週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

赤い江戸羊羹「紅煉り」

 

遅ればせながら、新年おめでとうございます。

 

2018年いぬ年、最初の登場は「江戸切り羊羹 紅煉り(べにねり)」です。どうです、このルビーのような色。

f:id:yskanuma:20180104134858j:plain

 

東京・日本橋高島屋B1の「味百選・銘菓百選」で買ってきたもの。

 

この日本橋高島屋地下はあんこ好きにとっては聖地みたいな場所。日本全国老舗の和菓子がキラ星のごとく揃っている。まだ知らない人も多いと思うが、穴場です。

f:id:yskanuma:20180104135039j:plain

 

紅煉り羊羹はここで見つけたもの。「羊羹(ようかん)の町」佐賀県小城市にある村岡総本舗の傑作だと思う。

 

一棹801円(税込み)。1円は消費税の関係です(笑)。

 

昔むかし、門前仲町の喫茶店でママが「これ、美味いわよ」と言って差し出してくれたのがこの「江戸切り羊羹 紅煉り」との出会いだった。

 

竹皮に包まれた紅色の羊羹は、表面が糖化していて、噛んだ瞬間、ガサリガサリと音がした。中はねっとりとした羊羹で、その素朴な対比が衝撃的だった。

f:id:yskanuma:20180104135128j:plain

 

それまで羊羹は豆大福ほど大好きというわけではなかった。

 

その後調べてみると、この紅煉りはあの豊臣秀吉の時代からあり(当時は蒸し羊羹に近かったと思う)、それが江戸時代中期頃に東京・日本橋で寒天を使った煉り羊羹となった。

f:id:yskanuma:20180104135216j:plain

 

寒天と砂糖が一般化し、江戸切り羊羹は当時の人気スイーツとなって行った。

 

村岡総本舗は創業が明治32年(1899年)。江戸時代ではないが、江戸の製法をほとんどそのまま伝承している。これは凄いことでもある。

 

日光の名店「ひしや」が休業してしまった今、この江戸切り羊羹は貴重である。

f:id:yskanuma:20180104135236j:plain

 

北海道産大手亡豆(白インゲン)をクチナシで着色し、舟形に流し込んだ羊羹を包丁で長方形に切っていく。

 

お正月にはふさわしいめでたい羊羹だと思う。赤には魔除けの意味もある。

 

ルビー色の羊羹は白インゲンの風味とほどよい甘さで、舌先に遠く江戸の面影を運んでくる。今年一年が誰にとってもいい一年になりますように。

 

所在地 東京・中央区日本橋2-4-1 日本橋高島屋B1味百選・銘菓百選

最寄駅 東京メトロ日本橋駅すぐ

 

 

           f:id:yskanuma:20180104135503j:plain

締めは築地「茂助だんご」

 

平成29年も残すところ今日を入れて4日。あ~何とかたどり着いたよ。へとへと。

 

今年2月5日に東京・人形町「清寿軒のどら焼き」からスタート、東京、奈良、京都・・・と東へ西へと駆け回った。

f:id:yskanuma:20171228185801j:plain

 

「週刊あんこ」などというタイトルにしてしまったために、週イチ更新のゆる~いブログとなってしまった。

 

で、本日は正月の買い出しで、カウントダウンの築地市場まで足を延ばした。

 

物凄い人混み。外人客の多さは異常だよ。

 

当然のごとく、場内市場にある「茂助だんご本店」へ。花よりだんご。

 

意外だが、狭いが、店内でも食べれる。築地の穴場。

f:id:yskanuma:20171228190052j:plain

 

6串入り(こしあん3串、つぶあん3串入り 税込み1020円))を買い、それとは別にこしあんとつぶあんを1串ずつ頼み、店内で賞味する。値段は同じ1串170円(税込み)。うれしいことに緑茶をサービスしてくれる。この緑茶がうまい。

f:id:yskanuma:20171228190133j:plain

 

1串3個。こしあんはさらっとしたきれいな味わいで、甘さはほどよい。上新粉の餅は自家製でやや固めだが、昔からほとんど変わらない味わい。

f:id:yskanuma:20171228192328j:plain

 

好みはつぶあんの方。北海道十勝産小豆を使い、砂糖は多分上白糖。塩気もほんのりある。小豆の濃い風味があんこ好きにはこたえられない。

f:id:yskanuma:20171228192356j:plain

f:id:yskanuma:20171228190322j:plain

 

「茂助だんご」の創業は明治31年(1898年)。魚市場がまだ日本橋あった頃、初代茂助が屋台でだんごを売り始めた。

 

それが人気を呼んで、魚市場が現在の築地に移ってからも旦那衆のお土産としてもよく売れたらしい。料亭への手土産・・・それで芸者衆の気を引いたというわけだ。昔も今も人間のやることにそう変わりはない。

 

マグロや新巻鮭を片手に、茂助だんごを味わう。

f:id:yskanuma:20171228190611j:plain

 

さて、来年はいぬ年。何が起きるか、ミサイルよりあん、苦い夢より甘い夢。それを心から願わずにいれない。皆さん、よいお年を!

