美味い最中(もなか)は全国各地にある。
だが、この最中はちょっとすごいぞ、と個人的に思うのが東京・吉祥寺「小ざさ(おざさ)」の最中である。
つぶあんと白あんの2種類だけ。
小さいのに皮だねのパリッとした香ばしさ、中のあんこの洗練が口の中でため息の巨人になる。吹き上がる感覚・・・妙な表現だが、そんな感じ。
この小ざさ、幻ともいわれる羊羹(ようかん)があまりに有名で、早朝から並んでも手に入りにくい。一日限定150本。
私はかつて三鷹に住んでいた時に、たった一度何とかゲットして食べたことがある。見た目が濃い紫色で寒天と練りが「虎屋」に負けてない。きれいな余韻の深い味わいだったことを覚えている。
なので、ずっと最中は羊羹が手に入らなかったときの代用品と思っていた。
あまーい、いや甘すぎる思い違いだった。
小豆の高騰などで少しずつ価格が上がっているが、それでも他の老舗有名店の最中に比べて実にコスパがいい。店主の志を感じる。
5個入り税込み335円(紅3個・白2個)。1個67円なり。
自宅に持ち帰って、久しぶりに賞味する。お茶よりもコーヒーが合うと思う。
まずつぶあん。
皮のパリパリ感が秀逸。崩れることがない。噛んだ瞬間、香ばしさが銀座「空也(くうや)」と比べてもそん色がない。
中のあんこはさらに絶妙。大納言小豆とこしあんをブレンドしている、と思う。ふっくらとした大きな粒とサラッとしたこしあん。
みずみずしさとねっとり感。
小倉色の光沢と透き通った光のグラデーションが「職人の洗練」を思わせる。
個人的には銀座「空也」よりも番付上位。
甘さは抑えている。
小豆のきれいな風味に雑味がない。
蜜煮した十勝産大納言小豆も加え、砂糖はたぶん上白糖。
寒天を少し加えて練っているようで、それがみずみずしいこってり感を生んでいると思う。
白あんもファンが多い。
北海道産白いんげん豆の風味が立つ。
あめ色に近い白あん。
赤あんと同じように、ふくよかに炊かれていて、皮の食感も残している。
昭和26年(1951年)創業。初代が切り開き、2代目(女将)がその味を研ぎ澄まし、3代目へとバトンタッチ。
昭和から平成、そして新しい元号へ。今では信じられないことだが、吉祥寺にたった1坪の本店を70年近く守り続けている。
ある意味、和菓子界の奇跡の店と言いたくなる。
幻の羊羹もいいが、最中を忘れてもらっちゃ困る。