週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

あんこ極楽、小田原宿「粒あんころ餅」

 

あんこ餅あんころ餅

 

この違いがよくわからない。ほとんど同じものだと思うが、語感的には「あんころ」に惹かれる。コロコロ転がるイメージで、どこかユーモラス、日本昔話に出てくるよう。

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一説では「あんころ」は餡衣餅(あんころももち)から転じた、つまり餅をあんこで衣のように包んだ餅、というわけだが、そうなると、伊勢の赤福やおはぎまでも広い意味であんころ餅一家に入るかもしれない。

 

「あんころ餅」を商品名にしているのは、石川・白山市にある「圓八(えんぱち)」が知られるが、江戸時代から続く老舗で、3年ほど前、本店を取材したら、竹皮に包まれた小粒のあんころ餅だった。

 

素朴なこしあんに包まれた柔らかな粒餅が9個ほど。竹皮の香りがうっすらと滲み込んでいて、江戸時代にタイムスリップした気分になった。甘さを抑えたクセの強い味わいだった。

 

さて、本題。

 

あんこ旅の途中で、久しぶりに小田原宿に立ち寄った。東海道五十三次の歴史はダテではない。かまぼこやういろうも魅力的だが、この城下町にはいい和菓子屋も多い。

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豆大福で知られる「小田原伊勢屋」もその一つ。

 

ここで出会ったのが粒あんころ餅」だった。あんこ餅ではなく、粒あんころ餅(1パック税込み378円)。

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胸がピコピコときめいた。

 

だが、私のイメージするあんころ餅ではなく、とろりとした粒あんがちぎり餅(4~5個ほど)の上に乗っかっていた。

 

これはこれでそそられる。

 

豆大福(同183円)や珍しいフルーツ羊羹と一緒にゲットし、せかせかと近くにある歴史的な建造物「小田原宿なりわい交流館」の一角で食べることにした。

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「添加物は使ってないので、お早めに、今日中にお召し上がりください」(女性スタッフ)

 

プラスチックの容器が圓八本店に比べると、情緒がないが、実用的ではある。

 

直球勝負がくすぐられる。

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上から見ると、あんこの海!(絶景かな)

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粒あんはテカリがすごく、かなり甘い。この濃厚は水飴も加えているのかもしれない。

 

餅は杵でしっかり搗いた餅で、柔らかく、きめが細かい。

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こってりした粒あんがよく絡む。塩気は感じない。

 

口の中があっという間にあんこ極楽になる。たまらない。

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個人的にはあんころ餅というより、これはあんこ餅だと思う。

 

1パックぺろりと平らげると、さすがに抹茶が欲しくなった。

 

小田原「伊勢屋」は創業が昭和10年(1935年)。現在3代目。「昔ながらの手作り」が売りで、定番の豆大福は創業時と同じ製法を続けている。

 

一息ついてから、人気の豆大福にも手を伸ばす。

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餅の柔らかさと赤えんどう豆の存在感がとてもいい。

 

中のあんこはつぶしあんで、こちらは甘さが控えめ。

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素朴な小豆の風味が口いっぱいに広がる。

 

店主の手の匂いのする、これは上質な豆大福だと思う。

 

食べ終えてから、再訪問。餡作りについて尋ねると、毎日銅釜で炊き、北海道産小豆を使用、上白糖で練り上げているそう。

 

フルーツ羊羹もこの店の売りの一つだが、今回はそこまで手が伸びなかった。残念。

 

「小田原伊勢屋本店」

所在地 神奈川・小田原市本町3-6-22

最寄り駅 JR小田原駅から歩約12分

 

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6代目の「いが饅頭」とみたらし

 

編集長「饅頭オリンピックがあったら、北埼玉のいがまんじゅうは規格外部門で推したいね」

 

あん子秘密のケンミンショーなどで、日本の饅頭ファンをびっくりさせたあの饅頭ね。饅頭をお赤飯で包むなんて、フツーはあり得ない(笑)」

 

編集長「羽生、加須、鴻巣、行田など埼玉でも北東に位置するエリアで昔から縁起物として作られていた郷土菓子で、お赤飯で包むのは魔除けの意味もあると思うよ。コロナ変異種も裸足で逃げ出す(笑)」

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あん子「それで? 今日はそのいがまんじゅうが主役?」

 

編集長「いい店は一杯あるけど、羽生市ですごい店を見つけたんだ。創業が慶応元年(1865年)、現在6代目。店構えは田舎の和菓子屋さんって感じだけど、作ってる和菓子のレベルが驚きだった。あるんだよ、こういう隠れた名店が」

