犬も歩けばいいあんこに当たる。
くず桜の美味しい季節だが、このくず桜はちょいとレベルが違った。
サッカーの街でもある千葉・柏市。
あんこ仲間の情報で、駅からかなり離れた場所に「編集長好みのすごくいい店がありますよ」とのメール。
食べログなどでは評価はそれほど高くない。
ゆえにこれは期待できる?
あんこ旅で途中下車する。
予想通り、もとい、予想以上の和菓子屋さんだった。
レイソルロードの延長線上に渋く、小さな店構え。
猛暑の中かなり歩いたので、汗がびっしょり。
日除けのれんとその奥にシンプルなわびさびの気配。
「御菓子司 ふくしま家」の清楚な看板。木枠のガラスケースがちらと見えた。
これは当たりかな、と私の中のあんこセンサーの鐘がなった。
★ゲットしたキラ星
くず桜(こしあん) 200円
果のしずく(マンゴー餡)200円
河原の花(上用饅頭)220円
季節のねりきり 330円
黒糖枝豆餅(じんだん) 200円
※すべて税込みです
【センターは?】
くず桜:何という美しさと上品な味わい
まずはご覧いただきたい。
吉野葛を使った半透明な生地、頂上には金粉がはらり。
よく見ると、塩漬けの桜の花びらがワンポイントで色どりを付けている。
何よりも、その奥にうっすらとあんこ宇宙が控えている。
神秘的なオーラさえ感じる。
冷たい麦茶を用意。
サイズは45ミリ×45ミリ×35ミリほど。ほぼ球形。
これはもはやアート、ため息が出かかる。
〈味わい〉
真ん中で切ってみたら、小豆色の豊かなこしあん(自家製)が「ようこそ」とささやいた気がした(まさか)。
くずの柔らかな、吸いつくような舌ざわりと風味、こしあんの繊細ななめらかさ。
塩漬け桜がワンポイントでこしあんの美味さを引き揚げている。
ミラクルなくず桜、と感嘆したくなった。
店主は仕事中でお会いできなかったが、菓子職人としての腕がかなりのものと実感できる。
これほどの生菓子が200円というのも信じられない。
●あんヒストリー
創業は昭和44年(1969年)。初代は長崎「松翁軒」で修業、紆余曲折あり、柏で開業したようだ。息子さん(2代目)は川越の老舗和菓子屋で修業後、父の初代(今も現役)とともに上生菓子などこだわりのある和菓子づくりに励んでいる。小豆は北海道産、砂糖は白ザラメ、グラニュー糖、上白糖を使い分けているようだ。常連客が多く、売り切れるのも早い。
【サイドは?】
果のしずく:吉野葛を使った創作生菓子で、中のクリーム色のあんこは白あんとマンゴーをブレンドしたもの。
大きさはくず桜とほぼ同じ。
白あん×マンゴーペーストが絶妙に半透明の葛生地と融合している。
お見事な創作生菓子。
マンゴーの果実味がいいアクセントになっている。
黒糖枝豆餅:「じんだん」(ずんだ)とも表記されていて、表面にきな粉がかかったわらび餅。
中がずんだ餡。ずんだ餡のファンは増えていると思うが、これは口に入れた瞬間、ずんだ(甘さ控えめ)の風味が爆発的に広がった。
きな粉の風味が絶妙に混じり合い、食べながら「うめ~」が出てしまった。
柏でまさかの上生菓子屋さん。和菓子屋に関する限り、食べログの評価はあてにならない(個人的な感想です)。
包装も丁寧で、女将さんの応対もタカビーなところがなく、いい話も聞かせていただいた。いぶし銀のいい店を見っけ。
犬(私のこと)も歩けば、渋くて素敵な店に出会う。
あんこの神様はやっぱりいる?
「御菓子司 ふくしま家」
所在地 千葉・柏市千代田2-13-2
最寄り駅 JR柏駅東口から歩約15分