週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

巨大栗どら焼きvsいちご大福

 

どら焼きのジャンボサイズは珍しくないが、旧中山道鴻巣宿で出会った栗どら焼きは想像をはるかに超えていた。ドラえもんもびっくり、と言いたくなる。

 

まずはご覧いただきたい。

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サイズが長さ約180ミリ、幅120ミリ、厚みは42ミリ。川というよりは弁当箱のような長方形で、重さは約600グラム強(フツーのどら焼きの5~6個分)。

 

驚くなかれ、これで「小(ミニサイズ)」と表記してあった。凄すぎる。

 

「大」になるとこの2倍くらいある。冷静に見て、恐怖すら感じる(笑)。なのであんこ狂の私でも引いてしまった(汗)。

 

このモンスターどら焼きを考案したのは老舗和菓子屋「木村屋製菓舗」鴻巣を流れる荒川(鴻巣地区)が「川幅日本一」と認定されたことを記念して、平成22年(2010年)に作り上げている。

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現在4代目。東京「成城風月堂」で和洋菓子職人として修業し、創作和菓子にもチャレンジしている。

 

店構えの良さ、清潔感のある店内。

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実に美味そうな餅菓子や生菓子、お赤飯などが並んでいる。目がふらふらと道草する。

 

胃袋が5つくらいあれば、全部食べたくなるレベル・・・困った(汗)。

 

・今回ゲットしたキラ星

 川幅どら焼き(小) 980円(税込み)

 プレミアムいちご大福 320円(同)

 草もち  110円(同)

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【今週のセンター】

どら焼きの概念を変えた?栗と粒あんの存在感

 

センターには川幅どら焼きを置いたが、訪問時にたまたま見つけた吉見のプレミアムいちごを使った「いちご大福」も「私を見て!」光線を放っていた。

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迷いに迷ったが、「日本一」に敬意を表して、川幅どら焼きをセンターに持ってきた。

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「小(ミニ)」というのが冗談としか思えないデカさで、「フツーのどら焼きの優に5~6個分はあります」というのも頷ける。

 

おそらく大も含めて、日本で一番大きいどら焼きだと思う。ギネス級。

 

デカさばかりではなく、中身も一級品だと思う。

 

濃いきつね色の見事な焼き色、荒川に住む魚をイメージした焼き印にも遊び心がある。

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形が崩れないよう強力粉も使用」したというどら皮は、新鮮な卵と蜂蜜の風味がふわりと漂う。試作時の苦労が隠れている?

 

たっぷりの粒あんは甘め。北海道産の高級な大粒小豆(豊祝小豆)を使用、砂糖は鬼ザラメというこだわりも凄い。

 

蜜煮した栗がぼこぼこと潜んでいるのがわかる。

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コーヒーを淹れてから、まな板を用意し、包丁で少し切り分け(全部は食べきれないので)、益子焼の菓子皿に置くと、その断面が素晴らしい

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どら皮はスポンジ感がやや硬めだが、固すぎない。

 

粒あん豊祝小豆のふくよかな風味がとてもいい。

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噛むたびに、栗のきれいな風味と三位一体となって、口中で混じり合い、とろけ合い、頭頂部へと抜けていく。

 

あんこの美味さも次第に増してくるような。

 

デカいながらも、これは紛れもない、上質の栗どら焼きと感心させられる。

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どら皮と粒あんが馴染んでくると、しっとり感が増してくるのがわかる。

 

数日間は楽しめる。個人的には1~2日後が特に旨みがプラスした気がした。

 

【サイドはプレミアムいちご大福】

「この吉見いちごは市場に出ていないプレミアムいちごなんですよ」

 

店先にいらっしゃった先代女将さんが気さくなお方で、さり気なく説明してくれた。

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中のあんこは白あんで、プレミアムいちごを囲い込み、さらに柔らかな求肥(ぎゅうひ)が全体を包んでいる。

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白あんには練乳も加えているようだ。

 

包丁で切ると、鮮やかな色彩が目に飛び込んできた。

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重さは約136グラムもある。

 

絶妙なバランスと美味さ。

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いちごが甘いので、白あんは甘さを抑えているようだ。その機微。

 

4代目の技術が優れているのがよくわかる一品だと思う。

 

もう一品、私が特に感心したのは「草もち」

 

小ぶりだが、よもぎの香りがすっくと立ってくる。

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中の粒あんもしっとりとふくよかないいあんこで、コスパも含めて、全体が素晴らしい。

