週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

コロナ八起、信長流「ダルマ最中」

 

この時代に織田信長が生きていたら・・・と考えると、コロナでどんな手を打ったか、空想が広がる。

 

ガースー首相のような見苦しいほどの泥縄対応はないと思う。

 

個人的な空想だが、トップダウンで先頭に立ち、先手を打って果敢な対応を取ったと思うが、あるいはひょっとしてコロナ感染していたかもしれない。

 

とはいえ危機の時代に信長のようなリーダーがいないのが残念、といくら嘆いても仕方がない。

 

その代わりと言っちゃなんだが、信長に縁のある「起き上り最中(おきあがりもなか)」をお取り寄せした。

 

正月にふさわしい縁起物で、七転び八起き、コロナ禍に負けないという意味でも今回ぜひ取り上げたくなった。

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とにかくダルマの形が見ようによってはユーモラスでユニーク、しかも中のあんこは3種類。小倉、抹茶きんとん(3種類詰合せ10個入り)。

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それに「大粒栗入り 小倉」も追加で頼んだ(箱入り5個詰め)。

 

あんこを詰めると、ダルマさんは転ばない(笑)。

 

いやいや転んでも八回、いや何度でも起き上る。

 

織田信長の居城があった岐阜の和菓子屋さん「起き上り本舗」の知る人ぞ知る逸品。

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店によると、天下布武の前、織田信長が天敵・稲葉山城(現在の岐阜城)を攻めあぐねた時、何度も失敗し、逆境の中で「我まさに起き上り最中(さいちゅう)なり」と言ったという故事を題材にしたそう。

 

創業70年ほど。現在2代目。

 

まずは3種類を正面、横、後ろの順でご覧ください。

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定番の小倉(つぶあんから食べてみる。

 

高さは約6センチ。重さが56グラムほど。

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手に持つと重さがずっしり。

 

まず皮だねのしっかりしたパリパリ感と香ばしさがガツンと来る。

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ぎっしりと詰まった小倉あんは濃厚で甘め

 

つややかで小豆の皮まで柔らかく煮詰められている。

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つなぎの寒天が絶妙に練り込まれている感じ。

 

芳醇なねっとりとしたあんこで、雑味がない。

 

上質のあんこだと思う。

 

素材自体を2代目自らが選び小豆が北海道(小豆の出来によって青森産)、皮だねは信州産、添加物や凝固剤などは不使用と和菓子職人としてのプライドを感じさせる。

 

続いて、抹茶あん

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包丁で二つに切ったら、渋い、やや暗めの抹茶あんが「参る」と現れた。

 

確かに添加物や着色の匂いがしない。

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北海道産手亡(白いんげん豆)に静岡産の抹茶を加えて練り上げている。

 

抹茶の風味がストレートに伝わってくる。こしあんのなめらかな舌触り。

 

こちらも甘めだが、渋くて甘い余韻が舌の上に残る。

 

きんとんは手亡の白あん(こしあん)。

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こちらは甘さが抑え気味で、ねっとり感はあるが、むしろあっさりとしたきれいなあんこ。

 

すべて高いレベルだが、私の好みは今回は①抹茶あん②小倉あん③きんとんの順。

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もう一品「大粒栗入り小倉」も書いておきたい。

 

国産(愛媛)の大栗を丸ごと一個、それを小倉あんが包んでいる。

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大栗はきりっとしていて、それが甘めの小倉あんといいバランスを作っている。

 

ここでも小倉あんの美味さが光っている。

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ぜいたくな最中だが、あえて言うと、私の好みは3種類ほどではない。大栗があんこの美味さをややぼかしている気がするが、栗好きの人にはたまらないとは思う。

 

友人は「あんこがかなり甘いので、私はこっちに軍配よ」と一票。半分は同意できる(笑)。

 

緊急事態宣言で遠出がさらに難しくなった。いつまで続くかは不明。

 

それでもまだお取り寄せがある。

 

送料その他がかかるのは致し方ない。

 

全国の和菓子屋さんにエールを送りたくなる。

 

七転び八起き。あんこネットワークでつながっていきたい。

 

【本店所在地】

岐阜市柳ケ瀬通5丁目5番地

 

【お取り寄せ】

3種類詰合せ10個入り 1370円 

大粒栗入り小倉餡5個詰め 920円

消費税          184円

送料(ゆうパック)    950円

代引き手数料       390円

 

