週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

越後長岡の宝石🤩いちご餅&淡小倉

 

越後長岡の老舗「越乃雪本舗 大和屋」(やまとや)といえば、和菓子の世界では知られた存在。

 

現在10代目。長岡藩主・牧野の殿様が「天下に比類なき銘菓」と絶賛した上菓子「越乃雪」が有名だが、伝統をきちんと守りつつネオ和菓子にも挑戦する姿勢がとってもクールでもある。

軸足は京都と長岡をクロスさせた上菓子屋さんだと思うが、敷居は高ビーではない。

 

で、今回賞味したのはその中の数点(全部食べたいところだが)。

去年リニューアルした商家造りのレトロな建物(登録有形文化財)の長暖簾をくぐると、木枠の渋いサンプル棚があり、その向こうに江戸時代さながらの帳場がさり気なくある。

 

時代劇のセットのようでもある。あんこころがよろめく。

 

★今回ゲットしたキラ星

 季節限定「いちご餅」 497円

 淡小倉(大納言) 1本891円

 山之端(上生菓子) 356円

 瑞穂最中  162円

 ※すべて税込み価格です。

 

【センターは?】

 卵形のたおやかな「いちご大福」に脱帽

 

どれをセンターに持ってきたらいいか、大いに悩んでしまった。

 

味わった4種類とも見事なこだわりの一品で、この店のチーフ和菓子職人が京都の老舗で修業してきたことがわかる。

 

姿は見えないが、指先の動きが見えるよう。

 

個人的な好みで言えば、「淡小倉」(大納言を散らした淡い練り羊羹)が特に気に入ったが、春という季節を考えると、きれいな卵大の大きさのこの「いちご餅」をセンターに置くことにした。

 

コロンブスの卵のように目立つ位置に置いてあった。

 

大きめの卵形が美しい。

 

うっすらとかかった餅粉が春の雪にも見える。

 

この形のいちご大福ってあまりないのでは、と思う。

よく見ると、頂上にうっすらといちごの赤が潜んでいる。

 

ぴこぴこ、ときめき。

 

〈さあ実食タイム〉

日持ちしないので、まずはこれと上生菓子だけをホテルで味わうことにした。

 

餅は羽二重餅で、手に持っただけで柔らかさが伝わって来た。

 

細心の注意で小型包丁で切ると、中から白あんに包まれた、見るからに鮮度のいいいちごを中心にして計3層の断面が現れた。

いちごは「弥生姫(やよいひめ)」で、羽二重餅と自家製白あんとのバランスが素晴らしい。

 

弥生姫自体が甘みとほのかな酸味が特徴。主役としての存在感を十分以上に押し出している。

白あんの、甘すぎないしっとりとした舌触り。ほどよいボリューム。自然な風味が春の土壌のようでさえある。

プラスアルファ。練乳も隠し味に加えているようだ。

 

羽二重餅が全体を包み込み、噛むたびに、三位一体となって口の中で春風になる。

 

「これはワンランク上のいちご大福だな」とポロリと言葉が漏れてしまった。

 

【セカンドは?】

淡小倉:夜の梅より淡い、上品な小豆羊羹

 

1本の大きさは100ミリ×50ミリ。厚みは約33ミリ。重さは約230グラム。

明るい小豆色の本体。なまめかしいテカリ

包丁で切ると、大納言小豆がいい具合に夜の梅みたいにポツリポツリと咲いている。

 

歯触りが柔らかい。

大納言小豆のいい風味が立ちあがってくる。

 

上質な、茶席にも使いたくなる小豆羊羹。

 

余分なものがない。

これだけの小豆羊羹はそうはない、と思う。

 

穏やかでやさしい甘さが、舌の上でふくよかに広がっていく。

 

余韻もきれい。

 

山之端:桜羊羹とよもぎの浮島二層仕立て

 

これはひと目で気に入ってしまった。

上生菓子の伝統を引き継ぐ一品。

 

