週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

参道の神の手「草だんご」

 

「草だんご」と言えば、関東では寅さんの柴又があまりに有名だが、世の中は広い。あんこの世界も広い。視点を変えれば、宇宙より広い・・・かもしれない。

 

柴又帝釈天西新井大師の草だんごはつぶあんを別盛にしているが、ここのは一個一個こしあんで丁寧に包んであった。地味だが、志が高いと思う。

 

そのこしあんのみずみずしいこと。上質のしっとり感。舌触りが心地よい。

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水飴も加えているのか、少しねっとりとしていて、北海道産えりも小豆のきれいな風味と抑えられた甘み(上白糖使用)が、観光地とは思えない美味さだった。意外な出会いとしか言いようがない。

 

ほんのりと塩気も効いていて、「いい塩梅」の文字が隠れている。それがヨモギ餅(上新粉使用)の柔らかな感触とよく合っていた。

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きなこの美味さも付け加えておきたい。

 

私が追い求める1+1=3の世界で、奈良・葛城市にある「中将餅(よもぎ餅)」と比較したくなったほど。

 

あっ、いけない。場所を書くのを忘れていた。香取神宮参道「亀甲堂(きっこうどう)」でのこと。大店の一軒家茶屋(食事処)だったので、あわや見過ごすところだった。まさか草だんごが隠れていたとは、ね。

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もとい。天ざるやアナゴ天丼のメニューとともにだんご類のメニューがあり、よく見ると、料理場とは別に、おばさんスタッフが2~3人で熟練の手つきで草だんごを丸めていた。名物の焼きだんごもある。外から見えるようにもなっていた。気が付かない方がおかしい。

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一皿(こしあん4ヶ、きなこ3ヶ)が450円(税込み)なり。

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外の縁台が寒そうだったので、「中で食べてもいいですか?」と聞くと、「どうぞどうぞ」。昔ながらのいい茶店で、開放的なおもてなしだった。温かいお茶までサービスしてくれた。

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たまたま白衣姿の3代目店主がいた(忙しそうだった)ので、ほんの少しだが聞いてみた。

 

創業は昭和初期。こしあん「当然です」と自家製香取神宮参道には「寒香亭」や「梅乃家本店」などの老舗もあり、いずれの草だんごもこしあんつぶあんで丸めている。なので、香取神宮参道は作り方もコスパも素晴らしい、と思う。

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「亀甲堂」の草だんごをすっかり堪能してから、外をブラ歩きしていると、地元のカメラマンと女性編集者に出会った。

 

当たりです、あそこの草だんごは美味しいですよ。ファンも多いです」

 

たまに狂う、私のあんこセンサーが今回は狂っていなかった、ことになる。あんラッキー。

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香取神宮は首都圏を中心に400社ある香取神社の総本社でもある。創建は平安時代をはるかに遡る、神代の時代と言われている。

 

そう考えると、これって「神の手が丸めたこしあんの草だんごか?」、無理やりだが、そう小見出しを付けたくなるのだった。

 

所在地 千葉・香取市香取1894-5

最寄駅 JR成田線佐原駅からバス約10分

 

 

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出会い系?道明寺と白玉栗餅と

あんこ旅の途中でへえ~と唸ったのがこれ。あんこの出会い系。

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「水郷の小江戸」千葉・佐原でのこと。伊能忠敬旧宅を出てから古い街並みをブラ歩くと、タイムスリップしたような、古い建物が見え、「植田屋荒物店」の屋号。現在8代目という江戸中期創業の雑貨屋さんで、その女将さんが和菓子好きだった。

 

「あら、地味だけどいい和菓子屋さんがあるわよ」

 

と教えてくれたのが「おざわ菓子店」だった。

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お礼に小皿を買い、期待半分で5分ほど歩くと、シンプルな和づくりの小さな店が見えた。白い暖簾がひっそりと、伏し目がちに流し目をくれた気がした。いちご大福のノボリが風で揺れていた。いいネ。

 

