「おはぎ」と「ぼた餅」。
あんこ好きにとって、この三文字は格別なものがある。
漢字で書くと、お萩餅と牡丹餅。
秋に食べるか、春に食べるかの違いでしかないが、つぶしあんに包まれたお姿を想像するだけで、オーバーではなくよだれが出かかる(失礼)。
夏(お盆)に食べるのも悪くはない。
私は京都「今西軒」のおはぎが大好きだが、京都まで行けない時や財布の中にピューピュー風が吹いているときには、近くの「口福堂(こうふくどう)」に立ち寄ることにしている。
でっかくて、たっぷりのつぶしあん。このあんこが好みである。
それにもち米のきれいなモチモチ感。
1個140円(税別)という価格設定もありがたい。
たまたま夏の特別企画で、1個100円で売っていた。ラッキー!
胡麻(ごま)ときな粉もあるが、何といっても定番はつぶしあんの「元祖おはぎ」。
持ち帰って、自宅で冷たーい麦茶で賞味する。
つぶしあんは厚さが1センチ近くある。皮まで実に柔らかく炊かれていて、しっとり感が絶妙だと思う。甘さと塩気のバランスもいい。
口に入れた瞬間、いい小豆の風味が鼻腔から脳天へ抜けていく。
この感覚がたまらない。
思わず「うめ~」という言葉が出てくるほど。ヤギにでもなった気分。
恥ずかしい話だが、これがあの「柿安本店」のものだと知ったのはつい3年ほど前である。灯台下暗し。
無添加なので、賞味期限は「当日中」というのも、とてもチェーン店のものとは思えない。
各店舗ごとに手包みしている。
手の匂いのする、昔なつかしいおはぎ。
やるね、柿安。「口福堂」とはよくぞ付けたり。そう言いたくなる。
柿安本店の創業は明治4年(1871年)。三重県桑名市で、「牛鍋屋」として産声を上げている。
今では惣菜から料亭、レストランまで幅広く経営している。
和菓子の「口福堂」を始めたのは平成17年(2005年)と歴史は浅い。
すでにしっかりとファンも付いている。私もその一人。
ただひとつ、残念なのはおはぎの底。そこまでは見えない?
底にまでにあんこがしっかり付いていたらなあ。
天国まであと1マイル。
とはいえ、チェーン店のおはぎで、ここまで胸が高鳴るのは今のところ、ここだけである。
所在地 三重・桑名市吉之丸8番地(柿安本店)