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あん子「また始まった、と言いたいところだけど、饅頭ばかりでなく、だんご・大福類、最中類、煉り切りまで6代目が一人で作っているのが驚きよね」

 

編集長「あんこもすべて自家製。しかも安い。今回は結局2回行って、じっくり話を聞いたら、素材選びも田舎の和菓子屋レベルではなかった。『菓子司 まつのや』の看板が銀色に渋く輝いて見えたよ」

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あん子「私はこしあん入りみたらし団子に感動したけど、今回はセンターに何を置くのか迷うわね」

 

編集長レモン水まんじゅうも新しいチャレンジとして押したいし、黒糖饅頭『うさぶろうまんじゅう』もかなりのレベルだった。迷ったけど、珍しいという意味で今回はいがまんじゅうにしたよ」

 

あん子「饅頭オリンピックを意識したというわけね(笑)。ではよーい、スタート!」

 

【本日のセンター】

いがまんじゅうvsこしあん入りみたらし団子

 

10年ほど前「いがまんじゅう」を初めて見たとき、あまりのミスマッチぶりに引いてしまったが、ダメモトで食べてみたら、お赤飯と饅頭が意外にマッチしていることに二度ビックリした。

 

以来、これまで8~10軒のいがまんじゅうを食べたが、店によって見た目も味わいも微妙に違うことがわかった。

 

最も感動したのは鴻巣市(旧川里地区)の「一福菓子店」のものだった。

 

見事なお赤飯が裏側までびっしり付いていて、しかもデカい。中の饅頭も素朴に上質で、あんこは北海道産小豆を使った自家製こしあんだった。甘さが抑えられていて、ご高齢ゆえか店主の作る数は限られていて、それもあってか、午前中で売り切れてしまうことも多かった。

 

だが、平成29年、惜しまれながら閉店してしまった。

 

で、本題。この「まつのや」のいがまんじゅうである。

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1個130円(税込み)。重さは110グラムほど。「一福菓子店」ほどデカくはないが、見事でつややかなお赤飯にまずほお~となってしまった。裏側までびっしりと覆われ、手抜きが見えない。

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地場のもち米を使った、蒸かし立ての柔らかな食感とささげの風味に「一福菓子店」以来のときめきがよみがえった。

 

中の饅頭はもちろん自家製で、北海道産小豆を炊いたこしあんは甘さがほどよく抑えられていて、「うんめえ」と方言がつい漏れてしまった(ホントです)。

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素朴というより洗練されたいがまんじゅう。

 

取材時、6代目の口からあんこへのこだわりを聞いて、ちょっと驚く。

 

ほぼ毎日作るあんこは6種類ほど。砂糖はザラメが中心。

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使う小豆も和菓子によって使い分け、北海道産豊祝小豆や雅(みやび)など、暖簾のある京都などの老舗和菓子屋が使うレベルと遜色がない。

 

ローカルの老舗(あまり高い値段は付けられない)の心意気さえ感じる。

 

もう一品。こしあん入りみたらし団子は餅の柔らかさが尋常ではない。

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1本80円(税込み)。コスパ、すご。

 

うるち米地場の彩のかがやきを使い、みたらしの甘辛が絶妙。中はこしあん(自家製)で、きれいな小豆の風味が来る。雑味がない。

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添加物ゼロなので、日持ちがしないが、残りを翌日食べたら、十分に美味かった。

 

あん子こしあん入りのみたらし団子は最近は珍しくないけど、これは私の中ではトップ3に入るかな。とにかく団子の柔らかさがマックスね。この値段でよくやってると思うわ」

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編集長「6代目は東京の製菓学校を出て、店を継いでいる。地元を盛り上げようと一生懸命で、黒糖饅頭の『うさぶろうまんじゅう』渋沢栄一とともに幕末パリ万博に行った清水卯三郎(羽生出身の商人)の名前を冠している。渋沢栄一がブームになる以前から作っているんだ。これも掛け値なしに超が付く美味さ。饅頭オリンピックがあったら、ホント埼玉代に押したいよ」

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【本日のサブ】

・レモン水まんじゅう(税込み140円)

〈寸評〉冷蔵庫に30分、冷やしてから食べた。葛粉を使ったプルプルした半透明の皮の奥にレモン色のあんこ。目にも涼しい。北海道産白いんげんのあんこにレモンの搾り汁を加えたもの。レモンの酸味がさわやか。6代目のアイデア生菓子。

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・水まんじゅう(同)

〈寸評〉夏の定番だが、私的にはオーソドックスな味わい。こしあんのみずみずしさ。レモン水まんじゅうほどの意外性はないが、ファンも多い。

 

「菓子司 まつのや」

所在地 埼玉・羽生市中央4-8-19

最寄り駅 東武伊勢崎線羽生駅から歩約7分

 

 

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「松ヶ枝餅」5レンジャー食べ比べ

 

編集長「北の後は南のあんこ! 今回は九州・福岡からお取り寄せしたよ」

 

あん子「わかった、編集長の大好きな太宰府天満宮梅ヶ枝餅でしょ?

