週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

浅草きんつば界「張出横綱」

 

東京・浅草はきんつばの聖地だと思う。

 

何といっても、私が大好きな「徳太楼(とくたろう)」がいぶし銀に光っているし、合羽橋には「江戸昔菓子」の「梅源(うめげん)」がある。どら焼きの「亀十(かめじゅう)」などもまずまず美味い。あの大行列はいただけないが。

 

先週、文化の日(11月3日)のこと。敬愛する「あんこラボ」の皆さんと浅草あんこ菓子巡りを楽しんだ。10人で江戸・明治の老舗和菓子屋さんをほぼ半日かけて訪ね歩いた。脳内エンドルフィン(幸せホルモン)全開。

 

10人が10人とも頭に「スーパー」がつくほどのあんこ好き。たまたま「徳太楼」が休みだったので、合羽橋の「梅源」で、きんつばを買い求めた。それがこれ。

 

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小さな店構えで、ずい分以前に食べただけだったが、改めて食べたらやはり高いレベルで美味かった。

 

「徳太楼」よりも一回りはデカい

 

皮が膜のように薄く、手焼き感がとてもいい。中のつぶあんが透けて見える。

 

素朴に絶妙だと思う。姿がいい。

 

徳太楼よりも寒天が少なく、その分、あんこが前面に出ている。徳太楼が東の横綱なら、張出横綱といったところかな。一個160円なり(税込み)。

 

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控えめな甘さ。小豆の風味もいい。ほんのりと塩も効いている。

 

「梅源」の創業は明治40年(1907年)。現在3代目。最初は神田でスタート、その後浅草に移っている。きんつばの他に芋甘納豆や石衣(いしごろも)や小倉金花(おぐらきんか)など、江戸を思わせる手作り菓子が並んでいる。

 

「もともとは豆板とか小倉金花を売っていたんですよ。砂糖を煮詰めて固めたお菓子です。江戸・明治の昔菓子です。きんつばも江戸時代からありますからね」(3代目)

 

手作りなので、早い時間に売り切れることもある。

 

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包丁で切ってみると、小豆の輪郭がくっきりときれいで、手間をかけてこしあんブレンドしたのかと思うほど。

 

だが、3代目は「いえいえ、ただのつぶあんです」と笑う。

 

北海道十勝産小豆を使い、砂糖は白ザラメ。塩も効かせている。

 

形を除くと、まぎれもない江戸のきんつばの系譜だと思う。

 

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江戸時代のきんつばは四角ではなく、丸かった。刀のつばの形だった。発祥は京都で、「銀つば」と呼ばれていたようだ。それが江戸に伝わり、「銀より金のほうが縁起がいいや」となって、いつしか「金つば」になった。江戸っ子のしゃれっ気も効いている。

 

その江戸の中心地のひとつ、浅草がきんつばの聖地というのは当たり前かもしれない。

 

所在地 東京・台東区西浅草3-10-5

最寄駅 地下鉄銀座線田原町駅から歩約10分、つくばEXP浅草駅歩約5分

 

 

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信州「栗の町」の純栗かの子

 

「純栗かの子」はたまらない。

 

私的には信州・小布施町(おぶせまち)が天国に近い場所

 

頭に描いただけでヨダレが出かかる(失礼)。

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人口1万人強のちいさな町に栗菓子屋の老舗が5軒ほどある。

 

桜井甘精堂(さくらいかんせいどう)、小布施堂、竹風堂が有名だが、いずれもいい味わいと独特の風味を作り上げている。

 

小布施の栗かの子は関東で言うと、おせち料理栗きんとんに近い。

 

信州に旅したとき、小布施にも行く予定が、途中で時間を取られ、行けずじまい。仕方なく長野駅構内で桜井甘精堂の「純栗かの子」(270グラム 税込み1296円)を買い求めた。

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安くはないが、これが極上の楽しみとなる。

 

自宅に持ち帰ってから、わくわくしながら缶の蓋を開ける。

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グレーがかった純栗かの子が現れる。このあまりに自然な色がたまらない。

 

地産の蜜煮した大栗(丹波栗系)と栗あんがお見事、と掛け声をかけたくなる。

 

甘さを抑えた栗あん。蜜煮した大栗の歯ごたえ。

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素朴な洗練、という表現が近いと思う。

 

