週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

ウマ🤩スモーク羊羹×スコッチ=ゾーン?

 

宇都宮の老舗和菓子店「高林堂」(こうりんどう)で、クールな和菓子に出会った。

 

ジャンル的には創作ようかんになると思うが、黒いシャレた箱に「燻×羹(くんばいかん)」と凝ったネーミング。そこだけ異質の世界が黒くきらめいているようで、つい引き込まれてしまった。

 

これは何だろう?

「和菓子では非常に稀な『燻(いぶ)す』という製法を・・・」うんぬんと説明書きがしたためてあった。

 

つまりスモークした創作ようかん、ということ? まさか?

1本1156円(税込み)。

 

好奇心がむくむく。

 

和菓子の中で「YOKAN」(横文字で書きたくなる)は新しい可能性とともに、さまざまなチャレンジがなされていることは知っていたが、「燻(いぶ)す」というのはちょっと想定外だった。

 

高林堂は明治18年(1885年)創業、現在3代目。

この3代目が進取の気性に富んだ和菓子職人で、経営難に陥った店を立て直し、栃木の和菓子界をリードしていることもわかった。

 

東京で5年間修業後、実家に戻り、かりんとう饅頭「宮のかりまん」などのヒット商品を生み出し、上生菓子から「あげあんパン」まで、素材にこだわった新しい和菓子づくりにチャレンジしていることもわかった。

 

たまたま店にいらした気さくな2代目女将さんにあれこれ伺う。

 

「燻×羹(くんばいかん)」は3年ほど前に3代目が作り上げたものとか。

 

燻し(スモーク)にはウイスキー樽に使うオークのチップを使用しているようだ。

 

これは家に帰ってから、スコッチとのマリアージュを楽しむっきゃない。

 

以前このブログでもご紹介した「とらや小形羊羹×マッカラン(作家・開高健のユニークな楽しみ方)を超えるか。はたまた討ち死にするか。

 

syukan-anko.hatenablog.jp

 

★今回ゲットしたキラ星

 「燻×羹(くんばいかん)」1本

  税込み1156円

  あげあんパン1個 同270円

  宮のかりまん   同140円

 

【センターは?】

黒糖羊羹とゆず錦玉のスモーク加減に驚く

 

センターには超レアな「燻×羹(くんばいかん)」を選んだ。

 

見た目:黒い厚紙のパッケージを開けると、琥珀の錦玉(上半分)と黒糖羊羹(下半分)が現れた。1本約230グラム。

●あんポイント 「錦玉(きんぎょく)」とは寒天と砂糖を煮詰めて羊羹状に固めたもの。琥珀色(こはくいろ)から様々な色どりまで、和菓子職人の腕の見せ所の一つでもある。

さらに開けていくと、燻(いぶし)の独特の香りがわっと広がった。

スモークサーモンやいぶりがっこと同じ、食欲中枢を刺激する、ある種官能的な匂い。

 

錦玉には柚子(ゆず)が点々と閉じ込められていて、琥珀の化石のように見える。

 

下部の黒糖羊羹からは蜜が滲み出ていて、北海道産小豆と波照間産黒糖の幸せな融合が見て取れた。

これは大人のための創作羊羹・・・あんこころがときめいた。

 

味わい:目で楽しんでから口に運ぶ。スモーク独特の風味とともに、濃厚な黒糖と練り羊羹の柔らかな、凝縮した歯ざわり。広がり。

これはちょっと驚き。

 

そこに錦玉に練り込まれた柚子の香りがバイオリンのように重なる(表現がちょっと陳腐かな?)。柚子は栃木・茂木産を使用、地場を大事にしていることがわかる。

 

くちどけの良さ。

ベースの黒糖羊羹の美味さが舌に残る。

 

用意したスコッチマッカランエスト)をちびり。

合う。数秒間、目を閉じたくなった。

 

マッカランの吹き上がるような風味に負けていない。

以前このブログで試した「とらや小形羊羹」よりもむしろ私の好み。

 

ゾーンに突入した感覚。

 

私にとっては、新たなあんこの世界の発見と言いたくなる(あくまでも個人的な感想です)。ウマ×ウマ=ゾーンって感じ。

 

【サイドは?】

・あげあんパン

・宮のかりまん

 

陳列棚に「あげあんパン」が目立つように置かれていて、店主の「初心忘れず」の心意気を感じた。

コッペパンにあんこを挟み、油で揚げている。

 