桜羊羹とよもぎの風味が口の中でとろけ合う。

控えめで上品な甘さ。

 

茶会でも重宝されていると思う。

 

浮島(しぐれかも)の野性的な舌触りが、桜羊羹のねっとりと、いいマリアージュに昇華しているようで、これは抹茶で味わいたい。

 

瑞穂最中:つぶあんがぎっしりと詰まった、大きめの円形最中。購入して5日後に食べたのとバッグの中に入れて運んだためか、皮種はホロと崩れそうになっていたが、それを差っ引いても、私の好きな濃厚な最中だと思う。

つぶあんはかなり甘めで、北海道産小豆の風味が怒涛のように押し寄せて来る。

 

水飴と寒天のつなぎがとてもいい。

 

●あんヒストリー

創業は安永7年(1778年)。初代は長岡藩御用達の金物商だったようだ。9代目の藩主が病に侵されたとき、依頼を受け、今もこの店の目玉でもある「越乃雪」(越後産寒ざらし粉×和三盆の押し菓子)をつくり、献上したところ体力を回復し、「天下に比類なき銘菓」と褒められ、藩主のお墨付きを得て、和菓子屋も始めたという。現在10代目だが、9代目女将さんもご健在で、帳場にも立つ。ファミリーで伝統と創作の世界に挑んでいる。

 

「越乃雪本舗 大和屋」

所在地 新潟・長岡市柳原町3-3

 

            

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お化けあんだんご⁉️🤩三度目の後藤だんご屋

 

これまで2回行って、アンラッキーだった。本日休業と売り切れ。

 

三度目の正直でようやく頂上にたどり着いたよ。

 

なので今回は餡ラッキー

 

成田山参道の老舗甘味処「後藤だんご屋」

創業が弘化2年(1845年)、現在7代目。

 

創業当時からの製法をそのままほとんど受け継いで朝早くからだんごをつくり続けている、と聞いていたので、身を清めてから紺地の暖簾をくぐった。

後光が射してるような、そのお姿をまずは見ていただきたい。

歴史的にも個人的には西の赤福、東の後藤だんご屋と言いたくなるが、あんこの親分度(そんな度数があるとして)ではこちらに軍配。

 

★ゲットしたキラ星

 あんだんご(3個一皿)600円

 やきだんご(一串) 200円

  ※すべて税込み価格です

 

【センターは?】

あんだんご:絶妙こしあん絹のようなしんこ餅

 

一見するとこしあんのおはぎのようで、竹串のだんごではない。

左右4~5センチは優にありそうなデカさ。

 

一皿3個がヘビー級の存在感で、目の前に置かれた実物を見て、しっとりとしたこしあんの厚みとたっぷり感に身も心も持っていかれそうになってしまった。いずこへ?

NYメッツ千賀の「お化けフォーク」をもじって「お化けあんだんご」と表現したくなった(いい意味で、です)。

 

個人的にも想像を超えた出会い。ほとんどパブロフの犬状態(笑)。

 

〈実食タイム〉ほうじ茶のサービスがほっこり。茶店のレトロな雰囲気が私を江戸時代にタイムスリップさせるようだった。

手元の箸で持ち上げようとしたら、すっと切れそうで、素朴なこしあんの厚みと餅(しんこ餅)のあまりの柔らかさに「おおっ」となった。

きれいな伸びにため息が出かかる。

しっとりしたこしあんが甘すぎない。小豆のいい風味がすっくと立ちあがってくるようで、ほんのりにじむ塩気が絶妙。

こしあんは北海道産小豆×白ザラメ。

 

銅鍋で毎日約3時間かけてじっくりと煮込み、漉しているそう。

 

たまたまいらっしゃった6代目女将さんが気さくなお方で、後藤だんご屋の伝承をいろいろと教えてくれた。ここもすごいところ。

しんこ餅は特選うるち米を蒸かし、毎朝臼と杵で搗いてから、さらに手ごねするそう。

 