 

編集長「惜しい! 梅ヶ枝餅ではなくて、松ヶ枝餅(まつがえもち)。外見も中身もそっくり。言われなければ、梅が枝餅だよ」

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あん子「梅と松の違いだけ? そんな餅があるなんて知らなかったわ」

 

編集長「正直に言うと、私も知らなかった。でも、調べてみたら、梅ヶ枝餅より古いんだよ。太宰府天満宮ではなく、もっと古い宮地嶽神社の門前で売られている、まあ地元の人に言わせれば、梅が枝餅のルーツだとか。ちょっとびっくり」

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あん子「で、お取り寄せしたのは?」

 

編集長「門前には8軒ほど店舗があるようだけど、その中でもクール便(冷凍便)に対応している『宮地館(みやじかん)』を選んだ。イニエスタに敬意を表して、楽天から取り寄せてみたよ」

 

あん子「意味わかんない。イニエスタが戸惑うわよ。で、特徴は?」

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編集長「これが凄いんだよ。定番の松ヶ枝餅(白)だけでなく、抹茶餅、ごま餅、よもぎ餅、それにさくら餅の5種類松ヶ枝餅5レンジャーと呼びたくなる。たぶん宮地館だけだよ。梅ヶ枝餅にはこんな5種類ものバラエティーさはない。古くて斬新と言えなくもない」

 

あん子目からあんこってわけね(笑)。どれどれ実食と行ってみましょう」

 

【本日のセンター】

つぶあんとの相性が松!抹茶餅の絶妙

 

5種類×2=計10個。冷凍便で届いたものを電子レンジで約40秒ほどチンしてみた。さらにオーブントースターで約7~8分。

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表面がこんがりと焼け、門前で買うのとほとんど同じ松ヶ枝餅を試食してみた。

 

定番の松ヶ枝餅(白)米粉と餅粉の配合や食感が梅が枝餅と変わらない印象で、中の自家製つぶあんも濃厚素朴な風味で、目隠しテストをしたら、10人中8~9人は「梅が枝餅でしょ?」と答えると思う。

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私がこれまで食べた梅ヶ枝餅の中では「小山田茶店(元祖といわれる)と似た味わい。

 

特に素朴なあんこ、だと思う。どこか野暮ったさが残る。

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つぶつぶ感がはっきりしていて、甘さがやや控えめ。塩気もある。

 

餅の存在感が私がこれまで食べた梅が枝餅よりあると思う(1~2ミリの違いだが)。

 

宮地館は創業が1939年(昭和14年)。80年ちょっとの歴史で、現在3代目。

 

なので、思ったほどの歴史はないが、松ヶ枝餅自体の歴史は少なくとも江戸時代まで遡るようだ(一説には平安時代説もある)。

 

宗像大社の大社餅もほとんど同じ系統の焼き餅なので、梅ヶ枝餅文化圏」が福岡の広い範囲で昔から存在していた、と考えるのが近いかもしれない。

 

タイムマシンでもない限り、元祖がどこかは今のところ不明としかいようがない(笑)。

 

さて、本題。

 

5種類の中で個人的にもっとも気に入ったのは、実は抹茶餅だった。

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抹茶の清冽な香りが濃厚なつぶあんに絶妙に合っていると思う。

 

ふっくらと炊かれたつぶあん塩気もほんのりと来る。

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気になって、宮地館に電話取材したら、抹茶は上質の八女茶(やめちゃ)を使っています」とか。福岡の銘茶。

 

風味がきれいなはずだよ。

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つぶあんのこだわりも添加物ゼロの自家製で、北海道十勝産小豆を使用し、砂糖は上白糖。創業当時からの製法を継承しているとか。

 

とろみと柔らかなつぶつぶ感。

 

八女抹茶餅のさわやかなパリパリ感と中のもちもち感が昔ながらのあんこの素朴を引き立てている、そんな感じかな。

 

【本日のサブ】

・ごま餅

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〈寸評〉黒ゴマが表面をびっしりと覆っていて、これがゴマ好きにはたまらない。中のつぶあんは5種類とも同じだが、焼かれた黒ゴマの風味が全体を覆っている。つぶあんがやや甘めに感じた。

 

よもぎ

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〈寸評〉口に入れたとたん、よもぎの香りが広がる。オーブントースターで焼くことでよもぎ餅と中のつぶあんがいい具合に蕩ける。

