箱根湯本の老舗和菓子屋「ちもと」は好きな店の一つ。
ここの名物「湯もち」は面白い。
最初にこれを食べたとき、その食感に違和感を感じた。
竹皮に包まれた純和風・・・のはずが食感が不思議だった。
餅というより、まるでマシュマロ。
メレンゲの香りもする。
あまりに柔らかな白玉餅で、中に点々と小さな短冊状の本煉り羊羹が練り込まれていた。
ふわふわの角型に餅粉がたっぷりかかっていて、ビジュアル的にも悪くない。
和菓子のはずが、どこかフランスの香りすらする。
これが「箱根ちもと」のオリジナルと知って、人気の秘密を探りたくなった。
久しぶりに箱根で買い求めた。1個220円(税別)と安くはない。
上質の白玉粉に砂糖を加え、それを練りに練り、そこに卵白も加えているようだ。
柚子(ゆず)の香りもほのかに漂う。
短冊状の本煉り羊羹もほどよい甘さで、小豆のいい風味がしっかりと潜んでいる。
不思議なバランス。
「箱根ちもと」は創業60余年、ということだが、軽井沢や目黒八雲にも「ちもと」が暖簾を下げている。千葉・市川にも同じ暖簾がある。
どちらの店にも竹皮に包まれた、そっくりの外観の白玉餅がある。
ただ、中身の餅がそれぞれ少しずつ異なっている。黒糖を加えていたり、具がクルミだったり、カシューナッツだったり。
つまりは暖簾分け?
調べてみたら、「ちもと」のルーツは東京・日暮里に行き着いた。明治の終わりか大正のころに創業しているようだ。ひょっとしてちもと餅はここで生まれていた可能性がある。日暮里ではなく銀座だという説もある。
ここから軽井沢、箱根、目黒八雲、市川へと暖簾が枝分かれしていったとしても不思議はない。
今ではそれぞれ独立していて、関係性はなくなっている。
老舗和菓子屋の暖簾分けはややこしい。
迷路に入るより、箱根で買ってきた目の前の「湯もち」を楽しむことにしよう。
口の中で溶けていく余韻が実に上品である。
つい片目を閉じたくなる。