手間暇を惜しまない。

 

絹のような白さとびっくりするほどの柔らかな伸びはこうして生まれてくる。

 

なので、時間が経つとすぐに固くなってしまう。

6代目女将さんは「本物の証拠ですよ」と、さり気なく胸を張る。

 

朝ナマの本流がここにもしっかりと生きている。

 

セカンド:やきだんご

後藤だんご屋のもう一つの看板がこのやきだんご。

 

甘辛の自家製みたらしがたっぷり、こちらは串だんごで、注文を受けてから焼き始めるので、少し時間がかかるが、待つのも楽しの気分に浸る。

焼き色としんこ餅の柔らかな伸びがやはり秀逸。

 

一串4玉。放射する香ばしさと、たっぷりの甘辛ダレがいい感じ。

6代目女将さんによると、あんだんごよりもこちらの方が早めに売り切れになることも多いそう。

 

あんみつとぜんざいも味わいたかったが、あんだんごのボリュームが予想以上だったので、やきだんごだけを一人前別に包んでもらった。

 

辛口の編集部あん子さんへの手土産。

 

日本には飛び切りのあんこ山脈がいくつかあるが、成田山もその一つだな、と改めて思い知らされた。

「後藤だんご屋」

所在地 千葉・成田市上町499

最寄り駅 JR成田駅から歩約5~7分ほど

 

            

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超レア「笹まき」に舌を巻く🤩

 

あんこ旅で錦鯉の発祥地としても知られる新潟・小千谷に舞い降りた(うまく着地できたかな?)。

 

さむ~。

 

目的は独特の水羊羹やいちご大福を食べること。

 

創業が江戸時代末期の白木屋(しらきや)」

だが、ここで渋いオーラを放つ珍しいあんこ菓子に出会った。

 

お姿を見ていただきたい。

あんこが少しはみ出ているところが、私の心をくすぐった。

 

濃厚なつぶあん手焼きした薄いカステラ生地で三角形に折りたたんだもの。

 

笹は使っていず、笹状に巻いているところからこの菓銘になっているようだ。

 

5年ほど前、三条市の古い和菓子屋さんでも見かけたことを思い出した。

 

まさかの再会。

 

あんこハートがぴこぴこ動いた。

 

★ゲットしたキラ星

 いちご大福 200円×2

 水ようかん 180円×2

 笹まき   160円×1

  ※すべて税込み価格です

 

【センターは?】

笹まき:どら焼きの親戚?絶妙な合体

 

レア度からこのあんこ菓子をセンターにした。

どら焼きのような生地で自家製つぶあんを巻いている。

 

ほぼ二等辺三角形で、約70ミリ×70ミリ×75ミリ、厚みは約30ミリほど。

 

濃いめの焼き色と香ばしさ。

店主の手焼き、手づくり感が伝わってくる。

 

〈実食タイム〉小麦粉ベースの柔らかな皮はどら焼きよりも薄い。

 

蜂蜜と卵の素朴な香りが来る。

 

手で持って、最初のひと口で、中のあんこの豊かな風味とのマリアージュに軽く驚く。

ふた口め。

 

北海道産小豆の凝縮した風味がどんどん広がる。

うめえ、と言葉が漏れそうになる。

 

よく見ると、こしあんつぶあんブレンドしているようだ。

塩気がほんのり。

 

口の中で混じり合う、その食感がたまらない。

 

いいもの見っけ、の気分。

 

●あんヒストリー

創業が万延元年(1860年)。現在6代目。江戸時代から小千谷縮緬(麻)で江戸や京都とつながっていた歴史が今も生きていることがわかる。店には代々使われていた菓子型(木型)がさり気なく陳列してあり、ここがただの老舗ではないと感じさせる。6代目は千葉市川の高級和菓子店「島村本店」(すでに廃業)で修業、小千谷の実家を継いでいる。和菓子職人としての腕が立っているのがわかる。

 

