週刊あんこ

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「玉ようかん」元祖の凄味

 

これほど面白い羊羹(ようかん)はそうはない、と思う。

 

玉羊羹(たまようかん)、である。

 

ゴムの容器に詰められ、輪ゴムでぎゅっと縛られた、球状の羊羹。ピンポン玉より一回りほど小さい。

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ツマヨウジ(敬意を表して日本橋「さるや」のもの)でチョコンと突くと、ゴムがはじけて、くるりんことまん丸い羊羹が現れる。つややかな本物の羊羹。思わず見とれてしまう。

 

そのスリリングな楽しさ。

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その元祖が福島・二本松市の老舗和菓子屋「御菓子師 玉嶋屋(たましまや)」である。

 

創業が弘化二年(1845年)。二本松藩主丹羽家御用達の菓子司で、ここの本煉り羊羹は江戸・日本橋の流れを汲むスグレモノ。

 

玉羊羹はここのオリジナルで、誕生したのは昭和12年(1937年)。太平洋戦争へ大きく傾斜していくきっかけになった年でもある。

 

なので、当初は「日の丸羊羹」と名付けられていたようだ。

 

あんこ旅の途中、10個入り(税込み 980円)を買い求め、自宅に持ち帰って、冷たい麦茶で賞味する。

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久しぶりの甘い再会。

 

わくわくしながらツマヨウジで突っつき、つるんと現れた黒い宝石のような玉羊羹を口に運ぶ。

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ほどよい甘さと雑味のない、どこか懐かしさのある煉り羊羹。

 

それが口の中いっぱいに広がる。

 

北海道産小豆と砂糖、それに寒天しか使っていない。塩も使っていない

 

羊羹の作り方が江戸時代のまま、というのに驚かされる。

 

楢(なら)の木を焚き、大きな木べらを使って、銅鍋で基本のあんこを作り続けている。

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恐るべき手間ひまのかけ方。

 

日本中探しても、いまだに楢の木を焚いてあんこ作りを続けているのは、私の知る限りここしかないと思う(あったらごめんなさい)。

 

頑固一徹170年以上続くと、頭が下がる。

 

素朴な洗練、という言葉を使いたくなる。

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一個の玉の中に歴代店主の汗と努力が詰まっている。

 

なので、食べ終えると、つい手を合わせたくなる。

 

所在地 福島・二本松市本町1-88

最寄駅 JR東北本線二本松駅下車歩約5分

 

 

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