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鴻巣にはいい和菓子屋が多いが、ここも傑出した、初代からの伝統を守りながら、チャレンジ精神にあふれた名店の一つだと思う。

 

4代目のこれからにも注目したい。

 

「木村屋製菓補」

所在地 埼玉・鴻巣市氷川町4-4-4

最寄り駅 JR高崎線鴻巣駅東口から歩約5分

 

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老舗菓匠のG級「あんドーナツ」

 

あんこ好きにとって埼玉・浦和は「くすぐられるGスポットかもしれない(この場合のGはグレイトのGです)。

 

何せ明治8年創業「ときわだんご」がいぶし銀の光を発し、そのすぐ近くには「菓匠 花見本店」大正元年創業)がはんなり光線を放射している。

 

京都ふうに分類すると、ときわだんごがお餅屋はん、花見が上菓子屋はん、になるのでは?

 

「ときわだんご」のこし餡の美味さはすでに書いているので、今回は「菓匠 花見本店」。

 

ここの目玉は色とりどりの「白鷺宝(はくろほう)」だが、きれいな上生菓子やどら焼きなどに混じって、目立つ場所にあんドーナツが置いてあった。

 

そこだけ駄菓子屋の気配。

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「揚そふと」(1個 108円)と表記してある。

 

「これってドーナツでしょ?」

 

「和風ドーナツですね」(女性スタッフ)

 

深谷の老舗和菓子屋「糸屋製菓店」にもそこだけ下町の「あんドーナツ」があったことを思い出した。

 

ひょっとして原点を忘れない、ということかもしれないが、ぱっと見にはミスマッチに見えなくもない。

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ゆえに引き込まれてしまった。

 

人気商品のようで、早めに売り切れることも多いそう。

 

白鷺宝をゲットするつもりが、道草して日が暮れてしまった気分。あんビリーバボーな、いい道草だと思う。

 

・今回ゲットしたキラ星たち

 揚そふと(こしあん) 108円(税込み)

 揚そふと(つぶあん) 108円(同)

 白鷺宝(10個入り) 1134円(同)

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【今週のセンター】

サクッとした食感「揚そふと」こしあん粒あん

 

砂糖がたっぷりまぶしてある和風ドーナツだが、サクッとした歯触りが素朴で、どこか気品すら感じる味わい。

 

2種類。こしあんは円形、粒あんは楕円形で、見分けがつくようになっている。

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こしあんは約49グラム(63ミリ×63ミリほど)。粒あんは約48グラムだった(77ミリ×55ミリ)。

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あんこはもちろん自家製で、甘さがかなり抑えられている。

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どちらも「懐かしい味わいだね」と言いたくなる美味さだが、どちらかというと個人的な好みはしっとり感のあるこしあんの方。

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小麦粉のきれいな香りと油(サラダ油?)がこしあんの風味を邪魔しない。というよりむしろ引き立てている。

 

塩気のほんのり具合も「よき昭和」を運んでくる。

 

口の中で溶け合い、愛し合い、すっと消えていく感覚・・・ファンが多いのも頷ける。

 

舌の上にしばらくの間、昭和の夢らしきもの(?)が残る。

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粒あんの方があんこは甘めだと思う。

 

【セカンドは白鷺宝6種】

「菓匠 花見」は現在4代目。首都圏を中心に日本橋三越や大宮そごうなどにも出店している。店舗数は計9店舗ほど。

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暖簾を広げない「ときわだんご」と好対照なところが面白い。

 

看板商品の「白鷺宝」は2代目が考案、卵の黄身を加えた白あんを焼き上げ、ミルク(ホワイトチョコレート)でコーティングしたもの。

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ウズラの卵大の小さなサイズ。

 

野田の清らかな水辺にたたずむ鷺(さぎ)の姿をイメージしたとか。

 

まろやかな口どけがとてもいい。

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ミルクと黄身あんが折り重なるように口の中に広がる感覚。和と洋の粋を球にしたような、かわいい創作菓子で、確かにリピートしたくなってくる。

 

かふぇ(コーヒー味)、茶々(煎茶と抹茶味)、玉しずく(すり蜜でコーティング)、ごま(ごま味)などなど。宝石箱のようなバラエティーで、見た目もシャレている。

 

個人的にこの中で特に気に入ったのが「かふぇ」(下の写真)。

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挽いたコーヒーとブレンドした外側と中の白あんの相性がとてもいいと思う。