【サイドは?】

個包装の水ようかん:小豆入りの上質な味わい

細長い水ようかんで、1本のサイズは100ミリ×30ミリ。厚みは約30ミリ。

 

一本一本竹皮模様の蝋引き紙で包まれているのは珍しい。

ふっくら小豆がポツリポツリと浮かんだ、そそられる水ようかんだが、こしあんの気配が濃いと思う(個人的な感想です)。

 

北海道産小豆とグラニュー糖、それに寒天。舌触りのなめらかさ。

素朴で上質な水ようかんだと思う。

 

あっという間に2本が胃袋に消えた。

 

小千谷は名水の地であることを思い出した。

 

いちご大福:小ぶりな、愛らしい逸品

表面にキラキラと餅粉がかかり、白玉粉の柔らかな餅に雪国のイメージが重なる。

 

うっすらと旬のいちごが見える。春の予感を詰め込んでいるよう。

サイズは45ミリほどの球形。

 

中はなめらかな白あん。

口に入れたとたん、とちおとめのみずみずしい甘さと品のいい白あん、柔らかな白玉餅が三位一体で押し寄せてくる。

 

白あんが甘さ控えめで、北海道産白いんげん豆の風味が気持ちいい。

甘みと酸味のバランスがとてもいい。

 

ローカルに生きる和菓子職人のきらりと光る技術。

 

だから、あんこ旅は止められない。

 

白木屋

所在地 新潟・小千谷市本町1-13-26

最寄り駅 JR小千谷駅から歩約10分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜増刊号😍真っ黒!驚きのごま大福

 

あんこ旅越後編で「黒い金星」と出会った。

 

まずは見ていただきたい。

表面をびっしりと覆っているのは黒ごまで、香ばしさをより出すために炒っていると聞いて、驚きは広がったが、創業当時(明治23年=1890年)からの作り方をほとんどそのまま引き継いでいると聞いて、驚きはさらに広がった。

 

和菓子の隠れたメッカ、新発田市「和泉屋(いづみや)」の恐るべき一品。

 

人口10万人弱の旧城下町。いい和菓子屋さんが潜んでいる条件が揃っているが、街は閑散としていた。全国的にローカルの和菓子屋さんの苦境が痛い。

 

店の表記は「ごま饅頭」だが、このあたりでは大福を饅頭と呼んでいるので、私の中では「ごま大福」と言わせていただきたい。

 

大きくはない店構え。庶民的な老舗和菓子屋さんで、敷居も低い。

地元でも愛されているのがわかる。

 

私が話を聞いている間も常連さんがポツリポツリとやって来る。

「ごま大福」は東京・神田須田町「庄之助」(ここは白ごま)など、いくつか名店が頭に浮かぶが、明治23年創業当時からつくっているというのは多分ここだけだと思う(間違っていたらごめんなさい)。元祖ごま大福だと思う。

 

見た目も中身もワンダー、としか言いようがない。

 

★ゲットしたキラ星

 ごま饅頭 130円×2個

 餅屋が作ったどら焼き 160円

 福招きねこモナカ 150円

 六方焼き     160円

  ※価格はすべて税込みです。

 

この一品:ごま饅頭(大福)

見た目 サイズは約50ミリ×50ミリ。薄べったい円形。最初にご紹介したように香ばしい黒ごま(摺りごま)がびっしりと全体を覆っていて、「黒く小さな巨人を予感させる。

見事なまでに真っ黒なので、外見からは中がわからない。

 

手で持つと、餅の柔らかさがわかる。

「昔のままの無添加づくりなので、今日中に食べてくださいね」と雰囲気のある女性スタッフ(5代目修業中だった)。

 

実食タイム 宿泊先で賞味することにした。包みを解いた瞬間、黒ごまのいい香りが鼻腔に来た。

 

あんこ脳が「この刺激はなんだ?」と反応した。

 

