あ~やだ、オミクロンの大寒入り。今年は寅年ということをすっかり忘れていた。
なので、「ガオー」と虎のひと吠え、気持ちだけでも元気を出したい。
ちょっと出費がかさんでしまったが、寅年にちなんで、今回はスペシャルバージョンで行こうと思う。
虎屋の小形羊羹(5種セット)を買い、あのシングルモルトウイスキーのロールスロイスとも言われる、スコッチ「マッカラン」をゲットし、寅年のスタートにこの究極の(?)マッチングを試してみたくなった。
タネを明かすと、好きな作家のひとり、開高健(1930~1989)の不思議な楽しみ方を思い出したからだ。
師匠はこの組み合わせに独特のこだわりを持っていて、それはウイスキーは「マッカラン」、小形羊羹は「夜の梅」でなければならない、というもの。
1年ちょい前の晩秋、とらや赤坂店地下で開催された「YOKAN展」の片隅でもそのことが紹介されていて、私もいつか試してみたいなあ、と思っていた。
フツーに考えたら、そんなのあり?と突っ込みたくなる。
和菓子とお酒のマッチングは「週刊あんこ」でもいくつか試しているが、組み合わせによっては舌の上に小さな天国が出現する(例えば浅草・徳太楼のきんつば×純米吟醸酒など=個人的な好みです)。
さて、今回はどうか?
相手はスコッチの頂上の一つ。喰うか喰われるか、それとも溶け合うか?
・今回の購入
①マッカランクエスト(700ミリリットル) 約6000円(税別)
②とらや小形羊羹 5種 1500円(税別)
夜の梅(小倉羊羹)
新緑(抹茶入り羊羹)
はちみつ(蜂蜜入り羊羹)
紅茶(紅茶入り羊羹)
おもかげ(黒砂糖入り羊羹)
【今週のセンター】
「マッカラン×夜の梅」予想外の寝技勝負だった
開高健が「必ずこの組み合わせでなければならない」と言ったことをいったん忘れて、賞味してみた。
マッカランのキャップが驚くほど固くて、格闘約10分、ペンチを使ってようやく開ける。恐るべきガードの固さ。そう易々と辿り着かせないぜ、とテストされている気分になった。
私はワインや日本酒は大好きだが、正直に言うと、ウイスキーも大好きだ(笑)。
栓を抜いたとたん、百本のバラがいきなりこちらに向かって飛び出してきたような錯覚に陥った(オーバーではありませんぞ)。
しばし強烈な香りに圧倒されながら、まずはひと口。吹き上げるような刺激。とろりとしたコクの中に甘みさえ感じる。
脳が陶酔の予感に襲われる。これはちょっとすごい。アルコール度数は40度。
マッカランは古いシェリー樽を使って熟成しているせいか、ベースに残るシェリー酒の遠い薫りまで感じるが、素人なのでうまく表現できない。
氷をひとかけら入れてオンザロックにしてから、主役の「夜の梅」をかじってみた。
やや固めの「夜の梅」がやさしく感じる。
穏やかな小豆の甘さがマッカランの強烈な広がりに包み込まれていく。
なるほど開高健がこだわったのがほんの少しわかった気がした(ホンマかいな)。
マッカランを邪魔しないどころか、受け入れて、おだやかに包み込まれてる。
日本の和がスコットランドの大きな渦に押し包まれている・・・。
相撲で言うと、照ノ富士と遠藤のがっぷり四つのよう(スベったかな?)。
「夜の梅」の梅の部分(小豆)が以前よりも少なく感じた(ちょっと残念?)。
それでも確かに1+1=3以上の蕩け方だった。
お金はかかったが、これは意外な発見だった。「オーパ!」な組み合わせだという他ないかな。
【他の4種類とのマッチングは?】
以下気に入った順に寸評してみた。
・はちみつ 白小豆、手亡、福白金時の白羊羹に蜂蜜を混ぜているので、ほのかな蜂蜜の風味が強烈なマッカランとうまい具合に関係を結んでいるよう。個人的な印象では「夜の梅」に次ぐ相性の良さ。
・おもかげ 黒砂糖入り羊羹なので、黒糖の風味がマッカランに小さく抵抗しているよう。そこが好みの別れるところかな。
・紅茶 紅茶は英語でブラックティー。なので、色はほとんど黒。悪くはないが、個人的には紅茶のかすかな風味がマッカランの陶酔を少し邪魔しているように感じた(あくまで個人的な感想です)。
・新緑 抹茶入り羊羹なので、抹茶の風味が単品で味わうよりもマッカランの遠心力と少しズレがある気がする。これも好みの問題だが、私はイマイチ乗れなかった。1+1=2のままそこで戸惑っている感じかな。
とはいえ、マッカランと虎屋の異種格闘技戦は十二分に楽しめた。
「とらや赤坂店」
所在地 東京・港区赤坂4-9-22