 

あん子「焙煎したコーヒーの苦みがいいアクセントになっていて、これはとても気に入りました。他もみんなかわいい。小さいけど一個一個きれいな色でキャンディーみたいに包まれていて、目と舌を同時に楽しませる、和菓子(京菓子)の文化を引き継いでいるのは確かね」

 

編集長浦和レッズもあるし、ウナギも美味いし、浦和って奥が深いねえ。ひと昔前は途中下車の町だったけど、今では目的の町になったんじゃないかな」

 

あん子「編集長にとってはあんこの町なんでしょう? 今度行くときは私も連れてってくださいね。うなぎを食べて、パルコで買い物をして・・・」

 

編集長「あんこのハシゴ? 笑えないよ」

 

「菓匠 花見本店」

所在地 さいたま市浦和区高砂1-6-10

最寄り駅 JR浦和駅西口から歩いてすぐ

 

 

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和洋の傑作「フルーツあんみつ大福」

 

フルーツ大福は新しいトレンドだが、これは・・・と思わず唸ってしまったのが「フルーツあんみつ大福」

 

百聞は一見に如かず。まずはその断面を見ていただきたい。

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どないどす?(なぜか京都弁で言いたくなる)

 

茨城・筑西市老舗和洋菓子屋さんの独創的な生菓子で、あんこ好きの友人から情報をもらって、コロナ禍のなか、思い立って訪問し、ゲットしたもの。

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「あんみつ」が柔らかな求肥餅(ぎゅうひもち)で包まれていて、中は粒あんと生クリーム、それにドレンチェリーやみかん、黒蜜寒天などが星雲のように収まっている。

 

京都のはんなり文化にも通底しているような、和スイーツの小宇宙に一瞬、胸がときめいた。キラキラお星さまの気分・・・。

 

あん子「ホントびっくりですね。去年、『麻布昇月堂』の一枚流しあんみつ羊羹にも驚かされたけど、これもすごいわねえ」

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編集長「ふふふふ。生ものなので冷凍で置かれていて、解凍したら、その日中に食べなければならない。善は急げ、ではなくあんこは急げ(笑)。とにかく食べてみよう」

 

・今回食べたキラ星たち

 フルーツあんみつ大福 1個324円(税込み)

 豆大福 同140円

 百歳満寿(黒糖まんじゅう) 同108円

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【今週のセンター】

まさかの甘い衝撃「フルーツあんみつ大福」

 

このあまりに独創的な一品を作っているのは、「菓子處 たちかわ本店」

 

創業が大正12年(1923年)。現在4代目。

 

建物も文化遺産なもので、1階がモダンな和洋菓子屋さん。2階より上が創業当時のままの木造建築で、見ようによっては千と千尋の神隠し」の湯殿のよう、と表現する人もいる。これって屋上屋?

 

ごらんの通りの不思議な構造になっている。

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「フルーツあんみつ大福」ともども、あんこ行脚中の私にとっても初めて見る光景。

 

初代から続く老舗和菓子屋だが、平成11年(1999年)からは洋菓子も作っている。4代目は洋菓子修業(パティシエ)もしているようだ。

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「フルーツあんみつ大福」は野心的で、和と洋の見事な結実と思う。

 

自宅に持ち帰ってから、常温で解凍し、シャレた包みを解くと、本体が現れた。

 

求肥餅でやや長方形に折りたたむように包まれ、餅粉が雪のようにうっすらとかかっていて、中のあんこが透けて見える。

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重さは約95グラム。サイズは大きめで65ミリ×55ミリ×厚み45ミリほど。

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包丁で切ると、あまりの柔らかさに、少々苦労する。

 

艶やかな粒あんが上部と下部に広がり、中央部には大きめの黒蜜寒天、チェリー、ミカン、パインなどが配置され、それをたっぷりの生クリームが包み込んでいる。

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口に入れると、ピュアな生クリームの存在感が広がる。

 

粒あんはもちろん自家製で、小豆は希少な朱鞠小豆(しゅまりしょうず)を使用している。

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小豆のふくよかな風味も遅れて広がるが、どうしても生クリームの影に隠れている。

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あんこマニアとしてはそこが少々残念だが、全体が独創的なので、その技術力とともに出会った感動の方が先に立つ。

 

フルーツと黒糖寒天も味わいに彩りをつけていて、「これはフルーツ大福の傑作では?」と位置付けたくなる。

 

