週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

日曜増刊号😎湧き水「元祖葛まんじゅう」

 

新宿高島屋で開催された「旅する和菓子」で、人気を集めていた一つが「元祖葛(くず)まんじゅう」だった。

 

福井・小浜市「御菓子処 伊勢屋」の逸品。

このイベントのためにわざわざ小浜から地下30メートルから湧き出ている名水「雲城水」(名水百選にも選ばれている)を運んできた。すごいこだわり方。

 

6代目が熟練の技で自家製の葛生地を造り、手づくりあんこ玉を包み、名水に浮かべていく。

つい見入ってしまった。

 

夏季限定の商品だが、今回は「旅する和菓子」イベントのためにスペシャルサプライズとなったようだ。

本当なら福井まで足を運んで、若狭名物「丁稚羊羹」(同店のもう一つの目玉)などと一緒に味わうべきものだと思う。

 

自分の目と足と舌であんこ旅を続けている身としては、これはラッキーなのかアンラッキーなのかわからない(汗)。

 

だが、見てしまった。

 

迷っている場合ではない。

 

この2月の時期に味わえるのは「餡ラッキー」とあんこの神様に感謝することにした(当たり前だ)。

 

★ゲットしたキラ星

 元祖くずまんじゅう 3個入り 660円

 桜どら焼き 250円

 ※価格は税別です。

 

金星あんこ:元祖くずまんじゅう

《見た目》名水に浮かぶ半透明の葛生地。淡い光を吸い込むように自家製こし餡がしっかり控えている。

一見すると、和菓子屋さんで見かける水まんじゅうと変わらないが、ガラスの皿に置いてよくみると、そのオーガニックな気品と奥行きに「ただならぬもの」を感じた。

 

秘すれば花、の誘惑。

うっすらと見えるこし餡、その赤紫色のオーラと甘い予感

 

一個のサイズは約45ミリ、横から見ると半円形で、一個一個微妙に形が違う。

 

絶妙な手づくり感。

 

《味わい》葛の風味がプルプル感とともに舌と口の粘膜をくすぐる。たまらない。

すぐ後から自家製こし餡の波が押し寄せてくる。

 

甘さは控えめ。だが、厳選あずきのいい風味がドドと来る。

口どけが素晴らしい。

 

次第に今自分が食べているのは「水の精」ではないか、と思えてきた。

 

あずきの精と水の精のマリアージュ

葛はあの江戸時代の儒学者頼山陽吉野葛に負けない、と感嘆した福井・熊川葛を使用している(頼山陽は美食家としても知られている)。

 

葛生地は素材の美味さを生かして砂糖は加えていない。

 

自家製こし餡は北海道十勝産×白ザラメ。

添加物などは加えていないので「できれば今日中に召し上がってください」。

 

食べながら目を閉じて舌の上で溶けていく極上感を味わう。

 

夏ではなく、寒い冬に味わえるなんて。

 

「旅する和菓子」を旅をしないで味わうなんてこれでいいのか、贅沢すぎる。

 

銀星あんこ:桜どら焼き

こちらも季節限定品。塩漬けした桜葉をまとったきつね色のどら皮が気分をリッチにする。

ユニークなどら焼き、独創力を感じる。

サイズは約80ミリ、重さは73グラムほど。

 

大きくはないが小さくもない。

 

《味わい》どら皮のしっとり感がとてもいい。卵の黄身と蜂蜜のバランスもいい。

中は自家製つぶ餡。このあんこが格別で、よく見るとつぶとこしを別々に炊いて合わせたような、つぶのテカリとこしの蜜な感じがいい掛け算になっている。

塩漬け桜葉が一足早い春を運んでくるようで、これは絶妙などら焼きだと思う。

 

桜粒の塩気がいアクセントになっている。

 

●あんヒストリー

創業は天保元年(1831年)。現在5代目。息子さんの6代目も新進の和菓子職人としてコンテストで受賞する他、フランスで和菓子のワークショップ行うなど活動の幅を広げている。注目の若手の一人。

