週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

6代目の「いが饅頭」とみたらし

 

編集長「饅頭オリンピックがあったら、北埼玉のいがまんじゅうは規格外部門で推したいね」

 

あん子秘密のケンミンショーなどで、日本の饅頭ファンをびっくりさせたあの饅頭ね。饅頭をお赤飯で包むなんて、フツーはあり得ない(笑)」

 

編集長「羽生、加須、鴻巣、行田など埼玉でも北東に位置するエリアで昔から縁起物として作られていた郷土菓子で、お赤飯で包むのは魔除けの意味もあると思うよ。コロナ変異種も裸足で逃げ出す(笑)」

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あん子「それで? 今日はそのいがまんじゅうが主役?」

 

編集長「いい店は一杯あるけど、羽生市ですごい店を見つけたんだ。創業が慶応元年(1865年)、現在6代目。店構えは田舎の和菓子屋さんって感じだけど、作ってる和菓子のレベルが驚きだった。あるんだよ、こういう隠れた名店が」

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あん子「また始まった、と言いたいところだけど、饅頭ばかりでなく、だんご・大福類、最中類、煉り切りまで6代目が一人で作っているのが驚きよね」

 

編集長「あんこもすべて自家製。しかも安い。今回は結局2回行って、じっくり話を聞いたら、素材選びも田舎の和菓子屋レベルではなかった。『菓子司 まつのや』の看板が銀色に渋く輝いて見えたよ」

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あん子「私はこしあん入りみたらし団子に感動したけど、今回はセンターに何を置くのか迷うわね」

 

編集長レモン水まんじゅうも新しいチャレンジとして押したいし、黒糖饅頭『うさぶろうまんじゅう』もかなりのレベルだった。迷ったけど、珍しいという意味で今回はいがまんじゅうにしたよ」

 

あん子「饅頭オリンピックを意識したというわけね(笑)。ではよーい、スタート!」

 

【本日のセンター】

いがまんじゅうvsこしあん入りみたらし団子

 

10年ほど前「いがまんじゅう」を初めて見たとき、あまりのミスマッチぶりに引いてしまったが、ダメモトで食べてみたら、お赤飯と饅頭が意外にマッチしていることに二度ビックリした。

 

以来、これまで8~10軒のいがまんじゅうを食べたが、店によって見た目も味わいも微妙に違うことがわかった。

 

最も感動したのは鴻巣市(旧川里地区)の「一福菓子店」のものだった。

 

見事なお赤飯が裏側までびっしり付いていて、しかもデカい。中の饅頭も素朴に上質で、あんこは北海道産小豆を使った自家製こしあんだった。甘さが抑えられていて、ご高齢ゆえか店主の作る数は限られていて、それもあってか、午前中で売り切れてしまうことも多かった。

 

だが、平成29年、惜しまれながら閉店してしまった。

 

で、本題。この「まつのや」のいがまんじゅうである。

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1個130円(税込み)。重さは110グラムほど。「一福菓子店」ほどデカくはないが、見事でつややかなお赤飯にまずほお~となってしまった。裏側までびっしりと覆われ、手抜きが見えない。

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地場のもち米を使った、蒸かし立ての柔らかな食感とささげの風味に「一福菓子店」以来のときめきがよみがえった。

 

中の饅頭はもちろん自家製で、北海道産小豆を炊いたこしあんは甘さがほどよく抑えられていて、「うんめえ」と方言がつい漏れてしまった(ホントです)。

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素朴というより洗練されたいがまんじゅう。

 

取材時、6代目の口からあんこへのこだわりを聞いて、ちょっと驚く。

 

ほぼ毎日作るあんこは6種類ほど。砂糖はザラメが中心。

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使う小豆も和菓子によって使い分け、北海道産豊祝小豆や雅(みやび)など、暖簾のある京都などの老舗和菓子屋が使うレベルと遜色がない。

 

ローカルの老舗(あまり高い値段は付けられない)の心意気さえ感じる。

 

もう一品。こしあん入りみたらし団子は餅の柔らかさが尋常ではない。

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1本80円(税込み)。コスパ、すご。

 

うるち米地場の彩のかがやきを使い、みたらしの甘辛が絶妙。中はこしあん(自家製)で、きれいな小豆の風味が来る。雑味がない。

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添加物ゼロなので、日持ちがしないが、残りを翌日食べたら、十分に美味かった。

 

あん子こしあん入りのみたらし団子は最近は珍しくないけど、これは私の中ではトップ3に入るかな。とにかく団子の柔らかさがマックスね。この値段でよくやってると思うわ」

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編集長「6代目は東京の製菓学校を出て、店を継いでいる。地元を盛り上げようと一生懸命で、黒糖饅頭の『うさぶろうまんじゅう』渋沢栄一とともに幕末パリ万博に行った清水卯三郎(羽生出身の商人)の名前を冠している。渋沢栄一がブームになる以前から作っているんだ。これも掛け値なしに超が付く美味さ。饅頭オリンピックがあったら、ホント埼玉代に押したいよ」

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【本日のサブ】

・レモン水まんじゅう(税込み140円)

〈寸評〉冷蔵庫に30分、冷やしてから食べた。葛粉を使ったプルプルした半透明の皮の奥にレモン色のあんこ。目にも涼しい。北海道産白いんげんのあんこにレモンの搾り汁を加えたもの。レモンの酸味がさわやか。6代目のアイデア生菓子。

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・水まんじゅう(同)

〈寸評〉夏の定番だが、私的にはオーソドックスな味わい。こしあんのみずみずしさ。レモン水まんじゅうほどの意外性はないが、ファンも多い。

 

「菓子司 まつのや」

所在地 埼玉・羽生市中央4-8-19

最寄り駅 東武伊勢崎線羽生駅から歩約7分

 

 

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