 

・さくら餅

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〈寸評〉塩漬けした桜の葉は地場産。餅もうっすらとピンク色で、8月下旬だというのに、春の予感を漂わせる。京都は道明寺、東京は小麦粉、福岡・福津は餅粉と米粉つぶあんとの相性も悪くない。

 

【本日のお取り寄せ】

今回は楽天市場から注文しました。

5種類10個入り   2600円(送料込み)

 

「宮地館」

所在地 福岡・福津市宮司元町2-1

 

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驚きの創作羊羹「りぶれ」か「頂」か

 

編集長「東北に行く予定が緊急事態宣言延長で足止め食らっちゃったよ。地方から見れば首都圏はコロナ密集地帯だからね。でも、お取り寄せという手がある(笑)」

 

あん子「もったいぶっちゃって(笑)。山形の『乃し梅本舗 佐藤屋』の不思議系羊羹でしょ? 情報が遅すぎるわよ」

 

編集長「バレたか。以前、会津若松の老舗「長門屋」の『羊羹ファンタジア』を取り上げたけど、あまりに斬新で、驚いた。今回もうわさには聞いていたけど、江戸文政年間創業の老舗が伝統を守りつつ、とんでもない羊羹を作っていたんだね。みちのく老舗の底力を感じさせられるよ」

 

あん子「京都好きの編集長も驚いた(笑)。羊羹というより洋羹って感じね。洋の字が違う、和洋折衷の傑作かもね。和菓子だけの発想を超えてる」

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編集長8代目が面白い職人さんで、ちょっとびっくりさせることが好きらしいよ。洋酒入りの黒糖羊羹とはちみつ漬けのレモンを閉じ込めた錦玉羹(きんぎょくかん)を2層仕立てにするとはね。その名も『りぶれ』スペイン語で自由という意味だよ」

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あん子「7年くらい前に日本橋三越『全国銘菓展』でデビューしたんでしょ? メディアでもちょっとした注目を集めて、東北に佐藤屋あり、ってなったのよね」

 

編集長「よく勉強したね(笑)。でも私が気に入ったのはそれよりも『頂(いただき)』の方だよ。白あんをベースにした淡いブルーと道明寺粉の白がきれい。淡白で上品な創作ようかんなんだよ。こっちをセンターにしたい」

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あん子「また対決にしたいんでしょ? 大人の濃密すぎる味vs淡白できれいな味。創作ようかん対決ってわけね」

 

【本日のセンター】

〈青コーナー〉

新選組か山形カラーか?空色の創作ようかん

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1本税込み1000円。宅配便で届いた翌日に開けてみたら、きれいな紙箱から美しい2層羊羹が現れた。おおって感じ。

 

青というより空色。それに白い雲を表す白。山形の山々をイメージしているようだ。

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1本のサイズは約150ミリ×35ミリ×35ミリ。重量は約230グラム。

 

8代目が熱烈なモンテディオ山形のサポーターで、そのチームカラー青のイメージもあるとか。遊び心がおもろ

 

北海道産白いんげんをベースに青く着色している。

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包丁で切ると、その美しさは目でも楽しむ和菓子の伝統を受け継いでいるのがわかる。

 

食感は白練り羊羹そのもので、むしろ淡白な味わい。

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ほのかに柚子(ゆず)の香りもする。

 

上段の白は地場の道明寺粉を蒸し上げたもので、雑味のない餅粉の香りが空色の羊羹とよく合っている。

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余韻がきれいでなぜか心まで洗われるよう。

 

職人のレベルの高さがわかる一品。

 

ちなみに見出しの新選組うんぬんは正しくはない。色と模様が少し似ていただけ。ついちょっと遊んでしまった。

 

〈赤コーナー〉

山形というよりアルゼンチン? あまりに官能的な創作ようかん

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「りぶれ」は1本税込み1200円。今回のお取り寄せはこの「りぶれ」と「頂」、それに「いしずえ」(3個入り 同1000円)の3品。

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どう見ても主役は「りぶれ」で、一番大きい。

 

サイズは約163ミリ×80ミリ×35ミリ。重量は約500グラム。

 

何も知らなければ驚きはこれが一番だと思う。

 

凝った紙箱を紐解くと、中から真っ黒い黒糖羊羹が現れた。

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説明書を読んで、上下をひっくり返してみると、これがびっくり。

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琥珀色(こはくいろ)の錦玉羹(寒天と砂糖を煮詰めたもの)になっていて、蜜漬けのレモン(輪切り)が閉じ込められていた。

 

やっぱりすごいね。まさに琥珀だよ。

 