合計          3814円

 

 

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新春「笑み福」&「そんなバナナ、」

 

明けましておめでとうございます。

 

コロナ禍新年となりましたが、気落ちせず、あんこ片手に牛歩で乗り切っていこうと小さく決意しております。

 

古来より小豆には魔除け厄除けの意味もあり、疫病退散祈願としても重要な役割を担ってきました。コロナもまた。

 

伝統と新しさ。この二つがキーワード。

 

なので、令和3年のトップバッターは京都の老舗和菓子屋「亀屋良長(かめやよしなが)」の、元気の出そうな変わり羊羹。コロナ禍の中で生まれた逸品です。

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「亀屋良長」は創業が享和3年(1803年)、現在8代目。

 

京都の上菓子屋の中でも伝統とチャレンジ精神にあふれた和菓子屋さんで、「どこでもドア」があれば、京都に飛んでいきたいところですが、直接お電話して、お取り寄せで我慢。

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まずは季節限定の「干支菓子 笑み福」(1棹 税込み1188円)。

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ごらんのとおり、小豆羊羹をベースに、上が寒天ベースの錦玉羹(きんぎょくかん)になっていて、栗、アカデミアナッツ、黒豆、くるみ、クランベリーなどがきらびやかに乗っている。

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ビジュアル的にもすごい。

 

イデアが斬新で技術の裏付けがきちんと下支え。

 

めでたい迎春の一品でもある。

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羊羹と香ばしいナッツ類(カリッとしたまま)がこんなに合うとは、最初のひと口で驚く。羊羹の甘さは上品でほどよい。

 

クランベリーの酸味(果実味)が奥の方で小さく異国のメロディーを奏でる・・・そんな感じ。

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ミスマッチを超えてると思う。

 

絶妙な融合に、1+1が3のため息が出かかる。

 

もう一つのレアな変わり羊羹「そんなバナナ、」(同1188円)は、コロナ禍の去年4月に誕生している。

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2百年を超える老舗がバナナ羊羹を作るという発想がすごすぎ。

 

ホント、そんなバナナ(笑)。ユーモアも感じる。

 

こちらは手亡豆(白いんげん)にバナナを練り込んだ羊羹がベース。

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その上から波照間産黒糖とカカオ豆で作ったカカオ羊羹をドロリとかけている。

 

見た目は黄色の上にチョコレートのコートを流したよう。

 

こちらもナッツ類がぽこぽこ乗っている。

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口に入れたとたん、バナナの香りが広がる。

 

ほどよい甘さ。手亡豆とカカオの風味がねっとり。

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和菓子なのに洋菓子のようでもある。

 

これってめっちゃ面白い、京都の進取の気性を感じさせられる。バナナには免疫力があると言われるので、コロナ禍の中のチャレンジとなったようだ。

 

疫病に苦しめられた歴史を持つ、京都の心意気や良し、とつい脱帽したくなる。

 

正月特別号なので、おまけにもう一品。季節限定の変わり羊羹「雪あそび」(同1188円)はゆず羊羹がベース。

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ゆずの香りがきれい。ゆず羊羹の上にはいちじく、りんご、クランベリー、アカデミアナッツ、カボチャの種などが乗っていて、こちらの融合も意外なほど合う。

 

亀屋良長の定番は「烏羽玉(うばたま)」だが、基本的に200年以上の作り方を変えていない。黒糖のあんこ玉だが、この伝統を守る姿も敬意を表したくなる。

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最後にこれをじっくりと味わって、令和3年を何とか乗り切っていきたい。

 

所在地 京都・下京区四条通油小路西入柏屋町17-19

 

【お取り寄せ】  

「笑み福」 1188円(税込み)

「そんなバナナ、」 1188円

「雪あそび」    1188円

「烏羽玉」(12個入り)1080円

         

         

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締めは御用「白あん蒸し羊羹」

 

今年最後の「週刊あんこ」は栃木・那須御用邸御用達の老舗和菓子屋「扇屋総本店(おおぎやそうほんてん)」の隠元大使(いんげんたいし)」(小棹 税込み580円)です。ネーミングも凝ってる。

 

白あん(白いんげん豆)の蒸し羊羹で、群馬・嬬恋で穫れた花豆を蜜煮して、そのままドカドカと練り込んでいる。

 

