東京FM系(全国ネット)でホラン千秋さんの番組に呼ばれ、先日その一回目(5月15日)がラジオとラジコから流れたが、友人知人、週刊あんこの読者の方などからビックリするほどの反応があったので、ちょっとだけご紹介したい。
「ホランさんの魅力の前で、さとう編集長のメロメロがひどすぎる(笑)。2回目はちゃんとやってくださいよ」(広告代理店の友人)
「声がひっくり返ってましたよ(笑)。京都の老舗料理屋の女将が『富山の羊羹なんて聞いたことがない』といかにも京都のイケず口で言ってましたよ」(出版社OB)
「すごくよかったです。ホランさんの反応がとても美味そうだったので、番組で紹介していた枠流し杢目羊羹を早速お取り寄せしました」(某局の知人)
ほめ殺しから罵詈雑言までさまざま。不思議なことに男の反応は塩気がきつく、女性の反応は涙が出そうなほど甘めで、しっかりと聴いてくれたことがわかるものが多かった。
中には「ラジオに出たくらいでエラそうな口きくな」というものもあった。
2回目の放送は22日(日)正午~。塩気どころか唐辛子入りの反応がいっぱい来るんだろうな(笑)。なので、所詮はあんジイのたわごと、ゆる~くお楽しみください。
と書いたところで、今週は番組でもご紹介する予定の「きんつば」をセンターに据えたい。
題して、マルか角かきんつば対決のスタート!
【今週のセンター】
創業が明治44年(1911年)の「和洋菓子 翁堂本店(おきなどうほんてん)」。松本にはいい和菓子屋さんが多いが、ここもその一つ。
別の場所で茶房や洋食屋も営んでいて、松本市では有名店でもある。
松本城の南東部に位置するこの本店はモダンだが、ひっそりとした佇まいで、和菓子好きには隠れたあんこスポットだと思う。
現在3代目。和菓子と洋菓子の二刀流の店でもある。
ここでたまたま見つけたのが「きんつば」(1個 税込み180円)だった。残り数個・・・。
一目で引き付けられてしまった。
丸いきんつばで、江戸時代の形(刀のつばの形)そのまま。
手焼きしているのがわかるまだら状の焦げ目といい、ごま油で焼いている、香ばしい匂いといい、江戸日本橋がタイムスリップして抜け出てきたよう。
中のあんこが透けて見える。その存在感。
これは日本橋榮太樓の「名代金鍔」とほとんど変わらないもの。
まさか松本でかような、シーラカンスのような江戸きんつばに出会えるとは・・・。
無添加なので、日持ちは短い。
翌日、自宅に戻ってからの賞味となった。
●試食タイム
大きさは左右約50ミリ、厚さは約25ミリ。大きめ。
ごま油の香りが遠い江戸を思わせる。
皮の薄さと焼きムラが素晴らしい。
中のあんこは濃い紫色のつぶあんで、たっぷりと詰まっていた。
このつぶしあんがふくよかで、口に入れたとたん、そよ風となった。
北海道産小豆の柔らかな風味がストレートに伝わってくる。
甘さはかなり抑えてあり、塩気がジワリ。
寒天の存在を感じない。
日本橋榮太樓や信州飯田・和泉庄とたぶん同じ製法だと思う。
渋切りを極力抑え、小豆本来の美味パワーを押し出しているのがわかった。
う・め・え。つい声が漏れるほど。
きんつばはもともと京都で生まれ、皮は米粉。それが東海道や中山道経由で江戸日本橋に入り、皮を小麦粉に変え、独自の進化を遂げたようだ。
京都では銀鍔(ぎんつば)、それが江戸に入ると、金鍔(きんつば)と江戸好みの名称に変わっていった。
どちらも刀のつばの形(丸形)。
翁堂本店の「きんつば」は京都ではなく江戸の流れを汲んでいるようだ。
【サイドは徳太楼の角型きんつば】
私の中で東京・浅草「徳太楼」はきんつば界の最高峰に位置する。
ごらんのとおり、翁堂本店の江戸きんつばとはあまりに対照的。
丸ではなく角形。
手焼きなのに焼き色は見事になく、白色の美しい外観が特徴。
中は艶やかなつぶあんがつなぎの寒天と見事に融合していて、甘さがさらに控えめ。
明治に入って江戸が東京になると、きんつばの形は丸から角に変わり、今ではきんつばと言えば角形が主流になっている。
明治36年創業の徳太楼のきんつばはその最先端だったのではないか。
向島の粋筋にもファンが多い。
野暮(やぼ)と粋(いき)で言えば、こちらは粋だとも言える。
北海道産小豆の柔らかな粒の食感が楽しめる。
あんこ好き、特に小豆好きにはたまらない味わいだと思う。
新聞記者時代、向島の料亭ではじめてこの徳太楼のきんつばと出会ったとき、女将さんが「このきんつばはお酒との相性もいいのよ。それを楽しむお客さんもいるのよ」と教えてくれた。
その通りだった(私の好みは純米酒の辛口とのマリアージュです)。
どちらもすべて手作りなので、江戸と明治以降・・・両方を食べ比べるのも面白いかもしれない。
【所在地】
・翁堂本店 長野・松本市大手4-3-13
・徳太楼 東京・台東区浅草3-36-2