黒糖とラム酒、それにレモンの濃厚な香りが鼻腔にズカズカ侵入してくる。

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創作ようかんだが、山形というよりもアルゼンチンタンゴの濃密な、ある種官能的な夜の世界が脳裏に浮かんだ。

 

これは好き嫌いがあるかもしれない。

 

滲み出ている蜜が手にべたべたするのが少々やっかい。

 

だが、切り分けて口に運ぶと、その大人の濃密さがたまらない。

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黒糖とラム酒、レモンの酸味と苦み。

 

抹茶やコーヒーにも合いそうだが、白ワインやウイスキーにも合いそうだ。

 

8代目の「和菓子をちょっと自由に」というキャッチフレーズがなるほどと思えてくる。

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8代目は京都の老舗和菓子屋で5年間ほど修業している。

 

それも職人修業よりも配達(営業)で京都の和菓子文化を血肉化していったようだ。

 

実家に戻り、そこから凄腕の職人さんに囲まれ、切磋琢磨し、今では和菓子職人としての腕はもちろん、イデアマンとしても注目を浴びる存在になっている。

 

「佐藤屋」は洋菓子にも力を注ぎ、垣根を超えた新しい和スイーツづくりにも取り組んでいるようだ。

 

とはいえ、山形の伝統菓子「のし梅」や基本の饅頭類も守り続けている。そこが素晴らしい。

 

創作ようかんも含めて、コスパもとてもいい。京都もいいが東北もあなどれないと思わせられる。

 

〈おまけ〉 「いしずえ」(3個入り 同1000円)。黒糖羊羹の上に蜜漬けしたいちじくを乗せたもの。驚きはないが、日本茶やコーヒーに合うと思う。

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・本日のお取り寄せ

直接電話で注文しました。

りぶれ   税込み 1200円

頂(いただき)   1000円

いしずえ      1000円

合計        3200円

        (送料は別途)

 

「乃し梅本舗 佐藤屋本店」

所在地 山形・山形市十日町3-10-36

 

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水運の町の大親分まんじゅう

 

編集長東京オリンピックの次は饅頭オリンピックだよ。あんこ好きはゆるーくこの指に止まってほしい」

 

あん子「そんなオリンピック、聞いたことない(笑)。ここんとこ饅頭が多いから変だと思ってたけど、編集長の頭の中ではオリンピックのつもりだったのね」

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編集長「あんこワールドに休みはない。で、今日はいい和菓子屋さんを見つけた。饅頭が5~8種類、それも添加物ゼロ、昔ながらの蒸籠で蒸かした、めちゃウマの饅頭を取り上げたい。茨城県代表にしたい」

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あん子江戸崎まんじゅう、ね。確かに見た目も味わいもメダルを上げたくなるわ」

 

編集長こしあんのボリュームと美味さがレベルを超えてる。それに皮のしっとりもっちり感。ヘンな言い方だけど、牢名主(ろうなぬし)のような、ちょっと他では見ない饅頭だと思うよ」

 

あん子「牢名主って・・・ホメ言葉? 店の人が聞いたらどう思うかなあ。大親くらいがいいと思うわよ。でも、確かに(笑)。小判形で大きい。黒糖を使ったような色・・・テカリ方、中のこしあんの美味さ、ぎっしり感。編集長が興奮するのもわかる気がする」

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編集長「今回はその江戸崎まんじゅうと他に品のいい、おきゃんなレモン饅頭、吹雪饅頭、茶饅頭(利休)、塩気の強い麩饅頭も並べてみた」

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あん子利根川水運で栄えた江戸崎町(現在は茨城・稲敷市)のもうすぐ創業約百年の和菓子屋さんね。よく見つけたわね、そんな場所で。蛇の道は何とか(笑)」

 

編集長「地元では昔から人気の店なんだよ。現在3代目。この3代目が伝統と進取を取り入れたいい仕事をしてるんだよ」

 

あん子「能書きより中身でしょ? 船が出るわよ~。早くしないと、無観客になるわよ~(笑)」

 

【本日のセンター】

江戸崎まんじゅうvsレモンまんじゅう

 

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江戸崎は霞ヶ浦の南に位置し、どうやら戦国時代は城下町で、江戸時代以降は利根川水運で栄えた、歴史のある地名。江戸へと通じる物流の拠点だったために「江戸崎」という地名になっていたようだ。

 

今では過日の面影はないが、この由緒ある「江戸崎」という地名を饅頭に冠したのが「青木菓子店」。本日の主役。

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創業は昭和4年(1929年)。現在3代目。紺地の長暖簾が印象的な和菓子屋さん。

 

饅頭類のラインナップが素晴らしい。

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目玉は「江戸崎まんじゅう」で、創業当時からの作り方を頑固なまでに続けている。

