あんこ好きにとって埼玉・浦和は「くすぐられるGスポット」かもしれない(この場合のGはグレイトのGです)。
何せ明治8年創業「ときわだんご」がいぶし銀の光を発し、そのすぐ近くには「菓匠 花見本店」(大正元年創業)がはんなり光線を放射している。
京都ふうに分類すると、ときわだんごがお餅屋はん、花見が上菓子屋はん、になるのでは?
「ときわだんご」のこし餡の美味さはすでに書いているので、今回は「菓匠 花見本店」。
ここの目玉は色とりどりの「白鷺宝(はくろほう)」だが、きれいな上生菓子やどら焼きなどに混じって、目立つ場所にあんドーナツが置いてあった。
そこだけ駄菓子屋の気配。
「揚そふと」(1個 108円)と表記してある。
「これってドーナツでしょ?」
「和風ドーナツですね」(女性スタッフ)
深谷の老舗和菓子屋「糸屋製菓店」にもそこだけ下町の「あんドーナツ」があったことを思い出した。
ひょっとして原点を忘れない、ということかもしれないが、ぱっと見にはミスマッチに見えなくもない。
ゆえに引き込まれてしまった。
人気商品のようで、早めに売り切れることも多いそう。
白鷺宝をゲットするつもりが、道草して日が暮れてしまった気分。あんビリーバボーな、いい道草だと思う。
・今回ゲットしたキラ星たち
揚そふと(こしあん) 108円(税込み)
揚そふと(つぶあん) 108円(同)
白鷺宝(10個入り) 1134円(同)
【今週のセンター】
砂糖がたっぷりまぶしてある和風ドーナツだが、サクッとした歯触りが素朴で、どこか気品すら感じる味わい。
2種類。こしあんは円形、粒あんは楕円形で、見分けがつくようになっている。
こしあんは約49グラム(63ミリ×63ミリほど)。粒あんは約48グラムだった(77ミリ×55ミリ)。
あんこはもちろん自家製で、甘さがかなり抑えられている。
どちらも「懐かしい味わいだね」と言いたくなる美味さだが、どちらかというと個人的な好みはしっとり感のあるこしあんの方。
小麦粉のきれいな香りと油(サラダ油?)がこしあんの風味を邪魔しない。というよりむしろ引き立てている。
塩気のほんのり具合も「よき昭和」を運んでくる。
口の中で溶け合い、愛し合い、すっと消えていく感覚・・・ファンが多いのも頷ける。
舌の上にしばらくの間、昭和の夢らしきもの(?)が残る。
粒あんの方があんこは甘めだと思う。
【セカンドは白鷺宝6種】
「菓匠 花見」は現在4代目。首都圏を中心に日本橋三越や大宮そごうなどにも出店している。店舗数は計9店舗ほど。
暖簾を広げない「ときわだんご」と好対照なところが面白い。
看板商品の「白鷺宝」は2代目が考案、卵の黄身を加えた白あんを焼き上げ、ミルク(ホワイトチョコレート)でコーティングしたもの。
ウズラの卵大の小さなサイズ。
野田の清らかな水辺にたたずむ鷺(さぎ)の姿をイメージしたとか。
まろやかな口どけがとてもいい。
ミルクと黄身あんが折り重なるように口の中に広がる感覚。和と洋の粋を球にしたような、かわいい創作菓子で、確かにリピートしたくなってくる。
かふぇ(コーヒー味)、茶々(煎茶と抹茶味)、玉しずく(すり蜜でコーティング)、ごま(ごま味)などなど。宝石箱のようなバラエティーで、見た目もシャレている。
個人的にこの中で特に気に入ったのが「かふぇ」(下の写真)。
挽いたコーヒーとブレンドした外側と中の白あんの相性がとてもいいと思う。
あん子「焙煎したコーヒーの苦みがいいアクセントになっていて、これはとても気に入りました。他もみんなかわいい。小さいけど一個一個きれいな色でキャンディーみたいに包まれていて、目と舌を同時に楽しませる、和菓子(京菓子)の文化を引き継いでいるのは確かね」
編集長「浦和レッズもあるし、ウナギも美味いし、浦和って奥が深いねえ。ひと昔前は途中下車の町だったけど、今では目的の町になったんじゃないかな」
あん子「編集長にとってはあんこの町なんでしょう? 今度行くときは私も連れてってくださいね。うなぎを食べて、パルコで買い物をして・・・」
編集長「あんこのハシゴ? 笑えないよ」
「菓匠 花見本店」
最寄り駅 JR浦和駅西口から歩いてすぐ