【セカンドは百歳万寿(黒糖饅頭)】

豆大福もおいしいが、黒糖饅頭の方が私的には好みだった。

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小麦粉に葛粉(餅粉?)を加えたような、しっとりとした黒糖の皮の食感がいい。

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中はなめらかなこしあんで、みずみずしさすら感じた。甘さは控えめ。塩気もほんのり。ホントにこれを食べれば、コロナも乗り越え、百歳まで生きられそう(笑)。

 

豆大福は赤えんどうが固めで、それがちょっと残念。餅はしっかり搗かれていて、粒あんの風味もほどよい。塩気も効いている。

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あん子「フルーツあんみつ大福がすごすぎて、その分、他が損してるかもね」

 

編集長「渋好みとしてはちょっと困る展開だけど、この独創性には脱帽だね。とにかく口の中でいろんな味が混じり合い、溶け合い、生クリームの新鮮な余韻がしばらく舌に残る。表現を変えると、和洋スイーツのオーケストラを味わった気分。個人的にはあんこの量をもっと増やしてほしいけどね(笑)」

 

あん子「こういう店がローカルに存在していることが大事よね。今回は私もうれしくなっちゃった。今度行くときは編集長に付いていきたいでーす(笑)」

 

「菓子處 たちかわ本店」

所在地 茨城・筑西市丙274

最寄り駅 JR水戸線下館駅から歩約8分

 

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「とらや小形羊羹×スコッチ」試してみた

 

あ~やだ、オミクロンの大寒入り。今年は寅年ということをすっかり忘れていた。

 

なので、「ガオー」と虎のひと吠え、気持ちだけでも元気を出したい。

 

ちょっと出費がかさんでしまったが、寅年にちなんで、今回はスペシャルバージョンで行こうと思う。

 

虎屋の小形羊羹(5種セット)を買い、あのシングルモルトウイスキーロールスロイスとも言われる、スコッチ「マッカランをゲットし、寅年のスタートにこの究極の(?)マッチングを試してみたくなった。

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タネを明かすと、好きな作家のひとり、開高健(1930~1989)の不思議な楽しみ方を思い出したからだ。

 

師匠はこの組み合わせに独特のこだわりを持っていて、それはウイスキーは「マッカラン」、小形羊羹は「夜の梅」でなければならない、というもの。

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1年ちょい前の晩秋、とらや赤坂店地下で開催された「YOKAN展」の片隅でもそのことが紹介されていて、私もいつか試してみたいなあ、と思っていた。

 

フツーに考えたら、そんなのあり?と突っ込みたくなる。

 

和菓子とお酒のマッチングは「週刊あんこ」でもいくつか試しているが、組み合わせによっては舌の上に小さな天国が出現する(例えば浅草・徳太楼のきんつば×純米吟醸酒など=個人的な好みです)。

 

さて、今回はどうか?

 

相手はスコッチの頂上の一つ。喰うか喰われるか、それとも溶け合うか?

 

・今回の購入

マッカランエスト(700ミリリットル) 約6000円(税別)

②とらや小形羊羹 5種 1500円(税別)

 夜の梅(小倉羊羹)

 新緑(抹茶入り羊羹)

 はちみつ(蜂蜜入り羊羹)

 紅茶(紅茶入り羊羹)

 おもかげ(黒砂糖入り羊羹)

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【今週のセンター】

マッカラン×夜の梅」予想外の寝技勝負だった

 

開高健「必ずこの組み合わせでなければならない」と言ったことをいったん忘れて、賞味してみた。

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マッカランのキャップが驚くほど固くて、格闘約10分、ペンチを使ってようやく開ける。恐るべきガードの固さ。そう易々と辿り着かせないぜ、とテストされている気分になった。

 

私はワインや日本酒は大好きだが、正直に言うと、ウイスキーも大好きだ(笑)。

 

栓を抜いたとたん、百本のバラがいきなりこちらに向かって飛び出してきたような錯覚に陥った(オーバーではありませんぞ)。

 

しばし強烈な香りに圧倒されながら、まずはひと口。吹き上げるような刺激。とろりとしたコクの中に甘みさえ感じる。

 

脳が陶酔の予感に襲われる。これはちょっとすごい。アルコール度数は40度。

 

