週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

怪物「こしあんブレッド」

 

この巨大な「こしあんブレッド」を最初に見たとき、驚いた。

 

こんなのありィ?

 

食パン一斤分ほどのパンにこしあんがマーブル状に練り込まれていた。表面がこんがり焼かれていて、まるでマフィアの親分のようだった。

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一つ460円(税込み)は安くはない。だが、それを超える好奇心がムクムクと湧きあがってきた。ひょっとして世界でここだけのパンかもしれない。

 

「パン生地にこしあんを練り込んで三つ編みにしてから焼いているんです。結構技術がいるんですよ」

 

女性スタッフが得意げに教えてくれた。午前中に売り切れることもあるそう。

 

東京・千駄木「リバティ」の「ぶどうパン」と同じくらいの衝撃。

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蔵の街・栃木市のメーンストリートにある「コエド市場」のパンコーナーでの出会いだった。たまたま入った店。

 

手に持つとずっしりと重い。それを自宅に帰ってから、パンナイフで切って食べることにした。

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パン生地はしっとりとしていて、こしあんを絶妙に引き立てている。こしあんは何と200グラムも煉り込まれているそうで、「マフィアの親分」に見えたのも当然かもしれない。

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こしあんは地元の製餡所のもの。地場の小豆を使っている。甘さが控えめで、小豆の風味も十分にある。

 

牛乳を飲みながら(あんぱんには牛乳が合う)、食パン界のマフィアの親分を味わう。妙な気分になってきた。

 

所在地 栃木市倭町13-2

最寄駅 JR両毛線栃木駅

 

 

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江戸グルメ「栃餅あんころ」

 

あんころ餅、は正月に食べるもの・・・とは限らない。

 

会津・大内宿といえば、江戸時代の茅葺きの古民家がそのまま残る、日本でも有数の歴史遺産だと思う。その数30軒ほど。観光客も多い。

 

そこに珍しい「栃餅(とちもち)」のあんころ餅がある。

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搗(つ)きたての餅に栃の実を加えて、手間ひまをかけて作らなければならない。そのため、これを出す店がどんどん減っている。

 

これは行かねばなるまい。大内宿の中でも老舗の蕎麦屋「こめや」に、この栃餅のあんころ餅がある。

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時代劇に出てくるような古民家(本物)の中で、「栃餅 税込み550円」(あんこときな粉のペア)を頼んだ。

 

栃餅は色が茶褐色で、皿に盛られたあんこときな粉の2種類。出来立ての湯気がふわふわと立ちのぼってくるよう。

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あんこはドロリとしたこしあんで、控えめな甘さ。箸でつかむと、伸びやかに立ち上がってくる。

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柔らかな栃餅とこしあんの風味がコラボする。栃餅はクセがあり、妙な表現だが、硫黄のような匂いがする。

 

ボルドーのプレミアムワインにも硫黄の匂いのするものがあり、それが官能的な魅力にもつながっている。

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それを思い出した。クセはあるが、いやな感じではない。それどころか、普通の餅では味わえない独特の面白みが口の中に広がる。

 

こしあんがそれに絶妙にマッチする。

 

ほお~、という言葉が出かかる。伝えるのが難しい古くからの味わい。

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きな粉もイケる。京都「澤屋」の粟餅を思いっ切り野暮ったくしたような味わい。江戸の山奥にこういう美味があったことに改めて驚かされる。

 

江戸のスイーツ、恐るべし。

 

所在地 南会津郡下郷町大字大内字山本16-3

最寄駅 会津鉄道湯野上温泉駅からバス

 

 

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西の赤福、東は深川もち

 

東京にも伊勢「赤福」に負けないあんこ餅がある。

 

と書くと、赤福がすごいもの、と思われるかもしれない。

 

「昔の赤福ならいざ知らず、偽装表示以降はどうもね」

 

という声がどこかから聞こえてくる。

 

なので、この場合の赤福は「いい時の赤福」としておこう。

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東京の下町、深川不動尊門前にある「伊勢屋本店」の「深川もち」である。

 

最近は「深川ちょこ」など、新しい和スイーツを出して人気になっているが、本命はこちら。

 

さて、この深川もち。紙包みの箱入り(12個 税込み900円)を買いたい。

 

包みを解いて、木の香りのする経木をめくると、きれいなこしあん餅が現れてくる。赤福は二本の指でこしあんをこすりつけた形だが、こちらは茶巾絞りの形である。

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ひと口。こしあんのいい風味が春風のように広がってくる。控えめな甘さ。小豆は北海道産、砂糖は白ざらめ。切れのいいきれいな味わい。

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その後に続く餅が実に柔らかい。国産のもち米を搗いて、さらに糖蜜を加えながら、練り込んでいる。それが絶妙なもっちり感と柔らかさを生んでいるようだ。

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個人的な評価では、奈良・當麻寺(たいまでら)の中将餅には負けるが、こしあんのあんこ餅としては、首都圏を見てもテッペン付近に位置すると思う。

 