 

昭和37年には農林水産大臣賞を受賞している逸品で、1個の舌代が105円(税込み)とコスパ的にも庶民的。

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添加物ゼロなので、賞味期限は短い(2~3日ほど)。

 

1個の重量は52グラムほど。大きさは85ミリ×50ミリ×25ミリほど。

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小判の形で、裏側から見ると、中のあんこのあまりの透け方にそそられる。あんこ好きにとっては拝みたくなる濃密な世界。

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茶色なので、黒糖を使っているのかと思ったら「いえ、使っていません。昔からの蒸籠でじっくり蒸かしてると、こういう色になるんですよ」(店のスタッフ)。

 

饅頭は蒸したその日に食べるのが一番おいしい。自宅に帰ってからすぐに賞味した。

 

皮のしっとり感ともっちり感に軽く驚く。

 

中のあんこはこしあんで、この量が半端ではない。

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なかなか出ない深い藤色。

 

北海道産小豆を銅鍋で毎日炊いていて、こしあんも自家製というのは暖簾の力かもしれない。つまり365日手間ひまを惜しまない。

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皮のもちもち感と雑味のないこしあん絶妙という言葉を通り越していると思う。

 

とても素朴だが、とっても洗練された美味さ。

 

「こりゃうめえ・・・饅頭オリンピックならメダル級だぜ」と江戸弁でつぶやきたくなった。

 

伝統と進取。その進取代表として「レモンまんじゅう」(1個 105円)をマットに上げてみた(何のマットだ?)

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レモンまんじゅうなんて、あまり聞いたことがない。

 

きれいなレモン色を割ると、白あんが現れた。

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レモンの酸味と風味が新鮮で、これは生レモンを使っているのかもしれない。

 

中の白あんは北海道産インゲン豆のこしあん。円形で重さは55グラムほど。結構大きい。

 

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しっとりとしたきれいな白あんで、江戸崎まんじゅうのような「うめえ」は漏れないが、これは単に好みの問題かもしれない。

 

上品できれいな饅頭。

 

この2つの饅頭だけでこの店の実力がほの見える。いい職人のいる店だと思う。

 

【本日のサブ】

麩まんじゅう(1個 同160円)

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 〈寸評〉青のりの麩まんじゅうで中はなめらかなこしあん。笹に包まれた見た目は上生菓子の麩まんじゅうだが、口に入れると、麩皮の塩気の強さに「へえー」となる。こしあんは上質。塩気が好みの別れるところ。私は江戸崎まんじゅうほどの感動はなかった。塩の強さはこの地が水運の町だったことが関係しているのかもしれない。

 

吹雪まんじゅう(1個 同105円)

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〈寸評〉中の粒あんのボリュームが凄い。ほんのりと塩気。つぶあん好きにはたまらない。重量は55グラム。

 

利休(1個 同105円)

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〈寸評〉黒糖を使った茶まんじゅう。重量は52グラム。中はこしあん。お茶菓子にいい。

 

「青木菓子店」

所在地 茨城・稲敷市江戸崎甲3125-1

最寄り駅 JR常磐線土浦駅からバス(約1時間)。

 

 

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傑作だよ、ブルーベリーの「餅ベリー」

 

店頭で写真を見て、うーん、となってしまった。

 

期待半分、クエッション半分の「うーん」。

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白あんに地場のブルーベリーが丸ごと4~6個。それを求肥餅が大事そうに包んでいる。

 

かぐや姫状態の大粒のブルーベリー。ユニークな試み。

 

「餅ベリー」と表記されたそのメニュー写真。

 

これってフルーツ大福の一種だろうな、そう軽く考えて、もう一品、すご顔の「ド田舎饅頭(ドいなかまんじゅう)」(税込み1個 100円)とともに買ってみた。

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こちらはドンピシャ好み。「ド田舎」にあんこハートがくすぐられた。

 

饅頭界のブス猫かな?

 

「生ものなので、冷蔵庫に入れて、かならず今日中に食べてください」(女将さん)

 

女将さんは「餅ベリー」の方を気にしているようだった。

 

ド田舎饅頭も賞味期限が「今日中」(添加物を使っていない証)だったので、早めに宿泊先のホテルに戻って食べることにした・・・。

 

・賞味のあんあん時間

 

編集長「予想外の美味さだったよ。求肥餅と白あんは珍しくもないが、新鮮なブルーベリーをそのまま入れるという発想は、下手すればミスマッチ。だから、半信半疑だったけど、食べてみたら、あまりに美味いので、今日のセンターにしたくなったよ」

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あん子「私にナイショで旅に出て、ずるいわ(笑)。私にはお土産もない。ブルーベリージャム好きなので、食べたかったなあ」