それらがねっとりと舌にささやきかけてくる・・・。

 

その風味が口中で吹き上がる感覚はちょっと得難い。

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桜井甘精堂の歴史は古い。

 

文化5年(1808年)、初代桜井幾右衛門が栗落雁(くりらくがん)を作り、文政2年(1819年)にはその弟・武右衛門が栗羊羹を作った。

 

栗かの子は明治に入って、5代目が作り上げた(明治25年)という。ちなみに今は8代目。

 

小布施の栗菓子の歴史は桜井甘精堂と共にある、といっても過言ではない。

 

本店に電話して、砂糖は何を使ってるのか、尋ねてみた。

 

「白ざら糖です」

 

栗と砂糖しか使っていない。今年はすでに栗の収穫が終わり、新栗を使った「純かの子」は12月から売り始める。約一か月後。

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すべて手作業で、練り上げた栗かの子を缶に詰めるのも手作業だという。

 

「機械だとこの味わいは出ないんですよ」

 

意外な一面を見る思い。

 

所在地 長野・上高井郡小布施町大字小布施774(本店)

最寄駅 長野電鉄小布施駅下車 歩約10分

 

 

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日光「湯沢屋」の酒まんじゅう

 

酒種で発酵させた酒饅頭(さかまんじゅう)の歴史は古い。

 

あまりに古い。

 

鎌倉時代南宋に渡った聖一国師円爾)が中国から伝えたとされる。

 

気が遠くなる話ではあるが、これが実に美味い。

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古くて新しい。本物なら、まんじゅう界の頂点だと思う。

 

私は職人の手の匂いのする東京・荻窪の「高橋の酒まんじゅう」が大好きだが、ここの歴史は戦後で、そう古くはない。

 

日光「湯沢屋」は創業がなんと文化元年(1804年)。ちょうど砂糖が一般にも流通し始めた時代で、その意味でも湯沢屋の存在は光り輝く。

 

酒饅頭は当時の製法のまま、7代目の今も手間ひまを惜しまず作り続けている。

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日光は羊羹があまりに有名だが、実は酒饅頭の元祖が今もあり続ける場所なのである。

 

一個140円(税込み)を一包み買い求めて、さらに店先で蒸かし立てを2個たべることにした。

 

日光でも多分一番古い老舗だが、嫌な顔をしない。さすが饅頭屋さん。

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皮のもっちり感が只事ではない。手にくっつきそう。糀(こうじ)の甘い、いい匂いが鼻腔に侵入してくる。

 

高橋の酒まんじゅうとよく似た手の匂いのする素朴な洗練。

 

中はたっぷりのこしあんで、いい小豆の風味が立つ。

 

甘さが控えめで、きれいなあんこ。むろん自家製。

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無添加なので、時間がたつとすぐに固くなってくる。ほのかな酸味も酒種が本物である証拠でもある。

 

このあたりも並の老舗ではない。

 

たまたま七代目がいた。穏やかなイケメンだった。

 

「糀づくりから入れると、出来上がるまで七日もかかるんですよ」

 

気さくに話してくれた。

 

皮の凝縮感とこしあんの絶妙な結婚。

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驚いたことに創業当時から住みついている麹菌もこの酒饅頭作りに一役買っているそう。

 

214年前の味わいそのまま、ということになる。

 

鎌倉時代聖一国師が伝えた酒饅頭は博多「承天寺」前にあった茶屋に引き継がれ、その時に聖一国師が書いたと伝えられる「饅頭所」の看板は、なぜか赤坂「虎屋」に残されている。

 

銀座木村屋のあんぱんも酒種で膨らませている。

 

酒饅頭がなかったら、木村屋のあんぱんも生まれていなかったことになる。

 

様々な思いを込めて、この湯沢屋の酒饅頭を賞味する。

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絶妙な美味さの奥に日本独自のスイーツの歴史が隠し味になっている。

 

あんこ版、点と線の歴史。

 

これぞ無上の楽しみ、としか言いようがない。

 

所在地 栃木・日光市下鉢石町946

最寄駅 東武日光線日光駅 歩約15分

 

 

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虎ノ門岡埜栄泉の「栗饅頭」

 

このところ栗饅頭(くりまんじゅう)にハマっている。

 