 

所在地 東京・中央区築地5-2-1築地市場1号館

最寄駅 大江戸線築地市場駅

 

 

           f:id:yskanuma:20171228190511j:plain

 

 

 

 

あんこスター「御座候」に並ぶ

 

こう寒いと、今川焼きが無性に食べたくなる。

 

メジャーなたい焼きではなく、ややマイナーな今川焼きが好み。

 

埼玉・そごう地下にある「御座候(ござそうろう)」はその一つ。

 

今川焼き界のスター、だと思う。にゃんこスターよりあんこスター

f:id:yskanuma:20171221105047j:plain

 

本店は兵庫・姫路にあり、関西を中心に人気の高い今川焼き屋さんだが、関東にも進出していて、東京にも5店舗ある。

 

1個85円(税込み)という安さだが、あんこの質・量ともに素晴らしい。

 

赤あんと白あんがあり、どちらも美味いので、両方買ってしまうことになる。

 

行列がいつも凄い。この日も15~6人並んでいた。

 

実演販売しているので、職人さんの鮮やかな手さばきを見ているだけでも飽きない。

 

あん子の幸せ、というのもありなのだ。

 

焼き立てを食べたかったので、近くの喫茶店でこっそり賞味する。

f:id:yskanuma:20171221105141j:plain

 

まず赤あん。モチっとした皮の美味さ。そのすぐ後に、たっぷり入ったつぶあんが風味豊かに口中を支配する。緩めでとろっとした食感がたまらない。

f:id:yskanuma:20171221105219j:plain

f:id:yskanuma:20171221105326j:plain

f:id:yskanuma:20171221105349j:plain

 

やや小ぶりだが、この美味さはこたえられない。小豆は北海道十勝産を使用、それに上白糖と水飴少々加えているようだ。

 

白あんの美味さも強調しすぎることはない、と思う。同じ十勝産の絹手亡豆(てぼうまめ)をていねいにじっくり炊いているのがわかる。白いんげんの一種だが、絹のような食感が特徴。

f:id:yskanuma:20171221105440j:plain

 

赤あんも白あんもほんのりと塩気が効いている。

 

個人的な番付では、東京・町屋「博多屋」が横綱だとしたら、関脇か大関くらいの存在感と美味さだと思う。

 

創業は昭和30年(1955年)。姫路で「回転焼き」として、1個10円からスタートしている。そのときのあんこ作りを忘れずに継承しているようだ。一個85円をぜひ続けてほしい。

 

所在地 さいたま市大宮区桜木町 そごう大宮店B1

最寄駅 JR大宮駅西口すぐ

 

            f:id:yskanuma:20171221105626j:plain

 

 

 

 

超レアもの「湯葉ぜんざい」

 

「あんこを求めて三千里」の旅の中でも

 

こ、これは何だ?

 

そう思いたくなる和スイーツもある。

f:id:yskanuma:20171214183658j:plain

 

箱根湯本で出会った湯葉(ゆば)ぜんざい」(税込み 720円)もその一つ。「湯葉丼 直吉(なおきち)」の傑作だと思う。珍作と言った方が近いかもなあ。

 

湯葉とは豆乳を作るときにできる表面の皮(膜)。その食感はドロっとしていて、大豆の香りが織り込まれている。

 

箱根名物の湯葉と甘いぜんざいをくっ付けてしまうなどあり得ない

 

陶器の器(結構デカい)の中に自家製の生湯葉が湯気を放ち、大粒の見事な小豆がいい景色で揺蕩(たゆたって)っている。

f:id:yskanuma:20171214183727j:plain

 

小豆は北海道十勝産大納言小豆。手づくりのあんこ

 

ビジュアル的には素晴らしい。

 

箸と木匙を使って食べてみる。湯葉の美味さは日光に劣らない。

f:id:yskanuma:20171214183930j:plain

 

ぜんざい、というより茹であずきを掬って食べると、甘さがかなり控えめ。小豆の風味はかなりある。柔らかくふくよかに炊かれている。関西風だと思う。

 

