週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

京都の仰天、竹皮箱入りおはぎ

 

あんこの千年王国京都には驚かされることが多い。

 

古いものと新しいものが幾層にも迷路化し、ヘンなたとえだが、恐竜とAIが時空を超えて、あちらこちらにこっそり埋まっている気がする。

 

甘い夢の記憶。

 

その一つが享保元年(1716年)創業の京菓匠「笹屋伊織(ささやいおり)」である。現在10代目。

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和菓子好きの間では「どら焼き」の元祖として知られる存在。現在のどら焼きの形状とはまったく違う。

 

京都のイケズな亀仙人が「弘法市の3日間しか売ってないどら焼き、これを取り上げないで何があんこマニアかいな? へそで茶を沸かす話や」といつもの毒ガスを吹かしてきた。

 

ありがたや。でも、知らんでどうする? とはいえ、お取り寄せできるようになっていたことは知らなんだ。有り難や。なので、お取り寄せしてみた。むろん内緒で手を合わせながら(笑)。

 

今回取り上げるのは、このどら焼きではない。

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「伊織のおはぎ」(1箱 税込み1620円)である。

 

ちょっと驚きのおはぎ。

 

こちらも私が知っているおはぎとは形状がまるで違う。

 

まずはご覧いただきたい。

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竹皮で編んだ箱(折詰)にびっしりと粒あんがこれでもかと詰まっていた。

 

おおおお・・・あんこの濃厚な海!

 

箱の大きさは縦175ミリ、横105ミリ、深さ50ミリ。ほぼ弁当箱の大きさ。

 

全体の重量は618グラム!

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木べらが付いていて、お茶を用意し、正座し直してから、小皿に取ってみた。

 

あんこのテカリとつぶつぶ感のボリュームが凄すぎる。底にまでびっしり!

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道明寺(半殺しのもち米?)がしおらしくさえ見える。

 

これがおはぎ? しかも「伊織のおはぎ」だって?

 

見た目よりも甘すぎない。だが、こってりとしたあんこ。

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野暮と紙一重の素朴さがたまらない、小豆のいい風味が口の中で「どないや? これが京都のあんこやでぇ」とドヤ顔でささやかれた感じ。

 

これってド田舎のあんこでは? 

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そんな気もしたが、よく見ると、浅はかな思い違いだった。

 

蜜煮したふくよかな大納言小豆(北海道産)とこしあんを絶妙にブレンドしている、と思えるイケずな隠し技だった(イケずではない?)。

 

知らないと見間違える。

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もっちりした道明寺の塩気が手の込んだ重量級のあんこを引き連れて「温故知新」のまんだら世界へと引き上げていく。オーバーに言うとそんな感じ。いい塩梅ということかな。

 

必ず到着したその日のうちに召し上がってください。どら焼きは4~5日が賞味期限ですが、おはぎは生ものなので」(笹屋伊織)

 

京都のおはぎと言えば今西軒が筆頭に挙げられるが、これは横紙破りのおはぎということになる。

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次の疑問。

 

笹屋伊織のどら焼きが江戸時代末期なのに対して、このおはぎはいつから?

 

気になって問い合わせてみたら、「実は新しいんです。去年7月、梅小路別邸を作ったときに別邸限定で売り出したものです。オンラインでも買えるようになったんです」(同店)

 

おはぎを何とか食べ終えてから、翌日、江戸時代末期からほとんど同じ製法、同じ形のどら焼きを賞味してみた。こちらも1棹1620円(税込み)。重さは360グラム。

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ごらんのとおり、誰もが知っている二枚重ねのどら焼きではない。

 

竹皮に包まれていて、そのまま包丁で切る。

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中から不思議などら焼きが現れた。これがどら焼き?

