炎天下のあんこ旅で、海苔(のり)養殖の発祥地と言われる東京・大森でめちゃウマ「のり大福」と出会ってしまった。
言葉遊びではないが、ノリのいい餡ラッキーな遭遇(笑)。
旧東海道、美原通り(三原通り)に、いぶし銀の立派な店構え。
「御菓子処 大黒屋」の屋号に歴史を感じる。百年老舗だが、どこか新しさも隠れていそう。
「大森名物 江戸前のり大福」のノボリが夏風に逆らうように翻っていた。
気骨すら感じる、いい光景。
★ゲットしたキラ星
のり大福 180円×2個
麩まんじゅう 220円
水ようかん 180円
赤じそ道明寺 200円
※すべて税込み価格です。
【センターは?】
のり大福:海苔餅と自家製こしあんの融合
現在は海苔の養殖が禁止され、地場産ではなくなったが、養殖海苔の伝統は大福に変身して生きているということかな。
食べる前までは少し抵抗感があったが、ひと口でファンになってしまった。
「固くなるので、今日中に早めに食べてくださいね」
4代目だという店主の言葉は本当だった。
あんこ旅を早めに切り上げ、自宅に戻ってから賞味となった。
青海苔がきれいに練り込まれた搗き餅を真ん中から切ると、柔らかな伸びとともに、見事なこしあんが現れた。それもたっぷり。
餅米は評価の高い新潟産わたぼうしを使用、蒸し上げてから、毎朝搗いているそう。
サイズは50ミリ×50ミリ。重さは約60グラム。
〈味わいは?〉
添加物は使用していないので、青海苔の風味がストレートに来る。
餅のしっかりとした柔らかさ。伸び方が素晴らしい。
自家製こしあんのあまりに自然な舌触り。素晴らしきあんこ。
北海道産小豆×白ザラメ。
餡づくりのこだわり方も感じる。
「上白糖だとえぐみが出るので、私は白ザラメで炊いてます」(4代目)。
甘さが控えめで、海苔餅のほんのりと漂う塩気との相性が絶妙。
うめえ。言葉が漏れる。
大福の中では海苔大福はレアだと思うが、当初はミスマッチでは?との疑いはたちどころに消えていた。
こしあんの質の高さに舌を巻く。
場所が場所だけに、江戸前の潮風すら感じた。
あっという間に2個、ぺろり。
【サイドは?】
水まんじゅう:笹のみずみずしさと本葛×こしあんの合体。
これはやられてしまった。
半透明の葛、誘惑するようなこしあん。大きめのサイズ。
冷蔵庫で十分冷やしてから味わう。
これもこしあんが私を別世界に連れて行くようだった。
笹の香りがいい効果を生んでいる。
ぷるるんと舌の上で一瞬立ち止まって、すっと消えていく。
余韻も長い。
もっちり感が上質で、笹の香りまでいい具合に付いてくる。
こしあんのしっとりとしたなめらかさとほどよい甘さ。
口の中で合体し、つるりと溶け合い、胃袋へと落ちていく。
王道の麩まんじゅうだと思う。
水ようかん:これも「本日中」の一品。
底敷き桜葉の丁寧な仕事ぶり。
濃い小倉色の上質な水ようかんで、甘すぎない。
絶妙な歯触り舌触り。
赤じそ道明寺:赤じその道明寺というのが珍しい。
これも無添加づくりで、「本日中」が制限時間。
小さめ(約47グラム)だが、塩漬けした赤じその風味と酸味がお見事。
中こちらもは自家製こしあん。
道明寺の質といい、手の込んだ造りといい、隠れた逸品に出会えたこと。道草にも一理あると思う。
●あんヒストリー
創業は大正8年(1919年)。現在4代目。「のり大福」は3代目が考案したそうで、今では大森名物にもなっている。伝統と創作。一ひねりしたプリンやロールケーキなども人気を呼んでいる。
「御菓子処 大黒屋」
所在地 東京・大田区大森本町2-31-9