包丁で切ったら、柔らかくて真っ白い餅としっとりとしたこしあんが現れた。きれいな赤紫色のあんこ。おおっ、と声が出かかる。深み。

この餅とあんこのこだわりがまずすごい。

 

地場の最高級もち米みやこがねを蒸かした杵つき餅。

 

深夜から仕込みに入り、あんこも銅釜でじっくりと煮る。

 

それが味わいにも表れる。

北海道産あずき×上白糖。

 

黒ごまの香ばしさが口の中で立ってくる。炒り加減が絶妙と言いたくなる。

 

餅のピュアな食感とみずみずしさ。

 

こしあんのふくよかな風味が追い打ちをかけるように広がる。

塩気がほんのり。

 

2個しか買わなかったことをちょっぴり後悔したが、悲しいかな胃袋は一つしかない。ここが苦しいところ(できれば胃袋は10個くらいほしいな)。

 

他に上記の和菓子も堪能したが、それは別の機会にご紹介したい。

●あんヒストリー

創業は明治23年(1890年)。もともとは農家だったようだ。初代がごま饅頭を考案し人気を呼び、それが2代目、3代目と受け継がれ、現在4代目。「餅屋が作ったどら焼き」「福招きモナカ」「六方焼き」など和菓子のラインナップも揃っている。

 

「和泉屋」

所在地 新潟・新発田市中央町2-1-17

 

           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感涙のあんこ😍新潟「さわ山」の驚き

 

約4年ぶりに餅菓子の黄金ロード新潟へ。あんこ旅「越後」編とシャレてみたい。

 

トップバッターは、今回の旅の中でも最も驚かされた朝ナマの餅菓子店「さわ山」の「大ふく」(大福餅)を取り上げたい。

新潟には大福類や笹だんごなど餅菓子の美味い店は多いが、その中でも口の肥えた地元客が早朝から並ぶ店、「さわ山」の名前を耳にしたのは数年前。

 

「あんこの美味さがとにかく一線を超えているよ(笑)」とあん友の一人が教えてくれた。

 

今回、越後へ行こうと思い立った動機の一つでもある。

 

ちら見せ、で申し訳ないが、まずは柔らかくて極端に薄い餅を何とか包丁で切った断面を見ていただきたい。

無添加手づくりで「賞味期限はその日中」なので、店に行かないと買えない。

 

それも午前中で売り切れになることも多いとか。

 

なので、午前9時過ぎに5~6人ほどの末尾に並んで、ゲットした。

友人の情報が本当か、ここは冷静に味わいたい。

 

★ゲットしたキラ星

 大ふく 145円×2個

 草もち 145円

 笹もち 145円

 笹だんご(10個)1800円

 ※すべて税込み価格です。

 

【センター】

大ふく:薄い餅につぶあんの美味さに絶句

 

豆大福好きの私にとって、大福(地元では大ふくまんじゅうと呼んでいた)は二番目の存在だが、これは違った。

 

美味い大福の鉄則、朝ナマ(朝つくったものをその日のうちに食べる)なので、宿泊先のビジネスホテルで食べることにした。

サイズは約50ミリ×50ミリ。ホテルなので重さが測れないのが残念だが、手に持つと柔らかなずっしり感がある。

 

餅は新潟産こがねもちを蒸かした杵つき餅。

 

うっすらと餅粉がかかり、薄い餅を透かすようにあんこが「おいで」とささやいた。うーむ。

 

〇実食タイム

きれいな餅の薄さとぎっしりと詰まったつぶあんに目が釘付けになった。

赤紫色の美しいつぶあん粒々がずみずしく生きていて、がぶりと口に入れたとたん、小豆の妖精がわっと押し寄せてきた。そんな感覚。

 

粒々のふっくらとした柔らかさが半端ない。

あるいはあんこのビッグバン、とでも言いたくなるほど、小豆のいい風味が爆発的に広がってくるような、とでも言いたくなるような。表現が美味さに追いつかない。

 