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中心部のこしあんをもっちりしたクレープミルフィーのような皮が包んでいる。

 

皮は薄く溶いた小麦粉が何層にも巻かれていて、食感はムニュッとしていて、微妙な薄甘さ。香ばしいカステラ生地のどら焼きとは別物としか言いようがない。

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中のこしあんはきれい。甘さも控えめ。なので、期待とは違った味わい。

 

竹皮の香りが遠い歴史を感じさせ、ヘンな表現になるが、学術的な美味さとしか言いようがない(もちろん個人的にだが)。

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笹屋伊織の5代目が東寺の住職に頼まれ、お寺でも作れるように打楽器の銅鑼(どら)の上で焼いたことに始まるそう。

 

こちらもオンラインで買えるようになった(弘法市の期間3日間だけ)のが素晴らしい。

 

どら焼きが現在の形、二枚重ねになったのは大正になってからで、上野黒門町うさぎやが元祖と言われる。

 

茅場町「梅花亭本店」には明治時代の一枚どら焼きが復元されて作られている。こちらは形が船の銅鑼(どら)の形で、つぶあんが練り込まれていてとても美味い。私の好きな店でもある。

 

京都に始まったあんこの華々しい(奥ゆかしい)進化は今も続いている。

 

あんビリーバボー、ここはダジャレで締めるしかない(笑)。

 

所在地 京都・下京区七条通大宮西入花畑町

 

【今回のお取り寄せ】

伊織のおはぎ(1箱)   1620円

どら焼(1棹)      1620円

送料(クロネコ便)     869円

代引き手数料        330円

 

合計           4439円

 

 

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ジャズ羊羹×お酒のマッチング

 

婦人画報」のお取り寄せで、面白い羊羹を見つけた。

 

その名も「ジャズ羊羹chocolat

 

ん? わざとキーをずらした感じ。まさかのジャジーな羊羹?

 

ファンキーでグルーヴ感もある。ジャズ好きの私のあんこセンサーにヒットした。

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大好きなチック・コリアの訃報も追い風となった。

 

で、すぐに大分・湯布院の発売元「湯布院ジャズとようかん」まで電話した。

 

そのエピソードは後にして(笑)。

 

クロネコ便でお取り寄せ。

 

それがこれ。ピアノの鍵盤をデザインしたシャレた羊羹だが、中身がワオだった。こんなのあり?

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ジャズと羊羹を結び付けた遊び心に敬意を表して、今回は羊羹ソムリエになった気分で、コーヒー、白ワイン、ウイスキーシングルモルト)との組み合わせを楽しむことにした。

 

鍵盤部分は白あんに練乳を加えているようだ。

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驚いたのが羊羹部分。色合いから煉り羊羹かと思ったらベースは白あんです。そこにチョコレート、それも濃厚なクーベルチュールチョコレートを練り込んでいるんですよ」(同社)

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包丁で切ると、中にドライフルーツ(いちじく、チェリー、レーズン)が嵌まっていていて、全体の凝り方がすごい。闇夜にきらめく星々に見えなくもない。

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ファンキーなYokan。チック・コリアがこの羊羹を見たら、何と言ったか、想像したくもなる。「こりぁえきぞちっく!」と笑ったかもしれない(だじゃれジャズ語)。

 

1棹税込み2669円。重さは約220グラム。長さは200ミリ、幅38ミリ、厚さ30ミリ。

 

で、肝心の味わいは? 

 

食感はほとんど煉り羊羹だが、口に入れたとたん、クーベルチュールチョコの濃厚な風味がふわりと広がった。和と洋の幸せな結婚? 

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白あんは手亡(白いんげん)で、寒天との練り込みが意外な相性となって、「これって案外イケるぞ」に変換していくのがわかる。

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印象としては白あん6、チョコ4くらいかな。甘さがほどよくまとめられている。

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去年5月28日にこのブログで取り上げた「餡とチョコのテリーヌ」(アン・パティスリー七日)より煉り羊羹の食感が強いと思う。歯にくっつかない。

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ところどころでいちじくよりもドライチェリーの凝縮した果実味がいいアクセントになっていて、舌の遊び心をさらにくすぐる。

 

コーヒーで味わっているうちに、たまたまあった白ワイン(シャルドネ)とシングルモルトオンザロックでマッチングを試してみたくなった。赤ワインは間に合わず(笑)。

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結論から言うと、ワインよりシングルモルトの方が好み。個人的には醸造酒より蒸留酒の方が合うと思う。

 

1+1=3になる感じかな。グルーヴ感も1・5倍増し。

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シャルドネも悪くはないが、ジャズ羊羹より海鮮類が合いそう。

 

たまたま電話に出た女性スタッフも「ジャズ羊羹にはブランデーとかウイスキーとか強めのお酒の方が合うかもしれませんね」と話していた。コーヒー、紅茶、ワインとの相性も悪くはないのは言うまでもない。

