あんこ餅とあんころ餅。
この違いがよくわからない。ほとんど同じものだと思うが、語感的には「あんころ」に惹かれる。コロコロ転がるイメージで、どこかユーモラス、日本昔話に出てくるよう。
一説では「あんころ」は餡衣餅(あんころももち)から転じた、つまり餅をあんこで衣のように包んだ餅、というわけだが、そうなると、伊勢の赤福やおはぎまでも広い意味であんころ餅一家に入るかもしれない。
「あんころ餅」を商品名にしているのは、石川・白山市にある「圓八(えんぱち)」が知られるが、江戸時代から続く老舗で、3年ほど前、本店を取材したら、竹皮に包まれた小粒のあんころ餅だった。
素朴なこしあんに包まれた柔らかな粒餅が9個ほど。竹皮の香りがうっすらと滲み込んでいて、江戸時代にタイムスリップした気分になった。甘さを抑えたクセの強い味わいだった。
さて、本題。
あんこ旅の途中で、久しぶりに小田原宿に立ち寄った。東海道五十三次の歴史はダテではない。かまぼこやういろうも魅力的だが、この城下町にはいい和菓子屋も多い。
豆大福で知られる「小田原伊勢屋」もその一つ。
ここで出会ったのが「粒あんころ餅」だった。あんこ餅ではなく、粒あんころ餅(1パック税込み378円)。
胸がピコピコときめいた。
だが、私のイメージするあんころ餅ではなく、とろりとした粒あんがちぎり餅(4~5個ほど)の上に乗っかっていた。
これはこれでそそられる。
豆大福(同183円)や珍しいフルーツ羊羹と一緒にゲットし、せかせかと近くにある歴史的な建造物「小田原宿なりわい交流館」の一角で食べることにした。
「添加物は使ってないので、お早めに、今日中にお召し上がりください」(女性スタッフ)
プラスチックの容器が圓八本店に比べると、情緒がないが、実用的ではある。
直球勝負がくすぐられる。
上から見ると、あんこの海!(絶景かな)
粒あんはテカリがすごく、かなり甘い。この濃厚は水飴も加えているのかもしれない。
餅は杵でしっかり搗いた餅で、柔らかく、きめが細かい。
こってりした粒あんがよく絡む。塩気は感じない。
口の中があっという間にあんこ極楽になる。たまらない。
個人的にはあんころ餅というより、これはあんこ餅だと思う。
1パックぺろりと平らげると、さすがに抹茶が欲しくなった。
小田原「伊勢屋」は創業が昭和10年(1935年)。現在3代目。「昔ながらの手作り」が売りで、定番の豆大福は創業時と同じ製法を続けている。
一息ついてから、人気の豆大福にも手を伸ばす。
餅の柔らかさと赤えんどう豆の存在感がとてもいい。
中のあんこはつぶしあんで、こちらは甘さが控えめ。
素朴な小豆の風味が口いっぱいに広がる。
店主の手の匂いのする、これは上質な豆大福だと思う。
食べ終えてから、再訪問。餡作りについて尋ねると、毎日銅釜で炊き、北海道産小豆を使用、上白糖で練り上げているそう。
フルーツ羊羹もこの店の売りの一つだが、今回はそこまで手が伸びなかった。残念。
「小田原伊勢屋本店」
所在地 神奈川・小田原市本町3-6-22
最寄り駅 JR小田原駅から歩約12分