とにかく見ていただきたい。

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白いんげんの色と風味が透けて見えるようで、不思議な美しさ

 

センターには大きな花豆の存在感。

 

そのオーパな断面。

 

瑪瑙を(めのう)を連想してしまった。

 

売り出し中の炭酸まんじゅう「うまかんべ」(5個入り 同700円)を買い求め、ふと横を見ると、出会ってしまった。あらまあこれはこれは、と言いたくなるビジュアル。初めて見る色調と光景。

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「扇屋総本店」は創業百年の老舗で、那須湯本の名店としても知られる。御用邸饅頭が有名だが、「隠元大使」の珍しさに好奇心をグイと持っていかれた。

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食感はういろうのようなもっちり感。白いんげん豆のクセのある風味と控えめな甘さが上品。塩気がほんのりと来る。

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コアな小豆あんファンには少し物足りないかもしれないが、これはこれでレアな美味さがあると思う。

 

おまけに「うまかんべまんじゅう」も書いておきたい。

 

皮は炭酸まんじゅうで、つややかなもっちり感がとてもいい。

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中のあんこはつぶしあん。北海道産えりも小豆を上白糖で炊いているようだ。水飴も加えているようで、素朴なあんこはねっとりとしている。濃いあんこ。

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那須御用邸ゆかりの和菓子屋の二品。

 

コロナに明け暮れた令和2年だが、来年はどうなるか、これだけは神のみぞ知るとしか言いようがない。

 

あんこの神様にもコロ難退散祈願をして、来年もまた日本のあんこ文化をウオッチし続けたい。

 

あんこファンのみなさん、よいお年を! 

 

あんこ愛と感謝を込めて。

 

所在地  栃木・那須町湯本200

 

 

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 ※次回の予告。新春1月3日(日)京都「亀屋良長」のめでたい和菓子からスタートいたします。こうご期待ください。

クリスマスに味噌スイーツ

 

クリスマスに味噌饅頭、というのもオツかもしれない。

 

というミソなツカミ(ん?)で、今回は佐野厄除大師とラーメンの町、栃木・佐野市に足を運んだ。

 

「味噌まんじゅう 新井屋」は私のディープスポットでもある。

 

ここの味噌まんじゅうが実に美味い。

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つぶしあんとこしあんの2種類。1個90円(税別)。

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小判型の黒糖饅頭で、老舗の味噌屋の香ばしい味噌を練り込んだ皮のもっちり感にまずハートを掴まれる。

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口に入れた瞬間、幸せホルモンがほのぼのと立ち上がる。

 

続いて、主役のあんこの美味さがガツンと来る。

 

たっぷりと詰まったつぶしあんの素朴な、ねっとりした感触。北海道産小豆の皮が溶け込んでいる。まろやかな風味がたまらない。雑味がない。塩気がほんのり。

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それが味噌の伴奏で、絶妙に口の中に小さな幸福感を作る。とにかくうめえ、とつぶやきたくなる。

 

こしあんはつぶしあんの食感とは違って、しっとりとなめらか。甘さもほどよい。きれいな余韻がさわやかでさえある。

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うめえが二つ続くと、どっちが好みかわからなくなる。

 

体調と気分によって、好みが行き来する。その変化がここちよい。

 

病みつきになるほどの味噌まんじゅうで、佐野ばかりではなく首都圏からもわざわざ買いに来るお客も多い。正月の佐野厄除け大師初詣の後、ここに立ち寄るのを楽しみとしている人も多い。

 

と書いたところで、今回は数量限定の「白あん」(同90円=税別)もゲットした。

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これまで何度も売り切れの苦い水を飲んだので、早朝から電話で予約した。

 

一日100個ほどしか作らないので、超レアな味噌まんじゅう。

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北海道産白いんげんこしあん。きれいな風味で、甘さも控えめ。確かに美味いが、つぶしあん、こしあんほどの「ワオ~」はない。好みの問題だが。

 

ここのもう一つの人気スイーツが「味噌ぷりん」(1本 280円=税込み)。

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とろとろとなめらかな舌触り。生クリームと味噌が卵黄と牛乳の中に忍び込んで混じり合い、たまらない。底には味噌カラメルソース。甘すぎないのがいい。

 

クリスマスなので、もう一品。

 

期間限定の「栗ぜんざい(白玉入り)」(300円=税込み)。

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これも午前中に売り切れてしまうこともある。翌日までしか持たないのも数量限定にしている理由のようだ。痛しかゆし。

