秋のおはぎと春のぼたもち。
という本来の季節による分け方は今やあまり意味がなくなっていると思う。
個人的には田舎を想起させる「ぼたもち」のどっしりとした語感が好きだが、和菓子屋さんの世界では「おはぎ」の方が一般的になっている。
時代には逆らえない。

さて、行きたいと思っていた「タケノとおはぎ」用賀本店にやっとこさ足を運んだ。
個人的な話。
約6年ほど前のこと、あるテレビ局からどうしたわけか、私に「今すごい人気のおはぎ屋さんに取材に行ってもらえませんか? 長い行列に並んでもらい、そこからのさとう編集長を追いたい」とのまさかのオファーがあった。
テレビ出演となると、さすがに二の足を踏む。行列が苦手という他に三つほどの理由で生意気にもお断りした。
その時の行列店が「タケノとおはぎ」で、私にとっては幻のおはぎとなっていた。
なので、今回は6年越しの初訪問。

2年半ほど前に現在の場所に移転しているので、田園都市線用賀駅から15分ほど歩いて、用賀本店に到着したころには、Tシャツが汗で塩を吹いていた。
出だしから塩が効きすぎ?

和モダンな店構えで、一歩足を踏み入れたら、エアコンの涼風が心地いい。
オアシスと天国の境目。あんココロがときめいた。
想像越えのおはぎが5~7種類ほど木枠のケースにそれぞれ納まっていた。


時間が午後に入っていたためか、最も定番の「つぶあん」と「こしあん」がすでに売り切れていた。ガクッ、ザンネン~。
棚から落ちなかった?
★ゲットしたキラ星おはぎ
ナッツ
紫芋と黒ゴマきな粉
和薔薇(わばら)
枝豆と酒粕のオリーブオイル焼き
マンゴーとココナッツ
合計1800円(税込み)

【センターは?】
マンゴーとココナッツ:白餡×マンゴーピューレ×黒米

私的にはつぶあんとこしあん抜きとなったので、主役抜きの実食となったが、逆に考えると、これほど刺激的な創作おはぎはない。
いわば「じゃない方のおはぎ」5種類の食べ比べとなったが、結論から言うと、それぞれが期待以上の個性的な味わいだった。
なので、どれをセンターにしても耐えうるのだが、あえて意外性と好みと気分から、センターにはこの「ココナッツとマンゴー」を選んだ。
上から見ると、サイズは約50ミリほどの球形おはぎ。

白い雪のような外観で、ココナッツが霜柱のように美しく立っていて、一見とてもおはぎには見えない(写真左、右は枝豆と酒粕)。
実食タイム 白餡とマンゴーピューレをブレンドしたマンゴー餡がイケた。小さいながらボリュームも十分にある。

すべて手作業の自家製で、白餡は北海道産白いんげん×グラニュー糖で、そこにマンゴーの果実味と酸味がほのかに漂っている。
甘すぎない、すっきりした余韻のマンゴー餡。

ベースのもち米は黒米をブレンドしていて、見た目はまだら状の赤米のよう。もっちりした蒸かし加減に仕上げている。

アイデアとこだわりを噛みしめる。おはぎを超えたおはぎ?
店主の創作力に脱帽したくなった。
●あんヒストリー
おはぎ専門店としての創業は2019年。店主の小川寛貴さんはスペインバルで働いた後、2010年に桜新町でお惣菜屋(デリカッセン)をオープン。店名の「タケノとおはぎ」は店主の祖母・タケノさんから取っている。祖母が作ってくれたおはぎ(つぶあんとこしあん)の美味さが忘れられず、お惣菜の一つとしてメニューにした。それが人気を呼び、やがて創作おはぎに特化した専門店となる。常時7種類ほどを手づくりしている。無添加づくりなので、日持ちしない。賞味期限は「その日中に」。

【サイドは?】
枝豆と酒粕:オリーブオイル焼きのスゴ技おはぎ

まるで酒のつまみのようなおはぎ、だね。
白餡がベースで、そこに酒粕と枝豆をあしらい、オリーブオイルで焼いている、と頭がこんがらかってくるような創作おはぎ。

見た目が引力。真ん中から切ってみると、もっちりとした黒米おはぎの納まりがいい。
かすかな酒粕の風味がいいアクセントになっていて、白餡ベースのおはぎが枝豆の悲鳴とともに舌から食道へと落ちていく(妙な表現)・・・このマリアージュ、うめえ。
和薔薇:目と舌をとろかす花びら状の薔薇餡

「タケノとおはぎ」がメディアでも話題となり、おはぎの世界がざわつき始めてから、同じような店が全国的に増えている。
この花びらおはぎはその先端を走ったもの。

白餡をビーツでピンクに染め、ベース部分にはもっちりしたもち米と黒米。金ごまが点々。
白餡のなめらかな美味さが全体を包み込んでいる。
ナッツ:4種類のナッツが白餡の上に乗っかっている

見た目がとてもおはぎには見えない。
洋菓子のようでもある。
アーモンド、ヘーゼルナッツ、くるみ、ピスタチオ・・・4種類のナッツが白餡にまぶしてあり、その下の黒米もち米を脇役にしているよおう。

全体の味わいが不思議なハーモニーをつくっている。
ナッツのカリッとした香ばしさが効いている。

見た目はこし餡かと思ったが、紫芋餡だった。

これは素朴においしい。新しい素朴。
和の素材が新しいおはぎの世界をつくっている・・・不思議な感動。
「タケノとおはぎ」
所在地 東京・世田谷区用賀3-5-6アーニ出版ビル1F