 

「御菓子処 伊勢屋」

所在地 福井・小浜市一番町1-6

 

           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

限定品「五色のおはぎ」😎旅する和菓子

 

時間が出来たので、新宿高島屋B1で開催中のイベント「旅する和菓子」(全国から8店舗参加)をのぞいてみた(2月19日で終了)。

 

最前線のあんこワールドをこの目と舌で味わってみたい。

 

伝統と革新、あんこからANKOへ? 好奇心がむくむく、どんなものかいな。

 

混雑を避けて、平日の午前中に到着。

今回ご紹介したいのは、まずは滋賀・高島市「とも栄菓舗」。「ベイクドようかん湖々菓楽」など新しい発想の創作和菓子を生み出していることで注目を浴びている和菓子屋さん。

 

見渡す限りキラ星ぞろい。だが、私のあんこハートがときめいたのは「五色のおはぎ」だった。

曲げわっぱに収まった小ぶりのカラフルな創作おはぎ。私が外国人ならKawaii

!」と叫びたくなるね、きっと。

 

五色の創作あんこの中身がびっくりもの。

 

「旅する和菓子 限定」と表記されていて、「コロナで出せなかったので、ここで初めて出しました」とスタッフ。スペシャルな出品とわかった。

 

★ゲットしたキラ星

 五色のおはぎ 1300円

 瑞羊羹(こし) 350円

  ※価格は税別です

 

【センターは?】

創作あんこのチャレンジ力と技術力

 

アプローチ⇒発想力とこだわりが五色のあんこに結実して、源氏物語絵巻のように檜の曲げわっぱの中に納まっていた。はっとするあでやかさ。五色は以下の通りです。個人的に気に入った順に並べてみました。すべて自家製創作餡のようです。

一色目:桃餡

こんなのあり? 和と洋のお見事なマッチングと表現するほかはない。

 

白餡ベースで、桃のペーストを加えているようだ。

大きさは楕円形で約66ミリ×47ミリ。重さは38グラムほど。

 

つまり小ぶりの創作おはぎ。

きれいな桃餡を真ん中から切ると、中心部がレモンクリームチーズで、滋賀産羽二重もち米がたおやかに包み込んでいる。

〈味わい〉桃餡はなめらかでしっとりと舌にささやきかけてくるよう。

 

もち米のピュアなもちもち感とレモンクリームチーズが意外なほど合う。

 

ひょっとしてミスマッチでは?という思いが一瞬で吹っ飛んだ。

桃餡とレモンクリームチーズの酸味が口の中で絶妙に絡み合う。もち米のみずみずしさと合体して、そよ風となって、私を天国まで誘導しそうになった。危ない、あぶない(笑)。

 

この驚きの創作おはぎは4代目のアイデアのようで、発想力と技術の裏付けに舌を巻くしかないなあ。降参です。

 

二色目:粒餡×ヘーゼルナッツ

粒餡とヘーゼルナッツともち米がこんなに合うとはね(下の写真左)。

〈味わい〉甘さを抑えた、雑味のない粒餡のふくよかさとヘーゼルナッツのかりっとした食感が1∔1=3的に融合している。

私にとっては伝統と創作の見事な掛け算。おはぎ=ぼた餅が一気に進化して、未来から2024年にタイムスリップしてきたようと表現したくなる(わかりにくい=汗)。

 

三色目:ピスタチオ餡

白餡×ピスタチオペースト。上になんとピンクペッパーを3粒ほど愛らしく乗せている。これも驚きの発想。

〈味わい〉抹茶色だが、ピスタチオ餡。思ったよりもピスタチオの風味が強くない。むしろ秘すれば花、のよう。しっとりと甘すぎない。

ショッキングなのはピンクペッパー。色はピンクだが、噛んだ瞬間ペッパーが小さく爆発するよう。コショーだ!