 

とろりとした茹で小豆のようなぜんざいは甘さがかなり抑えられている。

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白玉と栗、それに一晩蜜漬けした小豆がいいアクセントになっていて、冷やしたままを温かい室内で食べると、クリスマスソングではなく「もういくつ寝るとォ~」を口ずさみたくなる。

 

クリスマスイブに3種類のあんこと味噌とプリンと輪になってとろけ合う。

 

不思議な気分にもなる。

 

創業が昭和4年(1929年)。現在三代目。

 

本店は「たぬまの杜」にあるが、個人的にはこの本町通り店の方が建物も含めてクールだと思う。周辺の情緒も気に入っている。

 

明治時代建築の薬種問屋を使用、星宮神社参道入り口というのも歴史を感じさせる。

 

所在地 栃木・佐野市本町2942

最寄駅 JR佐野駅から歩いて約10分

 

 

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「花いんげん豆あんこ」新世界

 

コロナで明け暮れた令和2年も残すところあとわずか。

 

「幻のあんこを求めて三千里の旅」も足が制限され、思い通りにはいかなかったが、今回はその中でも「ほお~」となったチャレンジ精神にあふれたあんこスイーツを取り上げたい。

 

NGにはするのはもったいないので、ご紹介したい。

 

それが和菓子屋草津菓匠 清月堂」がプロデュースする群馬・草津温泉の「お豆のお宿 花いんげん」で出された「ウエルカムスイーツ」。

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「花いんげんのトリュフ」「花いんげん最中(もなか)」

 

いずれもこの宿のオリジナル。一見地味だが、中身がすごい。

 

いんげん豆はインゲン豆の中でも特別なもので、標高1000メートル以上でしか栽培されない希少いんげん豆。主に黒に近い紫色と白の2種類ある。

 

いんげん豆の女王様みたいなもの。

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つまり草津高原で栽培された、地場のインゲン豆で、フツーのインゲン豆よりもさらに大きく、味も風味も濃いのが特徴。

 

チョコレートとあんこをコラボした創作和菓子はここ数年増えているが、手作りの花いんげん豆のあんこ(こし)を使っているのは、多分ここだけではないか。

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丁寧な作りで、意外に合う。小豆のあんこだとチョコの風味が強すぎて、ややもするとうまくいかないケースも多いが、花いんげん豆のあんこは包容力が強いのか、トリュフとなじんでいる。いい意味でぼんやりと調和するあんこ、だと思う。

 

このぼんやり感が侮れない。

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なめらかなあんこはかなり甘い。トリュフのビターのせいか、切ない余韻が残る。

 

感心したのはむしろ「花いんげん最中」の方。

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これも「清月堂」の和菓子職人さんが宿泊客のために手作りした創作最中で、パリッパリの皮種(花いんげん豆の形)に、別盛のクリームチーズと花いんげん豆のあんこをたっぷり詰めてから食べる。うっすらときな粉がかかっている。

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これがめっちゃ美味かった。

 

クリームチーズも自家製。

 

口に入れた瞬間、絶妙としか表現できない、新感覚の味わい。なめらかで濃いあんこにクリームチーズ独特の酸味がいい合の手を入れるよう。

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今回アップするにあたって、電話で女将さんに確認したら、「生ものなので、日持ちしないんですよ。今のところ宿泊客だけにお出ししていて、市販はしていないんです」とのこと。

 

ちょっと残念だが、隣には本体の花いんげん豆専門店「菓匠 清月堂」が暖簾を下げている。大正12年(1923年)創業の老舗和菓子屋さん。

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イートインカフェもあり、花いんげん豆を使った和菓子やスイーツを楽しめる。

 

翌日、ここで「花あんラテ」(税別 600円)と「花いんげん三笠」(プレーン 同180円)を食べてみた。

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「花あんラテ」は抹茶とミルク、それに花いんげん豆のこしあんの3層になっていて、ビジュアル的にもそそられる。

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だが、あんこ好きとしては、こしあんにたどり着くまで、時間がかかりすぎるのが何とももどかしい。

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いんげん豆のふくよかな独特の風味、さらっとではなくややザラっとした舌触りがたまらない。二度裏ごししているとか。

 

甘さと塩気のバランスがよく、できれば花いんげん豆のこしあんだけ、3割増しくらいにしてほしい。

 

