三度目の訪問でようやく食べることができた。
今回のみちのくあんこ旅の目標地点の一つ。
知る人ぞ知る、山形のどらやき専門店&カフェ「榮玉堂」(えいぎょくどう)。
創業が江戸時代末期。現在7代目。
午前中に売り切れてしまうことも多く、ゆえに今回は満を持して、開店(午前9時~)と同時に入る必要がある。
山形市内の安ホテルに一泊して、早朝に電話、カフェ(午前10時~)でいただくことにした。
とにかくオーバーに聞こえるかもしれないが、どら皮のふわり感と口どけが尋常ではない。
中のあんこはネオあんこも含めて、常時12~13種類。
賞味期限がほとんど「本日中」というのも、売り切れ覚悟で、店まで足を運んで味わうのが一番ということになる。
無添加づくり、焼き立て、作り立てがこの店の徹底したポリシーで、私的に言えば「朝ナマどらやき」ということになる。
モダンな外観、店内はおしゃれ、木の香りもする。すでにお客が殺到している。
癒し系のBGMが流れる中、ぜんぶ味わえないのが残念だが、迷いながらの、究極の選択となった。
選んだのが次の3種類。
★ゲットしたキラ星
コーヒーとセット 620円
(生クリーム×あんどら)
マスカルポーネ×あんどら240円
宇治金生クリーム入り 240円
※税込み価格です。
【センターは?】
今回味わった3種類のどらやき。すべてが予想を超える掛け算の美味さで、最初に驚かされたのが、どら皮生地のふんわり感。
ごらんの通り見た目は特に変わったところはない。
横から見てもむしろ凡庸な、3層仕立てのどらやき。
だが、口に入れたとたん、これがハッとする驚きに変化する。
サイズは75ミリ×75ミリほど。
どら皮生地のふんわり感がただ事ではない。
卵白と卵黄を別々に泡立てる独自の製法(7代目が編み出した?)で、羽毛のような舌触りで、まるで口の中で何かが開花するような。
驚きはさらに続く。
サンドされた宇治抹茶生クリームと自家製つぶあんが二重三重の大波となって押し寄せてくる。
この怒涛のフレッシュなきらめきに言葉を失う。
つぶあんの質がとにかく高い。
ふっくらと柔らかく炊かれた豊潤なあんこ。
店にいらっしゃった7代目女将さん(店員さんかと思ったら、女将さんだった=汗)によると、小豆は北海道産の豊祝小豆(大粒あずき)を使用しているとか。
吹き上るいいあんこの風味。
砂糖は白ザラメ、グラニュー糖、上白糖を使い分けているようだ。
つぶあんの美味さ、抹茶生クリームのかすかな苦み、それらが1∔1=3のマリアージュを見事に引き出している。
とろける感覚がレベルを超えている、と思う。
私がこれまで食べたどら焼きの中でも5本の指に入る味わいと確信させられた。
究極のどらやき、とつぶやきたくなった。
【サイドは?】
マスカルポーネ×あんどら:この合体の満足度
今ではマスカルポーネとあんこの相性の良さはかなり定着しているが、榮玉堂は早い時期にこの組み合わせを実現している。
マスカルポーネの分厚さ(なめらかな酸味)とつぶあんの厚み、この2層がどら皮のふわりとした歯触り舌触りとよく合っている。
とろける味わい。次第にどら皮もあんこも+αもひっくるめて、猛暑の中、山形まで来てよかった、としみじみ。
生クリーム×あんどら:ブレンドの配合がじわりと来る
生クリームとつぶあんのブレンドが絶妙で、どちらの風味もお互いを生かし合っている。
これも1∔1=3の世界。
どら皮のとろけるようなふんわり感がむしろこのコンビによって、さらに高みに昇華するような、そんな感覚(わかりにくい、かな?)。
ひと言でいうと、めっチャうめ~!
1個が小さくないので、3個食べたら、ランチ代わりになった気分。
ため息とともに、体がふわふわと天にも昇る気分になってしまった(ホントです)。
●あんヒストリー
▼創業は江戸後期。初代は天保7年(1836年)生まれで、そこから逆算すると江戸末期創業となるようだ。▼3代目4代目の時に和菓子屋として栄華を極め、昭和に入ると、きんつばが人気を呼んだとか。▼太平洋戦争で規模を縮小、戦後は甘味処として店を維持。▼7代目が中興の祖となる。6代目(父)が力を入れていたどらやきをさらに研究し、修業に出、腕をみがき、現在の他にはない創作どら焼きの世界を作り上げた。▼新しいチャレンジにも挑み続けていて、仙台にもカフェをオープンしている。
「榮玉堂」本舗
最寄り駅 JR山形駅から歩約20分(百円バスもある)