創業が明治40年(1907年)と暖簾の歴史も古い。

 

あまり手を広げずに、この伝統の味を守ってほしい。

 

所在地 東京・江東区富岡1-8-12

最寄駅 東京メトロ東西線門前仲町駅一番出口すぐ

 

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猛暑祝い「あんこアイス最中」

 

ヘンな話、関東には梅雨がなかった気がする。

 

それなのに「梅雨明け宣言」とは。気象庁も天気を読めないほどの異常気象ということかな。どうしちまったんだ、地球はん。

 

こういう時は変化球で猛暑をお祝いすることにしよう。相対化で困難を乗り切る。

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で、東京・浅草雷門にある甘味処「西山」。ここの「小豆のせアイス最中」(テイクアウト400円=税込み)が本日の主役である。

 

あんこ好きにおすすめの夏の一品。シビレルこと間違いない

 

アイスはバニラ、抹茶、あずきから選べるが、やはりここは「あずき」で行きたい。「小豆のせアイス最中」はその上にさらにトッピングであんこを乗せたもの。

 

二階建てのあんこパラダイス。

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見事なあんこ(粒あん)の玉乗り。ボリュームも色つやも文句のつけようがない。

 

ひとナメ、ひとカジリごとにあんあんあん・・・

 

「あ」の字舌先で重なりあっていく。

 

これに比べたら、かの梅園本店の小豆最中アイスがちっぽけに見えてしまう。(むろん個人的な感想です)

 

ふっくらと柔らかく炊かれた北海道産小豆の美味さが半端ではない。絶妙な風味となめらかな甘さ。ほんのり塩加減が効いている。

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店内の甘味処で食べると、ほとんど同じものが580円(税込み)もする。

 

それよりも店先で太陽と猛暑を体全体で受け止めながら、味わうのが一番だと思う。

 

入り口に小さなベンチがあり、そこで食べる。混んでるときは使えないが、そのときは立ったまま、あるいは歩きながら食べるのも粋というもの。

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楽して粋は手に入らない。毛穴から汗が噴き出していても、涼しい顔で夏の絶品を味わう。こうでなくっちゃ。

 

この「西山」、創業が嘉永5年(1852年)という老舗和菓子屋。並びにはどら焼きで有名な「亀十」があるが、観光客があまりに多く、渋好みとしては、こちらがおすすめ。ここの目玉でもある「福々まんじゅう」を包んでもらうのも悪くない。

 

たまたま結論。エアコンの中で小豆アイスを味わってはいけない。

 

所在地 東京・台東区雷門2-19-10

最寄駅 東京メトロ銀座線浅草駅

 

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「塩羊羹元祖」にたどり着く

 

頂き物で、この塩羊羹(しおようかん)を初めて見たとき、見入ってしまった。

 

ただの塩羊羹ではなかった。

 

グレーがかった、灰緑色の凝縮。オーバーではなく、宝石の瑪瑙(めのう)でも見るように、しばらくの間、その場を動けなかった。

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明治6年(1873年)創業、長野・諏訪大社下社秋宮の門前に暖簾を下げている「新鶴本店(しんつるほんてん)」の塩羊羹。塩羊羹の元祖でもある。

 

店まで足を運ばないと、この塩羊羹を手に入れることはできない。今どき珍しい孤高の店でもある。

 

そして、ついに本店のある下諏訪駅まで足を運んだ。

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江戸時代の面影を残す、明治期の建物。

 

塩羊羹(一本950円=税込み)を3本買い求めた。

 

さらに、もう一つの狙い、ここでしか食べれない「もちまんじゅう」(1個170円)をゲットした。午後には売り切れてしまうことが多い。希少な餅菓子。

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すぐ固くなるので、無理を言って、店の中で食べさせてもらった。前回書いた、奈良・大和郡山市にある超老舗和菓子屋「本家菊屋」と同じ展開になってしまった。

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グスン、こちらは皿もお茶も出なかったが(当たりメエだよ)。

 

「もちまんじゅう」という名称だが、こしあんの大福餅に近い。

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「餅は今も臼ときねで搗(つ)いてます」(女性スタッフ)

 

伸びと腰がしっかりしている。中のこしあんは、実にきれいな味わい。北海道十勝産の小豆と白ザラメ、それに塩。その加減が絶妙で、いい余韻が口中に残る。

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塩羊羹とともに明治6年からほとんど同じ製法で作られている。こうした店が、世の中の流れに棹(さお)さすように、店を広げずに暖簾を守り続けている。

 

雨の日も晴れの日も台風の日も194年・・・気の遠くなるような時間の流れ。

 

そのことに三歩下がって、改めて敬意を表したい。

 

所在地 長野・下諏訪町横町木の下3501

最寄駅 JR下諏訪駅歩約10分

 

 

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あの秀吉の驚きの舌

 

美しい餅菓子、鶯餅(うぐいすもち)のファンは多い。

 

何を隠そう、(隠す必要はないのに)私もその一人。あんこを求肥で包み、青大豆きな粉をまぶしたその色と姿は確かにうぐいすを連想させる。

 