小豆のあんことはまた違う感動もある。

 

「花いんげん 三笠」はどら焼きで、関西では三笠。それをネーミングにしているのは「清月堂」のスタンスを感じる。

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こちらは自家製の北海道産小豆のつぶあんの中に蜜煮した花いんげん豆(白)が一個丸ごと入っている。デカい。

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甘めだが塩気もほんのり。

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スポンジ状の皮生地も甘め。観光地草津温泉の中で、花いんげん豆に特化した和菓子屋さんが暖簾を守り続けていることが素晴らしい。チャレンジ精神も特筆したい。

 

Gotoの制限で、キャンセルが増えているようだが、ここはあんこのように、じっくりゆっくりと応援したくなる。

 

所在地 「お豆の小宿 花いんげん

    「草津菓匠 清月堂」

     群馬・吾妻郡草津町草津25

 

     

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「みかん大福」の傑作と出会う

 

ローカルの和菓子屋さん巡りは楽しい。

 

コロナ禍の中、暖簾を守り続ける姿には神々しさも感じることもある。思わずかしわ手を打ちたくなる店主もいる。

 

戦後二人の首相を輩出した群馬・高崎にある「御菓子司 微笑庵(みしょうあん)」は若い店主(といっても50歳だが)の温故知新ぶりが特出していると思う。

 

特に「ちごもち」(いちご大福)が人気で、午前中に売り切れることも多々ある。

 

2年ほど前に訪ねたら、すでに売り切れていた。

 

なので、今回は電話で確認した。

 

「季節商品なので、今年はまだなんです。今の時期はみかん大福が美味しいですよ」

 

それがこれ。

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賞味期限が「今日明日中」なので、大急ぎで自宅に持ち帰った。

 

一個が300円(税別)と安くはない。店では「なごみ」とネーミングで売られていた。

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もう一品「こうえつ」(栗蒸し羊羹 同250円)もゲットしてみた。ひょっとしてあの本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)がら名前を取った?

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ネーミングを見ても、京都から連綿と続く上生菓子屋の伝統を取り入れているのがわかる。つまり意識と志が高い。

 

見事な、球形のみかん大福で、見てると、確かになごんでくる。「なごみ」のネーミングは正しい。粉雪のような打ち粉。うっすらとオレンジ色のこもり。

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左右天地ともに60ミリ。重さは110グラムほど。みかん大福としては大きい。

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恐る恐る包丁で切ると、みずみずしいみかんが現れた。まわりを白あんが包み込んでいる。

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構成としてはこれまで食べたみかん大福と同じだが、ほぼパーフェクトな作りで、微妙なゆがみがない。店主の腕の確かさ。

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口に運ぶと、餅の柔らかさが羽二重で、みかんの甘さがひときわ光る。

 

白あんは脇役に徹していて、存在感は薄いが、きれいで上品なのがわかる。

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みかんの皮が全体を邪魔しない。あふれる果汁とスーッと消える羽二重餅と白あんのバランスがとてもいい。

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昇天しそうなほどの甘い小天国(笑)。

 

昭和60年頃、フルーツ大福の先駆け「いちご大福」(元祖は東京・曙橋「大角玉屋」と言われている)がすい星のごとく登場して以降、それまで考えられなかったフルーツ大福が次々と登場している。最近は特にバラエティー度が加速化している。

 

なので、みかん大福も徐々に定番化しつつあるが、個人的にはこれは悪い傾向ではないと思う。本物は淘汰されていく。和菓子ダーウイン説

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私的には砂糖が一般化した江戸・文化文政、和洋折衷の明治維新グローバル化の平成・・・今もそれが続いていると思う。

 

そんな能書きはさておき、「微笑庵」の創業は平成14年11月。それ以前は店主の祖父が昭和4年に創業した「みやざわ製菓」(雑貨も売っていたようだ)。そこから数えると3代目になるが、上生菓子や創作生菓子までこだわって作る現在のスタイルは初代といった方がいいかもしれない。千葉・市川「菓匠 京山(きょうざん)」で3年修業した後、精進して関東でもその名を知られるほどの和菓子屋さんになっている。

 

もう一品「こうえつ」は二層の栗蒸し羊羹。村雨のような生地も組み合わせている。だが、村雨ではなく、むしろ黒糖を使った蒸しパンのような食感。塩気が強い。

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それが下三分の二の栗蒸し羊羹とうまく結合されている。蒸し羊羹自体は甘さがかなり抑制されていて、国産の栗の風味がほんのり。