 

編集長「賞味期限がその日中という制限付きで、しかも今の季節だけ。あん子クンには悪いと思いながら、一人でこっそり試食会(笑)。そう怒らないでくれ。わかったよ、来年、来年・・・期待せずに待っててくれ」

 

【本日のセンター】

フルーツ大福の傑作か「餅ベリー」

 

群馬・渋川市赤城町で大正11年創業(1922年)の和菓子屋「荒井商店」。遠くに赤城山が見える、ローカルのほのぼの感がストンと広がる。

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赤城田舎饅頭で知られる、近隣では人気の和菓子屋さんだが、ローカルの伝統と新しい試みをクロスさせた、店主のチャレンジ精神に敬意を表したい。

 

店主は3代目で、毎朝赤鍋であんこを炊いている。こしあんも自家製。砂糖は基本的に上白糖を使用しているようだ。

 

「餅ベリー」は3代目のアイデアで、近くに友人が営むブルーベリーの農園があり、そこの新鮮なブルーベリーを使うことを思いついたようだ。

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小ぶりで、表面にはほんのりと餅粉。

 

求肥餅なので、指を触れると、マシュマロのように柔らかい。地場の餅粉を手練りしているかもしれない。きめの細やかが見て取れた。

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切ると、大粒のオーガニックなブルーベリーが現れた。5~6個ほど。

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北海道産白いんげん豆の自家製白あんこしあん)が包み込むようにぎっしり。

 

餅の柔らかさと純度が「本日中に」を実感させてくれる。

 

白あんは甘さがかなり抑えられていて、かすかに塩気も感じた。

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ブルーベリーはそのままなので、半分「どうかな?」と疑いながら、口に含んで噛んだ瞬間、ブルーベリーの甘酸っぱい酸味が口の中で小爆発した、ようだった(オーバーかではない)。でもそんな感じ。

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求肥餅も白あんもこのブルーベリーを引き立てるためにだけ存在しているような。

 

広がる鮮烈な余韻にしばし浸りたくなった。

 

いつのまにかクエッションの半分がどこかへ飛んでいった。

 

これは傑作ではないか?

 

一個250円はまんじゅう類が100円前後の中で、安くはないが、食べ終えると、「これは高くない」と合点した。上生菓子の世界の番外編に置きたくなる逸品だと思う。

 

【本日のサブ】

饅頭界のブス猫「ド田舎饅頭」

 

この店の目玉は「赤城田舎饅頭」だが、店の中で異彩を放っていたのが「ド田舎饅頭」だった。

 

一日50個しか作らないとか。

 

田舎饅頭の優に2倍の大きさ。いわゆる炭酸まんじゅう重曹で発酵)で、北関東ではこの種のまんじゅうが多い。

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黄土色でごつごつした外観。1個100円(税込み)という恐るべき安さ。

 

女将さんによると「早い時間に売り切れてしまいことも多い」とか。わかる、わかる。

 

訪れたのがたまたま正午前だったためか、4~5個ほど残っていた。ラッキーと思いたくなった。

 

フツーの「田舎饅頭」(税込み 85円)も買い、食べ比べしてみた。写真左がド田舎饅頭、右が田舎饅頭です。

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「ド田舎饅頭」は「甘くない」と表記されていたが、甘さをかなり抑えているだけで、ホワンとした素朴なつぶあんの甘さはある。日持ちしないのはそのせいかもしれない。

 

渋切りもかなり抑えている。

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ごらんの通り、あんこがはみ出てきそう。土下座したくなる(笑)。

 

皮のもっちり感とつぶあん(というよりつぶしあん)が確かにドが付く田舎饅頭で、上州の空っ風の中でたくましく育った、いい意味ではるかな土の匂いを感じる。

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小豆は地場ではなく、北海道産を使っているとか。

 

この店の定番「田舎饅頭」はフツーの大きさで、こちらも炭酸まんじゅうだという。賞味期限は2~3日ほど。

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つぶあんは柔らかく炊かれていて、ほどよい甘さで、皮は「田舎」という表記を外したくなるほど。洗練された饅頭だと思う。

 

美味さだけで言ったら、田舎饅頭の方が優れていると思うが、「ド田舎」のド迫力は捨てがたい。

 

他にも落花生を使ったホワイト饅頭やゆで饅頭もあり(本格的な練り羊羹もある)、この店が伝統を守りつつ、新しいことにも挑戦していることがわかる。

 

ローカルでいい和菓子屋さんに出会うと、特にうれしくなる。

 

「赤城田舎まんじゅう」のノボリが夏の青空にひるがえっていた。沁みる。

 