マッカランは古いシェリー樽を使って熟成しているせいか、ベースに残るシェリー酒の遠い薫りまで感じるが、素人なのでうまく表現できない。

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氷をひとかけら入れてオンザロックにしてから、主役の「夜の梅」をかじってみた。

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やや固めの「夜の梅」がやさしく感じる。

 

穏やかな小豆の甘さがマッカランの強烈な広がりに包み込まれていく。

 

なるほど開高健がこだわったのがほんの少しわかった気がした(ホンマかいな)。

 

マッカランを邪魔しないどころか、受け入れて、おだやかに包み込まれてる。

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日本の和がスコットランドの大きな渦に押し包まれている・・・。

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相撲で言うと、照ノ富士と遠藤のがっぷり四つのよう(スベったかな?)。

 

「夜の梅」の梅の部分(小豆)が以前よりも少なく感じた(ちょっと残念?)。

 

それでも確かに1+1=3以上の蕩け方だった。

 

お金はかかったが、これは意外な発見だった。オーパ!」な組み合わせだという他ないかな。

 

【他の4種類とのマッチングは?】

 

以下気に入った順に寸評してみた。

・はちみつ 白小豆、手亡、福白金時の白羊羹に蜂蜜を混ぜているので、ほのかな蜂蜜の風味が強烈なマッカランうまい具合に関係を結んでいるよう。個人的な印象では「夜の梅」に次ぐ相性の良さ。

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・おもかげ 黒砂糖入り羊羹なので、黒糖の風味がマッカランに小さく抵抗しているよう。そこが好みの別れるところかな。

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・紅茶 紅茶は英語でブラックティー。なので、色はほとんど黒。悪くはないが、個人的には紅茶のかすかな風味がマッカランの陶酔を少し邪魔しているように感じた(あくまで個人的な感想です)。

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・新緑 抹茶入り羊羹なので、抹茶の風味が単品で味わうよりもマッカランの遠心力と少しズレがある気がする。これも好みの問題だが、私はイマイチ乗れなかった。1+1=2のままそこで戸惑っている感じかな。

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とはいえ、マッカランと虎屋の異種格闘技戦は十二分に楽しめた。

 

「とらや赤坂店」

所在地 東京・港区赤坂4-9-22

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

座布団3枚!荻窪の別格「酒まんじゅう」

 

酒饅頭(さかまんじゅう)は皮とあんこのバランスが難しいと思う。

 

1+1が3になる酒饅頭と出会えることはそう多くはない。

 

私にとって、東京・荻窪「高橋の酒まんじゅう」(店名です)はその筆頭格の酒饅頭である。

 

平べったい形で、艶やかな表面から、店主のきれいな熟練の手の匂いのする、何とも言いようのない、心に刺さる外見。

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酒種のいい香りが半径60センチほどを花畑にするような(表現がヘンかな)。

 

よく見ると、一個一個微妙に形が違う。

 

オーガニックコットンのような皺(しわ)。しっとりともっちりの予感がなだらかな起伏となり、思わず手で触りたくなる(ン? スベってたらごめんなさい)。

 

艶の奥にうっすらとあんこが見える。見え方がたまらない。

 

手で二つに割ると、きれいな藤紫色のこしあんが現れ、ひと口ふた口いくと、これがめっちゃ美味い。

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口の中にふわりと広がる吟醸香とあんこの幸福感

 

淡い甘さと舌触りの質が他の酒饅頭とは明らかに違う(個人的な感想です)。

 

ピュアなまったり感。塩気は感じない。

 

酒饅頭の貴種、と言いたくなる。

 

小豆は北海道産です。砂糖はグラニュー糖。添加物を使っていないので、この季節は賞味期限は3日間です」

 

メガネをかけたマスク姿の女性スタッフがテキパキと教えてくれた。

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と思いきや、「三代目」だった。汗。

 

7~8年前に来た時は店主はイケメン中年男性で、確か「二代目です」と話してくれた。ルーツは姫路とおっしゃっていたと思う。

 

それを言うと、「あっ、兄ですよ。今は私が後を継いでます」。

 

7個入り1パック(税込み 840円)。

 

この店がすごいのは製造販売しているのは「酒まんじゅう」一種類のみ

 

浮気もせずに(?)、初代から続く昔ながらの製法(酒種を練り込んだ生地を3日間寝かせる⇒手包みなど)を守っていること。

 

秘伝なので、詳しい作り方は想像するしかない(当たり前だが)。

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きっかり正午で「本日終了」の木札がぶら下がるので、前日に予約して、午前中に大急ぎで店まで行かなければならない。

