週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

あやめだんごと3種のおはぎ

 

コロナで遠出できないので、とっておきの和菓子をご紹介したい。

 

尾張名古屋をあんこ旅していた時のこと。

 

串だんご好きの私に甘い情報が入った。

 

それが餅菓子屋「筒井松月(つついしょうげつ)」の「あやめだんご」だった。

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ネットで調べる。正直に告白すると、それほど美味そうには見えなかった。

 

日暮里の羽二重団子や築地の茂助だんごなど、有名過ぎてコスパ的にはどうかな、というレベルではないか(個人的な辛口評価だが)。

 

私にとってこれまで食べた串だんごの中でナンバーワンはかつて東京・築地にあった「福市だんご」(すでに廃業)だが、現存する中では北千住「槍かけだんご」、浅草「桃太郎」のあん団子コスパも含めてさん然と輝いている。

 

期待は裏切られるためにある。

 

なので、過剰な期待をせずに、「筒井松月」へ。

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昔からそこにある、セピア色の下町の餅菓子屋さんの地味な外観。

 

私的には好きな世界だが。

 

プラスティック製の緑色の串のあんだんご瀬戸焼の大皿にほとんど直立に並べられていた。素朴だが、シンプル過ぎる。

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実際に見ても、まだ美味そうには見えない。1本230円(税込み)も「ちょっと高いかな」の印象。

 

おはぎが美味そうだったので、あんこときなこ、それにごま(それぞれ税込み150円)を買い求め、「あやめだんご」もついでに付けてもらった。

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「生ものなので、本日中にお召し上がりください」。3代目だという女将さんがややぶっきら棒な口調で、付け加えた。

 

ところが。

 

夕暮れ時、ホテルに戻って、自室で賞味したら、この先入観が大間違いだったことに気づかされた。

 

藤紫色のこしあんが5個の団子の両面にべたっと付けられていて、どう見ても職人の手のぬくもりが見えない。

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それが。

 

口に入れたとたん、清流のようなみずみずしさが走った。ちょっとオーバーかもしれないが、ホントにそんな感覚だった。

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こしあんのあまりの美味さ。雑味のない、甘さをほどよく抑えた、塩気との見事な融合。いい小豆の風味がそよ風になっていた。

 

これは思った以上にすごい。

 

濃厚ではなく、きれいな湧き水を思わせるこしあん

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さらに見かけとは違って、餅の柔らかさが想像以上だった。まるで羽二重餅で、きれいな余韻を残してすーっと伸びる。

 

翌日確認すると、餅はもちろんのこと、こしあんまで自家製で、北海道十勝産小豆を使用、砂糖はザラメだそう。

 

おはぎ3種もやや小ぶりだが、あんこ(つぶあん)の美味さが光った。

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半殺しの餅のみずみずしさ。京都の今西軒によく似た味わいで、高レベルのおはぎだと思う。

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店は創業が昭和3年(1928年)。歩いて30分ほどのところに老舗和菓子屋「菊里松月」(大正12年創業)があるが、別経営で「初代が菊里さんと同じところで働いていたと聞いてます」(3代目女将)とか。

 

暖簾分けの一種だと思う。

 

期待は裏切られるためにあるのではない、と思い直す。

 

反省を込めて。「人は見かけによらない」はあんこにも当てはまるのかもしれない。

 

所在地 名古屋市東区筒井2-2-4

最寄駅 地下鉄桜通線車道駅下車 歩約6分

 

 

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