あんドーナツの一種だが、パン生地の美味さと自家製あんこの美味さが融合していて、実にいい味わい。

つぶあんこしあん2種類。賞味期限は「本日中」。添加物は使用していず、コッペの小麦粉も地場の「麦のかほり」とスキがない。

 

あんこ(北海道産小豆)炊きの砂糖は白ザラメ、それに塩少々。

 

私がゲットしたのはつぶあんだったが、いい小豆の風味がガブリ寄って来た。

 

「宮のかりまん」はこの店のヒット作で、時間が経過していたせいか、思ったほど黒糖皮がカリカリしていなかった。

中はこしあん

 

バランスのいいかりんとう饅頭で、ちょっとしたおやつにはいいかもしれない。

 

「高林堂(こうりんどう)」

所在地 栃木・宇都宮市馬場通り3-4-18

最寄り駅 JR宇都宮駅から歩約10分

 

                                             



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧中山道の宝石😂酒まん&塩もなか

 

ローカルには「宝石」が埋まっている。

 

あんこ旅のボーナスみたいなもの、と言えなくもない。

 

今回は旧中山道松井田宿(群馬・安中市)で見つけた、スグレモノを取り上げたい。

明治7年(1874年)創業の「たわらや」

 

信越松井田駅から歩いて約10~15分ほど。

ポツンと一軒家、ではないが、往年のにぎわいはない。

 

いい店構え。白地の日除けのれん。

私のテーマの一つでもある「幻の酒まんじゅうを求めて」の延長線上。昔ながらの酒まんじゅう造りを続ける和菓子屋さんの一つとして、以前から狙い定めていた店でもある。

 

現在3代目(4代目も修業中)。

 

実際に足を一歩踏み入れたら、「温故知新」の額が掲げてあり、進取の気性に富んだ店と直感した。当たり、の予感。

饅頭類から上生菓子まで、店主のこだわりが伝わって来た。

 

人が少ないのに、常連客がほとんど絶え間なくやって来る。

 

・今回ゲットしたキラ星たち

 酒まん 税込み130円×3個

 塩もなか 同162円×3個

 栗むし羊羹 同1863円(1棹)

 

【センターは?】

3代目の創作最中「塩もなか」の驚き

 

買い求めた3種類のキラ星はいずれもレベルが高く、3代目の和菓子職人としてのプロフェッショナルぶりが詰まったもの。

 

なので、どれをセンターに持ってきても十分に満足できると思う。

 

迷った末に、選んだのがこれ。

他にはない、まさに温故知新を凝縮したような「塩もなか」

 

皮だねと中のあんこを分けているが、これはそう珍しいことではない。

すごいなと思ったのは、中のあんこ。

店では「饅頭」と呼んでいるようだが、これは私の体験では生菓子の「蒸しきんつば」に近い。丸い蒸しきんつば

 

ごらんの通り、自家製の小倉餡(こしあんつぶあんを半透明の膜で包み込んでいる。

見ているだけで引き込まれそうな小宇宙。

 

これをパリパリの皮だねで挟んで食べる。

「塩もなか」のネーミングがど真ん中に来た。

 

何という絶妙な塩気と小倉餡!

もなかはかなり食べているが、これは「アイデア、技術、味わい」がトリプルAクラスではないかと思う。

 

塩味のあんこの美味さが「突き抜けている」印象。

いい小豆の風味が舌の上で渦を巻くのがわかった(ホントです)。

 

あんこの小豆は北海道産、砂糖はグラニュー糖、塩はペルシャ岩塩を仕上げの段階で振りかけているようだ。素材のこだわり方。

これだけ塩気の効いた小倉餡と出会えることはそう多くはないと思う。

 

東京・麹町「一元屋」の塩きんつば、信州・下諏訪「新鶴本店」の塩羊羹が頭に浮かんだ。私にとってはそのくらい、意外性のある出会い。

 

半透明の蒸しきんつば状のあんこの絶妙な広がり。

あんこ旅を続けていて、よかった、と思える瞬間でもある。

 

【セカンドは酒まん】

元種(米+こうじ)から手造りしているのが驚きだが、手間暇を惜しまないのがいい酒まんじゅうの条件でもある。

 

3代目によると、もともと2代目が造っていたもの。たまたまそのレシピが出てきて、それをもとに3代目がさらに工夫して今の形にしたものとか。

 