だが、どこかミスマッチで、それぞれは上質なのに、合わせると、湯葉の存在が強すぎてあずきのよさが隠れてしまっている。

 

かかあ天下の夫婦(めおと)みたいな印象。あるいはこれが好みという人も多いかもしれない。

f:id:yskanuma:20171214184131j:plain

 

箸休めの柴漬けがうまい。

 

店は広々としたモダンな造りで、早川がオープンな窓から見える。BGMのジャズがも心地いい。

 

オープンしたのは約12年前だが、元々は旅館を営んでいたようだ。そのときから湯葉丼など湯葉料理が名物だが、甘味類も充実している。「湯葉ぜんざい」もそのときからのオリジナルメニュー。

 

「あんみつ」や「だんご」(要予約)、さらに「ぜんざい豆腐」などというこれまた不思議なメニューまである。店主は相当な凝り性のようだ。

 

日本全国広と言えども、湯葉ぜんざいを出す料理屋カフェは極めて珍しいと思う。

 

所在地 足柄郡箱根町湯本696

最寄駅 小田急箱根湯本駅から歩約3分

 

 

                                                f:id:yskanuma:20171215194806j:plain

 

 

 

 

 

 

 

 

谷中名物「生どら焼き」

 

ようやく東京・谷中名物のどら焼きをゲットした。

 

これまで3回行って、3回とも「売り切れ」

 

これはもう縁がない、そうあきらめかけていたが、どうしたわけか、朝倉彫塑館を見た後に、ふとのぞいてみたら、「あった!」。それも最後の4個。ちょっとした宝くじに当たった気分。ちょっとオーバーかな(笑)。

    f:id:yskanuma:20171206204148j:plain

 

夕焼けだんだんの手前、すぐ左側にある「お菓子処 かみくら」のどら焼きである。

 

「あんこ力」の力関係で、私が3個(1ケ 税込み180円)、友人が1個。

 

その希少などら焼きがこれ。

    f:id:yskanuma:20171206204036j:plain

 

「明日までにお召し上がりください」と女将さん。普通のどら焼きの賞味期限はだいたい3~5日なのに、これはどうしたことか?

 

家に戻って食べたときに、その理由がわかった。

 

表面は淡いきつね色できれい。中のスポンジが黄色みが強い。これほど黄色みの強いどら焼きは初めて。卵の黄身をかなり多めに使っていると思う。

 

ふわふわの玉子焼きのような皮。

    f:id:yskanuma:20171206204355j:plain

    f:id:yskanuma:20171206204423j:plain

 

口に入れた瞬間、しっとりふわふわ。それが特徴で、名店「日本橋うさぎやのようなスポンジ感とは違った。しっとり感だけを見ると、浅草の「亀十」に近いかもしれない。あんなバカデカくはないが。

 

中のあんこはねっとりしたつぶしあんで、甘さがかなり強い。北海道十勝産のえりも小豆を使い、ていねいにじっくりと炊いているのがわかる。小豆の風味もまずまず。つややかな小倉色で、おそらく水飴も加えていると思う。ほんのり塩気。

    f:id:yskanuma:20171206204521j:plain

 

あんこの量は「日本橋うさぎや」ほどはない。大きさもひと回り小ぶり。

 

その意味では少し物足りなさも残るが、「生のどら焼き」と表現したくなる鮮度のいいどら焼きではある。店主はご高齢で、話を聞きたくても、なかなかお顔を見せない。

    f:id:yskanuma:20171206204711j:plain

 

少しだけわかったことは、この地に店を構えたのは平成13年(2001年)で、その前は「長いこと別の場所でやってました」とか。

 

なので和菓子職人としてのキャリアは謎。羊羹、最中、豆大福なども美味そう。いい腕前の店であることは確かだ。

 

個人的な評価では老舗和菓子屋「荻野」の次に位置する、谷中のあんこ和菓子屋ではある。

 

所在地 東京・台東区谷中5-11-15

最寄駅 JR日暮里駅歩約5分

 

 

            f:id:yskanuma:20171206204824j:plain

 

 

 

 

「羽二重団子」夢の跡

 

竹串を刺した東京の餡団子(あんだんご)と言えば、一に日暮里の「羽二重団子(はぶたえだんご)」、二に築地の「茂助だんご」があまりに有名。

 

どちらも1個1個こしあんで団子をしっかりと手包みしている。餡団子はこうでなくてはいけない。

f:id:yskanuma:20171130115629j:plain

 

私の好みは羽二重団子で、平べったい団子が四つ(茂助だんごは三つ)。食べた瞬間の上品なこしあんと「羽二重のような」きめ細かい団子の食感がとてもいい。

 

