創作羊羹の世界がおもしろい。
老舗のチャレンジがすでに始まっていると思う。
新宿高島屋で開催された「旅する和菓子」で出会った逸品を取り上げたい。
老舗の中でも選りすぐりの8店、それも若手(4代目が中心)が実演販売まで行うのは素晴らしいことだと思う。
さすが高島屋、とまずはエールを送りたい(カッコつけすぎだよ)。
その逸品がこちら。
菓銘も「刻~toki」と凝っている。
大納言あずきをベースに伝統と斬新をうまく閉じ込めた創作羊羹だと思う。
和菓子を未来へとつなぐ強い意志すら感じる。
大阪・四天王寺に本店を構える「本まつばや」。
もうすぐ百年の歴史を迎えようとする老舗でもある。
★ゲットしたキラ星
刻~toki(創作羊羹) 1本864円
桜咲くら(季節限定) 2個入り756円
※価格は税込みです。
【センターは?】
創作羊羹「刻~toki」:夜空と月と雲の絶妙
見た目 シンプルなデザインの紙箱を開けると、小倉色のあずき羊羹が「ようおいでなさったなあ」とほほ笑んだ気がする。
サイズを測ったら90ミリ×53ミリ×30ミリ(厚み)。重さは100グラムほど。
凄みはこれから。
包丁で切ると、断面が現れた。
有機大納言小豆をちりばめたあずき羊羹、蜜煮した大栗、求肥餅・・・。それぞれ空、月、雲を表現しているようだ。
古典でありながら、その組み合わせで「どないでっか?」と語りかけてくるよう。
和菓子の過去と未来を意識しているのは多分間違いない。
味わい あずき羊羹は甘さが抑えられていて、大納言小豆(有機栽培)の食感といい風味がおだやかに広がる。
続いて蜜煮した栗のほっこり食感がその広がりを押し上げてくる。
掛け合わせの上質。
さらに雲(求肥餅)が柔らかなアクセントで時間の流れを忘れさせてくれる。
抹茶も合うと思うが、私の好みでドリップコーヒーでいただく。
シングルモルトウイスキーも合うのではないか。刻とtokiのワールドなチャレンジとなる日も近いかもしれないぞ? そんな想像もしたくなる。
あんことANKOの変換。その未来まで。
【セカンドは?】
桜咲くら:ひと箱に2個入っていて、こちらも凝り方が古くて新しい。
2層仕立てで、上半分は山芋を練り込んだ淡雪のような軽羹(かるかん=米粉ベース)で、上に塩漬けした桜の花びらが乗っている。
下半分は桜色の浮島(カステラ状の蒸し菓子)で、大納言あずき(備中大納言)が土をシンボリックに表現しているよう。
素材選びから作り手のこだわりまで、さり気ない想いと技術が組み合わさっていると思う。
桜への想いが過去から未来へとつながる。
と思いたくなる。
上品なもっちり感と塩漬け桜の香り。
黒文字でいただくと、その崩れ方と舌の上の溶け方がとてもいい。
春の雪⇒桜への予感。
淡い甘さ。軽羹と浮島と桜。備中大納言のアクセント。
一夜限りの合体?
あっという間に2個、ぺろりと胃袋に消えた。
●あんヒストリー
「菓匠松葉屋」として1927年(昭和2年)、大阪・四天王寺東門筋で創業。現在3代目。伝統と新しさを求めて、四季折々の和菓子づくりに挑んでいる。数々の賞を受賞。4代目のチャレンジ精神も注目されている。
「本まつばや」本店