所在地 群馬・渋川市赤城町敷島415-5

最寄り駅 上越線敷島駅からすぐ

 

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伊香保の黒宇宙「黒蜜水ようかん」

 

猛暑の東京五輪とコロナ感染者急拡大で、冷静でいることが難しい。

 

こういうときは、水ようかん! と声を小さくして言いたくなる。

 

画家・竹久夢二と縁の深い、群馬・伊香保温泉で素晴らしい水ようかんに出会った。

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竹久夢二は大のお汁粉好きだったようで、京都・二年坂の「かさぎ屋」の店主がたまたま訪れた私に祖父から聞いた話として、「隅っこの方でよく愛人の彦乃さんとお汁粉を食べていたようです」と恵まれない時代の隠れたエピソードを話してくれたことがある。

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伊香保にある白亜の竹久夢二記念館(上の写真)がとても印象に残ったので、つい脱線してしまった(失礼)。

 

話を水ようかんに戻したい。

 

石段の最上階からほど近い、ロープウェイ不如帰駅(ほととぎすえき)そばにいい雰囲気の「寿屋(ことぶきや)」がある。

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ここの「黒蜜水ようかん」に恋してしまった。

 

ごらんの通りの黒々とつややかにテカる逸品。

 

カップもあるが、ここは「流し込み」(一箱 税込み1300円)をおすすめしたい。

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素材は北海道産小豆、黒蜜、黒砂糖、寒天のみ。

 

「添加物は使ってないので、冷蔵庫に入れて、今日中に食べてくださいね」

 

いい雰囲気で作業するご高齢の女将さんが、そう念押しした。ほのぼの。

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創業は昭和38年(1953年)、現在二代目

 

その二代目がもう一つの名物「湯の花饅頭」を仕込みながら、許可を取って写真を撮る私に向かって「つぶあんはもちろん、こしあんも自家製なんですよこしあんも自家製は実は少なくなってきてるんです」と、いい和菓子職人のお顔で声をかけてくれた。

 

自宅に戻ってすぐにクーラーボックスから取り出し、賞味することにした。

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コーヒーもいいが、あまりに暑いので、氷にミネラルウオーターをそそぐ。

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「流し込み」の大きさは20センチ×12センチ。厚みは3センチほど。重さは635グラム

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何という黒さ。こりゃ宇宙の漆黒だよ、と表現したくなる。

 

黒蜜がしたたるように端からにじみ出ている。よく見ると、ほんの少し気泡が見え、手作りの、昭和の香りがするよう。

 

宇宙は怖いが、こちらの宇宙は蜜の味(笑)。

 

黒糖の香りが鼻腔に来る。

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包丁をすっと入れて、白の磁器皿にのせ、口に運ぶ。

 

形がしっかりしているのに、寒天の配合が絶妙で、噛んだ瞬間、口の中で驚くほどきれいに溶けるのがわかる。

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形があるのに形がない。

 

いろんなことを忘れる、数秒間の冷たい美味

 

コロナのことも、あいつのことも、うまくいかなかったことも、すべての腹立たしいことも(数秒だけだが)。

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表現がヘンだが、黒い羽衣のような余韻がしばらくの間、舌に残る。

 

黒糖というより黒蜜感が強めで、かなり甘めだと思う。

 

秩父「松林堂」の黒糖水羊羹を思い出した。

 

伊香保秩父が線でつながる。地図にはないあんこライン(笑)。

 

もう一品、この店のオリジナル「寿々虎(すずとら」(1個 同110円)もご紹介したい。

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珍しい虎豆を使ったあんこをカステラ生地で包んだもの。

 

形が鈴の形で、柔らかく炊いた虎豆が独特の風味を生んでいる。インゲン豆よりもえぐみがある。

 

甘さを抑えていて、カステラ生地との相性は悪くない。

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人形焼きの虎豆版のような感じかな。

 

伊香保には元祖温泉饅頭「勝月堂」や老舗「清芳亭」があるが、ここにもいい和菓子職人がいることを実感した。

 

伊香保の隠れた名店、だと思う。

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と、ここまで書いて、タネ明かしをしちゃうと、当初、この店を訪問する予定はなかった。

 

たまたま水沢うどんの老舗の店主(なんと17代目)から「伊香保で泊まるなら、いい和菓子屋があるよ。石段からちょっと離れたところにある『寿屋』。いい店だよ。あんこ好きならぜひ行ってみて」とサジェストされたのがきっかけ。

 

ネットもいいが、最終的には生の現地情報が一番、と改めて思うのだった。

 

所在地 群馬・渋川市伊香保町557-7(駐車場有)

最寄り駅 伊香保温泉バスターミナル駅

 

 

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