週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

京菓子だった😎青森「くじら餅」食べ比べ

 

みちのくあんこ旅で立ち寄ってみたかったスポットの一つが青森・浅虫温泉「永井久慈良餅店」(ながいくじらもちてん)。

くじら餅だって?

鯨餅、くじら餅、久持良餅、久慈良餅・・・エリアによって表記が少しずつ違うが、ほとんど同じものと考えていいと思う。

 

蒸し羊羹やういろう、あるいはくるみゆべしのような、蒸し菓子の一種。素朴度がスーパークラス

 

意外なことに、もともとが京菓子(今はないようだ)で、江戸時代に北前船で青森までたどり着いたという説が有力だが、去年楽天ソレドコで「47都道府県あんこ菓子」を書いたときに、青森県代表(あくまでも個人的な選択です)としてご紹介しています。

soredoko.jp

 

さて、その浅虫温泉。目の前に陸奥湾が広がり、つい日帰り入浴を楽しんでしまったが、くじら餅をつくっている店が永井久慈良餅店の他にもう一軒「菊屋もち店」が暖簾を下げていることを知った。

あんこの神様がほほ笑んだ気がした。

 

で、この2軒のくじら餅、どちらも表記は「久慈良餅」浅虫温泉名物と表記してあった。

 

つい野次馬根性で食べ比べしたくなった。

 

★今回ゲットしたキラ星

 永井久慈良餅店 1棹 500円(税込み)

 菊屋もち店   1棹 500円(同)

 

永井久慈良餅店vs菊屋もち店

●外見は?

ごらんの通りパッケージのデザインはよく似ている。銀紙を開くと、微妙に違う(左が永井、右が菊屋)。

永井久慈良餅店:銀紙にくるまれた本体は気品のある薄い小豆色で、名称の由来の一つとなった塩漬けしたくじらの皮の脂身のようにも見える。

 

クルミが点々と練り込まれている。

サイズは約190ミリ×68ミリ×厚さ20ミリ。重さはパッケージ込みで約303グラム。

菊屋もち店:永井久慈良餅店よりも少し大きい。見るからにもちもち感があり、こしあん色がやや強めで藤紫色っぽい

サイズは約185ミリ×70ミリ×厚さ20ミリ。重さはパッケージ込みで約330グラム。

●味わいは?

永井久慈良餅店:去年お取り寄せした時よりも、早めに食べたせいか美味しく感じた。

 

素材は米粉津軽産)で小豆(こしあん)を加えて練り上げ、蒸しかごで時間をかけて蒸している。無添加づくりなので賞味期限は約1週間と短い。

小豆は北海道産、砂糖は上白糖を使用。

 

塩気が強く、全体的には薄甘い。なのであんこの甘さを期待し過ぎると裏切られる。

 

歯切れのいい、ほどよい柔らかさ。

 

点々と練り込まれているクルミが利いていて、食べ進むうちに、素朴な旨味がじわじわと押し寄せてくる。クルミの歯ごたえと香ばしさ。

あれっ、次第に手が止まらなくなる。

 

今どきの刺激的な美味さとは別の世界だと感じる。

 

にじむような塩気の絶妙がたまらない。

江戸⇒明治の湯治客がハマったのが何となく理解できる気がする。

 

お取り寄せしたときはフライパンで焼いてマーガリンを塗って食べてもみたが、個人的にはこのまま早めに食べたほうがこの珍しい蒸し菓子を楽しめた。

 

知らないうちに余計なものが付いてしまった自分の舌をリセットするのにもお勧めしたくなる(これも余計なお世話だが)。

 

菊屋もち店:手にくっつく柔らかさ。小豆色が濃いめクルミの点々はほぼ同じくらい。

正直に言うと、見た目でこしあんの量が多そうだったので、あんこ好きとしては胸がときめいた。

 

だが、その柔らかさが好みの分かれるところだと思う。

永井は米粉中心でもち米は入っていない、こちらは米粉にもち米をブレンドしているようだ。

 

ムニュリとしたやさしい味わいで、永井の歯切れの良さとは食感が少し違う。

あえて表現すると、永井は江戸風、こちらは京都風と言えなくもない。

 

きりりとぼよよんの違い。

 

個人的には食べ進むうちに永井の方が飽きが来なかった。

 

とはいえ菊屋は「笹もち」や最中など他の和菓子もつくっていて、そちらはあんこを含めて、いい味わいだった。

 

●あんヒストリー

くじら餅(鯨餅)は京都が発祥という説が有力で、北前船の港町として栄えた津軽鯵ヶ沢あじがさわ)にはこれをつくる店が数店あった。現在は一軒しか残っていない。永井久慈良餅店はこの鯵ヶ沢で誕生し、浅虫温泉の本店はここから明治44年(1907年)暖簾分けしたようだ。山形・庄内エリアにも「久持良餅」と一字違いでほとんど同じものがある。持ちがよく、保存食として大いに愛された歴史もある。「久しく持つ」と「久しく慈しむ」。ネーミングの違いも面白い。

 

《小豆のつぶやき》

▼あんこ狂としては、あまりに素朴、あまりに地味系和菓子なので、正直に言うと、数年前までほとんど関心がなかった▼だが、京都の古い菓子のレシピに「鯨餅」が書かれていると知って好奇心がむくむく▼今回、青森まで足を運んで、浅虫温泉周辺を歩いたら、陸奥湾の美しさと源泉かけ流しに全身が癒され、2軒のくじら餅店の佇まいも心に刺さった▼北前船のすごい歴史を重ね合わせると頭がくらくらしてきた。

 

「永井久慈良餅店」

所在地(本店) 青森・大字浅虫字坂本51-5

「菊屋もち店」 

所在地 青森・浅虫蛍谷64-3