甘さが絶妙。甘すぎず、すっきりとした味わいだが、いい余韻が口中から消えるのに時間がかかる。

餅があまりに薄いので、妙な表現になるが、特上のあんこをそのまま食べているような、不思議な感覚に陥った。

 

すごいあんこ。

 

毎日毎日、銅釜であんこ炊きしているようだ。

 

女将さんによると、小豆は北海道産、砂糖は上白糖。

 

餅も含めて、製法は代々続く、昔ながらのやり方だそう。

 

私がこれまで食べた大福類の中でも、このあんこは美味度ベスト5に入る(個人的な感想です)。

 

感動の波におぼれそうになってしまったよ(ホントです)。

 

2個ペロリ。

 

●あんヒストリー

創業は大正時代初期。現在4代目。餅屋として、初代澤山兵二郎は一日一石の餅を手で搗き、リヤカーで運んだという。太平洋戦争で休業をやむなくされたが、戦後、2代目が初代がつくっていた「大福餅」(当時はまんじゅうと言っていたようだ)を引き継ぎ、さらに工夫を加え、現在のものに整えていった。

 

【サイドは?】

草もち:こしあんのピュアななめらかさ

 

表面にきな粉が散っていて、よもぎのいい香りが同時に来る。

中はこしあん(自家製)で、きれいな赤紫色。見た目も味わいもレベルを超えていると思う。

サイズは大ふくとほとんど同じ。

 

このこしあんも粒子を感じるようななめらかさ。

 

予想以上の味わいで、驚くほかはない。

 

笹もち:笹のいい香りがしんこ餅(うるち米の餅)とこしあんを引き立てている、この地方独特の餅菓子。

大ふくや草もちほどの感動はなかったが、フツーに美味しい。

 

笹だんご:こちらは消費期限が3日ほど。ホテルで2個だけ味わった。

 

無添加づくりで、笹(3枚)の香りとよもぎ餅(米粉餅)が素朴で、昔から私の好きなこの地方独自のだんご。

中は素朴度の高いつぶあん

 

つくり方が丁寧で、よもぎ餅とつぶあんのバランスがとてもいい。

 

餅菓子店「さわ山」

所在地 新潟市中央区夕栄町4513

最寄り駅 JR新潟駅から約2キロほど

     

          



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長命寺桜もち⇒立石「朝生菓子」トリオ

 

桜のシーズン。あんこワールドでは「桜餅」の季節ということになる。

 

なので、今回は久しぶりに桜餅の元祖、東京・向島「山本や」の長命寺桜もちを味わいながら、大好きな「せんべろ」地区(立石)に足を延ばし、地元で愛される「和菓子 ひらた」の桜餅・草餅・豆大福をゲットし、食べ比べをしてみた。

歴史的には「山本や」が創業300年超享保2年=1717年)、「ひらた」は創業90年超(昭和5年頃=1930年頃)。11代目と4代目。

「山本や」は桜もちひと筋。「ひらた」は桜餅(季節限定)だけでなく、豆大福や草餅、どら焼きなど下町の和菓子屋さんらしいラインナップ。

 

なので、朝生の餅菓子トリオとさせていただいた。

 

どっちが上とか下とかはないので、どうぞ誤解なく。

 

★ゲットしたキラ星

 ①山本や

 長命寺桜もち「召し上がり」

    煎茶付き 500円

 ②ひらた

 さくら餅(季節限定) 160円

 新草餅(季節限定)160円 

 豆大福(2個入り)300円

  ※すべて税込み価格です。

 

長命寺桜もち:桜葉3枚×こしあんの絶妙

 

見た目 塩漬け桜葉(オオシマザクラ)が3枚。300年の歴史を思うと、凄みがいっそう増すが、江戸っ子を虜にした容姿と桜葉の香りについうっとり。

店内の緋毛氈(ひもうせん)に腰を下ろして味わうことにした。至福タイム。

ちょっと残念なのはコロナの影響で器は定番の杉箱ではなく、ペーパーになっていたこと。だが、これは杞憂だった。

 