ごらんの通り、皮の艶やかさがまず違う。

造りたてを1個だけ店内で試食してみた。

 

元種のいい香りがふわりと来た。

 

小麦粉に餅粉も加えているようで、絶妙なもっちり感がとてもいい。

 

皮だけでも十分にうまい。

寝かしのよく効いた、人肌の味わい。

 

中のこしあん甘さを抑えていて、いい小豆の風味がすっと入ってくる。

塩気はない。きれいな余韻。

 

これほどの酒饅頭が松井田に眠っていることに正直驚く。

 

賞味期限は2日間なので、翌日、自宅に戻ってからさらに賞味してみた。

 

香りといい味わいといい、ほとんど変化はなかった。私にとってはスーパーな発見。

 

【おまけ】

季節の和菓子:栗むし羊羹

 

たまたま「おまけ」にしてしまったが、これも素晴らしい和栗の栗むし羊羹で、早やシーズン突入。

栗がぼこぼこ、見事な小倉色の蒸し羊羹部分には蜜煮した大粒小豆が夜の梅のようにポツポツと咲いている。

こしあんの存在感。栗とのマッチングがどこかやさしい。絶妙なもちもち感。

 

蒸かすのに1時間以上かけているとか。それが柔らかな歯触りとともに、口の中で広がる感触はレベルを超えていると思う。

 

塩気がほんのり。

賞味期限は約1週間。冷蔵庫で冷やしてからいただくと、その瞬間、残暑もコロナも消える(個人的な感覚です)。

 

ローカルのいい出会い。だから、あんこ旅はやめられない。

 

「たわらや」

所在地 群馬・安中市松井田町松井田282

最寄り駅 JR信越松井田駅から歩約12分

 

              



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日光vs成田山」甘味処が面白い

 

残暑がまだまだきつい。

 

なので、今回は甘味処の「冷たいあんこ」を取り上げたい。

あんこ旅の途中で日光と成田山で草鞋を脱いだ。あんこ山二つ。

 

ターゲットはオアシスのような甘味処(甘味カフェ)二軒。

 

あんこの冷戦か?

 

勝手にVS形式にしたが、あんこの世界に対決はないので、これは半分洒落と思っていただきたい(とまずはエクスキューズしといて)。

 

そこで見つけた逸品をときめきとともにレポートしたい。

 

【日光代表「鉢石カフェ(湯沢屋)」】

8代目が創作した「鉢石パフェ」の驚き

 

まずは写真をご覧いただきたい。

見た目は確かにパフェだが、中身の凝り方がスゴすぎ。

 

最上階は豆乳ソフトクリームで、そこに艶やかなつぶあんがドカと乗っている。抹茶もはらり。白い求肥餅も二つ。すべて自家製というこだわり。

北海道産小豆のつぶあんは濃厚で豆乳ソフトと絶妙にマリアージュしている、と思う。

 

その下、中階には不思議な食感の「抹茶浮島」(蒸し菓子)。

 

長いスプーンで食べ進むと、それが現れる。ざらっとした舌触りで、儚い食感とともに舌の上ですっと溶けていく。抹茶と白あんの余韻も感じる。

😎あんポイント:8代目は東京で和菓子職人として修業後、実家の湯沢屋に戻り、代々続く名物「酒饅頭」を守りながら、店をリノベーション、新たな和の世界に挑んでいる。父の7代目もそれをバックアップしていて、伝統と進化の融合を目指している、と思う。湯沢屋の創業は文化元年(1804年)。糀から作る酒饅頭はファンが多い(私もその一人)。

驚きはさらに潜んでいる。

 

こしあんがその下に脇役然として、隠れている。

 

質の高い、なめらかなこしあん

 

さらにその下に水ようかんが隠れていた。

酒饅頭とともに評価の高い水ようかん。

 

甘さを抑えた、小豆の風味が舌のツボを撫でていく。そんな感覚。

 

底にはサイコロ切りの寒天。

 

よく見ると、凝りに凝った、新しい発想の和パフェだと思う。

 

全部で8種類ほどの素材があるようだが、私の舌ではそのすべてを解明することはできなかった。また行かなくっちゃ。

 

舌代は1000円(税込み1100円)でした。

 

成田山代表「三芳家」】

丹波大納言「たきあずき」(冷製)を堪能

 

成田山の参道沿いをブラ歩きしたら、土産物屋さんの横に「甘味処 三芳家」の狭い路地が見えた。

私のあんこセンサーが「覗いてみろ」と反応した。

 