 

ペッパーの刺激がピスタチオ餡を上回る感じかな。

 

四色目:こし餡×古代米

藤紫色のきれいなこし餡に吸い込まれそうになる。古代米の素朴なもっちり感。

〈味わい〉雑味のない、職人のきれいな手の香りがするようなピュアなこし餡と古代米の素朴な風味がしっとりとマリアージュしている。

シンプルな中にこだわりがにじみ出てくる、上質な味わい。こし餡のみずみずしさがしばらく舌にとどまる。淡い甘さと余韻も長い。

 

五色目:栗餡ブリュレ風

栗餡をバーナーで(?)焦げ目をつけているのがブリュレ風でおもしろい。

味わい〉栗餡は甘すぎない。ブリュレ感がどこかスイートポテトのような印象。それに羽二重もち米が絡み合う。

これも面白いチャレンジだが、五色の中ではもっとも素朴な印象。秋を感じさせる美味さ。

 

【サイドは?】

瑞羊羹:これほどなめらかな水ようかんはあまりないかもしれない。

 

プラスチックのカップ入り。

素材は砂糖と小豆と寒天のみだが、寒天の存在が表に出てこない。

 

スプーンで掬うと、ゆるゆると崩れそうになる。揺らぎのあんこ。

私的には名刀でスパッと切ったような水ようかんが好みだが、これはこれで一つの究極形ではないかと思う。

 

「水」ではなく「瑞」と表記しているのもこだわりを感じる。

 

●あんヒストリー

創業は昭和7年(1932年)。現在3代目。初代から飾り菓子などで数々の賞を受賞している和菓子屋さん。4代目(息子さん?)も注目の和菓子職人で、新しい発想で和菓子界に旋風を起こしつつある。

 

「とも栄菓舗」本店

所在地 滋賀・高島市安曇川町西万木211-1

 

           







 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

濃密マックス桜葉つぶ餡😎古印もなか

 

古都・足利の古印最中(こいんもなか)は昔から大好きだったが、ある時期、甘さの強さと皮種の崩れ方が気になって、しばらく離れていた。

 

だが、それが私の間違いだったこと(イベントでゲット、賞味期限ぎりぎりだった)に気づき、数年ぶりに足利本店を訪ねてみた。

通りにある「香雲堂本店」(こううんどうほんてん)へ。

 

たまたま季節限定の「古印最中 が置いてあった。

老舗の重厚な、シャレた店構え。

相田みつをが捧げた「ひとつのことでもなかなか思うようにはならぬものです」うんぬんの書が額に飾られている。

 

足利文化の奥行き。

 

★ゲットしたキラ星

 古印最中(5個箱入り)960円

 同 桜2個 230円×2個 

   ※価格は税込みです。

 

【センターは?】

季節限定「古印最中 」の桜葉入りあんこの強烈度

 

これまでは私的には古印最中一択だったので、季節限定「桜」を食べるのは今回が初めて。

 

桜色の皮種春の予感

ラッキー、とあんココロがときめいた。

 

〈形とサイズ〉

定番の古印最中とほぼ同サイズだが、ほぼ真四角の頂上に獅子頭のようなものが鎮座している。おもろ。

「獅子ではなく虎です。北條氏の虎印なんですよ」(スタッフ)

 

世界最古の学校・足利学校に残っている古印の一つのようで、「桜」はそれを採用しているとか。

 

左右約55ミリ、天地は虎頭も含めて約68ミリ。重さは67グラムほど(包装込み)。

桜色の美しい皮種をゆっくり剥がしてみると、黒曜石のような光沢を放ちながら、見事なつぶ餡が「ようこそ」と魅惑的な笑みを浮かべた。そのボリューム。

 

ある種、恐るべき妖艶なつぶ餡・・・。

つい真っ赤な口紅を連想してしまった(勝手な妄想です)。

 

〈味わい〉

しっかりとした皮種が私の昔の思い違いを訂正してくれる。す、すまん(汗)。

 

一個が大きいので、半分に切ってから、賞味する。

桜葉のいい香りがほんのりと来た。

 