午後1時過ぎだったが、いちご大福はすでに売り切れで、棚に並ぶ和菓子は上生菓子も多い。どら焼き、わらび餅も見える。種類は10種類ほど。手作りにこだわった少量生産の和菓子屋さんだとすぐにわかった。

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期待半分が期待八分にふくらんだ。

 

迷った末に、残り少なくなっていた「道明寺(桜もち)」(税込み120円)と、「白玉栗もち」(同120円)を買い求め、それに「酒まん」(同120円)も追加した。

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見るからに職人気質の店主は言葉少なめで、聞きだすのに苦労したが、創業は昭和54年(1979年)、静岡と東京の老舗和菓子屋で修業したのちにこの地に暖簾を下げたそう。

 

賞味期限が本日中だったので、数時間後にホテルで賞味することにした。

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すべて小さめの作りで、まずは「道明寺」。白に近い淡いピンクの道明寺が上質でみずみずしい。もちもち感と塩漬けの桜の葉の香り。

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中のあんこはしっとりとしたこしあんで、しかも自家製。ほどよい甘さと北海道産えりも小豆のいい風味をきれいに引き出している。塩気もほんのり。

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思わず目をつむりたくなる。口中の快感。

 

気を取り直してっと。次に「白玉栗もち」。寒ざらしのもち米を手数をかけて半透明に仕上げた白玉餅に栗のかけらが練り込まれている。

 

餅粉が薄くかかっている。小宇宙のような、凝った作り。

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中のあんこがうっすらと透けて見える。誘惑。ビジュアル的にも上生菓子の気配で、これが120円というのに驚かされる。ホンマ、コスーパーやで。

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求肥餅とほぼ同じ食感で、中の粒あんが艶やかで期待以上に上質。なめらかなきらめき。砂糖はグラニュー糖と上白糖をブレンドしているようだ。北海道産えりも小豆の風味がこしあんよりも強めに迫ってくる。

 

甘さを抑えた、ふくよかな余韻。食べながら店主のこだわりと口数の少なさに思いを致す。店主の志と腕は確か。いい和菓子職人を見つけた気分、次第に頬が緩んでくる。

 

「酒まん」(酒まんじゅう)もかなり小ぶりだが、糀(こうじ)の香りが立ってくる。小麦粉と米粉ブレンドしたようなねっとりとした食感がとてもいい。

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中はしっとりしたこしあんで、糀(こうじ)の風味がいい具合に浸食している。濃い風味のあんこ。余韻が長い。

 

「四千万歩の奇跡の男」伊能忠敬が正確無比な日本地図を作ってから約200年後。約一万歩ほどの歩きで、かような和菓子屋さんに出会えるとは。これってあんこの神様の粋な計らいってこと? そう思うことにした。

 

所在地 千葉・香取市佐原イ3355-1

最寄駅 JR東日本成田線 佐原駅から歩約12分

 

 

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渋谷⇒三茶「あんパン進化系」巡り

 

新型コロナウイルスに負けてはいられない。

 

と書き出したが、このブログの趣旨はあんこ、である。

 

あんこが地球を救う、ことだってあるかもしれない。

 

で、今回は老舗のあんパンって何だ?ということを少し考えてみたい。

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あの銀座木村屋があの渋谷スクランブルスクエアに出したアンテナショップ「キムラミルク」へ立ち寄り、あんパンの最前線を味わってみようと思い立った。

 

買ったのはパン生地(酒種50%入り)にマッシュポテトを練り込んだ「つぶあんぱん」(税込み 201円)と「こしあんぱん」(同)。この店だけのあんぱん、でもある。へそには木村屋のシンボル、桜の塩漬け。

 

で、賞味後。あくまでも個人的な感想だが、がっかりかりかり。期待値が大きすぎたのかもしれないが、パン生地にもっちり感がなく、むしろパサパサ気味(たまたまなのか?)。

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中のあんこは銀座木村屋共通のもの。なぜか感動が来ない。

 

明治7年(1874年)にあんぱんを発明した、敬愛する木村家、一体どうしちゃったんだ? 