きっかけは友人の編集者Y君のメール。最近結婚したばかり。ワイン好きの酔っ払いで、スイーツ類とは無縁な無粋な男。それがどうしちゃったの?と心配になる内容だった。

 

「和菓子は苦手でしたが、先日たまたま虎ノ門岡埜栄泉の栗饅頭を食べて、印象が変わりました。めっちゃ美味かった! 女房もボクの反応に驚いています(笑)」

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何があったのかは知らないが、常に冷静でウソをつくような男ではないので、妙に気になった。結婚して味覚が変わった? まさか。

 

で、虎ノ門岡埜栄泉(とらのもんおかのえいせん)に足を運んだ。ここは豆大福の方が有名だが、栗饅頭の評価も高い。近くには栗饅頭の名店「丸万」もある。

 

一個270円(税込み)なり。上野の「岡埜栄泉総本家」や人形町「清寿軒」などの老舗よりも高い。

 

コスパ的にはどうか? 自分の舌で確かめるのが一番。

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紙のパッケージを取ると、俵型の、かなりデカい栗饅頭が現れた。フツーの栗饅頭の1.5倍はあると思う。

 

手に持つとズシリと重い。

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表面の茶色いテカりがきれい。卵の黄身の塗り方も職人芸で、二つに割ると、中から蜜煮した大栗が丸ごと一個、メノウ色の白あんに包まれた姿が現れた。そのボリューム。まるで竹の中から現れたかぐや姫のよう・・・ちょっとオーバーかな。

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だが、食感がこれまで食べた栗饅頭とひと味違った。

 

皮の薄さとしっとり感、ぎっしり詰まった白あんの風味がかなりのもの。北海道産手亡豆のねっとりとしたこしあんで甘さが控えめなのも好感。

 

蜜煮した大栗はほどよい柔らかさで、ホロホロと崩れてくる。栗のきれいな風味が白あんと絶妙にマッチしている。1+1=3に近い世界。

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その「3の世界」が口の中でゆっくりと溶けていく。ため息が出かかる。

 

ある種、官能的な栗饅頭だと思う。

 

豆大福が昔より小さくなり、ちょっと失望していたが、栗饅頭は大きいままで、Y君がこの味を知って和菓子に対する見方を変えたのも不思議ではない。

 

ところで、虎ノ門岡埜栄泉は上野の岡埜栄泉総本家とは関係が薄い。

 

創業が大正期で、明治6年(1873年)創業の総本家より歴史が浅い。

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岡埜栄泉の歴史は複雑で、ルーツは浅草・駒形のようだ。江戸末期に創業し、そこから明治になって5つに暖簾分けしたという。

 

虎ノ門岡埜栄泉の初代はその一つ、末広町の「初祖 岡埜栄泉総本舗」で修業したようだ。そこから暖簾分け。

 

この総本舗は数年前に店を閉じてしまった。悲しい。

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ルーツ辿りは実にややこしい。なので、ここは一呼吸おいてから、目の前にある見事な技術の結晶をシンプルに味わうに限る。

 

所在地 東京・港区虎ノ門3-8-24

最寄駅 東京メトロ虎ノ門駅または神谷町駅 歩約6~8分

 

 

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浅草あんこ界の隠れ王者

 

あんこ好きにとって、京都が西の横綱なら、東の横綱は浅草だと思う。

 

上菓子屋より庶民的な餅菓子屋が多い、というのもちょっとうれしい。

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梅園の粟ぜんざい、亀十のどら焼き、徳太樓のきんつば、舟和のあんこ玉、長命寺桜もち、言問団子・・・と指折りきて、つい忘れがちになるのが、向島「志”満ん草餅(じまんくさもち)」である。

 

面白い屋号で、読みづらいが、150年もこの屋号で通しているので、今さら変えられない(多分変える気もない)。

 

ここの「草餅」と「ささ餅」が見た目は地味系だが、飛び切りなのである。

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餅の質はもちろんのこと、個人的な評価では、どちらもあんこの美味さがスカイツリーを超える、かもしれない(気持ちが入り過ぎて、表現がヘンになってしまったが)。

 

明治2年(1869年)創業。現在4代目。元々は隅田川沿いの茶店で、渡し船のお客を相手に草餅を出して、それが評判を呼び、現在も小さく白い暖簾を下げている。テイクアウトのみ。ほとんど店舗を広げない、というのも今どきの店とは一線を画す。

