今回お届けしたいのは新潟の最北・村上市で江戸時代から続く「御菓子司 早撰堂(そうせんどう)」のキラ星たちです。

私にとっても初めて「入国」した、あの北前船の寄港地でもある。「鮭のまち」としても知られたグルメエリアでもある。
〆張鶴など銘酒の蔵元もある。
だが、私にとってはここは和菓子の隠れたエリアとして記憶に刻みたい。
👟アプローチ
日本海の潮風が残るメーンストリートにタイムスリップしたような、いぶし銀の大店(町屋造り)が見え、その店構えに浮気なあんこハートが鷲づかみにされた。

目的の「早撰堂」の屋号が歴史の風雪を背景に独特のオーラを放っていた。
店の前でしばらく見入ってしまった。
たじろぎつつ店内に足を踏み入れると、明治⇒大正が沁み込んだ和モダンの菓子棚があり、菓子型がさり気なく飾られていた。


午後一時過ぎなのにほとんど売り切れていた。
そこに見るからに洒脱な女将さんが気さくなお声で「こんなところにようこそ」。
店構えの凄みと女将さんの敷居の低い対応。
ここはワンダーな老舗だ、と直感した。
★ゲットしたキラ星
鮭の切身落雁 300円
上生菓子3種
かのこ 200円
きんとん200円
青柿 200円
挽茶もなか140円
※すべて税込み価格です。

【センターは?】
上生菓子3種:かのこ㊥・きんとん㊧・青柿㊨

🧐かのこ かのこ好きの私の目がひと工夫違う美しいかのこに吸い寄せられた。

表面を大納言小豆を覆い、紐状の白餡とよく見ると細かい花びらが小さなアクセントをつけていた。
はんなりの世界。

京都の上生菓子と通底する、これは北前船の歴史まで感じさせる小世界。
ひと目で店主の腕がかなりのものと実感した。
女将さんによると、ルーツは姫路から来たようですとか。

大納言小豆のふくよかな風味とこしあん+求肥が上品に広がってくるのがわかった。
京都名店の上生菓子に負けない、深い味わいといい余韻。ついため息。
🧐きんとん
若草色のきんとん(手づくり)の上に愛らしいキノコがちょこんと乗っていて、中は上質な小倉餡。


驚くほどなめらかな、二層のあんこで、上質なマリアージュが舌から脳天へ抜けていくよう。
このレベルで200円が信じられない。
🧐青柿
菓銘どおり青柿をイメージした美しい上生菓子。

半透明の錦玉を菓子楊枝で切ると、中はなめらかな白餡。

そのみずみずしい風味が舌に心地よい。
口どけが素晴らしい。
●あんヒストリー
女将さんによるとはっきりとした創業年はわからない。現在15代目とか。もともとは料理茶屋だったようです、とも。和菓子屋になったのが明治以降のようだ。町屋造りの店は明治26年(1893年)に建築されたもの。さらに外観を大正時代風に改装している。国の登録有形文化財の指定も受けている。村上市は旧村上藩の城下町として発展、その後9代続く内藤家の城下町として明治まで繁栄をつづけている。

【サイドは?】
鮭の切身落雁:鮭の切り身のアートな餡入りらくがん

村上市のシンボルでもある鮭の切り身を鮮やかに再現したらくがんで、あまりのリアルさにちょっと驚かされる。
皮までリアルで芸が細かい。
粒子の細かい寒梅粉と砂糖を水飴でつなぎ、その中心部にこしあん(半生)を入れ、木型で固めている。

ごらんの通り、うっかりすると本物と見間違えそうになる。
少ししゃりっとした歯ざわりと舌ざわりがとてもいい。
半生のこしあんがいいアクセントで口中に広がってくる。

甘さが上品で、味わいながら自分が鮭になった気分(笑)。
ユニークな逸品だと思う。
挽茶もなか:白餡×抹茶の素晴らしいマリアージュ


女将さんに「これ食べてみて」と言われて、試食品を食べたら、その上質な味わいに舌ごと持っていかれそうになってしまった。
と表現したくなるほど美味。

皮種と抹茶あんのマリアージュがとてもいい。
薄茶はもちろんコーヒーにも合いそう。
最中の名店に引けを取らない、これもこの店の和菓子職人のレベルが相当なものと実感。
「早撰堂」と出会って、城下町でもある村上の和菓子のレベルを思い知らされた。
わが身の無知ぶりも(笑)。
だから、あんこ旅はやめられない。
「御菓子司 早撰堂」