細い石畳を進むと、びっくり。

 

ここは京都・嵐山か、と錯覚するような、趣味的な庭園が広がり、奥に和モダンな建物が見えた。

ガラス張りの甘味処で、横にも細長い建物。

 

ここで見つけたのが「たきあずき」。高級な丹波大納言小豆を自家で炊き上げ、メニューにしたもの。

 

頼んだのは白玉入り(税込み950円)。

 

「温」と「冷」があり、暑かったので私は迷うことなく「冷」を選んだ。

😎あんポイント三芳家の創業は昭和初期。参道のお土産屋として商売を始め、平成10年(1998年)に奥の庭でお茶処を併設。リニューアルもしている。「たきあずき」は自家製だが、それ以外のあんこは基本的にあんこ屋さんから仕入れているようだ。

 

目の前に広がる庭園がとても落ち着く。

「たきあずき」という表現は珍しい。ひょっとしてオリジナルネーミング?

 

一般的には「煮あずき」

 

中心の陶器(有田?)とほうじ茶(こちらは熱い)、箸休めのバランスがいい。

 

白玉は五つ。そのもっちり感。

 

主役の丹波大納言の甘い海。

お月様のような蜜煮した杏(あんず)がいいアクセントになっている。

 

甘すぎない、小豆の風味が心地よい。

 

使用している砂糖はグラニュー糖で、すっきりした、やさしい味わいに仕上がっている。

よく見ると、金粉がひらり。結構凝ってる。

 

大納言小豆は皮が厚いので、その粒々した食感が特徴的だと思う。

 

噛むと、丹波の風味が広がる。

 

京都の甘味処で食べた「亀山」を思い出す。

 

食べ終える寸前、ほうじ茶のお替り(モダンな急須で)とあられがすっと置かれた。

 

【軍配は?】

あくまで個人的な採点だが、技術力とアイデアでは「鉢石カフェ」に軍配。建物は大谷石の蔵vs日本庭園。ゆったり感では「三芳家」かな。とはいえ、どちらもあんこワールドの中の新しい宝石だと思う。

 

・日光「鉢石(はちいし)カフェ」

 所在地 栃木・日光市下鉢石町946

 最寄り駅 東武日光駅から歩約15分

成田山三芳家(みよしや)」

 所在地 千葉・成田市仲町386-2

 最寄り駅 JR成田駅から歩約10分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こしあん&お餅の絶妙「権五郎力餅」

 

餅にあんこを乗せただけのシンプルな「あんつけ餅」を無性に食べたくなるときがある。

 

鎌倉・長谷名物「権五郎力餅」をようやく食べることができた。

その数時間前。一軒家のあまりに素朴な店構えに期待が膨らむ。

店は終戦直後に建てたバラック造りをほとんどそのまま維持しているそう。すごいこと。赤い郵便ポストが昭和のまま。

 

さらに驚くのは、創業が元禄時代(1688~1704年)という古さ。真実ならゆうに300年を超えることになる。

 

俗称「権五郎神社」(御霊神社)の参道で細々とあんつけ餅を作り続けている。

現在の店主は9代目。伊勢名物「赤福」(1707年創業)と同等かそれ以上の歴史的なあんつけ餅となるわけで、ビックリマークが三つくらい欲しくなる。

 

当時は砂糖が一般化されていなかったので、現在のように甘かったのかどうかは正直わからない(ひょっとして塩味だったかもしれない)。

 

添加物は一切使わず、昔のままの作り方を受け継いでいる、というのも驚き。

 

なので、賞味期限は「本日中」。餅がすぐに硬くなる。

 

店の敷居は低いが、食べるまでのハードルは低くはない(店内では食べれない=テクアウトのみ)。

 

それがこれ。

・ゲットしたキラ星

 権五郎力餅1箱(10個入り) 税込み750円

 求肥力餅 100円×5個 同500円

 

【本日のセンター】

朝ナマの搗き餅とこしあんが時空を超える

 

300年の歳月を感じさせる、セピア色の茶店の面影がたまらない。

 

「力餅」は2種類。搗き餅と求肥餅。

主役は搗(つ)き餅(臼で搗いた餅)だが、賞味期限が本日中。なので、もう一種類求肥餅バージョンもある(こちらも無添加だが、賞味期限は3日間)。

 

こちらもゲットして、食べ比べることにした。

 

