覚と余韻・・・。
大納言あずきのかすかな悲鳴(?)も楽しめる。
1∔1∔1=5の創作スイーツ、とも言えると思う。
私はお酒も好きなので、これにはやられてしまった。
素晴らしい大人の和洋スイーツだと思う。
唯一、パックをはがすときにうまくやらないと、少し苦労をする。
【サイドは?】
★どら焼き:きれいに焼かれたやや小ぶりなどら焼きで、中はむろん自家製つぶあん。北海道産小豆×白ザラメ。控えめな甘さのあんこで、風味が立つ上質なあんこだと思う。
★焼ききんつば:角形のきんつばで中のあんこはつぶあんと寒天の配合がお見事。皮には焼き色がなく、焼きムラもない。私の好きな東京・浅草「徳太楼」の美しいきんつばを思い起こさせるような上物だと思う。
★最中:これも驚きだった。真四角の、しっかりとした皮種のなかに見事なツヤのあずきが盛りよく詰まっていて、皮種の香ばしさと甘めのつぶあんが上質。注文を受けてからつぶあんを詰めてくれる。個人的な評価ではこの店の実力はかなり高い。
「御菓子司 三河屋」
所在地 埼玉・熊谷宮町2-4
最寄り駅 JR高崎線熊谷駅から歩くと約15分