どら焼きのジャンボサイズは珍しくないが、旧中山道・鴻巣宿で出会った栗どら焼きは想像をはるかに超えていた。ドラえもんもびっくり、と言いたくなる。
まずはご覧いただきたい。
サイズが長さ約180ミリ、幅120ミリ、厚みは42ミリ。川というよりは弁当箱のような長方形で、重さは約600グラム強(フツーのどら焼きの5~6個分)。
驚くなかれ、これで「小(ミニサイズ)」と表記してあった。凄すぎる。
「大」になるとこの2倍くらいある。冷静に見て、恐怖すら感じる(笑)。なのであんこ狂の私でも引いてしまった(汗)。
このモンスターどら焼きを考案したのは老舗和菓子屋「木村屋製菓舗」。鴻巣を流れる荒川(鴻巣地区)が「川幅日本一」と認定されたことを記念して、平成22年(2010年)に作り上げている。
現在4代目。東京「成城風月堂」で和洋菓子職人として修業し、創作和菓子にもチャレンジしている。
店構えの良さ、清潔感のある店内。
実に美味そうな餅菓子や生菓子、お赤飯などが並んでいる。目がふらふらと道草する。
胃袋が5つくらいあれば、全部食べたくなるレベル・・・困った(汗)。
・今回ゲットしたキラ星
川幅どら焼き(小) 980円(税込み)
プレミアムいちご大福 320円(同)
草もち 110円(同)
【今週のセンター】
どら焼きの概念を変えた?栗と粒あんの存在感
センターには川幅どら焼きを置いたが、訪問時にたまたま見つけた吉見のプレミアムいちごを使った「いちご大福」も「私を見て!」光線を放っていた。
迷いに迷ったが、「日本一」に敬意を表して、川幅どら焼きをセンターに持ってきた。
「小(ミニ)」というのが冗談としか思えないデカさで、「フツーのどら焼きの優に5~6個分はあります」というのも頷ける。
おそらく大も含めて、日本で一番大きいどら焼きだと思う。ギネス級。
デカさばかりではなく、中身も一級品だと思う。
濃いきつね色の見事な焼き色、荒川に住む魚をイメージした焼き印にも遊び心がある。
「形が崩れないよう強力粉も使用」したというどら皮は、新鮮な卵と蜂蜜の風味がふわりと漂う。試作時の苦労が隠れている?
たっぷりの粒あんは甘め。北海道産の高級な大粒小豆(豊祝小豆)を使用、砂糖は鬼ザラメというこだわりも凄い。
蜜煮した栗がぼこぼこと潜んでいるのがわかる。
コーヒーを淹れてから、まな板を用意し、包丁で少し切り分け(全部は食べきれないので)、益子焼の菓子皿に置くと、その断面が素晴らしい。
どら皮はスポンジ感がやや硬めだが、固すぎない。
粒あんは豊祝小豆のふくよかな風味がとてもいい。
噛むたびに、栗のきれいな風味と三位一体となって、口中で混じり合い、とろけ合い、頭頂部へと抜けていく。
あんこの美味さも次第に増してくるような。
デカいながらも、これは紛れもない、上質の栗どら焼きと感心させられる。
どら皮と粒あんが馴染んでくると、しっとり感が増してくるのがわかる。
数日間は楽しめる。個人的には1~2日後が特に旨みがプラスした気がした。
【サイドはプレミアムいちご大福】
「この吉見いちごは市場に出ていないプレミアムいちごなんですよ」
店先にいらっしゃった先代女将さんが気さくなお方で、さり気なく説明してくれた。
中のあんこは白あんで、プレミアムいちごを囲い込み、さらに柔らかな求肥(ぎゅうひ)が全体を包んでいる。
白あんには練乳も加えているようだ。
包丁で切ると、鮮やかな色彩が目に飛び込んできた。
重さは約136グラムもある。
絶妙なバランスと美味さ。
いちごが甘いので、白あんは甘さを抑えているようだ。その機微。
4代目の技術が優れているのがよくわかる一品だと思う。
もう一品、私が特に感心したのは「草もち」。
小ぶりだが、よもぎの香りがすっくと立ってくる。
中の粒あんもしっとりとふくよかないいあんこで、コスパも含めて、全体が素晴らしい。
鴻巣にはいい和菓子屋が多いが、ここも傑出した、初代からの伝統を守りながら、チャレンジ精神にあふれた名店の一つだと思う。
4代目のこれからにも注目したい。
「木村屋製菓補」
所在地 埼玉・鴻巣市氷川町4-4-4