何よりも私の狙いは「本日中」の「権五郎餅」

 

前日に予約を入れて、正午近くに店に入ったので、その他の用事を終えてから自宅に戻ったのは午後6時過ぎ。

試食タイム

渋い紙包みを解き、紙箱の蓋を取ると、ご本尊が淡い光とともに現れた(そんな感じ)。

 

思ったよりも小ぶりなあんつけ餅が5個ずつ2列=計10個。にっこりとほほ笑んだ(気がした)。

俵型で1個の大きさは55ミリ×25ミリほど。

 

表面を見事な、濃い小豆色のこしあんが覆いかぶさるように乗っかっていた。

 

見ようによっては本マグロの握りずしに見えなくもない(笑)。

 

きめの細やかさが見て取れる、しっとりと艶のあるこしあん

 

ボリュームも申し分がない。

下の餅にはよく見ると、うっすらと餅粉がかかっている。

 

もち米を蒸かして搗いたピュアな餅。

 

こしあんが舌にズドンと来た。店主の熟練の手を感じる。

 

抑えられた甘さと小豆(北海道産)のいい風味が鼻腔に抜けていく。

 

あんこ炊きの砂糖は上白糖で仕上げているようだ。

 

あんこの粒子を感じる、いいあんこだと思う。

餅は少し硬くなりかけていたが、伸びやかさがまだ残っている。

 

だが、しかし・・・これぞ朝ナマの王道の証明だと思う。

 

塩気はほとんど感じない。

 

あっという間に6個、胃袋のブラックホールに消えた。

 

編集部員のあん子さんには2個だけあげた(笑)。「おいしい」とひと言だけ。

 

※残りの2個は硬さを確かめるために翌朝に試食してみた。餅がすっかり硬くなっていた。「必ず本日中にお召し上がりくださいね」という店の言葉が納得できた。

 

【サイドはvs求肥力餅】

「賞味期限が3日間」の求肥力餅と食べ比べすることに。

こちらは一個一個ていねいに個装しているので、権五郎餅ほどのインパクトはない。

 

二つ並べてみると、求肥力餅(左)の方が小ぶりで、こしあんが明るめ。底まであんこが包んでいるので、わかりやすい。左と右の比較。

求肥餅には砂糖を加えているので、より柔らかくて少し甘い。

 

こしあんも甘め

個人的な好みはもちろん搗き餅の方だが、比較しないで味わったら、こちらにも私の「あんこころ」がときめいたと思う。

 

あんこの幸せな時間。

 

たかがあんつけ餅、されどあんつけ餅。「されど」のところが、ありそうでなかなか存在しない、老舗の大事な部分だと思う。店内は清潔だった。

 

「鎌倉 力餅家」

所在地 鎌倉市坂ノ下18-18

最寄り駅 江ノ電長谷駅から歩3~4分

 

             

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

究極の水ようかん⁉「三ツ山vs吉田屋」

 

水ようかんのおいしい季節なので、久しぶりに水ようかんのメッカ東照大権現が眠る日光へ。

 

約2年前に「綿半」と「鬼平の食べ比べを決行したが、コロナ禍はまだ治まっていない。

 

syukan-anko.hatenablog.jp

 

今回は2年ぶり第2弾と意気込んだが、果たしてどうなるか、家康大権現でもご存じあるめえ(などと軽口をたたいてみる)。

胃袋と予算の関係で今回も2軒(日光でも有数の名店)をピックアップした。

 

三ツ山羊羹本舗vs吉田屋、と対決形式も悪くはないが、むしろ食べ比べてみてどっちが私の好みに近いか、こっそり判定しようと思った。

冷蔵庫で約1時間ほど冷やしてから試食することに。たまらない時間。下の写真右が三ツ山羊羹本舗、左が吉田屋のもの。

今回この2店を選んだことに大きな理由はない。位置的に店舗がほぼ向かい合っている、というのが理由の一つだが、この2店の食感がズバリ私の好みということもある。いずれがアヤメかカキツバタって感覚が近い。

 

・パッケージ

 三ツ山羊羹本舗:明るい藤色のしゃれた包みとデザイン。折詰ふうが庶民的。

 吉田屋:深緑色の重厚な包み。紙箱は厚手で、いかにも老舗を感じさせる。

・価格(5本入り)

 三ツ山羊羹本舗:800円(税込み)

 吉田屋:820円(同)