 

ここはやっぱり・・・ジャズにはウイスキー(バーボン)でしょ(笑)。

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ところで、このユニークな羊羹を発案・企画・販売しているのは湯布院の「ジャズとようかん」本店(ナイトアンドデイ社)だが、製造は福岡・宇美の老舗和菓子屋「季のせ」に依頼。職人さんが手作業で作り上げているという。

 

冬季限定(ホワイトデーまで?)というのもそそられる。

 

羊羹もどんどん変種が出てきて、これはこれであり、だと思う。伝統と進取。本日はほろ酔い気分で(笑)。

 

所在地「ジャズとようかん本店」

大分・由布市湯布院町川上3015-4

 

【今回のお取り寄せ】

ジャズ羊羹chocolat 1棹 2669円

      送料(クロネコ便) 800円

      代引き手数料    300円

    合計         3769円

 

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特大いちご大福の「古伝あんこ」

 

いちご大福の美味い季節だが、今話題の北埼玉のローカルタウンでバッタリ出会ったのが「大きなほほえみ大福」だった。ホント何度も微笑みたくなる、特大の創作いちご大福・・・。

 

まずはご本人にチラリと登場していただこう(笑)。

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淡いピンク色羽二重餅に包まれて、みずみずしいいちごと艶やかなつぶあん

 

何よりもふくよかでしっとりとした、あんこの美味さが際立っていると思う。

 

NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公・渋沢栄一の出身地、埼玉・深谷の中心部に暖簾を下げる「濱岡屋(はまおかや)」。今回はここが私的にはあんこドラマの舞台である(笑)。

 

「古伝餡」の文字と白い長暖簾に「餡an」のロゴ。これだけであんこのこだわりが見て取れる。

 

創業が明治24年(1891年)、現在4代目と5代目(息子さん)が新旧の和菓子作りに励んでいる。

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約3年ぶりに訪れたら、建物が新しくなって、モダンな、シャレた店に変身していた。場所も区画整理で少し移転。

 

餅菓子から上生菓子まで、創業当時からの「塩豆 明治大福」(税別 150円)やどら焼きのほかに創作和菓子もきれいな木箱に並んでいた。

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奥には甘味カフェも併設してあり(緊急事態宣言で現在は休業中)、温故知新がうまく機能しているようだ。たまたまなのか、若い客も多い。

 

マスク姿の4代目女将さんと約3年ぶりに話す。お互いマスク姿。

 

「覚えてますよ。ちょうど徳光さんがテレビの取材で来た後でしたね。熱心に豆大福やあんこ作りについて尋ねてこられて、随分と熱心な方だなと」

 

その時は「塩豆 明治大福」が渋いオーラを放っていたので、あんこ狂いの性分でついあれこれ聞きまくってしまった(今思うと穴があったら入りたい気分、汗)。

 

今回は前回来た時にはなかった特大版「大きなほほえみ大福」(写真右側 税別320円)、定番の「塩豆 明治大福」(同150円)、「栄一バターどら焼き」(同200円)を買い込んだ。それにレアな「あげ福」(同150円)も追加した。

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バターどら焼き以外は「賞味期限は本日中」なので、大急ぎで自宅に帰り、約4時間後の賞味となった。

 

「塩豆 明治大福」は小ぶりで、やや固めの赤えんどう豆(塩豆)と100%国産糯米(もちごめ)を搗いた柔らかな餅とつぶあんが相変わらず絶妙で、あんこの美味さがさらに磨き上げられている気がした。塩豆が効いている。

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「古伝餡(こでんあん)」とは、深谷のシンボルでもあるレンガの釜戸でじっくりと炊いた、代々続く手作業のあんこのこと。ちなみに徳光和夫さんもここのあんこのファン。

 

ふっくらとしっとりが見事に融合した昔ながらのあんこで、ほどよい甘さと小豆のいい風味が口の中にぱあーっと広がる。小豆は北海道十勝産、砂糖は上白糖とグラニュー糖、それに和三盆を独自にブレンドしているとか。

 

あんこにかける情熱がこの店の土台でもあるのがよくわかる。

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「大きなほほえみ大福」は重さが100グラムもあり、普通サイズの従来の「ほほえみ大福」(同220円)より2回りほどでかい。多分5代目の発案ではないか。