 

せめてこの店だけの手作りあんこを作れないものか。コスパ的にも「?」だった。他にもユニークな、ある種の実験的なあんパンが並んでいたので、結論を急がず、別の機会にまた訪ねてみたい。

 

次に訪れたのが、三軒茶屋の有名店「濱田家(はまだや)三軒茶屋本店」。「小麦と酵母」の文字が染め抜かれた紺地の日よけ暖簾が渋い。

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オープンしたのは2000年(平成12年)11月と、銀座木村屋に比べると、歴史がはるかに浅い。

 

ここで買ったのが、人気2位の「くるみあん」(税込み210円)、「あんぱん」(同170円)、冬季限定「冬の3色あんぱん」(珈琲、玉露こしあん 同240円)。(ちなみに人気1位の「豆パン」はあんぱんではないので今回は外した)。

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パン生地がそれぞれ違っていて、「小麦と酵母」を看板にしているだけのことはある。小麦の香ばしさともっちり感が十分にある。

 

個人的な感想ではパンの美味さが、木村屋より上だと思う。パン生地の小麦粉はカナダ産を使用しているようだ。

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最も気に入ったのは「くるみあん」。ハード系に近いパン生地にくるみが練り込んであり、その密度と食感、口の中に広がる風味がとてもいい。

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中のあんこはきれいなつぶあんで、あんこ好きとしてはもう少し量が欲しいが、いいあんこの風味が舌の奥から立ち上がってくる。控えめな甘さと塩気も悪くない。

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残念ながらあんこは自家製ではなく、製餡所から取り寄せているようだ。

 

「冬の3色あんぱん」はコーヒーあんが特に気に入った。インパクトは薄いが、こしあんとコーヒーの相性は悪くない。

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玉露あんも白あんと玉露の濃さがそれなりに合っている。

 

濱田家本店は古さと新しさ、和と洋をうまく組み合わせていると思う。総菜パンの新しい世界を模索していて、それが成功しているように見える。

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一方、銀座木村屋の「キムラミルク」は迷路にハマっているのではないか。残念だが、表面だけの新しさと感じてしまった。心にずんと来ない。あんパンと牛乳の組み合わせは古くて新しいが、ここはミルクにも一工夫欲しい気がする。

 

あんパンを発明した、初代のコペルニクス的な精神が、140年以上経つと、少しずつズレが生じてくるのかな(ズレてるのはお前の方だ、の声あり)。

 

暖簾を維持するのは難しい、とは思う。なので、あんパン好きとしては、もう少し、この「あんパン進化」の行方を見ていきたい。

 

これからこれから。

 

パンデミックりあんパンしょ(また外した)。

 

所在地 東京・世田谷区三軒茶屋2-17-11グレイス三軒茶屋102

最寄駅 東急田園都市線三軒茶屋駅から歩約7分

 

 

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究極か?名古屋の「上り羊羹」

 

「羊羹(ようかん)」の中でも蒸し羊羹の歴史は古い。

 

寛政年間(18世紀後半)に江戸・日本橋で寒天を使った煉り羊羹が登場するまで、小豆を使った羊羹と言えば、主に蒸し羊羹だった。寒天ではなく小麦粉を使った羊羹。

 

尾張名古屋へのあんこ旅で、驚くべき蒸し羊羹に出会った。

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上生菓子界では知る人ぞ知る、美濃忠本店の「上り羊羹(あがりようかん)」である。

 

「オーバーだよ」と思われるかもしれないが、羊羹に対する概念が変わってしまうほどの、天にも昇る味わいだった(ホントにあと数センチで天に昇ってしまいそうだった)。

 

それがこれ。

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一見すると、蒸し羊羹というより、水ようかんか煉り羊羹に近い。

 

1棹が税込み2484円と安くはない。たまたま半棹(同1296円)もあったので、そちらをゲットした。賞味期限は4日間と短い。

 

箱を開けると、丁寧に銀紙で包まれたご本尊が現れた。

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濃い藤色のあまりの美しさに目が吸い込まれるようだった。

 

備えてあった菓子楊枝(かしようじ)と糸。

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その糸で切り分ける。

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ぷるるんと揺れる。水ようかんのようで水ようかんとは違う。

 

上品というより、高貴な印象に近い。

 

恐る恐る口に運ぶと、なめらかな、それもただのなめらかさとは違う、微粒子の舌触り。

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表現するよりまずは味わえ。理屈は後からついてくる?

