栗饅頭(くりまんじゅう)は正直、苦手だった。
どこにでもあり、その食感に大差はないと思っていた。
あんこ好きとしては番外に位置する和菓子。
だが、出版社の敏腕編集者が「虎ノ門岡埜栄泉(とらのもんおかのえいせん)」の栗饅頭を食べたら、「めっちゃ美味かった」とメールを送ってよこした。
ふーん。あの左党がねえ、と思い直した。女房が「あそこは豆大福が有名だけど、栗饅頭の方が美味いわよ。昔食べたことあるでしょ?」と冷ややかに言った。遠い記憶。
で、虎ノ門に行ったときに、立ち寄った。だが、あいにく午後5時を過ぎていたので、店は閉まっていた。残念。
で、思い出したのがもう一軒の名店「和菓子 丸万(まるまん)」だった。
知る人ぞ知る「霞が関官公庁御用達」の和菓子屋さん。
ここの栗饅頭も評価が高い。午後8時まで開いていたので、こっちをゲットした。
小ぶりだが、見事な栗饅頭で、卵黄のテカりと栗色の皮に見入ってしまった。
中の白あんは細かい栗が煉り込まれていて、柔らかな皮との相性が絶妙だと思う。
何よりも蜜煮されたきれいな栗が一個、丸ごと入っている。
この栗の食感が固めできりりとしていて、柔らかな白あんと対照的。それがいい塩梅だと思う。
格別に美味いというよりも、さり気なく美味い。
なので虎ノ門岡埜栄泉や老舗の名店「人形町 清寿軒」ほどの感動はないかもしれない。
だが、栗饅頭のいい風味と口の中でとろける感覚はやはり格別だと思う。
白あんは北海道産手亡豆を使用している。控えめな甘さが歴史を感じさせる。むろん無添加。スーパーなどでよく売られている、添加物が一杯入った栗饅頭とは手間ひまのかけ方が違う。
一個190円(税別)だが、箱入りをおすすめしたい。6個入りが1340円(箱代込)。やや高くなるが、しっかりした箱と包装が粋だと思う。
「もちろん国産の栗を使っています」(店員さん)
創業が昭和22年(1947)。戦後の日本を支えた霞が関のお役人たちがここのお得意さんでもある。
最近は官僚の質が落ちるような事件が相次いでいるが、この栗饅頭の質は落ちていない。昔のまま。
なので、お役人の皆さん、ここの手間ひま惜しまず作られた栗饅頭をちゃんと味わってほしい。
声を大にして言いたい。勝ち栗に乗るだけが仕事ではないぞ、と。
所在地 東京・港区西新橋1-11-1