古都・足利の古印最中(こいんもなか)は昔から大好きだったが、ある時期、甘さの強さと皮種の崩れ方が気になって、しばらく離れていた。
だが、それが私の間違いだったこと(イベントでゲット、賞味期限ぎりぎりだった)に気づき、数年ぶりに足利本店を訪ねてみた。
通りにある「香雲堂本店」(こううんどうほんてん)へ。
たまたま季節限定の「古印最中 桜」が置いてあった。
老舗の重厚な、シャレた店構え。
相田みつをが捧げた「ひとつのことでもなかなか思うようにはならぬものです」うんぬんの書が額に飾られている。
足利文化の奥行き。
★ゲットしたキラ星
古印最中(5個箱入り)960円
同 桜2個 230円×2個
※価格は税込みです。
【センターは?】
季節限定「古印最中 桜」の桜葉入りあんこの強烈度
これまでは私的には古印最中一択だったので、季節限定「桜」を食べるのは今回が初めて。
桜色の皮種が春の予感。
ラッキー、とあんココロがときめいた。
〈形とサイズ〉
定番の古印最中とほぼ同サイズだが、ほぼ真四角の頂上に獅子頭のようなものが鎮座している。おもろ。
「獅子ではなく虎です。北條氏の虎印なんですよ」(スタッフ)
世界最古の学校・足利学校に残っている古印の一つのようで、「桜」はそれを採用しているとか。
左右約55ミリ、天地は虎頭も含めて約68ミリ。重さは67グラムほど(包装込み)。
桜色の美しい皮種をゆっくり剥がしてみると、黒曜石のような光沢を放ちながら、見事なつぶ餡が「ようこそ」と魅惑的な笑みを浮かべた。そのボリューム。
ある種、恐るべき妖艶なつぶ餡・・・。
つい真っ赤な口紅を連想してしまった(勝手な妄想です)。
〈味わい〉
しっかりとした皮種が私の昔の思い違いを訂正してくれる。す、すまん(汗)。
一個が大きいので、半分に切ってから、賞味する。
桜葉のいい香りがほんのりと来た。
桜餅と同じ香り。
何よりぎっしりと詰まったつぶ餡が秀逸。
やはり甘さがかなり濃厚で、塩漬け桜葉の香りがいいアクセントになっている。
このテカリを四方に放つつぶ餡、よく見ると、しっかりと大粒小豆の粒感があるのに、歯がすっすっと入る。
驚くほど柔らかくて、しかもねっとりもしている。
噴き上がる小豆のコクと風味。それに桜葉のそよ風。
水飴と寒天の配合がとてもいい。
やはりすごいあんこだと思う。
北海道十勝産大納言あずきを使用していて、ホームページには「代々受け継がれている煮崩し法」でじっくり煮詰めている。
煮崩し法というのがよくわからないが、煮詰め方に何か秘伝があると思う。
塩漬け桜葉の存在だが、よく見ても姿が見えない。
本店に電話して聞いてみたら、「とても細かくして入れているんですよ。なので、見えにくいかもしれません」とか。
秘すれば花、のもなか版ということのようで。
定番:古印最中
賞味期限は約1週間だが、今回は本店でゲット、その日のうち(夜)に食べたので、皮種のしっかりとした硬さとサクっとした歯ざわりが素晴らしい。
何よりもあんこ。
かなり甘いが、その甘さにコクがある。
テカリが尋常を超えている。
ふくよかに煮詰められた、風味マックスの濃密なつぶ餡。
ほんのり塩気。
こちらは重さが桜よりも少し重い71グラムほど。かなりの重量感。
首都圏でもファンが多いのもよくわかる、関東の逸品だと思う。
緑茶で2個食べたら、結構お腹にずしんと来た。
●あんヒストリー
▼創業は明治元年だが、江戸末期の古文書にも「香雲堂」の記述があるそうで、歴史はかなり古い▼だが、当時から和菓子屋ではなかったようだ▼店の話では洋食レストランや喫茶店を営んでいたようで、この店のもう一つの名物「瓦せんべい」や古印最中は戦後、5代目の代になって作り始めたようだ▼当時は文化サロンの役割も担っていたとか▼当時無名だった相田みつをが店に来て、宣伝文を書かせてほしいと依頼したのも背景を知ると、なるほどと思えてくる。
「香雲堂本店」
所在地 栃木・足利市通4丁目2570