「旅する和菓子」編で今回取り上げたいのは金沢の老舗「清香室町」(せいかむろまち)のチャレンジングな、かわいいネオ和菓子たちです。
先月、新宿高島屋で開催されたイベントで「かわいらしすぎて(小さい)」ついスルーしちゃいました。失態。目利き落第、です。
最初の印象。パッケージが小鳥の文鳥(ぶんちょう)をデザイン化したもので、従来の和菓子の発想からははみ出て(飛び立って?)いました。
会場を2周ほどしてから、見落としはないか、あんこの名探偵ポワロにでもなった気分(勝手に、です)で、じっくり見学していると、その小鳥たちと目が合ってしまいました。
かわいらしい鳴き声で「おい、スルーはないだろ?」と言われた気がしました(冷や汗)。
「金沢文鳥」(かなざわぶんちょう)という菓銘の、ネオ和菓子(創作和菓子)でした。「とまり木によりそい文鳥」のクールなネーミング。
それも2個ずつ3種類。加賀紅茶ようかん、加賀棒茶ようかん、白い珈琲ようかんと表記してありました。
うーん、どんな味わいなんだろう?
近くにいたイケメンの4代目に取材しながら、なんとかゲットし、自宅の編集室に戻ってから、翌日賞味することにした。
★ゲットしたキラ星
とまり木によりそい文鳥(3種6個入り)1890円
銘菓くるみ(6個入り)594円
※価格はすべて税込みです。
【センターは?】
3種類の個性、伝統と進化のユニークな合体
あん子「デザインがかわいいですねえ。赤いくちばしがキュート。グッドデザイン賞をもらったのもなるほど、と思うわ」
編集長「斬新なのはパッケージだけではなくて、中身も、だよ。ベースは煉り羊羹(白いんげん豆)だけど、それぞれ加賀紅茶+ドライフルーツ(いちじく、クランベリー、ブルーベリー、レーズン)、加賀棒茶+ナッツ類(ピスタチオ、アーモンドなど)、コーヒー+能登大納言小豆。アイデアも技術もすごいね」
あん子「さすが金沢ですね。伝統と新しさが近未来を感じさせる。個人的には21世紀美術館に展示したくなります(笑)」
●試食タイム
金沢紅茶味:地元の食材を生かすというポリシーが感じられる。石川の茶葉でつくられた紅茶をブレンド。なので、見た目は黒っぽいがベースは白羊羹(北海道産白いんげん×白ザラ糖)。水も天然の井戸水を使用しているようだ。
包丁で切ると、ビックリの断面。イチジクや真っ赤なクランベリーなどが夜空の打ち上げ花火状態。
あん子「きれいですね。色彩が鮮やか」
編集長「ドライフルーツの果実味がどっと押し寄せてくるね。このネオ感覚が新しい。羊羹部分も本格的でさすが金沢、というマリアージュになってる」
あん子「重さは50グラム前後で、小さくてかわいいけど、コーヒー好きの私としては有機コーヒーに合わせたいですね」
編集長「これは白ワインにも合うと思うな。それとウイスキーも試してみたい。従来の和菓子の枠を超えて、ちょいと世界に飛び立たせたくなるね。金沢の文鳥、大空へ」
金沢棒茶味:広い意味ではほうじ茶だけど、この金沢棒茶は風味がより濃く、口に入れた瞬間、ほとんど爆発的にほうじ茶の波が広がる感覚。それにナッツ類の合わせ技。
あん子「ピスタチオが気に入りました。棒茶の羊羹と不思議に合ってますね。ナッツの歯触りも悪くない」
編集長「僕が一番気に入ったのは加賀紅茶だけど、これも次にいいね。ナッツ好き、ピスタチオ好きにおすすめだよ。これもウイスキーに合いそう」
白い珈琲味:これは白煉り羊羹に能登大納言の甘納豆がきれいに浮かんでいる。かすかに珈琲の香りが来るのがコーヒー好きにはたまらないのでは? それに能登大納言のふくよかな風味が重なるように立ち上がって来る。
あん子「コーヒー好きの私としてはこれはグッと来ますね。能登大納言小豆が全体を引き締めていて、この組み合わせも素晴らしいと思うなあ」
編集長「3種類の中では一番素直な味わいで、余韻もすっきりしてるね。気品を感じる美味さだね。ネオ和菓子の世界がこれからどうなるか、楽しみでもある」
【サイドは?】
銘菓くるみ:くるみの形の小さな最中(もなか)。1個が約13グラムほど。
皮種まで自家製で、サクッとした歯触り。中はこしあん(自家製)。くるみがそのまま乗っていて、この組み合わせは当時としてはかなり斬新だったと思う。
創業当時からこの店の目玉商品のようで、上質なこしあん(北海道産小豆×白ザラ糖)とくるみが口の中で広がる感覚は、とても味わい深い。
甘すぎない、やさしい余韻。
〈あんヒストリー〉「清香室町」の創業は昭和21年(1946年)。現在4代目。伝統と新しさの融合を求めて、和菓子界に新しい息吹を起こす可能性もある。
「清香室町」本店
所在地 石川・金沢市本多町2-1-2