 

包丁で切ると、朝摘みした地場のいちごと見事な色のつぶあんがいい具合に納まっている。

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いちごはやよいひめで、ジューシーな甘さ。それがつぶあんと柔らかな餅と絡み合って、愛し合って、溶け合って、舌の上で春風に昇華していくよう(表現がおかしいかな?)。

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いちご大福の名店に引けを取らない美味さだと思う。

 

今回、たまたま見つけた「あげ福」(写真右)は、「塩豆 明治大福」(左)を油で揚げた、珍しいもの。揚げまんじゅうではなく、揚げ大福。

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レア好きにはたまらない珍品だと思うが、個人的には揚げない方が好み。

 

「栄一バターどら焼き」つぶあんと新鮮なバターの風味がよく調和している。渋沢栄一の焼き印入り。1枚1枚手焼きした皮は卵の香りとふわふわ感がいい。ここでもベースの柔らかなつぶあんが生きている。口どけもいい。

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リニューアル前の古い店構えも好きだが、こうした新しいチャレンジも応援したくなる。「あんこ」から「ANKO」へ。楽しみが広がる。

 

所在地 埼玉・深谷市西島町2-18-14

最寄駅 JR高崎線深谷駅北口から歩いて約6分

 

 

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NHK大河ドラマ「青天を衝く」(2月14日スタート)で盛り上がる日本経済の父・渋沢栄一の出身地

ワンダーな竹串「白黒あんこ玉」

 

町なかの和菓子屋さん。

 

10文字の世界。私にとっては心が奪われる、キーワードの一つでもある。セピア色の世界と夕日が背景にあると、さらにいい。(「ALWAYS三丁目の夕日」の見過ぎじゃないの?)

 

コロナ禍のなか、時空を超えたあんこ旅の寄り道で、たまたま見つけた、中山道鴻巣宿圏内にある一軒の和菓子屋さんが、それに近い、町の和菓子屋さんだった。

 

「大和屋」(やまとや)の看板が少々色褪せている。

 

それほど期待せずに入ると、季節のいちご大福や豆大福、桜餅、あんドーナツ、うぐいす餅、草餅などが美味そうに並んでいた。常連らしいお客が2人。安い!

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その中の一品に目が釘付けになってしまった。

 

「あんこ玉」(1串2個 税込み75円)。

 

価格に驚かされたが、それ以上に、あんこが白と黒2色で、竹串で貫かれていたこと。

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残り2本となっていた。串だんごのようなあんこ玉

 

しばし見入ってしまった。

 

透明な寒天の膜に包まれて、きれいなこしあんと白あんが「おいでやす」とほほ笑んだ気がしたほど。ひょっとして座布団3枚か?

 

大急ぎで買い求める。

 

ついでに(?)今が旬の「いちご大福」(同 150円)、「桜餅」(同 100円)、「道明寺」(同 95円)、「草餅」(同 100円)、あんドーナツ(5個入り 350円)も買い込んだ。

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安くて丁寧な作りに店主の心意気を感じ取った。

 

とはいえ正直に言うと、心のどこかに「でもなあ、それなりの味わいかも」という私の思い上がりもある。期待が失望に変わることだってないわけではない。

 

自宅に持ち帰って賞味。

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数分後。うれしい誤算、おバカな思い上がりに脳天回し蹴り。そんな気分に陥った。

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あんこ玉1個の大きさは直径約3センチ。それが2個。

 

白あんから味わう。白インゲン豆(北海道産)の自家製こしあん。しっとりと舌に絡みつくようで、ほどよい甘さと塩気のほんのり感がいい。

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続いてこしあん後で店主に聞いたら、こしあんも自家製で、北海道産えりも小豆のいい風味がふわっと広がった。砂糖は粗めのグラニュー糖を使用しているとか。

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この価格が信じられない。コスパマックス感。

 

脳内エンドルフィンのそよ風にしばし浸る。

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気持ちのいいあんこ・・・これは素直に脱帽したくなった。

 

いちご大福は大きめで一番高かった(150円)が、重さは98グラムもあり、餅の柔らかさと中の新鮮なとちおとめ、柔らかなつぶあんが見事なハーモニーだった。

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店主の技術のレベル。

 

