コロナで移動が制限されると、ドラえもんの顔が頭に浮かび、どら焼きを無性に食べたくなった。
どうしたわけか、聖シムラけんの残像も重なる。
どこでもドアがあったら、日本橋うさぎや、人形町清寿軒、浅草亀十、池袋すずめや、東十条草月、霊岸島梅花亭・・・私がこれまで食べたどら焼きの横綱・大関クラスの名店にすぐにでも飛んでいきたい。
ローカルにも味わい深いどら焼きを作り続けている店が多い。
どら焼きは不要不急を超えている。
ラーメンの町、栃木・佐野で見つけたのが、バラエティーに富んだどら焼きを売りにしている「金禄(きんろく)」である。
浅沼店と堀米店があるが、今回訪ねたのは浅沼店。
個人的などら焼き番付東日本編では、関脇クラスに位置するが、ここの凄いのは7種類ものどら焼きを作っていること。
「栗どら」(税込み238円)が一番人気だが、春限定(4月いっぱい)の「桜どら焼き」(同 173円)にあんこセンサーが反応した。
あんこは白あん(手亡豆)で、つぶつぶの食感と吹き上がる風味、ほどよい甘さと塩加減、それに塩漬けした桜葉の香りが絶妙だと思う。
目でも楽しめる。包丁で切り、断面を見ると、桜色がうっすらとにじんでいる。
妙齢の美女が隠れている。そんな気配すらある。
皮はきれいなきつね色。スポンジが効いていて、しっとりというより密度が強め。黄色味の強い地場の飛駒産卵を使い、一枚一枚ていねいに焼き上げている。
予算の関係で今回は4種類買い求め、自宅で味わったが、手焼きなので皮の焼き色の濃淡が少しづつ変化していて面白い。中のあんこの違いで、重量もそれぞれ。
一番人気「栗どら」は国産の蜜煮した大栗と濃い目のつぶあんが素朴に合っている。あんこのボリュームも十分にある。皮の焼き色は「桜あん」より濃い。
重さも113グラムある。
「バタどら」(同205円)はバターが多めで、口の中で濃いつぶあんと溶け合う感触が好みに近い。栗どらよりも気に入った。こちらは106グラム。
店の創業は昭和44年(1969年)と比較的新しい。
現在2代目。ルーツは栃木市にあり、すでに店舗営業は止めている老舗和菓子屋で修業した初代が分家という形で佐野に店を構えた。「金禄」の屋号はその時新しくしたもの。
2代目は進取の気性に富み、フルーツ大福やスイートポテト「芋金」など新しい取り組みも成功させている。
小豆は手亡豆も含めて北海道十勝産にこだわり、小豆農家から直接仕入れている。
全体的に濃い目のあんこだが、砂糖は「グラニュー糖を使ってます」(2代目)。
その原点「どら」は初代から作り続けていて、中のつぶあんは皮の感触がしっかりある。つぶつぶ感がやや固め。甘さも濃い。重さは100グラム。
洗練ではなく、素朴な、むしろ野暮ったいあんこだと思う。
今回は食べれなかったが、残りの3種類は「梅どら」「白どら」「餅どら」。
一軒で7種類のどら焼きが楽しめる。首都圏でもこれだけの種類を作る和菓子屋はそう多くはないと思う。
ドラえもんがこの店を知っていたら、月曜から日曜まで、日替わりで食べに来たかもしれない。
所在地 栃木・佐野市浅沼町609-1
最寄駅 JR両毛線佐野駅または東武佐野線佐野市駅から約1.7キロ