・水ようかん本体

 三ツ山羊羹本舗:箱を開けると、透明なビニールで覆われた滴るような水ようかんが現れる。色がくっきりとした濃い小豆色で、一目でレベルの高さを感じさせられる。

 吉田屋:両方並べないとその微妙な違いはわかりにくい。色はむしろ藤色に近く、微妙に大きい(実際、重さを量ったらこちらの方がほんの少し重かった)。

・創業年

 三ツ山羊羹本舗:明治後期。現在3代目だが、4代目も修業中。

 吉田屋:明治初期。現在5代目。

 

【今回のセンター】

三ツ山の水羊羹のこしあん力vs吉田屋の寒天力

本体を二つ並べると、ほんの少しの違いがわかるだろうか?アップにしてみた。 右が三ツ山、左が吉田屋。三ツ山の方が微妙に小豆色が明るく濃厚に出ている。

容姿はどちらも同じくらい好み(としか言いようがない)。

 

だが、食べてみると、その違い(どちらが上とか下とかではない)が少し見えてくる。

 

三ツ山:みずみずしさの奥からこしあん(小豆)のいい風味がゆっくりと立ちあがってくる。雑味がない。3代目のお話。「ようかんは何といっても小豆です。国産のその時々のいいものを使ってます。塩は使ってないんですよ。これは私の方針です」とか。小豆の美味さを引き立てることに注力している。砂糖は上白糖。寒天は長野産。

吉田屋すっきり系のみずみずしさで、三ツ山に比べると、小豆の存在は気持ち薄め。舌の上ですっと溶ける感覚はどちらも同じだが、余韻が違う。こしあん力と寒天力の違いとも言えるかな。小豆は北海道産、砂糖は上白糖、塩を少し加えている。寒天は長野産。

・好みはどっち?

水ようかんとしてはコスパも含めてどちらも素晴らしく、最初のアタックはどちらもメチャみずみずしい。日光の湧水を感じさせる。こしあんと寒天のバランスが絶妙で、甘さが実にほどよい。

その上で。これはあくまでも個人的な好みの問題だが、私的には三ツ山の秘めたこしあんにあんこセンサーがピピと動いた。雑味のない、いい小豆が口の中で融け合い、ささやき合い、じわりと広がってくる感じ。

「小豆の美味さをいかに引き出すかが何よりも大事」との3代目の言葉が印象に残った。今も現役の羊羹職人でもいらっしゃる(息子さんが4代目)。

 

・結論は出るか?

コクのある水ようかん好きなら三ツ山。スッキリ系がお好きなら吉田屋。無理やり分類すると、こんな感じになる。私は気持ち三ツ山推しだが、これはあくまでも好みの問題でもある。

 

蛇足:日光の水羊羹のコスパは改めてすごいと思う。店によって少しずつ味わいが違うが、5本入りで800円前後。レベルの高さを考えると、これだけ無添加の水ようかんを作っている店が門前のメーンストリートに集まっているのは多分、全国的にも珍しい。7~8軒ほど。私の大好きな「羊羹の町」佐賀・小城市もこと水ようかんに関しては日光に届かないのでは? リーズナブルで美味い、は無敵だと思う。

 

「三ツ山羊羹本舗」

所在地 栃木・日光市鉢石町914

「吉田屋」

所在地 栃木・日光市鉢石町903

※どちらも東武日光駅(JR日光駅)から歩約20分

 

 

 

 

 

 

12種類のシベリア🤩あんこ変化に驚く

 

和菓子の中でも「シベリア」は面白い位置にいる。

 

羊羹(水ようかんやあんこもある)をカステラ生地でサンドしていて形がほぼ三角形。どこかノスタルジックな、和菓子というより和洋菓子と分類したくなる不思議な存在。

さいたま市岩槻区に「面白い店がある」という情報を知人から得て、足を延ばした。

 

江戸時代は日光御成街道の宿場町として栄え、人形の町としても有名なエリアにその面白い店が暖簾を下げていた。

串だんごやかのこなど生菓子も作っているが、店内のスペースの半分近くをシベリアが占めていた。

 

全部で12種類ほど、季節限定も入れると、14~15種類になる。

色とりどりのあんこシベリアのオールスタ、って感じ。

 

こんな店があったことに正直びっくり。知らなかった(汗)。

 

昭和30年(1955年)創業の一軒家和菓子店「関根製菓」

現在2代目。創業当時からシベリアを作り続けていることも分かった。

 

