和菓子の世界で江戸時代創業の「梅花亭」(ばいかてい)は東京でも有数の老舗暖簾で、本店は東京・新川(霊岸島)にあるが、私にとっては深川不動堂参道にある深川店の方が、親しみやすい。
木造の建物がいぶし銀で、女将さんの対応(当時の)も江戸っ子気風でたまにおまけで「これ食べてくださいな」とサービスしてくれたこともある。いい時代。
エンタメ新聞社に在籍していた頃、元祖銅鑼焼き(一枚どら焼き)やきんつばを買い、担当していた作家への手土産にしていたこともある。
今回、約10年ぶりにここの「元祖三笠山(みかさやま)」を食べたくなって、再訪した。
建物がリニューアルされていた。以前の店構え(下の写真㊤)は消えていた。個人的にはちょっぴり複雑な心境(単なる感傷かもしれない)。
気を取り直して。本題に戻る。
餡が小豆ではなく、青えんどう豆のうぐいす餡で、最初に食べたとき、見た目の意外性とあまりの美味さに腰を抜かしそうになった(ホントです)。
関西では三笠山=どら焼きだが、ここではそのイメージがひっくり返る。
歴史も凄い。この三笠山、明治時代に2代目(初代?)が創作したもののようで、それを今もほとんどそのまま守っている、というのも脱帽したくなる。
しかもしかも、めっちゃ美味い!(個人的な感想ですが)。
★今回ゲットしたキラ星
元祖三笠山 300円×2個
亜墨利加(あめりか)饅頭200円
佛蘭西(ふらんす)饅頭200円
豆大福 200円
きんつば150円
※すべて税込み価格です。
◎あんヒストリー
「梅花亭」の歴史は徳川家康の江戸入府にまでさかのぼると言われる。初代は札差し(両替商)だったようで、8代目の時に日本橋に近い霊岸島で和菓子屋に転じたようだ(和菓子屋としては初代になる)。それが嘉永3年(1850年)のこと。神楽坂梅花亭や柳橋梅花亭はそこから暖簾分けしているようだ。今回再訪した深川店は霊岸島本店の支店。残念なことに建物の老朽化などで、2021年12月に建物をリニューアルしている。今風のモダンな店構えに変身している。
【センターは?】
元祖三笠山:ピタッと合わさったどら皮とたっぷりのうぐいす餡
大きさは約60ミリ×60ミリ。重さは約62グラム。円形で「六」の焼き文字が刻印されている。
ちょっと気になって、霊岸島本店に確認したら、「六」ではなく「笠」だそう。三笠山の「笠」。確認してよかった。
手焼きのオーラに包まれている。
10年前とほとんど同じ。
中にはうぐいす餡(青えんどう豆)がこれでもか、と詰まっているはず。あんこハートがピコピコ。
〈実食タイム〉手で割ると、期待通りの世界が飛び込んできた。
うぐいす餡がぎっしり詰まっていて、カステラ生地のどら皮は驚くほど薄い。
これこれ。
代々続く秘伝のうぐいす餡。若草色のしっとりふくよかな独創あんこ。
口に入れると、青えんどう豆のいい風味がさっと広がった。
甘すぎない、素朴な洗練を舌に感じる。
塩気がほんのり効いている。
ひたひたと感動の波が押し寄せてきた。
だが、なぜかはわからないが、10年前ほどの飛び切りの感動は来ない。
ぜいたくな、あまりにぜいたくな感想だが、ひょっとして私の舌がおかしくなっているのかもしれない。
とはいえ、絶品の味わいなのは変わらない。
※参考までに下に10年前の「三笠山」の写真も付けておきます。
【サイドは?】
豆大福&きんつば:小さな絶品の変わらない美味さ
どちらも小ぶりだが、上質の味わい。
豆大福は中が赤紫色のこしあん(自家製)。餅粉がたっぷりかかっていて、赤えんどう豆はキリッとしている。塩気が絶妙。
柔らかな餅とほどよい甘さのこしあんのバランスがとてもいい。
無添加づくりなので、賞味期限は「本日中」。朝生菓子の王道でもある。
きんつばも小豆の柔らかな粒々感が秀逸。塩気がほんのり。浅草徳太楼に引けを取らない味わい。
亜墨利加饅頭&佛蘭西饅頭:どちらも独創的な半生焼き菓子でアメリカとフランスの菓銘がモダンな歴史を感じさせる。
亜墨利加(あめりか)饅頭は栗まんじゅうの元祖とも言われる。クルミがちょこんと乗っていて、中は白あん。クルミのカリッとした香ばしさがとてもいい。
佛蘭西(ふらんす)饅頭はゼリー状のさくらんぼとマーマレードが乗っていて、白い摺り蜜がかかっている。洋菓子のような焼き菓子で、中はこしあん。
美味×2=幸福ホルモン。幕末から明治の文明開化の香りまでする、梅花亭ならではの逸品だと改めて思う。
「梅花亭」深川店
所在地 東京・江東区富岡1-13-10