うだるような猛暑の中、隠れた名店を探す。
今回ご紹介するのは、埼玉・春日部郊外(旧庄和町)で出会った、宝石のような小さな和菓子屋さん。
シンプルな店構えがシャレていて、白地の暖簾がどこかメルヘンチックで、私のあんこころが小躍りした。
8色のシャボン玉? 小さく「美乃屋」(みのや)の文字(花火をイメージしたそう)。
季節の上生菓子「煉り切り」が推しで、後で調べてみたら、インスタグラムのフォロワー数が1・7万人という和菓子屋さんだった。びっくりあんこ。
物は試しと美しい2種類だけ(上の写真㊧夏菊、㊨花火)ゲットしたが、私の目は数種類のまんじゅう類に釘付け。
自家製カステラや新食感くずバーまである。
びっくりするのはまだ早い。
まんじゅう類は1個100円(税込み)がベースで、あんだんごなどは一串60円(税込み)と表記してある。
上生菓子からまんじゅう類まで、一品一品にこだわりの強さが窺える。
ここの店主に興味がわいた。
★ゲットしたキラ星たち
・みそまんじゅう 100円
・しそまんじゅう 100円
・レモンまんじゅう 100円
・麩まんじゅう 150円
・特大栗まんじゅう 250円
・煉り切り2品 280円×2
※いずれも税込み価格
【センターは?】
麩まんじゅうと味噌饅頭vs特大栗饅頭
麩まんじゅう:夏限定の涼菓で、みずみずしい笹にくるまれた麩まんじゅう生地には希少な四万十川青のりを使用している。
味わい 冷蔵庫で十分冷やしてから食べる。最初のアタックは笹の香りと清冽な青のりの香りが麩まんじゅう独特のつるんとしたもっちり感とともに押し寄せてくる。
その直後になめらかな自家製こしあんの波。
淡く上質なこしあんで、かすかに塩気もある。
店主のこだわりを感じる美味さ。
味噌まんじゅう:1個税込み100円が信じられない。中は手亡豆の白あん(下の写真㊨)。
皮生地にぽつりぽつりと味噌が練り込まれていて、手で持つと、自然でふわりとした食感。口どけのいい白あんのたっぷり感が「人気№1」を裏付ける。
ほどよい甘さと味噌の塩気がたまらない。
特大栗まんじゅう:フツーサイズと特大サイズがあり、迷うことなく特大サイズをゲットしたが、期待を裏切らない味わいでした。
蜜煮した栗が丸ごと1個入っていて、その周囲をたっぷりの白あんが包み込み、さらに小麦粉ベースの皮生地が薄く全体を覆っている。
見事な濃いめの焼き色。卵黄のテカリ。
店主の熟練の手が見えるよう。
崩壊の歯ざわりと舌の上で溶けていく感覚が上質。
栗のほくほく感と素朴な白あん、生地の三位一体がとてもいい。
栗まんじゅうの名店に引けを取らない、見事な栗まんじゅうだと思う。
●あんヒストリー
昭和38年(1963年)ごろ、初代が埼玉・戸田で創業。その後、現在の地(旧庄和町)に移転。現在2代目。「製菓製パン」(発行元・製菓実験社)などで和菓子職人修業。伝統とチャレンジ精神に富んだ和菓子づくりに取り組んでいる。
【サイドは?】
煉り切り2品:季節ごとに上生菓子(煉り切り)をつくり続けているが、今回ゲットしたのは「花火」(右)と「夏菊」(左)。
和菓子職人としての腕が試される煉り切り。
ごらんの通り、とても美しい。
ベースの白あんをアートなまでに着色、中はしっかりとしたこしあん。
自然な甘さで、口どけが素晴らしい。
京都のいくつかの上生菓子は別格だが、関東のローカルでこれだけ高いレベルの煉り切りが存在していること、それを味わえたこと。
280円という価格も驚き、ではある。
店は初代の女将さん、2代目店主、それにきれいな娘さんで切り盛りしているようだ。
敷居の低さと志の高さ、隅々にまでさり気ない気配りが見て取れる。
いい和菓子屋さんに出会ったこと。
あんこの神様はローカルでこそ光る気がする。
《小豆のつぶやき》
▼店構えからしてセンスの良さを感じた▼だが、場所が遠いので、さほど期待せずに暖簾をくぐったが、びっくり、プロフェッショナルがいた▼2代目は気さくな物腰で、話しているうちにどんどんシンパシーを感じた▼和菓子屋の現在は玉石混交だが、あんこ旅でこういう店に出会うとうれしさも倍増する。
「美乃屋」
所在地 埼玉・春日部市米島1008-54
最寄り駅 東武アーバンパークライン南桜井駅下車