桜餅と同じ香り。

 

何よりぎっしりと詰まったつぶ餡が秀逸。

 

やはり甘さがかなり濃厚で、塩漬け桜葉の香りがいいアクセントになっている。

このテカリを四方に放つつぶ餡、よく見ると、しっかりと大粒小豆の粒感があるのに、歯がすっすっと入る。

驚くほど柔らかくて、しかもねっとりもしている。

 

噴き上がる小豆のコクと風味。それに桜葉のそよ風。

 

水飴と寒天の配合がとてもいい。

 

やはりすごいあんこだと思う。

北海道十勝産大納言あずきを使用していて、ホームページには「代々受け継がれている煮崩し法」でじっくり煮詰めている。

 

煮崩し法というのがよくわからないが、煮詰め方に何か秘伝があると思う。

 

塩漬け桜葉の存在だが、よく見ても姿が見えない。

 

本店に電話して聞いてみたら、「とても細かくして入れているんですよ。なので、見えにくいかもしれません」とか。

 

秘すれば花、のもなか版ということのようで。

 

定番:古印最中

賞味期限は約1週間だが、今回は本店でゲット、その日のうち(夜)に食べたので、皮種のしっかりとした硬さとサクっとした歯ざわりが素晴らしい。

何よりもあんこ。

かなり甘いが、その甘さにコクがある。

 

テカリが尋常を超えている。

ふくよかに煮詰められた、風味マックスの濃密なつぶ餡

 

ほんのり塩気。

 

こちらは重さが桜よりも少し重い71グラムほど。かなりの重量感。

 

首都圏でもファンが多いのもよくわかる、関東の逸品だと思う。

 

緑茶で2個食べたら、結構お腹にずしんと来た。

 

●あんヒストリー

▼創業は明治元年だが、江戸末期の古文書にも「香雲堂」の記述があるそうで、歴史はかなり古い▼だが、当時から和菓子屋ではなかったようだ▼店の話では洋食レストランや喫茶店を営んでいたようで、この店のもう一つの名物「瓦せんべい」や古印最中は戦後、5代目の代になって作り始めたようだ▼当時は文化サロンの役割も担っていたとか▼当時無名だった相田みつをが店に来て、宣伝文を書かせてほしいと依頼したのも背景を知ると、なるほどと思えてくる。

 

「香雲堂本店」

所在地 栃木・足利市通4丁目2570

 

               

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜増刊号😎進化系?コッペ「あげあんパン」

 

あんこ界の「あげあげ派」(ン?)にはたまらないレアなあんぱんをゲットしに宇都宮まで出かけた。

 

その名もコッペパン「あげあんパン」

あんこ旅の延長線。ギョーザの街・宇都宮の老舗和菓子屋さん「高林堂(こうりんどう)本店を久しぶりに訪問した。

今回の日曜増刊号はここのあん×あん金星😍。

 

あんぱん家系図(そんなものがあるとして)の中ではあまりに素朴な進化系あんぱんと位置づけたい。

 

つぶあんこしあんの2種類。

 

上生菓子も作っている老舗和菓子屋さんの、ある種意外な人気商品でもある。

素朴の中に巧みが隠れていて、数年前、つぶあんこしあんは売り切れていた)だけ食べたが、そのハートフルな味わいに舌を巻いた。

 

今回は午前中に到着したので、両方ゲットできた。

 

少し価格が上がっていたが、時勢がらそこは仕方がない。

 

★ゲットした2品

 あげあんパン(こしあん)320円

       (つぶあん)320円

  ※価格は税別です。

syukan-anko.hatenablog.jp

 

金星あんこ:こしあん

まず外観を見ていただきたい。

油紙を開くと、表面にきな粉がたっぷりとかかった大きめのコッペパン(小麦粉は地場の「麦のかほり」を使用)が現れた。

 