 

小豆のきれいな風味と上品な甘さが舌の上でとろけるように消えていく。

 

余韻の長さもレベルを超えている。

 

ベースのこしあんがぷるるんと舞いながら昇華していく(表現がヘンかな)。

 

デビュー当時のアリシア・キーズみたい(合ってるかな?)。

 

私が食べた羊羹の中でも、こういう食感は初めて。

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表記してある材料を見ると、砂糖(国内製造)、小豆、小麦粉としか書かれていない。

 

小麦粉の存在はほとんど感じない。むしろ葛(くず)の食感に近い気がする。

 

美濃忠は創業が安政元年(1854年)で、現在6代目女将。尾張徳川家の御用達を務めた御菓子司だが、この上り羊羹は創業当時から作っているとか。

 

京都の「川端道喜」には負けるとしても、これは凄いことだと思う。

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この尋常ではない「上り羊羹」の正体を知りたくなり、失礼とは思いながら、思い切って電話してみた。

 

小麦粉とは思えない、本葛ではないか? 小豆は? 砂糖は和三盆? などなどいくつもクエッションマークが湧いてくる。

 

「小豆は北海道産ですが、砂糖は和三盆ではありません。上質な砂糖としか言えません。小麦粉も同じです」(本店)

 

代々伝わる家中の秘伝ということのようだ。

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当たり前のことだが、情報公開は老舗の奥には通用しない。

 

それでいいのだ、と思い直す。

 

それにしても、と思う。美濃忠をたどると、徳川義直尾張藩初代藩主)の御用達だった「桔梗屋」にたどり着く。初代はそこで修業した後、現在の地に「美濃忠」の暖簾を掲げたようだ。

 

そのときから、すでにこの「上り羊羹」を作っていたことになる。

 

「上り」の意味は、献上の意味だそうで、尾張徳川家の歴代お殿様は、こんなにぜい沢な蒸し羊羹を食べていたことになる。

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それを今、平民の私が味わっている。

 

5月25日までの季節限定品だが、新型コロナウイルスパニックの中で、この一瞬の絶妙を味わえるとは・・・これもあんこの神様のおかげということにしておきたい。バチが当たる前に。

 

所在地 名古屋市中区丸の内1-5-31

最寄駅 地下鉄丸の内駅から歩約5分

 

 

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「こち亀」伊勢屋のうぐいす餅

 

うぐいす餅の美味しい季節、である。

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うぐいす餅だって? よーく考えたら、ウイットに富んだ美しいネーミングではないだろうか。

 

命名者はなんとあの豊臣秀吉で、作ったのは奈良・大和郡山市にある「本家菊屋」初代というのが定説になっている。本家菊屋は創業が天正13年(1585年)のスーパー老舗。現在26代目というから驚く。

 

数年前、あんこ旅で訪ねた時に、店先で賞味したが、大きさは現在のものよりもかなり小さかった(ウズラの卵大)が、つぶあん求肥餅で包み、青きな粉をまぶした姿は、現在のものとほとんど同じだった。

 

味わいも上質で、秀吉の弟・秀長(大和郡山城主)が茶会でこれを出したとき、珍しい物好きの秀吉が大喜びし、色と形から「うぐいす餅とせよ」と命じた話が菊屋に伝わっている。多分、10個くらいぺろりと平らげたのではないか?

