いちご大福の美味い季節だが、今話題の北埼玉のローカルタウンでバッタリ出会ったのが「大きなほほえみ大福」だった。ホント何度も微笑みたくなる、特大の創作いちご大福・・・。
まずはご本人にチラリと登場していただこう(笑)。
淡いピンク色の羽二重餅に包まれて、みずみずしいいちごと艶やかなつぶあん。
何よりもふくよかでしっとりとした、あんこの美味さが際立っていると思う。
NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公・渋沢栄一の出身地、埼玉・深谷の中心部に暖簾を下げる「濱岡屋(はまおかや)」。今回はここが私的にはあんこドラマの舞台である(笑)。
「古伝餡」の文字と白い長暖簾に「餡an」のロゴ。これだけであんこのこだわりが見て取れる。
創業が明治24年(1891年)、現在4代目と5代目(息子さん)が新旧の和菓子作りに励んでいる。
約3年ぶりに訪れたら、建物が新しくなって、モダンな、シャレた店に変身していた。場所も区画整理で少し移転。
餅菓子から上生菓子まで、創業当時からの「塩豆 明治大福」(税別 150円)やどら焼きのほかに創作和菓子もきれいな木箱に並んでいた。
奥には甘味カフェも併設してあり(緊急事態宣言で現在は休業中)、温故知新がうまく機能しているようだ。たまたまなのか、若い客も多い。
マスク姿の4代目女将さんと約3年ぶりに話す。お互いマスク姿。
「覚えてますよ。ちょうど徳光さんがテレビの取材で来た後でしたね。熱心に豆大福やあんこ作りについて尋ねてこられて、随分と熱心な方だなと」
その時は「塩豆 明治大福」が渋いオーラを放っていたので、あんこ狂いの性分でついあれこれ聞きまくってしまった(今思うと穴があったら入りたい気分、汗)。
今回は前回来た時にはなかった特大版「大きなほほえみ大福」(写真右側 税別320円)、定番の「塩豆 明治大福」(同150円)、「栄一バターどら焼き」(同200円)を買い込んだ。それにレアな「あげ福」(同150円)も追加した。
バターどら焼き以外は「賞味期限は本日中」なので、大急ぎで自宅に帰り、約4時間後の賞味となった。
「塩豆 明治大福」は小ぶりで、やや固めの赤えんどう豆(塩豆)と100%国産糯米(もちごめ)を搗いた柔らかな餅とつぶあんが相変わらず絶妙で、あんこの美味さがさらに磨き上げられている気がした。塩豆が効いている。
「古伝餡(こでんあん)」とは、深谷のシンボルでもあるレンガの釜戸でじっくりと炊いた、代々続く手作業のあんこのこと。ちなみに徳光和夫さんもここのあんこのファン。
ふっくらとしっとりが見事に融合した昔ながらのあんこで、ほどよい甘さと小豆のいい風味が口の中にぱあーっと広がる。小豆は北海道十勝産、砂糖は上白糖とグラニュー糖、それに和三盆を独自にブレンドしているとか。
あんこにかける情熱がこの店の土台でもあるのがよくわかる。
「大きなほほえみ大福」は重さが100グラムもあり、普通サイズの従来の「ほほえみ大福」(同220円)より2回りほどでかい。多分5代目の発案ではないか。
包丁で切ると、朝摘みした地場のいちごと見事な色のつぶあんがいい具合に納まっている。
いちごはやよいひめで、ジューシーな甘さ。それがつぶあんと柔らかな餅と絡み合って、愛し合って、溶け合って、舌の上で春風に昇華していくよう(表現がおかしいかな?)。
いちご大福の名店に引けを取らない美味さだと思う。
今回、たまたま見つけた「あげ福」(写真右)は、「塩豆 明治大福」(左)を油で揚げた、珍しいもの。揚げまんじゅうではなく、揚げ大福。
レア好きにはたまらない珍品だと思うが、個人的には揚げない方が好み。
「栄一バターどら焼き」はつぶあんと新鮮なバターの風味がよく調和している。渋沢栄一の焼き印入り。1枚1枚手焼きした皮は卵の香りとふわふわ感がいい。ここでもベースの柔らかなつぶあんが生きている。口どけもいい。
リニューアル前の古い店構えも好きだが、こうした新しいチャレンジも応援したくなる。「あんこ」から「ANKO」へ。楽しみが広がる。
所在地 埼玉・深谷市西島町2-18-14