サイズを測ったら、左右約185ミリ×55ミリ。重さは約152グラムもある。

真ん中に切れ目があり、開いてみると、ぶっ太いこしあんが二本「おいで」とささやきながら寝そべっていた。パジャマも着ていない(おいおい)。

淡いきれいな自家製こしあんで、よく見ると、パン生地には黒蜜が滲んでいた。

 

シンプルだが、かなりの凝り具合。

 

「添加物を使用していないので、本日中にお召し上がりください」(スタッフ)

 

なので、夜の試食となった。

 

〈味わい〉コッペの表面が植物油で揚げているので少しカリッとしている。パン生地自体はふっくらと柔らかい。小麦の香りが上品。

こしあん北海道産小豆×白ザラメで、二つ三つと手で割って、口に運ぶと、パンの美味さとほどよい甘さのこしあん、それにきな粉が絶妙なマリアージュ津波となって、ドドと押し寄せてきた。こりゃ、すごいね。

この一見シンプルなのに、計算された複雑な美味さ、揚げパン界の横綱と言いたくなる。

 

こしあんのすっきりした余韻がとてもいい。

 

銀星あんこ:つぶあん

こしあんよりも小豆の濃さが印象的で、実に柔らかく、ふっくらと炊かれている。

小豆の風味が強いので、純粋あずき好きにはこちらの方がおすすめ。

 

私も大いに迷った。

 

さすが老舗和菓子屋さんのあんこ。

塩気がほんのりあり、それがつぶあんと揚げコッペ+きな粉+黒蜜の三角関係(四角関係?)をワンランク押し上げている。

 

どちらにも言えるが、あんこのボリュームも十分で、全体の味わいが意外にも甘すぎない。

 

なので、二つペロッと食べてももたれない(私の場合だが)。

プロフェッショナルのあげあんパン2種、金銀の味わいだった。

 

あっ、そうそう、私の食べ方は牛乳と熱いブレンドコーヒーを二つ用意した。

 

ウイスキーも合うと思う。

 

楽しみが二倍、三倍になるかもしれない。

 

●あんヒストリー

「高林堂」の創業は明治18年(1885年)。初代はここで修業した後、独立したが、高林堂自体に後継ぎがいなかったために屋号を引き継いでいる。一時経営難に陥ったが、3代目が「かりまん」かりんとう饅頭)を考案、ヒット商品となって、危機を脱出した。伝統と進取の気性に富んだ創作和菓子も人気。

 

「菓心庵 高林堂本店」

所在地 宇都宮市馬場通り3-4-7

最寄り駅 JR宇都宮駅から歩約6分

 

             



                    



 

 

 

 

 

 

 

 

 

仰天おしるこ三杯😅前橋の甘味処

 

ローカルの甘味処にはセピア色の夢がある。

 

と表現したくなる年季の入った甘味処を見つけた。

住宅街にポツンと一軒家、に近い感覚。

 

渋好みの私のあんこセンサーが「暖簾をくぐれ」とささやいた。

 

前橋市郊外にひっそりと(?)とたたずむ「甘味 十紋字」(じゅうもんじ)の看板と屋号。

 

十文字? 薩摩と関係がある?

 

★味わったメニュー

 田舎しるこ 700円

 御膳しるこ 700円

 白玉ぜんざい 600円

 ※すべて税込みです。

 

【センターは?】

田舎しるこのあまりに素朴なあんあん世界

 

同行した編集部のあん子くんが「編集長、いくらあんこ好きといっても、今回は食べすぎでしたね」と引き気味の展開となった。

まずは「田舎しるこ」「御膳しるこ」を食べ比べしようと二つ同時に注文した。

 

あん子くんは体調不良でコーヒーだけにした。

 

昭和な、本格的な、磨き抜かれた木のテーブルと小上がり。

 

シンプルなゴージャス、という世界もある。

白衣姿の店主が熱いほうじ茶を持ってきて、奥の板場に引っ込んでから約10分ほど。

 

二つの漆塗りのお椀が丁寧に置かれた。

 

受け皿が凝っていて、この店が本物を追及してきた甘味処とわかる。

 

