草だんごといえば、つい寅さんを連想する。
あんこ好きの悲しいサガ。
映画「男はつらいよ」(山田洋次監督)の舞台、東京・柴又帝釈天の門前には草だんごの店がズラズラーッと並んでいる。
最も古くて有名なのは「高木屋本舗」だが、「何言ってんだい、草だんごではウチが一番古いよ」というのが、「亀家本舗」である。このあたりは諸説ある。
昭和2年(1927年)創業。帝釈天に最も近い老舗で、「男はつらいよ」の最初のモデルは「高木屋本舗」ではなく、この店だったらしい。
ここで見つけたのが「アイス草団子」(税込み400円)である。草だんごのアイスクリーム乗せ。
柴又草だんご界の、いわば甘く冷たい新顔である。
草だんごにアイスクリームを乗っけたのはここだけ。
あんこはつぶあん。小豆は北海道十勝産、砂糖は白ザラメを使い、あんこ職人さんが毎朝早起きして炊いている。草だんごは上新粉とよもぎの若芽(旬に冷凍したもの)を使い、器械で搗(つ)いている。
「その香りがすごくいいのよ。毎日、幸せな気分になるわ」(おばはん店員さん)
つぶあんはこってりしていて甘め。濃厚な小倉色。添加物など使っていない。
淡いよもぎの草だんごは5個ほど。つぶあんとよく合っている。
その上のバニラアイスは、昭和のさわやかなアイスクリームで、それが溶け始めると、つぶしあんといい具合にコラボする。ミスマッチではない。三位一体の風味がつらくない。
さくらちゃんのような、さわやかでけな気な味わい。
渥美清は甘党でもあったらしい。亀家本舗のざっくばらんな店内でこれを味わっていると、向こうからあの四角い顔がやって来た。
「よっ、やってるかい?」
寅さんの何とも言えない笑顔が一瞬だが、確かに見えた。むろん幻覚だが。
渥美清が亡くなったのは平成8年(1996年)8月4日。もう20年以上経ったのに、寅さんは今もファンのなかで根強く生きている。
所在地 東京・葛飾区柴又7-7-9
最寄駅 京成線柴又駅