 

それから一気に435年後

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こち亀」で有名な東京の下町・亀有の葛飾伊勢屋本店」で、見つけたのがこのうぐいす餅(税別130円)。

 

秀吉が食べたうぐいす餅の5~6倍くらいの大きさで、同店の名物・豆大福や草大福、蒸しきんつばの間に春の予感を漂わせていた。

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某局のディレクターとお茶会後に立ち寄ったので、遅い時間になった。

 

下町の和菓子屋の実力は侮れない。

 

うぐいす餅、豆大福、草大福、蒸しきんつばの順で買い求め、自宅で賞味した(賞味期限が本日中だったので)。

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青きな粉と求肥餅の柔らかさ。

 

中はつぶあんではなく、こしあん。北海道産小豆とザラメを使用した自家製餡で、なめらかな舌触りと控えめな甘さ、それに塩加減のバランスがいい。

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130円という下町価格も好感。本家菊屋のうぐいす餅が頂点なら、これはダウンタウンの愛すべき底辺と言えるかもしれない。

 

私の好きな世界でもある。

 

絶妙な上質の豆大福、よもぎの香りの草大福、そして特に好みの蒸しきんつばと食べ進んでいく。

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たまらない黄金の時間。

 

うぐいす餅以外はつぶあん塩気が強めで、それが素朴な小豆の風味を運んでくる。

 

赤えんどう豆、よもぎ、青きな粉・・・組み合わせ次第でそれぞれのあんこが自己主張を変えているのが面白い。

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江戸時代、「伊勢屋、稲荷に犬の糞」と揶揄(やゆ)されたほど、伊勢屋の屋号が江戸中に点在していた。伊勢屋(ルーツは伊勢商人)は呉服商をはじめ、食事処・酒・醤油業にも広がったが、和菓子屋にも爆発的な伊勢屋ブームがあったようだ。

 

葛飾伊勢屋の創業は昭和40年(1965年)と浅い。現在2代目だが、初代の女将さんもご健在。北千住にも支店があり、足場を下町の下町(変な表現だが)に置いているのが、個人的には素晴らしいと思う。

 

江戸⇒東京の中心は下町だと思う。

 

こち亀」の両さんも仕事中にこの店に買いに来ていた、そんな気がするのだった。

 

所在地 葛飾区亀有3-21-1

最寄駅 常磐線亀有駅から歩いて約3分ほど

 

 

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「ウイスキーと羊羹」試してみる

 

新型コロナウイルス症候群で気が滅入るので、本日は特別編(笑)。

 

テーマはお酒とあんこの恋愛

 

フツーに考えると、ミスマッチだが、先入観を捨ててみると、これが「案外イケるじゃん」に変わるのではないか?

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例えば、羊羹(ようかん)とウイスキー

 

今回は日光「吉田屋羊羹本舗」のひと口羊羹3種類(煉り、塩、大納言)を用意した。

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特別ゲストとして、豊橋「絹与(きぬよ)」の2色羊羹(久礼羽=くれは)との相性も試してみた。この結果は最後に。

 

ウイスキーは酒棚から「スーパーニッカ」(小瓶)と「ニッカピュアモルト 蔵出しウイスキー」を出した。基本的に今回はオンザロックで試すことに。

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あんこソムリエになった気分(笑)。

 

まず3種類の中で、もっともマッチしているかな、と感じたのは、「煉り」だった。

 

賞味の仕方は以下の通りです。

 

まず羊羹をひと口⇒それを味わってから、ウイスキーをゆっくりと流し込む⇒相性と余韻を楽しむ⇒それを繰り返す。

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煉りのきめ細やかさがオーク樽の芳醇な香りで消されるかと危惧したが、そうでもなかった。控えめな煉りの風味が、ウイスキーの猛烈な春一番の下で、しっかりと残っている感じ。このギャップが意外にいい。もちろん個人的な感想だが。

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塩と大納言も悪くはないが、予想に反して、煉りほどの相性の良さは感じなかった。羊羹のクセが少し強すぎて、ウイスキーがちゅうちょ。お互いに恋愛を嫌がっている印象。

 

ウイスキーと羊羹の組み合わせは、敬愛する作家の開高健がエッセイの中で書いている。羊羹は虎屋の「夜の梅」だったが(笑)。開高健の独特の感性と趣味の良さ(?)がよく表れていると思う。

 

お酒と和菓子の相性については、池波正太郎の方が達人の領域だったと思う。きんつばや饅頭など「あんこ好き」は筋金入り。

 