蓋を取る。おしるこはこの瞬間がたまらない。

 

二つの小世界が香り豊かな湯気を漂わせてながら、眼下に。来た、来た。

 

田舎しるこ:茹でつぶあんと焼き餅2枚

大きめの焼き餅が2枚。その下に濃厚なつぶあん(茹であずきに近い)。

全体のボリュームがすごい。

 

小豆の皮まで柔らかく炊かれていて、甘さをかなり抑えている。

細かな泡(あく)をわざと残して、田舎しるこを演出していることがわかった。

 

店主によると「小豆は北海道産で、砂糖は普通の砂糖(上白糖)を使ってます。昔から同じ作り方ですよ」とか。

 

塩も利かせていて、その加減がとてもいい。

 

小豆の風味をじっくり楽しみたい人には極楽に近いと思う。

 

御膳しるこ:こしあんと焼き餅2枚

こちらはお椀が平たい。

焼き餅はつぶあんと同じ。絶妙な焼き加減と柔らかさ。

 

こしあんの色が藤紫に近い、上品なこしあんで、甘さも淡い。

穏やかな、ゆるめの自家製こしあんで、塩気もかすか。

 

なので、田舎しるこほどのインパクトはない。

 

ここは気品を取るか、素朴を取るか、好みが別れると思う。

 

私的には田舎しるこの方が好みかな。

 

白玉ぜんざい:大納言小豆+白玉5個

 

大納言小豆(北海道産)のあんこは冷たいが、白玉は温かい。

これは濃厚なつぶあんで、大納言小豆は粒々感がしっかりとあり、今回食べた中では一番甘い。

3杯目の怒涛の寄り(笑)。

 

白玉(自家製)がもっちりしていて、煮詰められた大納言小豆のくどさ(このくどさが悪くない)をいい具合に中和していて、3杯目を押し上げてくれた。

 

あん子「白玉ぜんざいもあんこの量がかなりあったので、編集長の胃袋が心配になりましたよ。止めても無駄、とわかってても(笑)。店の人も大丈夫かなって顔で見てましたよ」

編集長「さすがにギリギリだった。でもここで食べないと後で後悔する、ってわかってるので、とにかく食べる。他のお客さんがあんこ載せワッフルを注文していたので、それも食べたかったけど、無念、3杯で撃沈。でも、ここは私の中ではセピア色の穴場だよ。ワッフルは次回の楽しみに」

 

●あんヒストリー

創業は店主によると昭和52年(1977年)。もともとは横浜で甘味屋修業をしていたとか。「十紋字」という店名はやはり店主のルーツが薩摩(鹿児島)で、暖簾に丸十字紋はそのことを忘れないため。だが、「文」の字が「紋」と糸へんが付いているのが不思議で、聞いてみたら「店を開くときに書家の先生に頼んだら、間違って、糸へんを付けてしまった(笑)」とか。それをそのまま採用したようで、薩摩の「てげてげ文化」も受け継いでいる?

 

「甘味 十紋字」

所在地 群馬・前橋市上小出町2-23-24

 

              

          



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜増刊号:横綱格「いが栗まんじゅう」

 

これを初めて見たとき、「これが和菓子?」オーバーに言うと後じさりしたくなった。

 

どう見てもお赤飯のおにぎり。それもデカい。

 

中にお饅頭が潜んでいるとは、ね。

 

和菓子というより北埼玉地区の郷土菓子と言った方がいいかもしれない。

 

その名も「いがまんじゅう」。

 

で、今回。

 

さらに驚きは広がった。

 

中に砂糖漬けした大栗が一個、潜んでいた。独特のオーラが見えた。

「いがまんじゅう」の中では横綱、だと思う。

 

金星あんこ:いが栗まんじゅう。

 

埼玉・鴻巣「木村屋製菓舗」で出会った金星。創業約120年の老舗和菓子屋さん。

「いが栗まんじゅう」というネーミングもシャレている。

 