全部は食べきれないので、後ろ髪を引かれる思いで、5種類だけゲットした。

 

シベリア版ゴレンジャー、と勝手に命名しました。

購入したキラ星たち(写真上=右から)

・昔なつかしシベリア(税込み 180円)

・小倉シベリア(同)

・ミルクコーヒーシベリア(同) 

・レモンシベリア(同=季節限定)

・ラムネシベリア(同=季節限定)

 

【本日のセンター】

ラムネシベリアvs昔なつかしシベリア

 

水色(空色?)のラムネ餡(ようかん)は意外な美味さだった。

 

こんなシベリア、初めて見た。

たまたまいらした2代目女将さんは気さくなお方で、「ラムネのシベリアって珍しいとよく言われます。夏場は特に人気があるんですよ」。

 

ベースは白あん(北海道産いんげん豆)だが、きれいな水色(着色している)がどこかポエムで、ひょっとして受け狙いかな、という気がしないでもない。

 

なので、期待半分で自宅に戻ってから賞味してみた。

大きさは70ミリ×45ミリ(短い部分は20ミリほど)。

 

厚さは約40ミリ。

 

カステラ部分が予想を超えて密度とふわふわ感が絶妙だった。新鮮な卵黄の香りがとてもいい。

「シベリアって意外に作るのが大変なんですよ。仕上げるまで2日がかりなんですよ」(女将さん)

 

すべて手作業で、羊羹部分とカステラ生地部分をうまく密着させるのに、熟練の技を必要とするようだ。

ラムネようかんは甘さがほどよく抑えられ、いんげん豆と寒天の配合が絶妙。

 

かすかな酸味と刺激はラムネの風味そのもの。

 

予想を超える融合で、前言撤回、イケました(失礼しました)。

続いて、最も定番と思われる「昔なつかしシベリア」へ手が伸びる。

 

最初のひと口で、これは絶品、と脱帽したくなった。一番私の好みに合っていた。

大きさはほとんど同じだが、重さは約70グラム(ラムネは約60グラム)。

あんこの羊羹(厚みが約15ミリ)が素朴で、しかもこしあんの存在感が舌に迫ってくる。

北海道産小豆のいい風味が、絶妙な甘さで、ふわりと広がる感じ。

 

カステラ生地のきめ細やかなしっとり感との相性が素晴らしい。

添加物などは使っていない。

 

口の中に1∔1=3の世界。

 

小倉シベリアとよく似ているが、よりこしあんの優しさが前面に出てくる。

 

「昔なつかし」は「昔ってすごいね」と語りかけたくなった。

 

個人的にはイチオシ。

 

【セカンドは横並び】

 

・小倉シベリア

これは煉り羊羹。羊羹部分が厚め(全体の約3分の1)。

「昔なつかし」よりも濃い煉り羊羹で、気持ち固め。「昔なつかし」よりもそっけない印象で、そこが魅力かもしれない。

 

・レモンシベリア

これも季節限定で、羊羹部分は白いんげんをベースにレモンを加えている。

レモンの皮の粒々感を残していて、食べた瞬間、新鮮なレモンの風味が立ってくる。

 

さわやかな味わいで、余韻もいい。

 

・ミルクコーヒーシベリア

羊羹部分は白あんに練りミルクを加えたもの。いわばミルク餡。

カステラ部分にはコーヒーが入っていて、コーヒー好きにはおすすめしたくなる。

 

これだけバラエティーに富んだシベリアを作っている和菓子屋さんは珍しい。

 

「もともとはパン屋だったんですよ。昔はパン屋がシベリアを作っていたらしいです」(女将さん)

 

シベリアの歴史は古く、明治時代末期から大正時代初期に誕生したというのが定説。

 

日本独自のもので、名前の由来は3層の見た目が雪原を走るシベリア鉄道に似ているところから来た説や日露戦争時に考案された説など諸説ある。

宮崎駿監督「風立ちぬの中にもこのシベリアが、当時のハイカラ(おしゃれ)なお菓子として出演(?)している。

 

特に昭和の初めころは大人気のスイーツだったようだ。

 

シベリア、この不思議な、時空を超えたノスタルジックな和洋菓子。

 

私にとっては岩槻でのラクルな出会い、そう言いたくなった。

 

「関根製菓」

所在地 さいたま市岩槻区西町1-3-20

最寄り駅 東武野田線岩槻駅西口から歩3~4分

 

            