 

友人でもある酒蔵五代目(酒饅頭を研究している)への手土産としてもう1パック予約しておいてよかった(後で感謝された)。

 

なので、今回は選択の余地がない。

 

【本日のセンター】

35グラムの凝縮、なめらかな薄皮とこしあん

 

JR中央線荻窪駅北口から5分ほど歩くと、茶色いっぽいレンガの建物が見え、「高橋の酒まんじゅう」のシンプルな看板が視界に入ってくる。

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以前のまま。

 

和菓子屋という感じがしない。酒饅頭の小さな工房、といった感じ。

 

少し話を伺った後、夜遅く自宅に戻った。

 

昔ながらの蒸し籠でふかしているので、パックを開けると、どこか懐かしい、純朴な、それでいて洗練を感じさせる独特のオーラで「よ・う・こ・そ」とつぶやかれた気がした。空耳?

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手づくりなので、形も大きさも微妙に違う。

 

平均すると、65ミリ×50ミリ×厚さ22ミリほど。重さは約35~36グラム。

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すでに冷たくなっていたが、冒頭に書いたように、吟醸香が広がるなめらかな皮と甘さを抑えたピュアなこしあん絶妙なタッグで口の粘膜をくすぐり、混じり合い、いい余韻とともにどこかへと消えていく。そんな感じ。

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このどこかへと連れて行く感覚がたまらない。一体どこへ?

 

無濾過生原酒をチビチビ飲みながら、2個3個と食べ進み、あっという間に4個胃袋へと落ちていった。

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このある種の「親子マッチング」はあり、だと思う。

 

・2日後の味わいは?

3日間が賞味期限なので、2日後、レンジで10秒(600W)チンしてから賞味してみた。

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味がほとんど落ちていなかった。

 

ほんわかと温かくなっていて、むしろ蒸かし立てに近い感覚。

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酒種とこしあん香りが増した感じさえある。

 

知人の元女子アナは茶会の席でこの「高橋の酒まんじゅう」をよく使う、と話していたが、抹茶にもよく合うし、コーヒーとのマッチングも合うと思う。

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残り1個。食い意地が張っているので、ついつい惜しむように見つめる。

 

すると、なぜか湯上り美女(?)がぼんやりと見えてきた・・・そんな気にさせてくれる酒饅頭はあまりない。

 

「高橋の酒まんじゅう」

所在地 東京・杉並区天沼3-1-9

最寄り駅 JR中央線(あるいは東京メトロ荻窪駅北口歩約5分

 

 

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初春のあんこ力「栗蒸しと豆大福」

 

編集長「ふふふ『週刊あんこ』令和4年のスタートにふさわしいものを用意したよ(笑)」

 

あん子「バレバレですよ。三ノ輪の花月堂本店』の豆大福でしょ? 群林堂、瑞穂、松島屋の東京三大豆大福に負けない、凄い大福だって言ってたでしょ?」

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編集長「あんこの地下王国、日本橋高島屋の『銘菓百選』にもたまに置いてあるけど、やっぱり店まで行かないとダメだね。大福が豆大福を筆頭に4種類、つぶしあんとこしあんがとにかく素晴らしい。『朝生なので、必ず本日中に召し上がってくださいね』と念を押される。初代が京都の流れを汲む、いい店だよ」

 

あん子「センターは決まりですね。つぶしですか、こしですか?」

 

編集長「待ちなさい、お若いの(笑)。ここで期間限定の凄いものを見つけてしまった」

 

あん子「じれったいです。北朝鮮のミサイルが飛んできますよ(笑)」

 

編集長「こわ~。栗蒸し羊羹だよ。竹皮に包まれて、残りが二つだけ。オーラを放ってたんだ。予算オーバーだったけど、一期一会かもしれない、と思い切ってゲットしたよ」

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あん子「わかりました。栗ということで新春スタートにふさわしいかも、ということにしときましょう(笑)」

 

・試食したキラ星たち

 栗蒸し羊羹 ひと包み 1404円(税込み)

 豆大福(つぶしあん) 216円(同)

 豆大福(こしあん)  216円(同)

 よもぎ大福(こしあん)216円(同)

 黒豆大福(つぶしあん)216円(同)

 