一個の大きさがかなりでかい。

サイズは75×70ミリ。ほぼまん丸。重さは約150グラムもある。一個税込み200円。

艶やかなお赤飯おにぎりを真ん中から切ったらごらんの通り。



「蒸かし立てで無添加づくりなので、本日中にお召し上がりくださいね」(女将さん)

 

〈味わい〉ほんのり塩気のあるお赤飯と蒸かしまんじゅうのマリアージュが見た目のミスマッチとは裏腹にめちゃくちゃ合う。

 

食べるとわかる、としか言いようがないかな。

最初はちょっと引いて⇒ガブリと行くと⇒もっちりしたささげのお赤飯⇒ふっくらまんじゅう⇒甘すぎない自家製つぶあん⇒シロップ漬け栗⇒それらが口の中で出会い⇒瓦解し⇒混じり合いとろけ合ってくる⇒極楽へ一直線・・・。

 

この味わいの七変化がたまらなく感じる(私の場合だが)。

 

〈あんこ〉つぶあんのこだわりにもすぐに気づく。

 

北海道産小豆を使用。砂糖がザラメの中でも純度が高い鬼ザラメを使用している。

 

じっくりと炊いているので、小豆の皮までスッと柔らかい。

全体が素朴なのに、中のあんこは雑味がない。スッキリとした気品さえ感じる。

 

小豆のいい風味だけを抜き出したようなあんこ。

 

去年、「&プレミアム」のあんこマニア対談でマガジンハウスを訪れたとき、これを手土産にしたら、おだんご先生や編集スタッフの皆さんが見た目と中身のギャップに驚いていた(してやったり気分)。座が和んだ。

 

●あんヒストリー 「木村屋製菓舗」の創業は明治38年(1905年)。現在4代目。4代目は東京の和洋菓子店で修業し、定番の生菓子から創作菓子まで伝統を守りながらチャレンジを続けている。鴻巣が「川幅日本一」(荒川)であることを記念して、日本一大きい「川幅どら焼き」(とにかくデカい)も作っている。

 

「木村屋製菓舗」

所在地 埼玉・鴻巣市氷川町4-4-4

最寄り駅 JR高崎線鴻巣駅東口から歩約3~4分

 

           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京の原点?😎豆大福&大最中&

 

東京・人形町(水天宮前)の三原堂本店から大正11年に暖簾分けした神田三原堂は東京でも有数の老舗の一つだが、これまで暖簾をくぐったことがなかった。

 

神田駅東口からすぐ、というのがへそが少し曲がったあんこ狂にとっては、避けていた気がする。

 

今回、思い立って敷居をまたぐことにした。

 

店構えが素晴らしい。

 

近くの「甘味処 竹むらほどの歴史的な木造建築ではないが、セピア色のある種モダンな、縦に細長いビル(大正・昭和のモダニズムの匂い)にあんこハートがときめいた。

木製の古い看板。「三原堂」の彫り文字。ガラス張りの店内。

 

店に一歩足を踏み入れると、江戸⇒東京のモダニズムの小世界が広がっていた。

★ゲットしたキラ星

豆大福(期間限定)280円

神田大最中 320円

どらやき 280円

くるみまん260円

栗まん  260円

あづま路 270円

 ※いずれも税込みです。

          

 

【個人的センターは?】

豆大福:杵つき餅の歯ごたえと濃厚なつぶあん

 

賞味期限が「当日中」なので、夜の賞味となった。

餅粉が盛大にかかっていて、赤えんどう豆が少ない(わざと少なくしているようだ)。

 

サイズは約60ミリ×55ミリ。重さは86グラムほど。

手に持つと柔らかなずっしり感

群林堂など赤えんどう豆の多さが売りの朝ナマとは一線を画している、一見素っ気ないようだが、むしろ江戸⇒東京の粋と野暮を体現したように感じる。

 

〈味わい〉夜になっていたので、餅が少し硬くなり始めていた。それでも伸びが十分にある。

 

