虎屋、といえば言わずと知れた和菓子界の頂点の一つ。
室町時代に創業し、皇室御用達の名店として君臨し、明治維新後、天皇とほとんど一緒に東京・赤坂に本店も「遷都」してきた。
だが、もともとは饅頭屋(諸説ある)で、京都御所近くに旧本店がある。
その虎屋菓寮一条店で、「氷あずき」(税込み 1296円)をいただいた。
あんこ界の総本山といえなくもない。
庭園を見ながら、ゆったりとした気分で、「氷あずき」を待つ。
ガラスの器に富士山のようなかき氷。和三盆の茶色い蜜が頂上からたっぷりとかかっていた。
それだけで最近の派手な、奇をてらったかき氷とは違うことがわかる。
かき氷は水分を多く含み、スプーンで口に入れた瞬間、柔らかな洗練が自然な甘みを引き連れてくる。ヘンな例えだが、牛車に乗った高貴な味わい。その深いシンプル。
中のあずきは皮まで軟らかく炊かれていて、こってりした甘さ。量も申し分ない。
十分計算された氷の温度と洗練された和三盆、主役のあずき。
これがかき氷の頂点の味か?
京都に住む友人(恐るべき舌の持ち主)が、「虎屋一条店のかき氷を食べないと、かき氷は語れまへん」と言っていたことが頭をよぎった。
さり気なく、深い。
あずきは丹波産大納言かと思ったら、「いえ、十勝産です」。
1296円は場所代も含んでいる。