それは桜餅(こしあん)、道明寺、草餅でもよくわかる。

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とにかく安くて美味い。手抜きが見えない。言うのは簡単だが、なかなかできることではない。

 

添加物ゼロなので日持ちがしない

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今回は煎茶でいただく。あっという間に平らげる。

 

後日、ようやく店主と少しだけ話すことができた。

 

店の創業は昭和48年(1973年)。父の代から2代目となる。手の温もりのする製法や素材へのこだわりなどが伝わってくる。

 

ひと足先に春一番。そんな感じ。

 

こういういい町の和菓子屋さんと出会えたことに感謝したい。

 

付記。あんドーナツ(中はこしあん)だけは日持ちが3日間ほどだったので、翌日に賞味したが、これも懐かしい、あんこと生地が一体となった昭和の味わいだった。

 

所在地 埼玉・鴻巣市東1-3-2

最寄駅 JR高崎線鴻巣駅から歩約10分

 

 

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あん古都・松江の「柿山水」

 

京都・金沢に続く和菓子のメッカ・松江島根県)。

 

緊急事態宣言などで行けずじまいなので、仕方なく(?)お取り寄せすることにした。巣ごもり生活の中の新しい楽しみ方、でもある。

 

江戸時代創業の老舗が数軒あり、選択に迷うが、今回のお取り寄せは創業文化6年(1809年)の「菓子老舗 桂月堂(けいげつどう)」の3品を選んだ。現在11代目というからちょっと(かなり)驚く。

 

薄小倉(うすおぐら)

小倉松草おぐらまつくさ)

柿山水(かきさんすい)

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薄小倉は同店の目玉の一つで、蜜煮してじっくり寝かせた大納言小豆(北海道産)を琥珀(こはく=寒天ベース)で閉じ込め、表面を糖化(薄氷化)させている小ぶりな逸品。ファンも多い。

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小倉松草は松江の文化を築いた茶人大名・松平治郷(松江藩七代目藩主 1751~1818年)の生誕250年を記念して作られた茶菓子で、薄小倉とほぼ同じ大きさ。よもぎ求肥(ぎゅうひ)を小倉羊羹で挟んだもの。

 

柿山水は大ぶりの干し柿の中に白あんを詰めた、いぶし銀の魅力的な逸品。白あんの中には刻み栗が練り込まれている。秋から3月までの季節限定品

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松平治郷は財政難だった松江藩を立て直し、隠居後、不昧(ふまい)と号して、茶の道を究めたお方。和菓子への造詣も深く、茶会には凝った和菓子を出している。

 

松江の和菓子のレベルが高いのも、こうした土壌があってのもの。

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3品それぞれ凝った作りと味わいだが、ビジュアル的にもほおーっと唸ったのが「柿山水」

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一個の重さ(中身)は約75グラム。手に持つとズシリと来る。

 

パッケージを取ると、粉雪がうっすらとかかったような濃い干し柿ふてぶてしいほどのお姿で現れる。わびさびの極致にも見える。ついひざまづきたくなる。

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見ようによってはアクの強い千両役者と言えなくもない。

 

干し柿に白あんを詰めた凝った和菓子は岐阜や信州、京都などにもあるので、特別に珍しいものではない。

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私もこれまでいくつか食べているが、この「柿山水」は干し柿のデカさとねっとり度がすごい。蜜が滴るようで、かなり甘い一見すると、ヘタが見えないのが他の同種のものと少し違う。なので見かけ上は柿のイメージがない。

 

だが、二つに切ると断面がお見事。

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中の白あんは北海道産手亡(白いんげん)を使っているようで、甘さを押さえている。なめらかできれいなあんこ。

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食感は干し柿の存在感が5分の3を占め、中の白あんと刻み栗干し柿の怒涛の寄りをギリギリのところで押しとどめ、全体を気品あるものに仕上げている。そんな感じかな。

 

「柿山水」という命名も風流で、渋好みの気配もある。

 

薄小倉(右)と小倉松草(左)にはコーヒーが意外に合う。

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どちらも大納言小豆を使っているが、食感がまるで違う。

 