「落ち着いてきたので、また杉箱を復活します」(女将さん)

 

これはファンにはうれしいニュースだと思う。

 

味わい 塩漬け桜葉をはがすか、そのまま食べるか悩むところだが、半分半分で味わうことにした。

3枚の見事な桜葉の香りが以前と同じで舌だけでなく、心まで鷲づかみにされる。

 

小麦粉ベースのかなり薄い皮は白色で、食感は柔らかすぎず、むしろさっぱりしていて、江戸の小粋を感じさせる。きりり感。

 

桜葉の香りを見事に吸い込んでいる。絶妙な塩気

 

私が初めて食べた時代から変わらない。



中の淡い赤紫色のこしあんも昔のまま。甘すぎない。ピュアで雑味がない。

 

北海道産小豆×上白糖で、今も自家製。

 

だが、「失礼します」と皮をはがしてのぞいたら、形がまん丸から円筒形に変わっていた。

この形も悪くない。

 

遠い江戸から続く、上質で粋な味わいにしばし時を忘れてしまった。

 

②ひらた:さくら餅×草餅×豆大福

 

見た目 さくら餅(写真㊨)はボリュームがある。塩漬け桜葉は1枚。

皮は見るからにもっちり感があり、桜色がやや濃い。

 

味わい 皮が長命寺よりもやや厚め。中は濃いこしあんで、量もたっぷり。

 

塩気がほんのり。

ディープな下町のフツーに美味い素朴なさくら餅だと思う。

 

センベロで飲んだ後に食べたら、美味さが倍増しそうな気がする。

 

草餅は「新草餅」と表記しているだけあって、よもぎの香りがやや強め。

中はねっとりとした柔らかなつぶあん素朴な粒々感

 

たまたまなのか、塩気をほとんど感じない。



よもぎ色の濃い、もっちり生地とのバランスが悪くない。

 

江戸の一つの価値基準、粋と野暮で言えば、野暮に近い草餅だと思うが、私的には野暮も好みのうちなので、好感度が高い。

 

豆大福は餅粉がたっぷり。赤えんどう豆の量もほど良い。

中はたっぷりのつぶあんで、草餅とほとんど同じ。

 

餅は糯米から蒸かして搗いているようで、ゲットしてから6時間ほど経過していたので、やや固くなり始めていた。本物感。

なので、1個はそのまま味わい、もう1個はオーブンで焼いてみた。

焼くと香ばしさがさらに出る。

 

熱々の中から黒味のあるつぶあんがはみ出そうになり、今回はこちらの方が「うめえ」となった(個人的な感想です)。

大福類は少しくらい固くなっても、焼くと別の旨味が顔を出す。

 

この楽しみ方がまたたまらない。

 

「山本や」

所在地 東京・墨田区向島5-1-14

「ひらた」

所在地 東京・葛飾区立石1-21-2



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

豆大福&青海苔大福😎「餅屋」の感動

 

あんこ旅の醍醐味の一つは予想を超える店と出会えた時。

 

店名の「餅屋」という、シンプルの極みみたいな和菓子屋さんに惹かれて、宇都宮まで足を延ばした。

 

ハズレてもともと、期待半分で宇都宮駅からかなり離れた場所までクルマを走らせた。

 

あれっ、看板がない。店名も見えない!

シンプルなレンガ仕立ての店構えに白い暖簾がかかり、臼と杵のイラストが小さく、控えめに描かれていた。

よく見ると、店名の小さなプレートがかかっていた。何という控えめさ。

 

意を決して入ってみると、木枠の渋いケースがいくつか見え、そこに見るからに手づくり感のある大福類が数種類収まっていた。

いちご大福豆大福コーヒー大福海苔大福(のりだいふくって珍しい)などなど。

 

まだ午前中なのに売り切れも出ていた。

 

あんこころがくすぐられた。

 

明るい店内と和モダンな世界

 

奥に女将さんらしきお方がいて、明るく「いらっしゃい」とこちらを見た。他にも常連らしいお客が2~3人。

 

よく見ると、横の棚にはおはぎ(3種類ほど)なども置かれている。当たりか?