甘さをかなり抑えていて、もう少し甘くしてもいいと思うほど。でもそれが羽二重団子なのである。

 

あんこをベタッと乗っけた多くの串だんごとは手間ひまのかけ方が違う。

 

そう思っていたが、先日久しぶりに日暮里の本店へ行った。

 

ちょうど改装中で、仕方なくJR日暮里駅前のカフェ「HABUTAE1819」で、「羽二重だんごセット」(お茶付き 540円=税込み)を賞味した。あんこと焼きが一本づつ。

f:id:yskanuma:20171130115357j:plain

 

少々がっかり。昔より味が落ちたのではないか。それともこちらの舌が変わってしまったのか、あるいはたまたまなのか、団子の柔らかさが以前ほどではない。こしあんは見た目はそう変わらないが、全体的にどこか手の感触がしない。期待が大きすぎたのかもしれない。

 

創業が文政2年(1819年)。現在は七代目。あの甘党の夏目漱石正岡子規が愛した羽二重団子は、おそらく茶屋の延長線上の手づくり感にあふれた味わいだったと思う。

f:id:yskanuma:20171130115711j:plain

f:id:yskanuma:20171130115800j:plain

 

時代に合わせて中身が変化するのは仕方がない。小豆も丹波産から十勝産に変わり、庄内産うるち米の搗き方もひょっとして変わっているかもしれない。

 

個人的にこれまで食べた餡団子の中で最高峰は、築地にあった「福市だんご」。10年ほど前に後継者がいないという理由で暖簾をたたんでしまった。一日200本しか作らないというあの手の温もりのした串だんごが頭の中にしっかりと残っている。

f:id:yskanuma:20171130115947j:plain

 

それでも「羽二重団子」の客は多い。江戸も明治も、いや大正も昭和も遠くなりにけり、ということか。老舗の暖簾を守っていくのはむずかしい。

 

所在地 東京・荒川区東日暮里6-60-6

最寄駅 JR日暮里駅すぐ

 

 

           f:id:yskanuma:20171130120013j:plain

 

 

花園万頭「ぬれ甘なっと」

 

花園万頭の「ぬれ甘なっと」(ぬれ甘納豆)を初めて食べたのは昔々。

 

ただの甘納豆とは見た目も食感もまるで違った。

 

一粒一粒がテカテカと小倉色の光沢をたたえ、しっかり形を残したまま、驚くほど柔らかくふっくらと蜜煮してあり、噛んだ瞬間、オーバーではなく凝縮した小豆の風味が口の中で爆発するようだった。

    f:id:yskanuma:20171121171448j:plain

 

叔母が東京からわざわざ取り寄せ、それを得意げに子供たちに味見させては、ビックリする顔を眺めて喜んでいた。

 

「これは目の玉が飛び出るくらい高いんだよ」とひと言。今思うと、嫌味と紙一重。

 

以来、花園万頭の「ぬれ甘なっと」は私にとって、永遠のあんこスターとなった。にゃんこスターより、あんこスター。

    f:id:yskanuma:20171121171607j:plain

 

久しぶりで新宿3丁目の花園万頭本店2階のカフェ「あんと」で「アイスまめかん」(税別870円)を食べた。

 

赤えんどう豆ではなく、黒光りした「ぬれ甘なっと」が多めに乗っていた。これこれ。

    f:id:yskanuma:20171121171758j:plain

    f:id:yskanuma:20171121171850j:plain

 

高レベルの寒天もジャージー牛のバニラアイスもアンズも、あんこスターの前ではフェードアウトしてしまう。小倉色のてかぴか。

 

昔ほどの感動はないが、相変わらず信じられないほど美味い。

 

北海道産大納言小豆を何度も糖蜜に漬けて、煮たてて、冷まして、また煮たてて。それを繰り返すという秘伝の技だそう。

    f:id:yskanuma:20171121171950j:plain

 

創業は明治39年(1906年)だが、元々は金沢に暖簾(のれん)を構える「石川屋本舗」で、ルーツは天保5年までさかのぼる。加賀前田家御用達の和菓子屋だった。三代目のときに東京に出て、現在の花園神社そばに店を構えた。

 

その三代目が戦後の苦境の中で、苦心の末に作り上げたのがこの「ぬれ甘なっと」。独創的なひらめきと味わい、だと思う。

 

なので、賞味するときは一緒に三代目の想いも噛みしめることにしている。

 

所在地 東京・新宿区新宿5-16-15

最寄駅 東京メトロ新宿三丁目駅

 

            f:id:yskanuma:20171121172021j:plain