【本日のセンター】

こだわり方がクール、栗蒸し羊羹の傑作

三ノ輪「花月堂本店」の風情のある店構えがいい。かしわ手を打ちたくなる。

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創業は明治4年(1872年)。現在7代目が仕切っている。

 

京都の公家の出の和菓子職人明治維新とともに東京に出て、神保町に店を構えたのが最初のようだ。

 

三ノ輪に移転したのは明治44年(1911年)。

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現在も作り続けている最中が目玉だったが、いつしか「豆大福の美味い店」として、固定ファンが付いている。

 

京都の流れを汲むことからわかるように、生菓子は朝生(あさなま=朝作ってその日のうちに食べる)が一番美味しいというポリシーが息づいている。

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なので、「栗蒸し羊羹」もどこか京都の匂いがして、素材選びから製法までこだわり方がひと味違う、と思えてくる。

 

竹皮の包みを解くと、長方形(ほとんど四角)に切った栗蒸し羊羹本体が現れた。

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素朴で質の高そうな濃い小倉色に一瞬、目が吸い取られる。拝みたくなる。

 

包丁で切ると、蜜煮した栗がぼこぼこ入っている。

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ありそうでなかなかお目にかかれない代物、だと思う。

 

大きさは95ミリ×75ミリ×厚さ35ミリほど。重さは約287グラム(竹皮を入れて)。

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十勝産小豆の自家製こしあんと小麦粉の混じり方が絶妙で、こしあんのいい風味が豊かに口の中に広がる感覚。砂糖は白ザラメを使っているようだ。

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甘さがほどよく抑えられ、口どけの良さがとてもいい。

 

本場の吉野葛も加えているので、柔らかな食感に気品がある。

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蜜煮した栗(国産)のほっこり感とのマッチングも申し分ない。

 

職人の手触りを感じる、トップクラスの栗蒸し羊羹と出会った気分。こいつは春から縁起がいいや。

 

【サイドはこしあんの豆大福】

大福は4種類ともあんこのボリュームと風味が素晴らしい。

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定番の豆大福(つぶしあん)は東京三大豆大福と比較してもそん色がないと思う。

 

サイズは約70ミリ×60ミリ×厚みは36ミリほど。約110グラムとデカめ。

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たっぷりの餅粉。羽二重のような餅の柔らかさ。

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赤えんどう豆のふっくらした歯ごたえ。塩気。

 

あえて言うと、4種類の中で個人的に最も気に入ったのはこしあんの豆大福

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こしあんふくよかなしっとり感が尋常ではない。

 

甘さが抑えられ、雑味がない。

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粒子を感じるこしあんで、ほんのりと塩気もにじんでいる。

 

私の大好きな原宿「瑞穂(みづほ)」と比較しても十二分に美味しい。

 

よもぎ餅も黒豆(丹波産)も上質な美味さで、正午少しすぎに訪問したのに、売り切れ寸前だった。今回はぎりぎり間に合ったことになる。

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メディアの取り上げ方が東京三大豆大福のやや影に隠れているが、「三ノ輪根岸の花月堂本店」の存在は東京の和菓子屋のキラ星の中で、間違いなくいぶし銀の光を放っていると思う。

 

初空や根岸の里の豆大福

 

三ノ輪「花月堂本店」

所在地 東京・台東区根岸5-16-12

最寄り駅 東京メトロ日比谷線三ノ輪駅から歩約5分

 

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締めはうさぎや、どら焼きときんつば

 

編集長「デルタ株で明け、オミクロンで終わりそうな令和3年になったけど、週刊あんこ的にはあんこに明け、あんこに暮れた年になった」

 

あん子「いつものことでしょ? こんな時代にあんこ三昧なんて甘すぎます(笑)」

 

編集長「でも和菓子屋さんの状況を考えると、落ち着いてはいられない。ささやかだけれど、あんこの素晴らしい世界を地味に発信し続けるしかない。年内の発信は今日でお終い。なので、締めは『阿佐ヶ谷うさぎやにしたよ」

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あん子「別格のどら焼きね。うさぎや上野、日本橋、それに阿佐ヶ谷。みんなルーツは黒門町(上野)でしたね。確か初代の息子さんと娘さんが暖簾分けしてるのよね」

 

編集長「おっ、よく知ってるね。それぞれ独立していて、作り方も味わいも少しずつ違うんだ」

 

あん子「編集長の好みは確か日本橋、上野、阿佐ヶ谷の順だったですよね」

 