 

★ゲットしたキラ星

 いちご大福 300円

 豆大福   200円

 海苔大福  300円

 草餅    200円 

  ※すべて税込みです。

 

【センターは?】

豆大福と海苔大福と草餅で迷う

 

無添加づくりなので、今日中にお召し上がりくださいね」(女将さん)

 

自宅に帰るのが夜遅くなるので、ひょっとして餅(杵つき餅)が固くなっているかもしれない。

 

その心配が当たった。餅の表面が固くなり始めていた。本物の証拠。

やむを得ず、電子レンジで20~30秒ほど温めることにした。

 

豆大福:香り立つようなつぶあん

秀逸ぞろいな中で、私がもっとも感動したのがこの豆大福だった。

サイズは大きめで、重さは約87グラム。餅粉がたっぷりとかかり、赤えんどう豆が悩ましくお顔を出している。

手で割ると、餅の伸びがしっかりとすごい。

 

〈味わい〉

搗(つ)いた餅のピュアな味とふっくらと炊かれた赤えんどう豆の塩気がとてもいい感じ。

店名に餅屋を名乗るだけのことはあるなあ、などと一人心地。

 

何よりも驚かされたのはつぶあんの美味さ。

藤紫色のオーラをまとい、しかも小豆の大きめの粒々がびっくりするほど柔らかい。

 

歯に引っかからない。

 

甘さがかなり抑えられていて、それ故に、豆本来のいい部分が口の中にわっと広がるのをそのまま感じた。春風の気配。

あずきのこだわりを知りたくなった。

 

どうやら北海道産大納言小豆を使用しているようだ。

 

砂糖は?「企業秘密です」とかわされてしまった(当然だよ)。

 

かなりのレベルのあんこ、と脱帽したくなった。

余韻の長さ。

 

私的には東京の名店に負けていない味わいだと思う。

 

素朴ではなく、洗練された豆大福。この洗練はうれしい誤算でもある。

 

海苔大福:餅に青海苔がちりばめられている

コーヒー大福などもあったが、最も驚かされたのがこの一品

大福類はかなり食べているが、青海苔というのは初めて

 

よく考えてみれば、青海苔の伸し餅もあるので、大福にあっても不思議ではない。

中はつぶあんで、豆大福と同じ洗練を感じさせるものだが、餅粉の奥に見える青海苔の淡い緑色の点々と鼻腔にくる海の香りに慣れるまでちょっとだけ時間がかかった。

 

ひょっとしてミスマッチではないか? とさえ思ったが。これは 間違いでした(反省)。

 

〈味わい〉

海の香りが思ったほどイヤではない。

 

春の潮風が柔らなか餅とともに口中からいずこかへと抜けていく。そんな感じ。

つぶあんの美味さがすべてを丸く収めて、「こういう大福もアリだな」と次第に新しい感動を連れてくることに、舌の奥まで洗われる。

 

大福の世界が少し広がったような。

 

ほんのりと漂う塩気も心地よい。

 

【サイドは草餅】

よもぎの香りがほどよく、中のつぶあん上質な美味さとぴったし合っていると思う。

重さは84グラムほどで、草餅としてはやや大きめ。

 

手でちぎってみると、伸びのある草餅と甘さ控えめのつぶあん「早く食べてね」と誘ってくるようで、春先のたまらない感覚

草餅好きの心までとろかすような、深くてきれいなマリアージュだと思う。

 

●あんヒストリー

創業は大正5年(1916年)と百年を超える歴史を持つ。もともとは市内の大通りにあり、水害などで清住町通りに移転、リニューアルオープンしている。伝統と新しさが同居していて、作り方は代々相伝されているとか。

 

「餅屋」

所在地 栃木・宇都宮市松原3-8-38