 

創業当時からの目玉が「草餅」(よもぎ餅)で、あん入り(1個 税込み145円)をまず食べてみる。

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よもぎの若芽だけを手作業で選り分け、丁寧に煮込み、搗(つ)きたての餅と合わせる。自家製のこしあんを手包みする・・・この職人芸が約150年も守られている。

 

添加物などは使用していないので、賞味期限は「本日中です」

 

経木(きょうぎ)を解くと、口に入れる前から、よもぎのいい香りが匂い立つ。

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餅の柔らかさと伸びが素朴で、手づかみで噛んだ瞬間、中のこしあんが3倍太ゴチックで波のように押し寄せてくる。

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このこしあんの美味さに驚く。渋抜きを抑えた濃い甘さで、塩気とのバランスがとてもいい。ありそうでないあんこ。

 

いくら言葉で表現しようとしても追いつきそうもない。素朴な洗練とでも言っとくか。

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もう一品、「ささ餅」(1個 同145円)はつぶしあんで、それがたっぷり、かぐや姫のように笹に巻かれている。こちらも3倍太ゴチックでガブリ寄ってくる。

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艶やかなつぶしあんの下には真っ白な、キメの細かい羽二重餅が隠れている。驚きの構成だと思う。

 

口の中のあんこ天国。

 

小豆は北海道十勝産を使用(多分えりも小豆)。

 

あんこが苦手な人には理解できないとは思うが、正直、ため息の連続で、食べ終えるのが惜しくなるほど。

 

オーバーな表現になっている自分に驚く。

 

もとい。これほどのよもぎ餅は、私の食べた中では奈良・葛城市「中将堂本舗」よもぎ餅くらいしか思い浮かばない。頭を振りふり、記憶を辿り続ける。

 

所在地 東京・墨田区堤通1-5-9

最寄駅 東武スカイツリーライン曳舟駅 歩約12分

 

 

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梅ヶ枝餅「あんこ比べ」

 

福岡・太宰府天満宮まで足を延ばした。

 

目的はむろんのこと、梅ヶ枝餅(うめがえもち)!

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「かさの家」が最も有名だが、あんこマニアとしては、ひまわりではなく月見草を探したい。本物は陰に隠れている、と思うからである。

 

で、地元の情報をかき集めた。その結果、たどり着いたのが「小山田茶店(おやまだちゃてん)」である。

 

観光客でにぎわう参道ではなく、天満宮本殿の裏手。ここまで来ると、観光客は少ない。

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「最近は表通りの参道ばかりメディアに取り上げられますが、全然わかってません。『小山田茶店』は梅ヶ枝餅元祖みたいなところで、創業が江戸時代までさかのぼります。何せこの店は唯一、太宰府天満宮御用達なんですよ」

 

福岡の和菓子好き友人がそう耳元でささやいた。

 

その梅ヶ枝餅(1個 税込み120円)がこれ。抹茶セットで550円なり。

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昔ながらの庶民的な茶店で、その入り口で、ややご高齢の男性職人さんが一丁焼きのたい焼きのように鮮やかな手つきで、梅ヶ枝餅を焼いていた。その焼き立て。熱々だが、これが一番美味い。

 

なので現地で食べるに限る。

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餅粉と米粉ブレンドした皮の外側はパリパリで、中は驚くほど柔らかい。キツネ色の焦げ目、少し羽根まで付いている。ツウによると、この羽根が梅ヶ枝餅の伝統的な形だそう。

 

さて、中のあんこ。洗練ではなく、素朴で甘め。塩気が強い。それがたっぷり。焼き職人さんに聞いてみると、小豆は北海道産で砂糖は上白糖を使用しているそう。たまたまだが東京・麻布十番「浪花家」と似たつぶしあんだと思う。

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もう一軒、参道の「小野筑紫堂(おのちくしどう)」梅ヶ枝餅(こちらも120円)をハシゴ。創業が大正11年と歴史は小山田茶店ほどではない。こちらも手焼きで、女性職人さんが慣れた手つきで焼いていた。

 

おっさんvsおばはん、という構図になるかもしれない(こじつけすぎ)。

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こちらは表に「北海道十勝産小豆 雅(みやび)を使用」とわざわざ書いてある。特に小粒なえりも小豆のこと。

