東京・三田に暖簾を下げる「秋色庵大坂家」(しゅうしきあんおおさかや)は元禄時代創業という長い歴史を背景に、日本の和菓子界に渋い光を放っている。
ルーツは店名でおわかりのように土偏の「大坂」(大阪ではない)で、秋色最中(三色最中)が看板商品の一つだが、茶席などにも使われる上生菓子にも定評がある。
と書いたところで、敷居の高そうなこの老舗の、敷居の低そうな饅頭「和糖饅頭(わとうまんじゅう)」がワタクシ的には「超」が付くほど好きな饅頭です。
なので、今回俎上に載せるのは、この和糖饅頭です。
★今回ゲットしたキラ星
和糖饅頭 1個250円
秋色最中(大型3種類) 1400円
※すべて税込みです。
【センターは?】和糖饅頭:ただの茶まんじゅうではない
皮に和糖(和三盆の前の段階の希少な砂糖)を使用し、一見すると、フツーの温泉饅頭のようだが、口に入れた瞬間、ふわりと別世界に連れていかれそうになる。ホントそんな感じです。なので、センターに(個人的な好みです)。
●サイズと外観 大きさは55ミリほどの饅頭形。重さは約52グラム。
表面の見事なツヤともっちり感。職人さんの手を感じるような。
頂上にはケシの実が点々。
艶やかな表面張力。もっちり感。
●味わい 皮は薄く、あんこはごらんの通りギリギリまで詰まっていて、和三盆と黒糖のいい香りが鼻先までやってきて、「早くちぎって食べてよ」とささやく。そんな感じ。
裏皮の引力。
歯を立てると、穏やかで上品な歯ざわり。和糖の香り。
うーん、これはすごいね。
ワクワクしながら、中心部へ。
ぎっしりと詰まったあんこ(こしあん×黒糖)が見るからにみずみずしい。
作法通りにガブリと行く。
和糖皮の求愛に応えるかのように、しっとりと濃密な大波を引き連れてくる。
黒糖(波照間産)と北海道産あずきのマリアージュがとてもいい。
うめえ~・・・言葉が自然に漏れそうになる。
1個250円は安くはないが、私的には感動がそれを上回る。
〈あんヒストリー〉
創業は元禄年間(1688~1704年)で、大坂から江戸・日本橋小網町に移転し⇒その後ももらい火などでさらに移転している。そのため、古文書など記録を紛失したようだが、江戸時代の名ガイドブック「江戸買物独り案内」には名店として記載されている。すごい歴史。現在19代目。もともとは「大坂家」だったが、祖先の一人が女流俳人で「秋色家」を俳号としていた関係で、店名の上に冠したようだ。
【サイドは?】秋色最中(3色最中):中が小倉あん(大納言)、黒糖あん㊨、栗あん㊧の3種類。皮種がパリッとしていて、とても香ばしい。
上品でやさしいあじわいが共通している。
3種類の中で私が最も気に入ったのが中央の小倉あん。大納言小豆とこしあんがきれいに合体していて、小豆のいい風味がおだやかに広がってくる。
黒糖あんの最中は和糖饅頭でもわかるが、妙な雑味が抜けていて、それでいて黒糖の風味がふわりと広がる。上品な黒糖最中。
栗あんは大手亡の白あんに栗の風味が伴走してくる。甘すぎず、皮種のサクサクとした風味とよく合っている。きれいな余韻も心地よい。
「秋色庵大坂家」
所在地 東京・港区三田3-1-9