しっかりと搗(つ)かれたきれいな餅で、赤えんどう豆が少ない分、「おい野暮天め、これが神田の粋ってもんだ」とつぶやいてるよう(勝手な解釈です)。

中のつぶあん濃い赤紫色で粒々がくっきりつややか。小豆の皮までしっかりと煮詰められている。

 

北海道産エリモショウズ×上白糖(白ザラメかもしれない)。

 

渋抜きもしっかりしてあり、それゆえにか、濃厚なのにすっきりしている。

塩気もかすかに感じる、

 

めちゃウマというより、心意気を感じる美味さ。

大福餅は江戸⇒東京の名物だったが、この豆大福はそのキリリとした餅の歴史を思い起こさせる、フツーにうめえ大福、と位置付けたくなった。

 

●あんヒストリー

東京には三原堂が4軒(人形町、神田、本郷、池袋)ほどあるが、いずれも人形町の「三原堂本店」から暖簾分けしている。神田三原堂は初代が人形町の「三原堂本店」で修業してから、大正11年(1922年)に暖簾分け。現在3代目。女将さんはクラシックの世界から祖父⇒父⇒と受け継いでいるようだ。モダンを感じるのはそのせいかもしれない。伝統と新しさが同居して、それが江戸の粋を受け継いでいるのかもしれない。「塩せんべい」のファンも多い。

 

【サイドは?】

神田大最中(おおもなか):創業当時からの最中で、菓銘どおりデカい。

70ミリ×24ミリほど。厚みは約24ミリ。

 

淡い焼き色の種(皮)はサクサクしていて、きれいな香ばしさ

 

手で割るとヒビの入り方と中のこってりとしたつぶあんにそそられる。

水飴も加えていて、テカリがドドドと迫って来る。

つぶあんのボリューム。

 

濃いあんこ好きにはたまらない最中だと思う。

 

どらやきこれも古くからの目玉の一つで、大きさは約80ミリほどで特に大きくはない。

手焼きのどら皮は濃い焼き色で、三原堂4店の中では最も濃いと思う。

 

見ようによっては不敵な面構え。

しっかり焼かれていて、小麦粉の間から新鮮な卵の香りがぐわんと来る。

 

中のつぶあんは恐ろしいほど濃い。

粒々感と甘めのあんこ。東京の野暮などらやき、と表現したくなった。野暮にもちゃんと意味がある。

 

焼き菓子3種:くるみまん、栗まん、あづま路。

この半生焼き菓子3種類は特に気に入った。

 

焼き色がまず素晴らしい。

 

「くるみまん」は中が潰しあんで、見事な焼き色の表面にはくるみが一個はまっていて、口に運んでから齧ると、カリッとしたくるみの風味が広がる。

私の好み。

 

「栗まん」は中が白あん(北海道産手亡豆)。栗ペーストが練り込まれていて、フツーに美味い、上質な栗饅頭だと思う。


「あづま路」
はかなり凝った半生焼き菓子。

皮の表面をよく見ると、日本画のようにも見える。

 

東の国(関東)の土の道のようでもあり、白い点々はなごり雪にも見えてくる。若草の予感も感じる。

中はこしあんがぎっしりで、くるみのかけらも入っているようだ。

 

これは食べた瞬間「うめえー」と言葉が漏れたほど。


正直に言うと、3種類の中でこれは一番気に入った。

 

伝統と斬新も感じる、半生焼き菓子で、余韻も長い。

 

《小豆のつぶやき》

▼京都のはんなりとも違う東京の小粋を感じさせる▼場所がらか価格は安いとは言えないが、それを納得させる職人さんの技術▼店の丁寧な応対もどこか洒脱で小粋▼名物の「塩せん」(塩せんべい)も買って食べたが、パリパリ感が際立っている▼あんこ菓子を食べながら、これを箸休めにすると、「東京の下町っていいなあ」と思えてくる。

 

「神田三原堂」

所在地 東京・千代田区鍛冶町2-2-7

最寄り駅 JR神田駅東口すぐ