 

ここのあんこが洗練されたつぶしあんで、小山田茶店のものよりも明るめ。きれいな風味で、甘さは控えめ。これは誰が食べても美味いあんこだと思う。

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外見はほとんど同じだが、中の個性が少し違う。あえて好みで判断すると、野暮ったい、多分昔からの小山田茶店の方に舌がスススと傾いていく。

 

へそ曲がりな舌。

 

わがままな舌。

 

観光協会によると、太宰府天満宮には約32店もの梅ヶ枝餅を提供する店がある。年々その数は減っているそう。これはいかん。

 

菅原道真公も泉下で悲しんでいるに違いない。

 

所在地 福岡・太宰府市宰府4-8-17

最寄駅 西鉄太宰府線太宰府駅から歩約6分

 

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蒸し菓子の到達点?「栗若瀬」

 

京都つながりで、蒸し菓子のちょっとビックリの逸品と出会ってしまった。それがこれ。

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これまで食べた中で、蒸し菓子の一つの到達点は私の中では萬年堂の上菓子「御目出糖(おめでとう)」だった。それは今でも変わらない。

 

別名高麗餅(こうらいもち)。こしあん、かるかん粉(米粉)、餅粉を混ぜ合わせ、独特のそぼろ状にしてから大納言小豆を載せて蒸し上げた逸品で、そのもっちりした上品な食感と口の中で溶けていくきれいな余韻は初めて食べたときに、

 

「こんなあんこ系の蒸し菓子がこの世に存在していたとは・・・」

 

オーバーではなく言葉を見失いそうになった。江戸時代からの製法のままと知って、さらに驚いた。

 

さて、ここからが本題

 

京都の畏友が東京に来た折りに手土産として、大阪の蒸し菓子を持って来てくれた。

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いつものように説明はない。ポンと手渡されるだけ。

 

それが「御菓子司 庵月(あんげつ)」の「栗若瀬(くりわかせ)」だった。ここは栗蒸し羊羹の名店としても一部で知られた存在。

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趣味のいい包みを解き、化粧箱に入ったハーフサイズ(税別 1200円)を取り出してからそっとまな板に載せ、付属品のナイフで切り分けてみた。

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高級な白小豆とかるかん粉をそぼろ状に蒸し上げた上菓子で、きれいに2層になっていた。和菓子界では「むらさめ」とも言う。上が明るい抹茶色、下がややクリームがかった白。

 

蜜煮した大栗が織り込まれていた。

 

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貴種を思わせる美しい蒸し菓子で、御目出糖によく似ているが、こちらは白小豆がベース。

 

口に運ぶと、かるかんの食感で、しっとりとしたそぼろ状が舌の上でさらさらと溶けていった。

 

御目出糖よりこちらの方が細かくて崩れやすい。

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白小豆のきれいな風味。もっちり感もあり、それは多分自然薯(じねんじょ)も使っているからだと思う。

 

品のいい甘さが舌に残る。きりっとした栗の存在も絶妙。

 

調べてみたら「御菓子司 庵月」の創業は慶応4年(1868年)だった。明治維新に切り替わる寸前の時期。

 

神戸・相生町「常盤堂」の屋号で創業し、太平洋戦争後にその芦屋店が心斎橋に移転し、店名も「庵月」に変えたこともわかった。

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のれんをあまり増やさないようで、畏友からいただくまでこの店の存在を知らなかった。

 

「本物は店舗を広げるようになったらもうお終いや。味が落ちるで」

 

烏丸御池の「亀末廣(かめすえひろ)」や松原通の「松壽軒(しょうじゅけん)」を愛する、へその曲がった畏友は以前そう言い放った。どちらもデパートなどからの出店の誘いを断り続けているそう。

 

「庵月」はそこまで行かないとしても、その領域に近いと思う。

 

今の時代、「亀末廣」の世界って針の穴の細道ではないかな? のれんを守るとはどういうことか、これは超難問だと思う。あんこの細道、その先の世界・・・。「庵月」はどうか? 

 

「栗若瀬」を味わいながら、それは半分以上当たってるかもなあ、と小さくつぶやくのだった。

 

所在地 大阪市中央区東心斎橋2-8-29

最寄駅 地下鉄心斎橋駅下車 歩約4分

 

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