京都に住む和菓子好き友人が建仁寺大本山で「空也(くうや)」の最中(もなか)を賞味しながら、こう言い放った。
「空也の最中も美味いが、壺屋の最中にはかないまへんで。ま、東京では一番でしょうな」
建仁寺は松原通にある菓子司「松壽軒(しょうじゅけん)」が御用達だが、それは別格として、東京・本郷三丁目にある「壺屋(つぼや)総本店」の最中を絶賛した。
東京では銀座にある「空也」の最中が最高峰だと思うのだが、それよりも「壺屋」を上位に置いた。
その壺屋の最中「壷形最中(つぼがたもなか)」がこれ。
こしあん(1ケ税込み190円)とつぶあん(同200円)、2種類ある。
創業が江戸時代初期の寛永年間(1624~1645年)。現在なんと18代目。
庶民(町人)が開いた最初の和菓子屋で、本郷三丁目の総本店に行くと、「江戸根元(えどねもと)」の文字と黒暖簾が下がっている。
徳川幕府が終わり、明治維新に切り替わるときに、暖簾をたたもうと思ったが、勝海舟から「辞めるのはもったいねえ。おめえんとこの最中を楽しみにしている江戸っ子が泣くよ」と直々に説得され、廃業せずに今日まで来ているという。
総本店だが、ここ一軒だけ。暖簾を広げないのが凄い。
壷形最中は一個が大きい。
皮種は自家製で、パリパリサクサク感と香ばしさが並みはずれている。
あんこは北海道産小豆を使用、白ザラメ、水飴でじっくりと炊き上げている。
ぎっしりと詰まった密度の濃いこしあん。羊羹のようなねっとりした食感。
私の好みはどちらかというと、つぶあん。小豆の風味がひと回りほど強い。
アクの強い、どしっとした存在感。あんこのテカり。
空也の洗練とは別世界の重みのある味わい。
むろん、好みもあるが、勝海舟が愛したのがわかる気がする。
所在地 東京・文京区本郷3-42-8