喫茶店であんみつ、は邪道かもしれない。
東京・谷中の老舗喫茶店「カヤバ珈琲」で、つい好奇心から「あんみつ」を賞味することにした。
というのも歴史的建造物となった建物の入り口に「あんみつ」の文字を発見したからだ。目立つ黄色地の看板にその4文字が地味~に沈んでいた。
これまで何度も通ったはずなのに気付かなかった。
ここではいつも定番のコーヒーか、たまに玉子サンド。
あんみつ、は頭の中になかった。
バニラアイスも乗っているので、正確には「クリームあんみつ」(税込み 700円)。薄茶付き。
期待は裏切られるためにある・・・思った通りのあんみつだった。
あんこはきれいなつぶあんで、ボリュームはほどほど。いい小豆の風味で甘さもほどよい。だが、これは自家製ではないな、と思った。
店の人に聞いてみたら「はい、あんこ屋さんから買ってます」と明るく答える。
多分、北海道産えりも小豆で、砂糖は上白糖だろう。
バニラアイスも寒天もほとんど専門店から仕入れているようだ。
寒天のシャキシャキ感。バニラアイスの美味さ。さくらんぼの愛らしさ。黒蜜の濃厚。
80点の切り張り。普通に食べても普通にうまい。
こういう老舗もありだとは思うが、職人好きとしてはちと寂しい。
あんみつだけの個人的な評価。人形町の甘味処「初音」のあんみつが横綱なら、小結か前頭筆頭くらいだと思う。
それでも創業当時(昭和13年)のままというブラウンの皮張り椅子、煉瓦など古き良きものを生かした店内の雰囲気が素晴らしい。
雰囲気込みで、谷中の老舗喫茶店であんみつ、というのも悪くはない。
店は平成18年に後継者が亡くなったために閉店している。
それを惜しむ人たちが復活プロジェクトを作り、3年後にリニューアルオープンしている。
谷中ならではの新しい試みではある。
とはいえ、看板に渋く「あんみつ」を書くのなら、せめてあんこは自家製で行ってほしい。あんこ好きの悲しき願い、でもある。
初代榧場(かやば)伊之助さんは天国でどう思っているんだろう?
所在地 東京・台東区谷中6-1-29