週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

炎天消えた「奇跡のクリームあんみつ」

 

犬も歩けば、極上クリームあんみつに当たる?

炎天下、中央線・高円寺駅前を散策中、そこだけぽっかりとセピア色の甘味処を見つけた。

まさか? 令和4年夏から昭和へタイムスリップ?

 

「甘味の店 あづま」のあまりにレトロな店構えに、あんこハートがときめいた。

高円寺はその昔、たまに通った懐かしいスポットで、友人との待ち合わせ前に北口周辺をアリ(犬?)になって散策していた時のこと。

 

入り口のサンプルケースと「あんみつ」の文字に吸い込まれるように、飛び込んでしまった。

軽食と甘味処が一体となった記憶の中のなつかしい店。

 

ここで食べたのがハートフルな「クリームあんみつ(税込み450円)。

 

オーバーかもしれないが、私にとっては奇跡的な出会いで、まさか高円寺で「甘味処 あづま」と出会えるとは、ね。

 

バラエティーに富んだ手書きのメニューが、まるで世界遺産のよう。仰ぎ見たくなる。

宇治金時や田舎ぜんざいなど甘味メニューのほかに中華そばやカレーライスもあり、すべて自家製であることが読み取れた。これはこれは・・・ところ天まである。

 

東京下町の匂いのするややご高齢夫婦が二人で切り盛りしていた。女将さんの応対がとてもいい。

 

お客は地元の常連と今どきの若いカップルなど。ここは高円寺なのだ。

 

今では極めて少なくなった、昭和の良き甘味処と確信した。

 

【自家製クリームあんみつ

銀座仕込みのつぶあんのおいしさ

 

〈賞味タイム〉

450円という設定にも驚かされたが、目の前に置かれた黒い器は大きめで、ほぼ中央には艶やかなつぶあんとアイスクリーム。申し分のないボリューム。

アイスクリームには黒蜜がかかっていた。

 

グリーンのきれいな求肥が二つ。

 

パイナップル、黄桃、バナナ、それに赤えんどう豆とさくらんぼ。

 

その下には角切り(大きめ)寒天が潜んでいた。

 

あんこ好きとしては何よりも主役のつぶあんが気になる。

 

〈意外な歴史〉

「もともとは銀座に本店があったんですよ。昭和44年に高円寺に暖簾分けして、もう50年以上になるわね。銀座の『あづま』ももう閉店しちゃったので、今は高円寺だけですよ」(女将さん)

 

甘味処「あづま」は銀座を中心に数店あり、その名声は聞いた記憶もある。

 

つぶあんの秀逸〉

自家製にこだわって炊き上げたつぶあんの美味さが舌に心地よい。

 

なめらかな風味。

銅鍋で北海道産小豆をじっくり炊き、上白糖で仕上げているそう。

 

甘すぎず、塩気の効き具合もお見事。

 

〈銀座の遺伝子〉

寒天(専門店から仕入れ)以外はほとんど自家製で、銀座の甘味処の遺伝子がしっかりと生きている。

外観はあまりに古いが、店内は隅々まで神経が行き届いているのがわかる。

 

器の中の極上の世界

 

炎天下、高円寺でまさかの出会い。

 

つぶあんとアイスクリーム、固めのシャキッとした寒天と蜜煮したフルーツ、赤えんどう豆、求肥の鮮やかさ。

冷たい舌触りと余韻にしばらく浸る。

 

その時間だけすっかり炎天が消えていた。いいね。

 

「甘味処 あづま」

所在地 東京・杉並区高円寺北3-2-14

最寄り駅 JR中央線高円寺北口から歩約3分