編集長「でも、今回、久しぶりに阿佐ヶ谷に行って、ちょっと見方が変わったよ。こだわりの強い上生菓子も作っていて、しかも対面販売にこだわってる。いい仕事、してるなあってね」

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あん子「どういう意味ですか?」

 

編集長職人さんのレベルがとっても高いと思う。目玉のどら焼きも日本橋や上野に比べてちょっぴり小ぶりだけど、きっちり作っていて、以前は感じなかった感動を覚えちゃった」

 

あん子「その他にもいろいろあるんでしょ? 早く食レポお願いいたしまーす」

 

・今回ゲットした」キラ星

 どら焼き5個(箱入り)1300円(税込み)

 きんつば 1個216円(税込み)

 栗むし羊かん 1個313円(税込み)

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【本日のセンター】

完成度にうるうる、どら皮とつぶあんの恋愛

 

うさぎやの創業は大正2年(1913年)。上野黒門町に初代谷口喜作が暖簾を下げたことから始まっている。うさぎや」の屋号は初代喜作が卯年に誕生したことからのようだ。

 

その長男(二代目)が跡を継ぎ、さらに三男が暖簾分けして日本橋うさぎやを開業。阿佐ヶ谷は娘さんが暖簾分け。黒門町の和菓子職人を招いて西荻窪⇒阿佐ヶ谷と繋いでいったようだ。

 

なので、阿佐ヶ谷うさぎやの歴史は一番新しい(昭和32年)。

 

だが、その分、江戸・京都の上菓子屋につながるような、こだわりの強い店づくりしたとも言えるのではないか。

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どら焼きはもちろんのこと、上生菓子や季節の和菓子をこじんまりと対面販売で作っている。

 

常連客が絶えることなく、いつも賑わっているのが素晴らしい。

 

まずはどら焼きから賞味してみた。

 

箱から取り出し、包みを取ると、いい香りとともに見事なきつね色(淡い)が現れる。

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縁が貝のようにぴったりと閉じられ、ふっくらしたどら皮。

 

大きさは直径約93ミリ、真ん中の厚みは約33ミリ。重さは113グラムほど。

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どら皮には小麦粉や卵、ハチミツなどの他に味醂(みりん)も隠し味にしていて、これは上野や日本橋にはない作り方。

 

しっとりしていて、しかももっちり感もある。

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中のあんこはふっくらと炊かれた大粒のつぶあんがたっぷり

 

甘さは控えめ。いい小豆の風味が口中に広がる感覚は得難いレベル。

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塩気がほんのり。

 

それらが口の中で絡み合い、溶けていく。

 

あんこ職人の腕とどら皮職人のレベルはかなりのもの、と思う。

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素晴らしきどら焼き。

 

以前よりも阿佐ヶ谷うさぎやに一目置きたくなった。

 

【サブはきんつば

きんつばの本流、江戸の鍔型のきんつば

 

これはちょっと驚いた。

 

幕末から続く日本橋榮太樓の名代金鍔(なだいきんつば)とほとんど同じ、江戸前のきんつばの形。

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手焼きの焼き色がどこか凸凹していて、一目で「こりゃあ、うめえだろうな」と思った。

 

日本橋榮太樓よりも色が淡い。

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中のあんこは潰しあんで、サラッとした食感。

 

塩気が強め。

 

寒天の気配はないが、ひょっとして葛粉を加えているかもしれない。

 

口どけの良さに粋を感じた。

 

【おまけは栗むし羊かん】

これも上質の栗蒸しで、濃い藤紫色の蒸し羊羹に蜜煮した栗が砕かれた状態で閉じ込められている。

 

表面に寒天の膜。

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上質のこしあんと小麦粉(葛粉も?)がいい具合で溶け合い、そこに栗がきれいな歯ごたえで、「どうでありんすか?」と迫ってくる感じ。

 

塩気が強めなのは江戸⇒東京の流れを感じさせる。

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大きさは左右50ミリ×40ミリ×厚さ35ミリほど。

 

全体的に東京の粋を感じさせる、うさぎや3系統の異端とも言えそうだ。

 

令和3年の終わりに、またしてもあんこの神様に感謝。

 

今年一年、コロナ禍の中、読んでくださった皆々さまにも改めて感謝いたします。

 

「阿佐ヶ谷うさぎや

所在地 東京・杉並区阿佐ヶ谷1-3-7

最寄り駅 JR中央線阿佐ヶ谷駅から歩約3分

 

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