店頭で写真を見て、うーん、となってしまった。
期待半分、クエッション半分の「うーん」。
白あんに地場のブルーベリーが丸ごと4~6個。それを求肥餅が大事そうに包んでいる。
かぐや姫状態の大粒のブルーベリー。ユニークな試み。
「餅ベリー」と表記されたそのメニュー写真。
これってフルーツ大福の一種だろうな、そう軽く考えて、もう一品、すご顔の「ド田舎饅頭(ドいなかまんじゅう)」(税込み1個 100円)とともに買ってみた。
こちらはドンピシャ好み。「ド田舎」にあんこハートがくすぐられた。
饅頭界のブス猫かな?
「生ものなので、冷蔵庫に入れて、かならず今日中に食べてください」(女将さん)
女将さんは「餅ベリー」の方を気にしているようだった。
ド田舎饅頭も賞味期限が「今日中」(添加物を使っていない証)だったので、早めに宿泊先のホテルに戻って食べることにした・・・。
・賞味のあんあん時間
編集長「予想外の美味さだったよ。求肥餅と白あんは珍しくもないが、新鮮なブルーベリーをそのまま入れるという発想は、下手すればミスマッチ。だから、半信半疑だったけど、食べてみたら、あまりに美味いので、今日のセンターにしたくなったよ」
あん子「私にナイショで旅に出て、ずるいわ(笑)。私にはお土産もない。ブルーベリージャム好きなので、食べたかったなあ」
編集長「賞味期限がその日中という制限付きで、しかも今の季節だけ。あん子クンには悪いと思いながら、一人でこっそり試食会(笑)。そう怒らないでくれ。わかったよ、来年、来年・・・期待せずに待っててくれ」
【本日のセンター】
フルーツ大福の傑作か「餅ベリー」
群馬・渋川市赤城町で大正11年創業(1922年)の和菓子屋「荒井商店」。遠くに赤城山が見える、ローカルのほのぼの感がストンと広がる。
赤城田舎饅頭で知られる、近隣では人気の和菓子屋さんだが、ローカルの伝統と新しい試みをクロスさせた、店主のチャレンジ精神に敬意を表したい。
店主は3代目で、毎朝赤鍋であんこを炊いている。こしあんも自家製。砂糖は基本的に上白糖を使用しているようだ。
「餅ベリー」は3代目のアイデアで、近くに友人が営むブルーベリーの農園があり、そこの新鮮なブルーベリーを使うことを思いついたようだ。
小ぶりで、表面にはほんのりと餅粉。
求肥餅なので、指を触れると、マシュマロのように柔らかい。地場の餅粉を手練りしているかもしれない。きめの細やかが見て取れた。
切ると、大粒のオーガニックなブルーベリーが現れた。5~6個ほど。
北海道産白いんげん豆の自家製白あん(こしあん)が包み込むようにぎっしり。
餅の柔らかさと純度が「本日中に」を実感させてくれる。
白あんは甘さがかなり抑えられていて、かすかに塩気も感じた。
ブルーベリーはそのままなので、半分「どうかな?」と疑いながら、口に含んで噛んだ瞬間、ブルーベリーの甘酸っぱい酸味が口の中で小爆発した、ようだった(オーバーかではない)。でもそんな感じ。
求肥餅も白あんもこのブルーベリーを引き立てるためにだけ存在しているような。
広がる鮮烈な余韻にしばし浸りたくなった。
いつのまにかクエッションの半分がどこかへ飛んでいった。
これは傑作ではないか?
一個250円はまんじゅう類が100円前後の中で、安くはないが、食べ終えると、「これは高くない」と合点した。上生菓子の世界の番外編に置きたくなる逸品だと思う。
【本日のサブ】
饅頭界のブス猫「ド田舎饅頭」
この店の目玉は「赤城田舎饅頭」だが、店の中で異彩を放っていたのが「ド田舎饅頭」だった。
一日50個しか作らないとか。
田舎饅頭の優に2倍の大きさ。いわゆる炭酸まんじゅう(重曹で発酵)で、北関東ではこの種のまんじゅうが多い。
黄土色でごつごつした外観。1個100円(税込み)という恐るべき安さ。
女将さんによると「早い時間に売り切れてしまいことも多い」とか。わかる、わかる。
訪れたのがたまたま正午前だったためか、4~5個ほど残っていた。ラッキーと思いたくなった。
フツーの「田舎饅頭」(税込み 85円)も買い、食べ比べしてみた。写真左がド田舎饅頭、右が田舎饅頭です。
「ド田舎饅頭」は「甘くない」と表記されていたが、甘さをかなり抑えているだけで、ホワンとした素朴なつぶあんの甘さはある。日持ちしないのはそのせいかもしれない。
渋切りもかなり抑えている。
ごらんの通り、あんこがはみ出てきそう。土下座したくなる(笑)。
皮のもっちり感とつぶあん(というよりつぶしあん)が確かにドが付く田舎饅頭で、上州の空っ風の中でたくましく育った、いい意味ではるかな土の匂いを感じる。
小豆は地場ではなく、北海道産を使っているとか。
この店の定番「田舎饅頭」はフツーの大きさで、こちらも炭酸まんじゅうだという。賞味期限は2~3日ほど。
つぶあんは柔らかく炊かれていて、ほどよい甘さで、皮は「田舎」という表記を外したくなるほど。洗練された饅頭だと思う。
美味さだけで言ったら、田舎饅頭の方が優れていると思うが、「ド田舎」のド迫力は捨てがたい。
他にも落花生を使ったホワイト饅頭やゆで饅頭もあり(本格的な練り羊羹もある)、この店が伝統を守りつつ、新しいことにも挑戦していることがわかる。
ローカルでいい和菓子屋さんに出会うと、特にうれしくなる。
「赤城田舎まんじゅう」のノボリが夏の青空にひるがえっていた。沁みる。
所在地 群馬・渋川市赤城町敷島415-5