薄小倉はじゃりじゃりとした歯ごたえ琥珀羹の風味が大納言小豆の美味さを引き上げている。小豆好きにはたまらないと思う。光が差し込むと、琥珀(こはく)が透明にきらめき大納言のテカリとのコラボに食べながら見入ってしまう。

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小倉松草は小豆羊羹とサンドされたよもぎ求肥餅がもっちりとした歯ごたえで、甘さがほどよい。こちらも表面を糖化させている、小豆のいい風味の中でよもぎの香りがほんのりと揺らめく。

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「松平不昧公好み」と書かれているが、実際に不昧公が茶会に出していたかどうかは不明。様々な文献を参考にして作り上げたのではないか。

 

それでもコーヒーを飲みながら味わっていると、和菓子(特に羊羹類)が劇的に発展した江戸・文化年間が舌の上で舞うような気がしてくる。不昧公には抹茶が一番合うとは思うが、令和3年はドリップコーヒーもクールだと思う。

 

コロナ包囲網の中の贅沢なひととき。

 

所在地 島根・松江市神町97

 

今回のお取り寄せ

薄小倉(6個入り) 799円

小倉松草(6個入り)994円

柿山水(5個入り)1728円

 

送料(クロネコ便)1200円

 

総合計      4721円

 

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木箱入り、圧巻のこだわり栗羊羹

 

栗羊羹の名店は全国にいくつかあるが、この栗羊羹も「これはヘビー級だよ」と唸ってしまった。木箱入りの栗羊羹。

 

とにかくまずは見ていただきたい。

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蜜煮した見事な大栗が丸ごとボコボコと小倉色の練り羊羹に浮かんでいる。

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見ようによっては月と夜空にも見える。

 

お月様がこんなにあったら、かぐや姫は何人いるんだろう?

 

そんなおバカな想いにとらわれるほど。

 

秋から春先までの季節限定羊羹で、大寒の今もショーケースに並んでいる。

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群馬・伊香保温泉の老舗和菓子屋「清芳亭(せいほうてい)」の逸品で、素材の選び方も作り方も「職人さんのこだわりが詰まっています」(同店)。

 

その名も「こだわりの栗羊羹」。1棹1600円なり(税込み)。ちなみに通常の栗羊羹(少し安い)もある。

 

羊羹自体のサイズは長さ180ミリ、幅50ミリ、厚さは40ミリと江戸時代からの定番サイズ。重さは正味450グラム。

 

木箱入りが大げさではない。正統派の堂々とした重量感。

 

北海道産の厳選小豆を使い、餡作りから仕上げの練り上げまで職人さんの手が入っているのがわかる。

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切り分けると、羊羹の練りの密度と国産の大栗のどしっとした感触。

 

菓子楊枝(かしようじ)で口に運ぶと、甘めの、やや固めの羊羹の奥から小豆のいい風味が立ち上がってくる。栗のきれいな風味との相性がとてもいい。

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口どけと余韻が上質で、「これぞ栗羊羹の王道では」と言いたくなる。個人的には成田山の老舗にも負けない味わいだと思う。

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添加物などは使用していないので、冷蔵庫に入れて、賞味期限は約1か月と練り羊羹にしては短め。

 

練りの密度に感心しながら、ふと底の部分を見ると、うっすらと糖化していた。

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これが私のような羊羹好きにはたまらない。至福の時間となる。

 

「清芳亭」の創業は昭和11年(1936年)。現在3代目。

 

昔昔、私がメディアの端っこに所属していた頃、ちょっとした大仕事を終えると、伊香保で疲れを癒した。その宿泊旅館で出された「くずきり」がめっちゃ美味くて、女将さんに「これってどこの?」と聞くと、「清芳亭です。ここは温泉饅頭もおいしいですよ。伊香保温泉饅頭の元祖なんですよ」と教えてくれた。

 

清芳亭との出会いは古い。

 

今回、久しぶりにその湯の花饅頭も買い込んだ。湯の花饅頭6個と和栗饅頭3個入り(二色饅頭 税込み1000円)。

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小麦粉と赤砂糖で蒸しあげた、つやつやした茶色の皮と中のこしあんのしっとりした美味さが光る。

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こしあんは控えめな甘さ。塩気が強めで、あんこの美味さ伊香保の中でもベスト3に入ると思う。