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金沢であんラッキー😁レアな焼き立て

 

今日はお盆帰省ラッシュのピーク。なので、蔵出し特別バージョン。

 

あんこ旅で金沢に舞い降りた(?)ときに、ホテルのフロント女子が教えてくれた、ユニークなあんこの焼き菓子をご紹介したい。

 

これぞあんラッキーな、出会い系あんこ菓子。正確には餡ラッキー(笑)。

 

その名も「こもかぶり」

蜜煮した栗1個をつぶあんで包み、鉄板の上で、溶いた小麦粉(蜂蜜入り)の上に乗せてから、くるくると器用に巻いたものだが、海苔をあしらった上に、ひも状の巻き上げ方が職人芸でもある。

 

それがこれ。

加賀藩武家屋敷の雪対策「こも(菰)をイメージした「板屋本店」のオリジナル和菓子だが、フロント女子が「本店でしか焼き立ては買えないんですよ。実演販売していて、これは特におすすめです」。

 

好奇心がむくむく。翌日、足を延ばしてみた。

和モダンな店構え。店内は狭いが、確かに奥で若い店主(4代目だった)が熟練の手つきで器用に焼いていた。感動もの。

テレビで放送されたとかで、「お客さんが急増したんですよ」と若女将さん(奥さん)。

 

・ゲットしたキラ星

 「焼き立て こもかぶり」 218円(税込み)

 「能登大納言どら焼き」  218円(同)

 

【センターは焼き立てだが】

焼き立てを3個と能登大納言どら焼き1個をホテルに持ち帰って、すぐに食べてみた。

 

いい焼き色とある種アートな形で、ごま油(焼くときに敷いていた)のほのかな香りがあんこ中枢を刺激する。

真ん中から切ると、蜜煮した栗が丸ごと一個、艶やかなつぶあんの層、そして小麦ベースの薄いきれいな皮・・・しばし見入る。

見ようによっては、どら焼きのアートな進化系、と言えなくもない。

 

あるいは六方焼きの進化系?

 

つぶあんはもちろん自家製で、北海道産小豆(砂糖は上白糖)を使用、粒々感が柔らかく残るいい風味のあんこだと思う。

 

甘さを抑えていて、塩気もほんのり。

 

海苔の香りとかすかに醤油の気配も混じる。何というマリアージュか。

 

4代目は「焼き立てが一番おいしいと思います」と話すが、賞味期限は3日間なので、少し我慢して、翌日、一日経ったものを賞味してみた。

 

焼き立てよりも味がしっとりと馴染んでいて、個人的にはこちらの方が好みに近い。

 

つぶあんときれいな栗と皮がさらに愛し合っている?

どら焼き好きの中にも「焼き立てより翌日の方が味が馴染んでおいしい」という人も意外に多い。もちろん、焼き立ての味わいはまた格別。

店には日持ちする「こもかぶり」(見た目は同じ=1か月持つ)が隣に並んでいたが、店主のワザを見ながら、焼き立てをその後に味わう・・・これこそぜいたくの極みだと思う。

「板屋」の創業は金沢の中では思ったほど古くなく、戦後昭和21年(1946年)で、この「こもかぶり」は若女将の祖父が考案したもののようだ。

 

終戦後すぐに立ち上がる。進取の気性に富んだ、かなりの腕の和菓子職人だったことがわかる。

 

【セカンドは能登大納言どら焼き】

能登大納言あずきは丹波大納言あずきの次に位置するブランドあずき。

京都に次ぐ「あん都」金沢に来たら、これは外せない。

 

ごらんの通り、焼き色は濃い。板屋の家紋(?)の焼き印。

 

上野うさぎやのどら焼きよりも一回り小ぶりだが、厚みは十分にある。

 

皮のふっくら感、かすかに醤油の風味も悪くない。

中のあんこはつぶあんだが、蜜煮した能登大納言が「夜の梅」のようにぽつりぽつりと咲いている。

 

やや甘めのあんこで、能登大納言のふくよかな風味も感じる。十分に美味しいが、感動とまでは行かなかった(個人的な感想です)。

 

それでも珍しい「焼き立て こもかぶり」を目で楽しみ、2日間にわたって味わえたこと、これはレアな体験だった。 

 

金沢あんこ文化の底力、やっぱりすごいな。

 

「風土菓 板屋本店」

所在地 石川・金沢市尾山町10-18

最寄り駅 JR金沢駅から歩くと約20分