なので、うぐいす餅。春の季語にもなっている。

 

この命名者があの豊臣秀吉、って知ってる人はそう多くはない。

 

どうやら本当らしい。秀吉は名コピーライターでもあったことになる。

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秀吉の弟・豊臣秀長が関白秀吉を迎えて、大和郡山城で茶会を開いた。

 

秀長は珍しいもの好きの秀吉を驚かせようと思って、「本家菊屋」の初代・治兵衛に「これまでにない和菓子を作れ」と命じていた。

 

苦心の末、出来上がったのが青きな粉をまぶした餅菓子だった。

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秀吉は大の甘党でもあったようだ。

 

ひと口食べるなり、そのあまりの美味さに腰を抜かしそうになった。多分、少なくとも5個以上食べたのではないか(見たわけではない)。

 

「天晴れじゃ、これからこの珍菓子をうぐいす餅を名づけよ

 

と言ったとか。430年以上経った今も本家菊屋に伝わる話である。

 

どこでもドアで、その元祖、本家菊屋に足を運んだ。

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大和の国・郡山城下に店を出したのがなんと天正13年(1585年)というから驚く。現在の奈良県大和郡山市

 

当主は現在26代目。秀吉の弟・秀長が大和郡山の城主になったときに、何処からかやって来たらしい。つまり創業はもっと古いが、古すぎて本家菊屋でも把握できないらしい。いやはや。

 

その元祖・うぐいす餅を今も作り続けている、なんて。気が遠くなってくる。

 

商家造りの開放的な店構え。柿色の水引暖簾。中に入ると石畳。

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江戸時代になってから、徳川に遠慮したのか、名前を「御城之口餅(おしろのくちもち)」と変えてしまった。郡山城の入り口に店があったため。

 

惜しいなあ。秀吉ほどのひらめきが感じられない。

 

日持ちがしないため、無理を言って、店の縁台で賞味させていただいたが、超老舗なのに、店の女性スタッフは気さくだった。

 

「1個でもいいですよ」

 

「では5個ください」

 

形も青きな粉をまぶしたところも同じだが、サイズが小さい。当時のままだそう。一口サイズ。一個100円(税込み)。

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ほうじ茶と黒文字まで付けてくれた。ちょっと感動。

 

これが今も絶品なのである。

 

求肥(ぎゅうひ)の柔らかさと青きな粉のかかり具合。中のつぶあんもひと味違う。

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つぶあんは選りすぐった丹波大納言小豆で、風味といい甘さといい、素晴らしいとしか言いようがない。青きな粉は国産青大豆を使っている。

 

サイズが小さいだけで、その美味さの凝縮感が現在のうぐいす餅に負けていない。それどころか、超えてさえいると思う。

 

秀吉の舌がいかにすごかったか。改めて、脱帽させられてしまった。

 

所在地 奈良・大和郡山市柳1-11

最寄駅 近鉄郡山駅下車

 

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天然かき氷「絶壁あんこ」

 

かき氷は宇治金時かあずきに限る。

 

ここ数年のかき氷ブームは異常だと思う。

 

かき氷のビッグバンってとこか。

 

ワンダーなかき氷がどんどん誕生している。これは悪い話ではない。東京・谷中の「ひみつ堂」がフツーに見えてきたりする。

 

このかき氷を初めて見たとき、口が開いたまま、しばし呆然としてしまった。

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東京・目白「志むら」の「氷あずき」(900円)。

 

南アルプス八ヶ岳の天然水で作った、ふわふわのかき氷の高さは優に25センチほど。

 

それが断崖絶壁のようにそそり立っていた。まるでアイガー北壁だよ。

 

それに輪をかけて驚いたのは、そこからあんこが滝のように流れ落ちていたこと。

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なんじゃ、これは? 反則すれすれ

 

茹であずきのような緩いあんこで、それが滝壺のように麓に広がっていた。

 

頂上からあんこの滝壺に飛び込みたい

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それからはある種、夢の時間。

 

甘さはかなり抑えられていて、小豆の素朴な風味が全開していた。ややもすると、物足りないほど。

 

不思議だが、氷が歯に滲みない。

 

愛ある氷、とでも表現したくなった。愛のない氷もある。

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あずき好きにはたまらない、大人のかき氷だと思う。

 

客のほとんどは女性。

 

「生いちご」がここの人気ナンバー1だが、個人的には「あずき」には敵わない。

 

北海道十勝産の小豆とグラニュー糖で、じっくりと炊いた素朴で品のいいあんこ。

 

それをゆる~く、ゆる~く。

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美味いスイーツを見つける才能は男よりも女の方が勝っている、と思う。

 

昭和14年、青山で創業。東京大空襲後、終戦と同時に昭和20年、目白に移転。

 

女性のいるところ甘い蜜あり、は多分本当だ。

 

今では、東京でも指折りの和菓子屋兼かき氷カフェとなっている。

 

所在地 東京・豊島区目白3-13-3

最寄駅 JR山手線目白駅下車

 

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