京都は中心部(洛中)ばかりではない。
あんこ宇宙の中で、やっぱり京都エリアは凄いなあ、という一品。
緊急事態宣言でまたも京都に行きづらくなった。
なので、今回もお取り寄せ。直接電話して、私のどこでもドア(クロネコ便)で送ってもらった。配送料はかかるが、このくらいの出費は致し方ない。
まずは見ていただきたい(ご存知の方も多いとは思うが)。
紅白の一本の巻物で、白あんを紅羊羹で手巻きしたもの。
長さ約215ミリ、重さは380グラムほど。
写真で見るよりも実物の重みがズシリと来る。
紅羊羹の濃い赤と白あん(白いんげん豆)の存在感。
京都・八幡市の「菓子司 亀屋芳邦(かめやよしくに)」の、その名も「源氏巻」(1本 税込み1188円)。
同市の石清水八幡宮は源氏ゆかりの神社で、源氏の白と平氏の赤をモチーフにした、郷土菓子でもある。
源平の歴史とお店に敬意を表して、合掌してから包丁で切り、さっそく賞味する。
上生菓子のような気配。
紅羊羹の歯ごたえと白あんの柔らかさが口の中で絶妙に絡み合う。
ほどよい甘さと二つの食感が、素朴で質のいい風味をゆったりと噴き上げるよう。
「亀屋芳邦」は創業が明治40年(1907年)だが、京都・本願寺の御用達だった「亀屋陸奥」から暖簾分けしているようだ。
現在3代目。「源氏巻」が素晴らしかったので好奇心がむくむく、つい電話すると、電話口に出た女性(女将さん?)の応対に感じ入ってしまった。私は埼玉だが、ホンマもんの京都弁に幸福感と奥行き、奇妙なタイムマシン感に襲われてしまった。
それによると、「源氏巻」は八幡周辺に昔からある郷土菓子で、これを作る和菓子屋さんも数軒あったそう。それが今は「ウチだけになってしまいました」とか。
哀しいけどうれしい。貴重な巻き羊羹だとわかる。
羊羹は食紅で色を付けているが、そこだけ見ると、小城羊羹「村岡総本舗」や伏見「駿河屋」の紅練りなどを連想してしまった。紅色に驚かされるが、白あんとのコラボが古くて新しいと思う。
むしろふくよかな白あんの引き立て役のようでもある。
材料は砂糖(上白糖)、いんげん豆、寒天。添加物は食紅だけ。
もう一品「栗かのこ」(税込み190円)も書いておきたい。
蜜煮した大栗丸ごと一個を大納言小豆とゼリー状の寒天で包み込んでいる。
光が入ると、金色(琥珀色)にキラキラ輝き、封じ込められた黄色い栗と大納言の甘納豆がとても美しい。
栗のしっかり感と甘納豆のほっこり感が寒天のつなぎで噛むたびにいい具合に溶けていく。やや甘めで上質の味わい。
京都の中心部ではなく、裏鬼門(西南)の、源氏ゆかりの町の逸品。それを時空を超えて緊急事態下で味わう。京都と疫病の歴史も頭のどこかにある。
改めて京都、恐るべし。
【お取り寄せ】
源氏巻(1本) 1188円
栗かのこ(5個) 950円
送料 862円
代引き手数料 330円
合計 3330円