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和栗饅頭は栗あん。昔はなかったと思う。湯の花饅頭よりも皮がやや固め。こちらも塩気が強めで、白いんげん豆の風味の方が栗ペーストよりも上回っていると感じる。

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私的には湯の花饅頭の方が好みだが、今回は「こだわり栗羊羹」の圧倒に寄り切られてしまった。

 

✳ところで、伊香保に縁の深い画家・竹久夢二は和菓子好きだったが、ここの栗羊羹と湯の花饅頭を食べたどうかは不明。多分食べているはずと思ったが、昭和9年に亡くなっているので、時間的に無理。あるいは元祖・勝月堂には行ったかもしれない。空想が広がる。伊香保あんこロマンということで(笑)。

 

所在地 群馬・渋川市伊香保町伊香保544-38

 

 

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紅と白、京都エリアのあんこ力

 

京都は中心部(洛中)ばかりではない。

 

あんこ宇宙の中で、やっぱり京都エリアは凄いなあ、という一品。

 

緊急事態宣言でまたも京都に行きづらくなった。

 

なので、今回もお取り寄せ。直接電話して、私のどこでもドアクロネコ便)で送ってもらった。配送料はかかるが、このくらいの出費は致し方ない。

 

まずは見ていただきたい(ご存知の方も多いとは思うが)。

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紅白の一本の巻物で、白あんを紅羊羹で手巻きしたもの。

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長さ約215ミリ、重さは380グラムほど。

 

写真で見るよりも実物の重みがズシリと来る。

 

紅羊羹の濃い赤と白あん(白いんげん豆)の存在感。

 

京都・八幡市「菓子司 亀屋芳邦(かめやよしくに)の、その名も「源氏巻」(1本 税込み1188円)。

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同市の石清水八幡宮は源氏ゆかりの神社で、源氏の白と平氏の赤をモチーフにした、郷土菓子でもある。

 

源平の歴史とお店に敬意を表して、合掌してから包丁で切り、さっそく賞味する。

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上生菓子のような気配。

 

紅羊羹の歯ごたえと白あんの柔らかさが口の中で絶妙に絡み合う。

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ほどよい甘さと二つの食感が、素朴で質のいい風味をゆったりと噴き上げるよう。

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「亀屋芳邦」は創業が明治40年(1907年)だが、京都・本願寺の御用達だった「亀屋陸奥」から暖簾分けしているようだ。

 

現在3代目。「源氏巻」が素晴らしかったので好奇心がむくむく、つい電話すると、電話口に出た女性(女将さん?)の応対に感じ入ってしまった。私は埼玉だが、ホンマもんの京都弁に幸福感と奥行き、奇妙なタイムマシン感に襲われてしまった。

 

それによると、「源氏巻」は八幡周辺に昔からある郷土菓子で、これを作る和菓子屋さんも数軒あったそう。それが今は「ウチだけになってしまいました」とか。

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哀しいけどうれしい。貴重な巻き羊羹だとわかる。

 

羊羹は食紅で色を付けているが、そこだけ見ると、小城羊羹「村岡総本舗」や伏見「駿河屋」の紅練りなどを連想してしまった。紅色に驚かされるが、白あんとのコラボが古くて新しいと思う。

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むしろふくよかな白あんの引き立て役のようでもある。

 

材料は砂糖(上白糖)、いんげん豆、寒天。添加物は食紅だけ。

 

もう一品「栗かのこ」(税込み190円)も書いておきたい。

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蜜煮した大栗丸ごと一個を大納言小豆とゼリー状の寒天で包み込んでいる。

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光が入ると、金色(琥珀色)にキラキラ輝き、封じ込められた黄色い栗と大納言の甘納豆がとても美しい。

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栗のしっかり感と甘納豆のほっこり感が寒天のつなぎで噛むたびにいい具合に溶けていく。やや甘めで上質の味わい。

 

京都の中心部ではなく、裏鬼門(西南)の、源氏ゆかりの町の逸品。それを時空を超えて緊急事態下で味わう。京都と疫病の歴史も頭のどこかにある。

 

改めて京都、恐るべし。

 

所在地 京都府八幡市八幡岸本27番地

 

【お取り寄せ】

源氏巻(1本)  1188円

栗かのこ(5個)  950円

送料        862円

代引き手数料    330円

 

合計       3330円

 

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