酒席の後、ふらりと神田・須田町の「竹むらに立ち寄って、お汁粉で仕上げを楽しんでいたという。

 

今回はウイスキー編だが、日本酒(辛口)や焼酎、白ワイン編も気が向いたときにレポートしたい。どうなることやら(ほろ酔い)。

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最後に「絹与」の「久礼羽(2色羊羹)」との組み合わせ。結論から言うと、これは別格だった。羊羹自体のなめらかな洗練と抑えられた甘みがピュアモルトと意外な相性を見せてくれた。ブランデーも合いそうだ。「ほう」の世界。

 

とりあえず結論。いい羊羹にはウイスキーを飲み込んでしまう包容力があると思う。

 

あんこの女神と酒神バッカスの出会い。

 

新しい組み合わせをこっそり楽しむのも、そう悪くはないと思う。甘い密会? 下戸には禁断の世界なので、取り扱い注意ですが(笑)。

 

 

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旬の草餅vs「ヨモギあんころ」

 

ぼちぼちヨモギの香り立つ季節。

 

あんこ好きにとっては、草餅(ヨモギ餅)のシーズン、と胸がピコピコする季節なのである。舌先のベルも鳴る。胃袋もわめく(ほとんどビョーキだよ)。

 

あんこ旅の途中で、その名店の一つに行ってきた。

 

尾張名古屋の庶民的な老舗和菓子屋「菊里松月(きくざとしょうげつ)」の逸品がこれ。

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どうです、この堂々とした、ドヤ顔のお姿。相撲で言うと、アンコ型。

 

創業が大正12年(1923年)、現在3代目。ここの草餅は創業当時からほとんど同じ作り方をしているもので、サイズも素朴にデカい。5月までの期間限定品。

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1個220円(税込み)。気持ち高めだが、それ以上にヨモギ餅の美味さと中のつぶあんの質とボリュームに圧倒される。

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濃いヨモギ(岐阜産)を練り込んだ柔らかな餅とつぶあんのふくよかな甘さがマッチしている。

 

たまたまいらした3代目によると、「使っている小豆は十勝産の雅(みやび)です」。ちなみに砂糖は白ザラメとか。

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普通の小豆より高価な大納言小豆で、つぶしても美味いと言われる小豆でもある。

 

美味いはずだよ。塩気もほんのり。

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その二つが口の中で絶妙に爆発する。その後の春風を引き連れて。

 

シンプルだが、奥の深さ。

 

もう一品、研究熱心な3代目が新しく作り上げたのが「まつづき」(税込み 220円)。店名をひらがな読みしたところに店主の心意気を感じる。

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わかりやすく言うと、ヨモギのあんころ。ありそうでなかなかない、コロンブスの卵のようなすぐれモノだと思う。

 

こちらもデカいので、一見おはぎのように見えるが、中のヨモギ餅をこしあんで閉じ込めている。職人のきれいな手の匂いもする。

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このこしあんがなめらかで上質。むろん自家製。やや控えめな甘さで、十勝産雅の風味を見事に生かしていると思う。

 

ヨモギ餅の新旧あんこ対決、と言えなくもないが、どちらも不思議に懐かしい。

 

実は名古屋にはいい和菓子屋が多いが、こうした餅菓子屋さんが町中に自然に存在している。歩くとそれがよくわかる。

 

京都の陰に隠れているが、尾張名古屋の奥も深い。

 

賞味期限が「本日中」なので、夕飯後にホテルに戻って、2個ぺろりと平らげる。別腹。名古屋のあんこのレベルに想いを致してみる。

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あっぱれ、と小さく呟いてみる。

 

中村郷中村(現中村区)出身と言われる豊臣秀吉が大のあんこ好きだった、という説もある。見たわけではないので、裏は取れていないが。

 

尾張名古屋は和菓子で持つ。もとい、あんこもあるでよ。

 

所在地 名古屋市中区新栄3-23-10

最寄駅 地下鉄千草駅下車歩約10分

 

 

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