福岡・太宰府天満宮まで足を延ばした。
目的はむろんのこと、梅ヶ枝餅(うめがえもち)!
「かさの家」が最も有名だが、あんこマニアとしては、ひまわりではなく月見草を探したい。本物は陰に隠れている、と思うからである。
で、地元の情報をかき集めた。その結果、たどり着いたのが「小山田茶店(おやまだちゃてん)」である。
観光客でにぎわう参道ではなく、天満宮本殿の裏手。ここまで来ると、観光客は少ない。
「最近は表通りの参道ばかりメディアに取り上げられますが、全然わかってません。『小山田茶店』は梅ヶ枝餅の元祖みたいなところで、創業が江戸時代までさかのぼります。何せこの店は唯一、太宰府天満宮御用達なんですよ」
福岡の和菓子好き友人がそう耳元でささやいた。
その梅ヶ枝餅(1個 税込み120円)がこれ。抹茶セットで550円なり。
昔ながらの庶民的な茶店で、その入り口で、ややご高齢の男性職人さんが一丁焼きのたい焼きのように鮮やかな手つきで、梅ヶ枝餅を焼いていた。その焼き立て。熱々だが、これが一番美味い。
なので現地で食べるに限る。
餅粉と米粉をブレンドした皮の外側はパリパリで、中は驚くほど柔らかい。キツネ色の焦げ目、少し羽根まで付いている。ツウによると、この羽根が梅ヶ枝餅の伝統的な形だそう。
さて、中のあんこ。洗練ではなく、素朴で甘め。塩気が強い。それがたっぷり。焼き職人さんに聞いてみると、小豆は北海道産で砂糖は上白糖を使用しているそう。たまたまだが東京・麻布十番「浪花家」と似たつぶしあんだと思う。
もう一軒、参道の「小野筑紫堂(おのちくしどう)」の梅ヶ枝餅(こちらも120円)をハシゴ。創業が大正11年と歴史は小山田茶店ほどではない。こちらも手焼きで、女性職人さんが慣れた手つきで焼いていた。
おっさんvsおばはん、という構図になるかもしれない(こじつけすぎ)。
こちらは表に「北海道十勝産小豆 雅(みやび)を使用」とわざわざ書いてある。特に小粒なえりも小豆のこと。
ここのあんこが洗練されたつぶしあんで、小山田茶店のものよりも明るめ。きれいな風味で、甘さは控えめ。これは誰が食べても美味いあんこだと思う。
外見はほとんど同じだが、中の個性が少し違う。あえて好みで判断すると、野暮ったい、多分昔からの小山田茶店の方に舌がスススと傾いていく。
へそ曲がりな舌。
わがままな舌。
観光協会によると、太宰府天満宮には約32店もの梅ヶ枝餅を提供する店がある。年々その数は減っているそう。これはいかん。
菅原道真公も泉下で悲しんでいるに違いない。
所在地 福岡・太宰府市宰府4-8-17