 

こしあんのいい余韻も残る。

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みかん大福ほどのため息は出ないが、地味に、よく考えられた構成だと思う。

 

忙しい中、たまたま店主が出てきて「みかん大福の白あんは白いんげんと手亡をブレンドしてます。砂糖は白ザラメを使ってます」と教えてくれた。物腰が柔らかい。

 

次々とお客が来るので、早々に退散。

 

みかんは和歌山の特別栽培の完熟みかんだそう。

 

こういう温故知新な店がローカルで輝きを放っていることを喜びたい。

 

所在地 群馬・高崎市剣崎町1038-4

最寄駅 JR信越本線群馬八幡駅から歩いて約10分

 

 

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百年老舗の「かのこ」とつぶあん大福

 

益子焼を買いに栃木・益子町(ましこまち)に行ったときに思わぬ出会いがあった。

 

あんこの神様が微笑んだ、としか思えない。

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人通りの少ない中心街の一角に古い蔵造りの和菓子屋さんが。

 

タイムスリップしたような世界。大きな板の屋号「赤羽(あかばね)」にあんこハートがぎゅっと掴まれた。「菓子処 赤羽まんぢう」。「まんじゅう」ではなく「まんぢう」。

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いい和菓子屋の気配。

 

ややご高齢の女将さんがすらりと出ていらして、「創業は大正10年です」と気さくな物腰でおっしゃった。「私で3代目、4代目もいますよ」とも。息子さんかな?

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調べたら、コアなファンの間では「まんぢうの美味さ」でも知られる老舗だった。し、知らなかった(汗)。

 

赤羽まんぢうは益子を拠点に活躍した陶芸家・濱田庄司の大好物で、「茶まんぢう(黒糖饅頭)」をよく買いに来ていたそう。

 

「まんぢう」は3種類あり、黒糖・きんとん・ゆず(それぞれ税込み100円)と安い。

 

黒糖ときんとんを買い、さらに惹かれるように「つぶあん大福」(同120円)、「栗むしようかん」(150円)、「かのこ」(150円)、「柚子羊羹(ゆずようかん)」(一棹600円)も買い求めた。

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あんこはつぶあんはもちろんのこと、こしあんも自家製で、昔のままの無添加を守り続けている。砂糖は基本的に「グラニュー糖です」とか。

 

自宅に持ち帰って、翌日、賞味した。

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すべてが「いい仕事してますねえ」のレベルで、濱田庄司が愛した黒糖まんぢうなどは皮のもっちり感、中にたっぷりと詰まったこしあんの美味さが先日食べたばかりの伊香保「勝月堂」に負けないレベルだった。塩気のほんのり感がいい。

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中でもこれはと唸らされたのが、「かのこ」

 

見ていただきたい。

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ふっくらと蜜煮された大納言小豆(北海道十勝産)、それを包む寒天の薄い皮、中のなめらかなこしあん。宝石のようでもある。

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3代目と4代目の腕の確かさがよくわかると思う。

 

口に入れた瞬間、大納言小豆のいい風味が口の中で小爆発を起こしたよう。そんな表現にしたくなるほどの。

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こしあんはしっとりなめらか。塩気が強め。それが甘い大納言小豆と絶妙なコラボとなっている。1+1=3の味わい。

 

楕円形のつぶあん大福」も好みだった。大好きな豆大福ではないので、それほど期待せずに食べたら、餅の柔らかさと中のつぶあんがお見事。つぶあんは小豆の皮が呉(小豆の中の部分)に溶け込んでいるようで、甘さが控えめ。

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「栗むしようかん」も国産の蜜煮した大栗が一個分入っている。甘さがかなり抑えられていて、上品な美味さ。

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今回撮影に使ったのは益子のギャラリーで買った菓子皿。そう裕福ではないので、手ごろな値段のものだが、知らなかったとはいえ、益子でプラスアルファの思いもよらなかった、いぶし銀の甘い出会いとなった。

 

益子は陶器だけではない、とわかっただけでもうれしい。

 

改めてあんこの神様に感謝することにしよう。

 

所在地 栃木・芳賀郡益子町益子2310

最寄駅 真岡鉄道益子駅から歩約10分

 

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