本日は日曜増刊号です。
古都鎌倉の「納言志るこ店」(なごんしるこてん)と言えば、知る人ぞ知るいぶし銀の甘味処。
観光客でにぎわう小町通りをちょいと横道(路地)に入ると、そこだけ昭和が生きているよう。意外な穴場。
「納言志るこ店」のレトロな立て看板と木の引き戸、白地の水引のれんに体ごと引き込まれそうになる。入り口はむしろ狭い。
この眠りかけていた情緒をくすぐるお店、実は今回が二度目の訪問。
前回は狭い路地に長い行列が続き、「これはたまらん、出直すことにしよう」と退散した経緯がある。
なので今回はオープンとほぼ同時、午前11時入った。こんどはすんなり入れた。
それでもお客(常連客が多そう)が次々に入ってくる印象。
店内は思ったよりも広く、磨き抜かれた木のテーブルと椅子、それに正面奥の板場には女性(女将さん?)が二人、調理に励んでいた。いい感じ。
昭和がそのまま。タイムスリップしたよう。
品書きはあんみつやおしるこ、かき氷などが甘味処はこうでなくっちゃという手づくり感で並んでいる。
★ゲットした二品
抹茶あんみつ 600円
御膳しるこ 700円
※税込み価格です。
抹茶あんみつ:珍しいあんみつで、もともとは店のスタッフが賄い(まかない)で味わっていたものとか。
いわば賄いあんみつ、ということになる。
写真をご覧いただきたい。
冷たい抹茶の糖蜜水に角切りの寒天(大きめ)がゴロゴロと沈んでいて、中央部につぶあん(自家炊き)がどっかと乗っている。
ガラスの器が涼やか。
何という景色。私の目には素晴らしいアートにさえ見える。
つぶあんは北海道産小豆×上白糖。
毎朝、羽釜を使ってじっくりと煮詰めている。
寒天のシャキッした固さ、抹茶糖蜜水、主役のつぶあんの素朴で穏やかな風味と食感、小ぶりの赤えんどう豆・・・この四位一体ぶりにしばし浮世を忘れる。
つぶあんはやや甘め。塩気もほんのり。
抹茶のほんのり苦みがいいアクセントになっている。
外の猛暑もすでに吹っ飛んでいる。
創業が昭和28年(1952年)。現在3代目。
造り方は創業時のままだそう。
店内の造りもあんこ炊きの香りもこの場所を特別な場所に押し上げている。
御膳しるこ:田舎しるこ(つぶあん)もあるが、さすがに3品はきつい(?)。
なので、今回はこしあんの御膳しるこを選んだ。
創業当時からの木製のお椀と板敷がいい。
熱い煎茶がさり気なく置かれているのも歴史を感じる。
箸休めは蕗(ふき)の佃煮。
蓋を取る瞬間がたまらない。
いい香りとビジュアル。これこれ、とうなずきながらいただく。
餅は大きめで、焦げ方が寸止めの職人芸だと思う。
何よりも自家製こしあんが素晴らしい。
どろりとした舌触りと絶妙な甘さ。かすかに塩気。
好みのおしるこ、だよ。
いい小豆の風味が口の中で、舌の上で、しばらくとどまる。至福の時間。
餅の焼け具合と柔らかさ。
こしあんの絡み方。
店内のお客のお顔が幸せそう。
その様子を見ても、この店が常連客に愛されているのがよくわかった。
造り方も店内の隅々までも創業時(初心)のまま、を守り続けているのも脱帽したくなる。
名だたる鎌倉文士もここを愛したという情報もある。
こういう甘味処が存在していること。
支払いを終えて外に出るとき、ついかしわ手を打ちたくなってしまった(ホントです)。
●「納言志るこ店」
所在地 鎌倉市小町1-5-10
最寄り駅 JR鎌倉駅から歩約3~4分