久しぶりに東海道あんこ旅に出た。
静岡で一泊、ここで出会った餡ビリーバブルな二品を今回は取り上げたい。
凄すぎて、私的にはあんこのビッグバンに立ち会ったような気分。
食べながら笑いが止まらなかった(いい意味です)。
「元祖きんつば あきず屋」の昔のままの円形きんつばとあんこの量が通常のどら焼きの3倍もある「水月 うわさのどら焼き」。
どちらも付け焼き刃の受け狙いではない、あんこに懸ける思いがぎっしりと詰まった逸品でした。
相撲に例えると、衝撃度において、駿河の国のあんこ番付東西両大関登場、って感じかな(わかりにくい)。
●今回ゲットしたキラ星
あきず屋:金つば 1個150円(税込み)×4個
水月(すいげつ):うわさのどら焼 1個280円(税込み)×2個
【センターは?】
混じりっけなし、あんこのデカ塊りがずしんと来る
迷ったが、今回はどちらもセンターにした。
共通しているのは、どちらの店も元々は代々続く和菓子屋だが、現在の代になって、ほとんど商品は一本勝負の、あんこそのものの美味さにこだわり続けていること。
西の大関:あきず屋「元祖金つば」
●見た目 現在のきんつばはほとんどが四角形だが、ここのは円形。「金鍔(きんつば)」の名称の由来どおり、江戸時代のきんつばは刀のつばの形をしていた。それを踏襲しているのがこの店の特徴の一つでもある。
店の創業は明治45年(1912年)。屋号の「あきず屋」は今の代になって、「あきずに同じものをつくり続ける」とか「毎日食べても飽きない」という意味も込めているようだ。
同じく円形のルーツの一つ、東京・日本橋「榮太樓」の「名代きんつば」よりも一回りデカい。長野・飯田市「和泉庄」の「大きんつば」よりは気持ち小さいが、厚みがあり、手に持った重量感はそう変わらない。ずしりと来る重さ。
●特徴 店主(4代目)が前夜に仕込み、早朝からじっくりと時間をかけて一個一個手焼きで焼き始める。なので、ごらんの通り、小麦粉ベースの皮(よもぎも少し入れているようだ)には焼き色にはムラがあり、それが実に素朴な、いい味わいをつくっている。
何よりも驚かされるのは薄皮に包まれたつぶあんのボリュームと味わい。
私が訪れたのは正午すぎだったが、焼いてから時間が経過していないようで、まだ幾分、温かかった。
お願いして最初の一個だけを店内の一角で食べさせてもらった。
●味わい 手で二つに割ると、いいあずき色の柔らかなあんこの塊りが現れ、口に入れると、見かけと違って、やさしい、甘さをかなり抑えた、ピュアなあんこが爆発的に(表現が難しい)広がった。いいあずきの風味。わお。
店主に聞くと、小豆は北海道産、砂糖はてん菜糖を使い、寒天は使用していない。塩気も感じない。
つまり、オーガニックなつぶあんだけの金つばということになる。
このつぶあんが素朴で素晴らしい。
小豆の形はしっかりあるのに、ふっくらと柔らかい。
小麦粉の皮の薄さともっちり感がつぶあんの美味さを邪魔しない。
「昔は、私の父までのころは、つぶあんがもっと柔らかくて、ぜんざいのようだったという人もいます。オーバーに言うと、あんこの小籠包みたいでした。そっちの方がよかった、という古くからのお客さんもいますよ(笑)」(4代目)
●6時間後 添加物ゼロなので、賞味期限は「本日中」。なので残りの3個をホテルに戻ってから賞味した。
皮は少し硬くなっていたが、中のつぶあんは変わらないふくよかな美味さ。あっという間に3個胃袋(あんこ天国?)へと消えていった。冷えてもうめえー。確かに毎日でも飽きない味わい。
●見た目 横から見ると、テニスボール大(?)のあんこにまず驚かされる。焼き色の濃いどら皮が完全わき役の印象だが、上から見るとどら焼きに変わりはない。
見事な淡い、赤紫色のつぶあんに目が吸い寄せられる。似た商品はあるが、これはその元祖だと思う。特許を取っていなかったそう。
十数年前、テレビで紹介され、注文が殺到した。これがよかったのかどうかはわからない。
2代目の女将さんがいらして、いろいろなお話を聞かせてもらったが、「もともとは上生菓子屋だった」とか。息子さん(3代目)になって、このモンスター級どら焼き中心の店になったようだ。
●特徴 上生菓子屋さんだった遺伝子はあんこづくりに受け継がれている。早朝から毎日炊いていて、小豆は北海道十勝産、砂糖はグラニュー糖を使用。添加物不使用。
甘さを抑えていて、上品な、余韻のすっきりした、洗練された味わいのつぶあん。
全体の重量は約151グラム。そのうちあんこの重さは3分の2はあると思う。
●味わい 小麦粉ベースのどら皮には隠し味に醤油を少し使っていて、それがしっとりとした、いいアクセントになっていると思う。
新鮮な卵と蜂蜜の風味も感じる。
つぶあんのすっきりとした味わいが、モンスター級のあんこを飽きさせない。塩気がほんのり。あんこの苦手な人でも、見た目に引くかもしれないが、食べ始めると、薄めの甘さに惹かれて、「これ、イケる」となると思う。
今回の久しぶりの東海道あんこ旅で出会った一本勝負のボンバーあんこ二品、東海道をつくった家康公も天上から「わしも食べたかった」と嘆いているに違いない。
「あきず屋」
「水月」